シンフォギアの消えた世界で   作:現実の夢想者

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今回のメイン題材はゴジラvsデストロイアですが、これまでの鑑賞会とはタイトルの付け方を変えています。

なので今回は通常の鑑賞会ではありません。それだけ、ご理解ください。


番外編 二つの衝撃的展開(ゴジラ・BLACK&BLACK RX)

 物語はバース島が消滅した事で幕を上げる。

 

「えっ?!」

「バース島が消えた……」

「じゃ、じゃあゴジラとリトルはどうなったんですか!?」

「無事だといいけど……」

 

 その衝撃的な幕開けからすぐ舞台は香港へと移った。

 日が暮れ、夜となった空港。そこから一機の旅客機が飛び立つ中、突如としてゴジラが出現。

 ただ、その様子はこれまでと大きく違っていた。

 

「体が、赤い……」

「背びれも赤く発光しています!」

「熱線も赤い……」

「バーニングゴジラデス……」

 

 香港の街を蹂躙していくゴジラ。その体からは蒸気のように煙を出しながら進む姿は異様としか言えない。

 

 OPのタイトル前に現れた謎の装置らしき物に誰もが疑問符を浮かべるだろうと踏んだ仁志がそこで説明を入れる。

 

「あれは、オキシジェン・デストロイヤーという発明品だ。初代ゴジラを葬った、失われた技術の結晶だよ」

「オキシジェン……デストロイヤー……」

「物騒なもんだね、名前だけでも。しかも、それでゴジラを……」

 

 そしてOPが終わり、場面はゴジラについての対策を練る会議の場面となった。

 そこで明かされるバース島消滅の謎とそれによるゴジラへの影響。

 更にそのゴジラの変化について考察した日本人学生の存在が挙げられたのだ。

 

「学生でゴジラの事を?」

「カレッジって事は大学生ね」

 

 その学生はかつて初代ゴジラに家族を奪われた少年の息子であった。

 しかも、その少年を引き取ったのは初代ゴジラの最期をある意味で看取り、あのゴジラが最後の一匹とは思えないとの言葉を残した山根博士であったのだ。

 

「初代ゴジラって機龍に使われた?」

「そう。多分だけどゴジラの平行世界はそこから分岐してる。このVSシリーズは機龍の世界とは繋がらないからね」

 

 学生でありながら養祖父譲りの洞察力でゴジラの事を論文にまでした青年、山根健吉はあくまでもゴジラの事は趣味にしたいとGサミットへの協力を断った。

 

「趣味、か……」

「そうだよな。仕事にするってなるとゴジラを敵って思わないといけないだろうしさ」

 

 だがそんな言葉も三枝未希の名を聞いた瞬間一転する。

 

「……こいつ」

「ミーハーなのね……」

「仁志さんは気持ち分かります?」

「そりゃあね。今の俺が似たようなもんだし」

 

 バース島消滅から今までリトルを探し続けた未希だったが、結局見つける事は出来なかった。

 それを聞き健吉はリトルが死んだ可能性を提示する。

 その説明は納得出来るものであり、故に未希も反論出来ず、リトルの身を案じる事しか出来ない。

 

「リトル、死んじゃったのかな?」

「誰もがゴジラのようになれる訳じゃない、デスか……」

「地球環境に適応出来ないなんて……悲しい」

 

 場面はテレビ局へと変わり、そこには健吉の姉であるゆかりが映っていた。

 彼女がメーンキャスターを務める番組へとある科学者が出演していたのである。

 彼は伊集院耕作。その発明品であるミクロオキシゲンはエネルギー問題や食糧問題などの解決へ大きく貢献出来るものだった。

 

 だがしかし、それを悪用しようとすれば恐ろしい事が出来る。

 その可能性を指摘された耕作だったが、そこまで人類は愚かではないとその意見を一蹴。

 それを聞いてゆかりは痛烈な皮肉で彼の出番を締め括ったのであった。

 

「言うじゃねーか、この姉ちゃん」

「科学者独特の楽観的な意見、ですか。だけど僕はこの博士の気持ちも分かります」

「人の良心を信じたいって事だもんね。うん、私も博士の意見に賛成だよ」

 

 ただ、かつて初代ゴジラを葬り去った発明を知るゆかりの叔母である恵美子は、耕作の発明にもっと恐ろしい可能性がある事を指摘した。

 

