シンフォギアの消えた世界で   作:現実の夢想者

26 / 60
切歌との約束を叶えた時の出来事やそれに関連する色々です。
Gガンを御存じの方はお分かりでしょうが、後期EDはかなりド直球のラブソング。
故にそれを歌うとすればこのメンバーでしかありえません。

時期としては仁志が連休を取る前の出来事で、それが彼がバスで寝ている間の話にも繋がる感じです。


番外編 戦姫にラブソングを

「今日は特撮・アニメ縛りデース!」

 

 それなりの広さのカラオケルームに切歌の声が響く。それを聞いて小首を傾げる可愛らしい者達がいた。

 

「「「しばり?」」」

「タダノ、縛りとはどういう意味だ?」

「簡単に言うと、この場合は特撮やアニメの歌しか歌っちゃダメって決まり」

 

 その説明に切歌を除いた全員が頷いた。とはいえここにいるのはマリア以外のあの平屋の者達だ。

 時刻は午後一時を過ぎた辺り。場所は駅前のカラオケである。マリアは仕事があり、響達の中には暇がある者達もいるのだが、仁志は切歌との約束を果たすためにと彼女だけを誘うつもりだった。

 

 だがしかし、切歌だけでは調達に悪いと思った彼は以前のようにあの家の者達全員とカラオケへやってきたのだ。

 

「じゃ、まずはししょー、約束を果たすデスよ」

「ちょっと待ってくれ。まずはみんなで歌おう」

「デス?」

「勇者王誕生!~完璧絶叫ヴァージョン~を、さ」

 

 それは仁志が切歌へ貸した“ガ王”と呼ばれたCDに入っているものだった。

 だからこそ仁志の言葉に切歌だけでなく調達も嬉しそうな顔を見せる。

 

「台詞を振り分けよう」

 

 そこから少しだけ打ち合わせのような事を行い、六人は頷き合って一曲目が流れ出す。

 

「ファイナルフュージョン……承認っ!」

「了解っ! ファイナルフュージョン! プログラム! ふ~……ドラ~イブっ!」

「よっしゃあっ!」

 

 ヴェイグ、エルフナイン、仁志の台詞から始まる八分にも渡る二曲の“勇者王誕生!”を合わせたそれを歌い終わった時には既に全員のテンションが最高潮まで上がっていた。

 

「「「「「「勇者なら歌え~っ!」」」」」」

 

 仁志から渡されたDVDやCDにより、切歌だけでなくセレナやヴェイグまでもすっかりガオガイガーへ染められてしまっていた。

 やはり分かり易い熱血系のノリは装者やそれを支える者達には刺さるのだろう。

 

 全員で笑顔を見せての絶叫。もうウォーミングアップは終わったとばかりに仁志は頷いて満を持して次の曲を入力する。

 

「切歌、戦闘男児も聞いた?」

「はいデス! ししょーとやった奴の本物が入ってたやつデスよね?」

「うん。じゃ、それもあとで歌うよ」

「了解デスよ! 掛け合いはお任せデス!」

 

 こうして流れる“FLYING IN THE SKY”を仁志と切歌が歌い始めると、そこで流れる本編映像で切歌達は機動武闘伝Gガンダムへ初めて触れる事となる。

 

「似たようなロボットがいっぱい……」

「これがガンダム、なんでしょうか?」

「この赤いマントの人がドモンさん?」

「じゃないか?」

 

 調達が映像を眺めて喋る中、切歌は楽しそうに仁志と歌っていた。

 

「「この手が叫んでいる! 明日へと走れ~っ!」」

 

 そしてラストのサビへ行く前の間奏では……

 

「俺のこの手が光って唸るっ!」

「お前を倒せと輝き叫ぶっ!」

「必殺っ!」

「キングオブハートっ!」

「「シャァァァイニングッ! フィンガァァァァァァっ!!」」

 

 と、ノリノリで決め口上を叫びその勢いままに最後のサビへと雪崩れ込んだのである。

 

 歌い終わった時、切歌は思わず仁志へハイタッチを要求する程のハイテンションで喜びを表した。

 

「最高デス、ししょーっ!」

「俺も嬉しいよ。ありがとう切歌」

「えへへ……」

 

 満面の笑みを向けられて切歌は照れくさそうに笑う。その心を弾ませ、彼女は上機嫌でマイクを置いた。

 

「只野さん、次は私と歌って欲しいです」

「え? 調と? いいけど……何を?」

 

 疑問符を浮かべる仁志への答えとばかりに調が入力したのは“いつか星の海で”だった。

 勇者王ガオガイガーのEDであるそれに仁志だけでなくエルフナインやセレナまでも嬉しそうな顔をした。

 

「でも調、これはデュエット曲じゃ」

「一番は私が歌います。二番をお願い出来ますか?」

「ああ、そういう事か。了解」

「最後はみんなで歌おう?」

「「「「はい(ああ)(いいデスよ)」」」」

 

 そんな中で始まった歌唱。調の優しい歌声が歌詞に合わさり聞いている仁志達が思わず声を上げる程だった。

 

「いつか星のう~みで~」

 

 ならばと仁志も優しい表情で二番を歌い出す。それもこれまで聞いてこなかった仁志の歌声。調はその表情と歌声に無意識に胸を押さえた。

 

「あの日の旅立ちが、きっと絆強くする……」

 

 まるでどこか今後の事を匂わせるような歌詞と雰囲気。ただそれと気付いているのは仁志とエルフナイン、ヴェイグの三人だけ。

 

「「この宇宙を駆け巡りたいね~」」

 

 最後のサビ前を仁志と調が歌い、そこからは全員で歌う。それが余計希望と温もりを強くさせ、終わった後全員して瞳を潤ませていた。

 だが、それも無理はない。何故なら歌い終わったところで後奏が流れる中、仁志が最終回のナレーションを再現したのである。

 

「そして、我々一人一人が、誇りある勇者である事を、忘れてはならない……」

「グスッ……いい最終回だったデス……」

「華ちゃん、幸せそうだったからね……」

「はい、ウェディングドレス、綺麗でした」

「姉さんも着たいって言ってたっけ」

「そうだな」

 

 さらりと明かされるマリアの本音。仁志はそれを聞いてマリアらしいと思って苦笑する。

 ただ、彼女にはゲームでウェディングギアが実装された事を知っているので、姿だけなら仁志は知ってはいた。

 

(ただ、あれはガチャだけのものだからなぁ)

 

 響や未来などもあったウェディングギア。ただ、それは何かシナリオがあった訳ではないので彼女達が纏う事が出来る訳ではない。

 もしそれを聞けばマリアはどう思うだろうと考えつつ、仁志はしばらく歌うのを休もうとマイクを置いて椅子へ座る。

 

 それを見てならばと切歌達はデンモクを操作し曲を入れ始める。

 

「よし、俺がいくぞ」

「お~」

 

 まずヴェイグが“特救指令ソルブレイン”を入れた。それを見て仁志だけが感動するように声を上げる。

 

「新しい夢が~光るまでは~」

 

 相変わらずレスキューポリスが好きなヴェイグ。その愛らしい外見でマイクを持って歌う姿に誰もが笑みを浮かべる。

 今は切歌がアルバイト先で借りてくるヒーローソングを聞いて覚えていたのだが、それでも最初に聞いたメタルヒーローが印象に残っていたのだ。

 

「つ、次は僕がいきます。兄様、男性パートをお願い出来ますか?」

「ああ、いいよ」

 

 その次はエルフナインが“W-B-X”を入れる。その曲名が表示された瞬間、仁志が嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「「僕らを繋いだ風を止めたくない~」」

 

 仁志から密かにヒーローについて教わっているためか、エルフナインの選曲はかなり特撮に寄っている。

 何せ仁志から聞かされた“Beat on Dream on”があまりにもエルフナインの心を掴んでしまった。

 そこから仁志に自分やキャロルをイメージ出来る歌を教えて欲しいと、そうねだるようになったのだ。

 

「私はこれを歌います」

 

 そう言ってセレナが入れたのは“Spirit”だ。

 切歌が借りてきたウルトラマンベストに入っていた中でセレナがもっとも気に入った歌詞だったのである。

 

「本当は敵なんかいない。ウ~ル~ト~ラの誓い~」

 

 戦いに関して肯定的な歌詞が一切なく、むしろそれに対して疑問を抱くようなものだった。

 ウルトラマンは侵略者や怪獣と戦い倒すと思っていたセレナ。それなのに平和的で優しい内容の歌詞にセレナは目と耳を疑い、感銘を受けたのだ。

 

「ならアタシはこれデース!」

 

 意気揚々と切歌は“海賊戦隊ゴーカイジャー”を入れる。

 あの映画で強く知ったスーパー戦隊。その主題歌ベストを早速借りて、真っ先に聞いたのがこれだったのだ。

 

「でっかい夢は無限大!」

 

 明るい曲調と前向きな歌詞。何より切歌が気に入ったのはサビにある歌詞だった。

 頑張る君のがむしゃらが今この世界を変えるぜ。この部分があのカラオケで仁志から言われた“挑戦しない成功なんてない”を思い出させ、自分のテーマソングとばかりに聞き込んだのである。

 

「じゃあ……私はこれを」

 

 切歌の後を受けて調が入れたのは“Brave Love,TIGA”だった。

 あの映画で見たティガ。片方は大勢の心の光としての、もう片方はダイゴの光の力としての、それぞれで異なる姿を見せたウルトラマン。

 故にそのEDをベストで知って調はティガもやはりウルトラマンなのだと思ったのだ。人々を見守る大きな存在としてのティガをその歌から感じ取ったのである。

 

「ひとり~きりじゃ、届かない~」

 