「周囲一帯の酸素を全て破壊しあらゆる生命を窒息させる……」

「だからオキシジェン・デストロイヤー……」

「その兵器転用を恐れたからこそ、己が命と引き換えにゴジラを道ずれに封印したとは……」

 

 勿論その事を耕作も知っていた。ただ、だからといってミクロオキシゲンをオキシジェン・デストロイヤーにするつもりはないと言い切ったのだ。

 

「良かった。博士はちゃんとせりざわ博士の遺志を継いでくれてるんだ」

「科学をみんなの笑顔のために使いたいって、きっと博士は思ってるんですね」

 

 その裏で起きる様々な出来事。海底トンネルの不可解な事故と台湾沖の急激な海水温上昇。

 

「何だか怪しくなってきたね……」

「トンネルの掘削用機械のシャフトってかなり大きな物よ? しかも途中から溶けてなくなってるなんて……」

「師匠、何かあるの?」

「そのトンネルで掘っている場所は、かつてゴジラがオキシジェン・デストロイヤーで葬られた場所の近くなんだ。それがヒント」

「ゴジラが死んだ場所の近く……?」

「ま、まさかゴジラの怨念とかデスか!?」

「んな訳あるか。それよりもゴジラの方がやべーだろ」

「最悪の場合、核爆発って……」

「成層圏に火が点く……。地球が炎の星になっちゃうなんて……」

「規模が凄すぎます。でも、ない話ではありません」

 

 更にそこのトンネル工事の現場へ耕作が赴き、その事故が起きている場所の土を持ち帰った。

 ゆかりはオキシジェン・デストロイヤーを作るためではないかと勘繰るも、耕作はそれを否定。

 彼は二十五億年前の酸素が地球上になかった時代の事が知りたいのだと述べたのだ。

 そんな彼の少年のような一面にゆかりは微笑んだ。

 

「あれ、何だかいい雰囲気……」

「最初は嫌いって言ってたのに……」

「接している内に印象が変わるなんて珍しい事じゃないさ」

「そうよ。私達と仁志がそうだったじゃない」

「あのぉ、実名出されると恥ずかしいんで止めてくれない?」

 

 一方ゴジラ対策はある意味で暗礁に乗り上げていた。

 歩く火薬庫にも等しい現在のゴジラへの通常攻撃は地球を破壊するのと同義と言えたためである。

 故に科学的にゴジラを消滅させる方法を取るしかないという意見が出た。

 

「ここで……出てくるのか……」

「悪魔の発明って言われてるのを作らないと、地球が滅ぶかもしれない……」

「こんなのって、こんなのってないよ……」

 

 オキシジェン・デストロイヤーを再び作り出さなければならない。

 そんな中、耕作へゆかりと健吉は会いに行き、思わぬ出来事を知る。

 水族館で魚が突然骨になる事件。その監視カメラの映像から謎の生物が確認されたのだ。

 その謎の生物こそあのトンネル事故の現場に潜んでいた存在。しかも、その生物は恐ろしい事にミクロオキシゲンを応用した攻撃が可能だった。

 

「兄様、もしかしてこの生物がデストロイアなんですか?」

「どうしてそう思うんだ?」

「……ミクロオキシゲンの先にオキシジェン・デストロイヤーがあるのなら、この生物が進化を続ければそこへ至るかもしれないと思ったんです」

 

 そこから物語は大きく動き始める。

 沖縄にゴジラが出現。未希はリトルの生存を示すかもしれない痕跡を頼りに捜索を再開。

 そして臨海副都心では警察の特殊部隊が出動し、進化を遂げた謎の生物との戦闘を開始した。

 

「こ、こんな風になったの!?」

「ま、待って! 一匹じゃない!」

「ふ、増えたの!?」

「ぎ、ギアでもない限り無理デスっ!」

「並のテロリストよりも凶悪だぞ、こいつらっ!」

 

 特殊部隊の攻撃をものともせず、謎の生物は彼らを蹂躙していく。

 遂には一体が外へと出てしまい、詰めかけていたゆかり達報道陣へと向かっていったのだ。

 

「火器攻撃は止めるようにって……どういう事だろう?」

「もしかして博士はあの生物について何か分かったのかな?」

 