 一人では戦えないし届かない。どんな闇の中でも夢を求めて小さな星達は輝く。

 そんな歌詞を見て聞いて、調は余計ティガを好きになったのだ。それがまるでティガから人類へのメッセージに思えたのである。

 

「うし、ならそろそろ俺も」

 

 仁志が入れたのは“ウルトラマンゼアス”という珍しい歌だった。切歌達全員が首を傾げる中、流れてきた歌詞と映像に驚きと感銘を受ける事となる。

 

「みんなの思い一つになったら」

 

 光の国とは違う星からやってきた真っ赤で未熟なウルトラマン。その在り方や心持ちを歌うそれは、力強くもカッコよくもない。

 それでも、優しさや勇気という強さが歌われていたのだ。地球の事を嘆きながらもその秘めた力や持っている可能性を信じている歌詞、分かり易いサビのメッセージなどもそれを後押しして。

 

「「「「「「ウルトラマン! ゼ! ア! ス~っ!」」」」」」

 

 何よりも覚えやすいサビとメロディー。最後には全員で歌っていたのだ。

 

「ししょー、何デスか今のウルトラマン!」

「顔が真っ赤でした!」

「目は黄色だし、凄く変わってました」

「でも歌はとっても良かった」

「ああ、優しい歌だ。ウルトラマンらしい」

「ゼアスは実は別の星のウルトラマンなんだ。で、ウルトラマンに憧れてるっていう設定のヒーローなんだよ。詳しく知りたいならゼアスは映画が二本あるから借りてごらん」

「に、二本もあるんデスか?」

 

 まさかの発言に驚く切歌だが、そこで仁志は誤解を招いてると判断して苦笑した。

 

「ああ、ごめんごめん。ゼアスは映画だけのウルトラマンなんだよ。だから二本もあるじゃなく二本しかないが正しいかな?」

「映画だけ、デスか」

「ティガやダイナみたいなんですか?」

「うーん……メビウスよりもある意味頼りないウルトラマンかな。分かり易く言えば、メビウスは優等生ルーキー。ゼアスは落ちこぼれルーキー」

「「「「「落ちこぼれ……」」」」」

 

 仁志の説明は端的故に興味を引く。切歌達は落ちこぼれウルトラマンが想像出来ず、揃って気になってきたのだ。

 何せ最初に触れたメビウスと正反対の表現をされた上、落ちこぼれというマイナスな例えがヒーローにするべきものではないように感じたために。

 

 その後も六人は歌い続けた。ただ、雰囲気が変わった瞬間があった。

 それはセレナが“海よりも深く”という機動武闘伝Gガンダムの前期EDを歌った後に切歌が仁志へある歌を頼んだ事が始まりだった。

 

「君の中の永遠を?」

「デス。ししょーにあれを歌ってもらいたいんデスよ」

「切ちゃん、その歌ってあれ?」

「姉様が聞いてため息を吐いてた歌ですか?」

 

 その言葉に仁志は何かを悟ったように複雑な表情を浮かべた。

 

「只野さん、どうしたんですか?」

「え? あ~、うん。マリアがため息かぁ……って思ってね」

 

 調の問いかけに仁志は返答を濁した。彼は分かっている。マリアが何故ため息を吐いたかを。

 

(あれ、マリアのような女性は言って欲しい言葉や想いだろうからなぁ)

 

 ただし、それがどういう事かは若干ずれてはいた。

 マリアは仁志にそう言って欲しい。あるいはそう思って行動して欲しいと考えているのだから。

 

 ともあれこの場にいるのは仁志からすれば妹分や娘分に親しい友人。

 ならばラブソングを歌ってもそこまで恥ずかしくはないかと、そう思って彼は可愛い弟子に頼まれたままに曲を入れる。

 

 これが、後々自分の首を絞める事になると思わずに。

 

「き~み~だけを~いつも見つめてる~」

 

 優しさだけでは愛は守り切れない。それは、愛する女性をものにするには、時に誰かを傷付けるぐらいの覚悟や決意も必要なのだという、一種の恋愛真理だった。

 

 生まれて初めて聞く異性が歌うラブソングに、エルフナインは手にしていたスマートフォンを置いてから拍手を送り、セレナは憧れるように両手で頬を押さえる。

 ヴェイグはやっと恋愛というものがどういうものかをぼんやりと理解し――たように見えたが結局首を捻っていた。

 

(な、何デスかね? 今のししょーの歌を聞いてると顔が熱くなるデスよ……)

(な、何だか大人な雰囲気……。一緒のベッドで朝をって事かな? ……エッチ、かも……)

 

 少女から乙女となっている二人には、仁志の歌はその淡い恋心を刺激するに十分なものだった。

 訳も分からないまま胸をときめかせる切歌と、歌詞の世界観を想像し赤面する調。

 だけどその眼差しの質は同じであり、同じ男を見つめていた。

 

「……切歌、これでいいか?」

「ふぇ? ……っ!? は、はいデス! さすがししょーデス!」

「流石も何もないけどなぁ。てか、これを女性の前で歌う日が来るとは」

「恥ずかしいんですか?」

 

 仁志の表情と声で心情を察した調が確認するように問いかける。その質問に仁志は小さく苦笑して頷いた。

 

「そりゃあね。もしここに歌姫が一人でもいたら、とてもじゃないけど歌えないし歌わなかったよ」

 

 本当は別の理由もあるのだが、それを切歌達に明かす程仁志は愚かではない。

 その次は切歌が妙に熱い顔のままダイナの後期EDであった“ULTRA HIGH”を歌う。

 

「ウルトラ~ッ!」

 

 仁志がそれに合いの手を入れる事でエルフナイン達もノる事が出来、盛り上がりを見せる。

 

「これはホントに後半の雰囲気だよなぁ。だからこそ君だけを守りたいが流れるシーンがいいんだよ」

「「「「「君だけを守りたい?」」」」」

「あれ? 知らない?」

 

 仁志の確認に全員が頷きを見せる。というのも仁志が持っていたのはOPだけのベストであり、切歌が借りたのはEDは後期のものしか入っていなかったのだ。

 

 話題に出した以上説明を求められ、した後は歌う事になるのは自明の理であった。

 

「いつまでも~どこまでも、きみ~だけを守りた~い」

 

 一聴するとヒーローらしからぬ歌。何せ世界でも宇宙でも平和でもなく、君だけを守りたいと歌うのだ。

 歌い終わった後、エルフナインが仁志へその点を問いかけたのは当然と言えた。

 

「あー、ダイナはアスカであるって事は覚えてる?」

「はい」

「つまり、ダイナはアスカなんだ。で、アスカは正義感はあるけど人間なんだ。時には正義や平和よりも誰かを守りたいと思う事があるって事さ」

「ウルトラマンなのに?」

 

 セレナの問いかけはその場の全員のものだった。だから仁志もそれを理解してどこか優しく微笑んで頷く。

 

「そうだよ。人間ウルトラマンが従来のウルトラマンと違う点がそこにも出てる。感情で動いているって事だな」

「感情、ですか……」

「あとはこうも言えるかもしれない。好きな女性(ひと)一人守れず世界や平和を守れるものか……って」

「成程……」

 

 仁志の言葉に深く頷くエルフナイン。彼女には分かったのだ。一人の命さえ助けられずに多くの命を助けられるはずはないと思って。

 もしここで言われているのが女性を意味していると知れば、エルフナインは別の感想を抱いただろう。

 それを仁志は意図して説明しなかった。何せそれはある意味でウルトラマンダイナの終盤に関わるネタバレにも近いためだ。

 

 その後は仁志と切歌による“戦闘男児~鍛えよ勝つために~”で途中の掛け合いに四人が感心したり、エルフナインによる“風の未来”という伝説の勇者ダ・ガーンのOPでは仁志主導でサビだけを合唱して笑い合う。

 ヴェイグが歌う“炎神戦隊ゴーオンジャー”には合いの手の手本を仁志がやり、それを真似て切歌達も参加しヴェイグを喜ばせる。

 それを受けてセレナがノリノリで歌った“轟轟戦隊ボウケンジャー”は仁志が主体となって合いの手を入れて盛り上げた。

 調もその場の雰囲気に流されるように“天装戦隊ゴセイジャー”を歌い、あの映画を思い出して全員で合いの手に全力投球。

 

「あー、疲れたぁ」

「でも、みんなで“天装っ!”って言うの楽しいデス」

「はい!」

「あの映画の最初のシーンを思い出したな」

「ですね。調さんもそれを意識したんですか?」

「そんな事はないよって言いたいけど、少しは意識した」

 

 全員で疲れながらも笑みを浮かべる。時間もそろそろ終わりとなるため、あと一曲ぐらい歌って終ろうとなった。

 そうなれば白羽の矢が立つのは仁志である。最後に相応しいものをと言われ、仁志は全員で盛り上がって歌えるものを選んだ。

 

「サビだけは歌えると思うから。もし歌えるのなら最初から一緒に歌おう」

 

 流れるのは“SHININ’ON LOVE”。ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ~光の星の戦士達~の主題歌だ。

 やはり印象に残っていたのか切歌とエルフナインが最初から合いの手を入れ、一番が終わる頃には調達もサビを一緒に歌っていた。

 

「とっても明るい歌だね、お兄ちゃんっ!」

「だろ?」

「あの映画の内容にピッタリです!」

「心があったかくなる」

「そうだろそうだろ」

「光、絆、そういうものが歌われてるんだな」

「ティガとダイナらしい歌デスっ!」

「そういう事だ。よし、じゃあ出ようか」

 

 こうして切歌との約束を果たした仁志は、素直に安堵と喜びを噛み締めて彼女達と共にあの家へと向かう。

 そしてそこで切歌がバイト中に見つけた作品について説明や解説を行い、夕食までの時間を過ごす事に。

 

「ガイアの映画は凄いデスね……」

「うん、見たい」

「僕らの状況に似てます」

「お兄ちゃん、コスモスは?」

「コスモスもいいよ。ファーストコンタクトっていう映画があってTVへ続いていくんだ。セレナは好きかもしれないなぁ」

「タダノ、ゴーカイジャーの映画を切歌が早く見たいらしい」

「ああ、ギャバンのやつか。じゃ、明日の集まりはそれの鑑賞会だな」

「やったデス! でもでもししょーのせいでクウガも気になってるデスよぉ」

 

 仁志へくっついて膨れ顔をする切歌。その距離感に少しだけ驚く仁志だったが、切歌の性格を考えるとおかしくはないと思い、むしろ微笑ましいと思って頭を撫でたのだ。

 

「ぁ……えへへっ、ししょー! もっと色んなものを教えて欲しいデース!」

「色んなもの、かぁ。でもその前に……」

 

 まるでじゃれつく動物のように仁志へ抱き着く切歌。が、さすがにそれはと仁志も思ったのだろう。切歌の頭を撫でていた手を握り拳へ変えて軽く小突くように落とした。

 

「あうっ」

「切歌、君も女性なんだから男へあまり密着しない」

「ご、ごめんなさいデス。でも、ししょーならアタシは平気デスよ?」

「俺が平気じゃないの」

「切ちゃん、もう私達は体が大人へ向かってるんだからダメだよ」

 

 調がややムッとした表情で切歌へ迫る。だがそれは以前までと秘めた感情が異なっていた。

 切歌への注意ではなくどこか嫉妬の色が混じっているそれに仁志は同意するように頷く。

 

「そうだぞ切歌。もう女性としての自覚を持ちなさい」

「じょ、女性としての自覚、デスか……?」

「昔の人は十五で結婚するぐらいだったんだ。そう考えるともう十分切歌は大人の女性なんだよ」

「な、ナント!? 驚きデス!」

 

 仁志の挙げた例えに切歌は目を見開いた。そう考えるとマリアにエルフナインぐらいの子供がいるのがおかしくないと思ったのだ。

 

「たしか元服、でしたっけ?」

「そうそう。調、正解。まぁそれは男の子の成人の儀だけどね。女の子は……別の言い方があったはず」

「ええと……裳着(もぎ)……? と言うそうですっ!」

 

 スマートフォンで検索をかけたエルフナインが笑顔で告げた単語に、仁志達がそういうのかと感心するように頷く。

 そこから話題は切歌の要望に応える形で仁志がある映画の話を始めた。それはゴジラと同じく三文字の怪獣が主役のもの。

 

「「「「「がめら?」」」」」

「名前の通り亀がモチーフなんだ。火を吐いて空を飛ぶんだけど」

「か、亀なのに空を飛ぶデスか?」

「火を吐く……ゴジラみたい……」

「でも昭和ガメラは子供の味方。平成三部ガメラは地球の守護神で人類の味方なんだ」

「「「「「味方?」」」」」

 

 まさかの表現に切歌達が疑問符を浮かべる。怪獣と言えば人間と敵対するものと思い込んできている事がそこから窺え、仁志は自分が知らぬ間に彼女達へ偏見を植え付けていた事に気付いた。

 

 そこから仁志は特撮で描かれる人類の味方となる怪獣や宇宙人の話を始める。

 それは今まで彼女達の中にあった怪獣などのイメージを変えていく。

 それと同時に代表格として教えられたガメラへの興味も強くなっていった。

 

「切歌お姉ちゃん、ガメラ、見てみたいです」

「分かってるデスよエル。でぇ……ししょー! オススメを教えて欲しいデス!」

「ガメラなら大怪獣空中決戦から始まる三部作かなぁ。特にみんなは一作目と二作目が気に入ると思う」

「三つ目は違うの?」

「うーん、イリス覚醒も嫌いにはならないだろうけど……」

 

 そこで仁志が言葉を濁すとセレナはおぼろげながらある事を察した。

 

(きっと私達が悲しむ事があるんだろうな……)

 

 詳しい話をとせがむ切歌だったが、借りて見た時に楽しめないかもしれないと調に言われて渋々引き下がった。

 そして調がセレナやエルフナインを伴って買い物へ出かけ、ヴェイグは切歌からもらった新しい寝床であるビーズクッションへ寝転がって仮眠を取り、仁志は切歌と二人でオタトークを繰り広げ始めたのだ。

 

「ししょー、Gガン以外にもガンダムいっぱいあったデスけど、あれはどういう感じデス?」

「あー、ガンダムシリーズは深い沼だからなぁ。ライダーやウルトラマンと同じかそれ以上に複雑なんだよ」

「面白いデスか?」

「人による、としか言えないなぁ。Gガンはシリーズの中でも異色作だし」

「必殺技とかない感じデス?」

「必殺技、なぁ。必殺武器みたいなのなら持ってる機体はいるけど……あっ!」

「ど、どうしたデスか?」

 

 良い事に気付いたとばかりに目を輝かせた仁志に切歌は不思議そうに小首を傾げる。

 そんな彼女へ仁志はある作品を教える。それは熱血系の作品が好きな切歌にオススメのタイトルだ。

 

「ビルドファイターズ、デスか?」

「ああ。あれならきっと切歌は難しい事を考えず楽しめると思うよ」

 

 そこから話題はプラモデルの話へ変わり、そこから派生してベルトなどのオモチャへと移っていった。

 

「おおっ! これは凄いデス……」

「大人用ので、値段も高めだから実際の撮影に使われた物に近いんだよ」

 

 今はスマートフォンで某オモチャ会社のとあるブランドのHPを見ていた。

 

「こ、こんな物見せられたら欲しくなっちゃうデスよぉ」

「だろ? 俺も見るだけ見ては欲しいなぁって呟くだけなんだけどさ」

「気持ち分かるデスよ。アタシも今似た気持ちデェス……」

 

 二人して表示されている金額を眺め、悲しそうな表情を浮かべる仁志と切歌。それは最早兄妹である。

 ただし、それは本人達の感覚だけだ。切歌は仁志のすぐ後ろから負ぶさるようにしてスマートフォンの画面を見ている。それは下手をすれば恋人のそれだ。

 

 実際切歌は仁志へ密着し過ぎないようにしつつ、彼の両肩へ手を乗せて頬に朱を入れながら嬉しそうに笑みを浮かべていた。

 

(ししょーの背中、おっきいデス。男の人って感じデスね。頼もしいデス!)

 

 飾らない表情でスマートフォンを切歌へ見せて意見を求める仁志。そのやり取りに切歌は笑みを深くして感想を述べる。

 時には一緒にお金を出し合って買うかどうかなどを話し合ったりと、まさしく仲良し兄妹のような時間を過ごす二人。

 

 やがて買い物から調達が帰ってくると、仁志と切歌の会話にエルフナインも参加する事に。

 セレナは調と一緒に買ってきた物を冷蔵庫などへしまい始めた。

 

「わぁ、これがリボルケインなんですね」

「そう。かっこいいだろ?」

「はい。これに惑星を破壊する程のエネルギーが秘められてるんだ……」

「エル! エルっ! これを見てほしいデスよ!」

「え? ……ヴェイグさん! こっち、こっち来てください!」

「何だ何だ?」

 

 切歌がエルフナインに見せたのはRXのスーツアクターによる名乗りポーズの見本動画。それをヴェイグも一緒になって見て目を輝かせた。

 

「おおっ、凄いな。タダノがやってたやつだ」

「カッコイイですよね!」

「ししょーが言うには、この人がRXをやってた人らしいデス。で、こっちの人が南光太郎さんらしいデスよ!」

「「これが南光太郎……」」

 

 初めて見る南光太郎役の役者に二人は神妙な表情を浮かべる。彼は画面の中で幸せそうに見えたからだ。

 二人にとっては南光太郎のイメージは仁志の話で聞いたままで止まっている。役者と役は一緒ではないのだが、二人はその辺りが曖昧なために彼の姿そのものが現在の南光太郎と思ってしまったのだろう。

 

「あっ、そうだ。切歌、仮面ライダー3号を借りてきて欲しい」

「「「仮面ライダー三号?」」」

「そう。ドライブが主役なんだけど、それにはオリジナルのBLACKが出てくるんだ。その時の最新技術でその変身プロセスを再現してて、メチャクチャカッコイイんだよ」

「ししょー! もう一回タイトルをお願いするデスっ!」

「えっと、正確にはスーパーヒーローGPがあってからの仮面ライダー3号だったかな? ドライブの棚を探せばあると思うよ」

「仮面ライダードライブの棚……仮面ライダー三号……覚えたデス!」

「切ちゃん、そういう事ばかり覚えるの早いんだから」

「ふふっ、切歌さんらしいです」

 

 片付け終わった調とセレナが居間へやってきて、仁志を中心に畳の上へ座る。

 

「調、今夜は何?」

「えっと、カジキが安かったから照り焼きにするつもりです。あとは鶏肉と野菜の煮物とえのきと油揚げのお味噌汁かな」

「「「お~っ」」」

 

 告げられたメニューに仁志と切歌にヴェイグが嬉しそうな声を出す。

 すっかり日本食に慣れたヴェイグ達である。

 

 その後は調を中心に夕食の支度を始め、仁志は仮眠を取り、ヴェイグはアラームで起きない場合に仁志を起こす役目を担って居間でスマートフォンとにらめっこする事となる。

 

 こうしてマリアが帰ってきた頃には、食欲をそそる匂いが台所から漂うようになっていた。

 

「ただいま~」

「「「「「おかえり(なさい)(デス)」」」」」

「ふふっ、ただいま」

 

 帰宅を告げる声で居間から仁志達が揃って顔を出してマリアを出迎える。

 それに笑みを返してマリアはまず台所へと向かった。

 そこで一人料理している調の背中を見て微笑み、マリアは小さく鼻を動かして嬉しそうな表情を見せる。

 

「調、ありがとう。今夜は何?」

「カジキの照り焼きに鶏肉と野菜の煮物。そしてえのきと油揚げのお味噌汁」

「成程ね。美味しそうな匂いがする訳だわ」

「勿論美味しい」

「あら、自信ありって感じね」

「当然。マリア、手を洗ってきて」

「分かったわ」

 

 調の言葉に笑みを浮かべてマリアは洗面所へと向かう。それと入れ替わりに仁志達が台所へ入ってくる。

 そしてそれぞれが料理を運んだりご飯をよそったりと準備を終え、仁志がヴェイグをテーブルの上へ移動させる頃にはマリアも定位置へ座り、この家での珍しい夕食風景が出来上がった。

 

「じゃ、手を合わせて……」

「「「「「「「いただきます」」」」」」」

 

 総勢七名での食事。今やマリアの密かな最大の幸せとなった時間である。

 

「調っ! この照り焼き最高デスよっ!」

「はい、とっても美味しいです!」

「さすが調お姉ちゃんです!」

「ありがとう」

「煮物もいい具合の味だなぁ」

「本当に。味がちゃんと染みてる」

「帰ってきてから煮物だけはやってたぞ」

「うん。で、マリアが帰ってくる少し前に温め直した」

「そういう事ね」

 

 まずは料理の味で会話を交わし……

 

「そう、カラオケに行ってたの」

「はい。兄様と切歌お姉ちゃんが約束してたとかで」

「初めて聞く歌をいくつかお兄ちゃんが歌ってたんだ」

「へぇ、どんなの?」

「いつもの通りの特撮やアニメのやつだよ」

 

 今日あった事を話題にした事でちょっとした出来事へと繋がる。

 

「エルがスマホでタダノを動画に撮ってたから見てみるか?」

「は?」

「あら、面白そうね。じゃあご飯の後に見せてもらえる?」

「分かりました!」

「えぇ……」

 

 仁志が聞いてないぞとばかりに表情を変える中、マリアへ彼が歌っているところを見られる事が決まる。

 

(まぁ、多分最後のあれだろうな)

 

 若干気恥ずかしいところはあるが、まぁいいだろうと、そう思って仁志はそこで強く止める事をしなかった。

 

 そんな感じで楽しく食事は終わり、後片付けを仁志が主体となって引き受け、マリアは居間へと移動しエルフナインからスマートフォンに記録されたカラオケの一場面を眺める事に。

 

「姉様が好きな歌です」

「私が?」

 

 そんなものを仁志が歌うのだろうか。そう思いながら画面をマリアが見つめると、流れてくるのは“君の中の永遠”だった。

 

「っ?!」

(えっ!? た、只野が、あれを歌ったの? 嘘っ!?)

 

 初めて聞く仁志の甘い歌声。それに知らなかった一面を見せられ、マリアは思わず胸を押さえる。

 一言も発する事なく動画を見つめ続け、マリアは終わると同時に顔を押さえて立ち上がった。

 

「姉様?」

「お、お風呂の支度をしてくるわ!」

「あ、それなら僕が」

「いいの。ついでにお手洗いにも行きたいから」

 

 冷静に考えれば何を言ってるのだろうと思う言葉だが、この時のマリアは一刻も早くその場を離れたかった。

 やや早足で去っていくマリアを見送り、エルフナインは小首を傾げた。

 

「どうしたんだろう?」

「さあな。女の心はよく分からん……」

 

 ベッドでもあるクッションに身を沈めてヴェイグは理解出来んとばかりに呟いた。

 が、更にここでヴェイグが事を大きくしてしまう発言をする。

 

「そうだ。どうせなら奏達にも見てもらえ。動画も送れるんだろう?」

「あっ、そうですね。なら翼さんへ送信してみます」

 

 こうして仁志がラブソングを歌った姿が翼達へと送られる事に。

 その頃、三人はツヴァイウィングとしての投稿楽曲をどうするか話し合っていた。

 

「出来るだけツヴァイウィングはオリジナルでって、そう言われてるんだよねぇ」

「そう。だからギアを纏って歌うしかないんだけど……」

「こう言ったらなんですけど、難しいですよね」

 

 ギアで歌う歌は胸の歌。いわば彼女達の心情や感情だ。戦闘中という極限状態ならば生み出せる歌も、平和な状態で出てくるかと言えば中々難しいと言えた。

 出てこない事もないだろうが、無理矢理絞り出す形になるとしたらそれは二人のプロ意識が拒否するために。

 

「ん? エルからメール?」

「何かあったのか?」

「ううん、そういう事じゃないみたい。動画付き? 珍しいな。見て感想を聞かせて欲しいとある」

「エルちゃんからかぁ。何だろう? ヴェイグの寝顔?」

「あ~、可愛いだろうねそりゃ」

「ふふっ、そうだね。あっ、始まった」

 

 そこで再生されるのは仁志の歌う姿。何の前準備もなくいきなり見せられたそれにまずは軽く驚き、そして彼が歌う歌に三人は思わず息を呑んだ。

 

(た、只野さんが……愛してるって、これラブソング? ……甘い歌声、出せるんだね)

(こんな、こんな歌声を出すんですね……。顔が熱くなる……)

(な、何だか恥ずかしい。私に対して歌ってる訳じゃないのに……)

 

 モニターを見つめて歌う仁志を横から撮っているそれに三人の乙女は黙って魅入った。

 やがて歌が終わり動画が停止する。すると無言で翼が再度再生したのだ。

 それに奏も未来も何も言わなかった。

 

 エルフナインのスマートフォンに感想のメールが来たのは、それから実に十分は経過してからだった……。

 

 

 

「「ズルいっ!」」

 

 ひょんな事から発覚した仁志のラブソング動画。それを今まで聞く事が出来なかった響とクリスが翼のスマートフォンで見て、見終わってすぐの言葉がそれだった。

 

「す、すみません。まさかここまで兄様の動画が人気だと思わなかったもので……」

「ううん、エルちゃんを責めてる訳じゃないんだ。翼さ~ん……」

「い、いや、見せようにも立花達にはその手段がな?」

「み~く~?」

「し、仕方ないじゃん。只野さんへ頼もうにもきっと嫌がると思ったから」

「む~……」

 

 未来の言葉には響も納得するしかなかった。仁志がこの動画の存在を知れば確実に消去を迫っただろうと思ったのである。

 

 そうやって響が膨れ顔を見せている中、クリスは動画を一人で見つめていた。

 

「……優しさだけじゃ愛は奪い切れない、か」

 

 その呟きに込められたのはある種の決意にも似たもの。それは誰に聞かれる事なく消える。

 

「ねぇエルちゃん、只野さんって他にこういう感じの歌、歌わなかった?」

「え? えっと、はい」

 

 間違いなくその瞬間、響達カラオケに行っていない者達がざわついた。

 

「え、エル? どういう歌?」

「たしか……君だけを守りたいって歌だったかと」

「うん、そうだよ。ダイナのEDだって」

「翼、検索して」

「分かった」

 

 そして歌詞を検索した翼がそれを読み上げて行く。

 

 それを聞いてエルフナインやセレナが肯定するように頷く中、ヴェイグはまだかまだかと海を求めてずっと窓の外を眺め続けた。

 切歌と調は歌っていた仁志を思い出して少しだけ赤い顔になっていたが、響達はそれを歌う仁志を想像し全員が眠っている彼を見つめていた。

 

「……これで終わりだ」

「そう。ウルトラマンの歌とは思えない歌詞ね」

 

 マリアの感想は響達全員のものだった。なので同じ事を聞いたエルフナインが仁志の告げた答えを述べたのだ。

 だが、同じ言葉でも受け手が変われば感じ方が変わるもの。仁志が言わなかった事を恋心を持つ彼女達は察したのである。

 

(世界を天秤にかけても守りたい相手がいるって事じゃない。なんて、なんて熱いラブソングよ……)

(ヒーローではなく一人の人に戻ってしまう程の、そんな愛。私へ、貴方は向けてくれるでしょうか? あの胸の中に、また顔を埋めさせてくれるでしょうか?)

(世界は終わらない、か。今のあたしにとってはそこだけでも一種の応援歌でありラブソングだよ、只野さん……)

(君だけを、なんて言われたら顔が熱くなるだろうな。でも、もう只野さんはこういう歌を私達には歌ってくれない気がする……)

(ううっ、エルちゃん達が羨ましい。きっと私達だと本気で聴き入るかもって思ったんだろうなぁ。……私と二人きりなら、歌ってくれるかな? お願いしたら歌ってくれないかな?)

(……もし、もしもこの歌が只野の本音だとすれば、君ってのはあたしら全員か? 世界よりもあたしらを取るって、そういう事だよな?)

 

 それぞれに想いを抱き、仁志を見つめる六人の女性。と、そこで……

 

「エルっ! あれが海か!?」

「え? ……はい、そうです」

「お兄ちゃん起こさないと」

 

 ヴェイグの声でほとんどの者が窓の外の景色へと意識を向ける中、クリスだけは仁志を見つめ続けていた。

 

「……あたしも、一緒の気持ちだぜ、只野」

 

 もし世界か仁志かと問われれば仁志を選ぶ。そうクリスは呟きながらセレナに揺り起こされる仁志を見つめ続けるのだった……。




何故只野が起きた時にクリスが彼を見つめていたのかはそういう事でした。

ちなみにサブタイの元ネタは“天使にラブソングを”という洋画です。名作ですのでもし良ければ一度見てみてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。