 そこへやってきた耕作は混乱する状況の中、ゆかりを探して副都心へと向かう。

 

「博士……男だね」

「彼女の事を意識しているのね」

「危険だと分かっていながら死地へと赴く。それを愚かなとは思いたくないな」

「恐怖や不安。それらを感じない人間はいないよ。だけど、それを乗り越えて一歩を踏み出させる気持ちが、勇気や愛って呼ばれるのさ」

 

 謎の生物の騒動とは別に豊後水道へゴジラが出現。狙いは原子力発電所だった。

 それでもGフォースは手を出せない。このままでは原子力発電所が襲撃され、大きな被害が出る。

 そんな時、自衛隊のスーパーXⅢが出動する事となった。火器の全てが低温兵器であり、カドミウム弾まで装備している原発事故や核攻撃を想定された多目的戦闘機だ。

 

 ゴジラと対峙したスーパーXⅢはその装備を使いゴジラの動きを封じていく。

 更にカドミウム弾をゴジラへ放ちその核分裂速度を抑えてみせた。

 

「すごーい……あの熱そうなゴジラが凍り始めてる……」

「逆に言えば、それぐらいじゃないと原発事故とかには対処出来ないって事か」

「はい。原発事故で一番肝心なのは温度管理です。炉心の温度を制御しなければ大変な事になります」

「あの低温レーザー、凄い迫力デス」

「うん、ゴジラが完全に凍った……」

「奏? どうしたの?」

「うん? あー、何だかあんな戦闘機にしてやられるゴジラってちょっと」

「スーパーXシリーズは意外とゴジラとの対戦成績は優秀だよ。いずれも初戦は勝利してるんだ」

「そうなのかよ? 意外だな、おい」

 

 ただし、ゴジラの冷却は六時間しかもたないと分かり、どれだけその体温が高いかを言外に告げる。

 

 再び動き出したゴジラは原子力発電所へ向かわず、進路を変えて日本から離れていく。

 

「あれ?」

「どうしたんだよ?」

「もう核燃料はいらないって事?」

「……カドミウムが抑制剤として効果を発揮したみたいです!」

「良かった。これでオキシジェン・デストロイヤーを作る必要はないね」

 

 ゴジラの脅威は去ってもまだ謎の生物の脅威は残っていた。

 それに対して耕作はミクロオキシゲンが超低温で無力化出来る事を証明し、Gフォースや自衛隊にそれを認識させる。

 

 丁度その頃、御前崎沖にゴジラが出現。だが、それはあの赤いゴジラではなく、どこか体色も黒というより緑がかったものだった。

 

「え? これって……」

「もしかしてリトル!?」

「ゴジラになってる……」

「そうか。バース島の一件でリトルはゴジラへと変化したんだろう」

「あんなに可愛かったのに……」

「で、でも、鳴き声に怖さみたいなのはないデスよ?」

「うん、どこか優しい感じもする」

 

 ゴジラジュニアと呼称される事になったリトル。その現在地はゴジラが辿った経路の先と判明。

 ゴジラはジュニアを追い駆けていると予想された。

 地球上にたった二匹しかしない同種族。その絆はやはり強く、そして固い。

 しかもジュニアは北へ向かっていた。ベーリング海、アドノア島へ。

 そこはジュニアの卵があった地。いわば故郷である。そこへ帰ろうとしていると未希は読んだのだ。

 

 だがそこへ恐ろしい報告が入る。

 ゴジラの心臓部の温度が9百℃という高温のままなのだ。

 核分裂が抑制されている今、それでも心臓の温度が高い事が意味するのは炉心融解(メルトダウン)間近という事だった。

 

「メルトダウン……」

「エル、それがさっき言ってた原発事故で起きる事?」

「は、はい。考えられる限り、最悪の状況です」

「ただ死ぬだけじゃなく、地球に穴を開けながら放射能を撒き散らすなんて……」

「地球を道連れってゴジラらしいけどさ。これはね……」

「一週間以内にそうなるなんて……」

「これじゃ、ゴジラはジュニアと再会さえ出来ないデスよ……」

 

 一方、謎の生物は自衛隊による低温攻撃で追い詰められ、一か所に集結し合体。巨大な姿となって襲い掛かったのだ。

 

「マジデスかっ!?」

「集合は合体フラグ……」

「いずれアルカ・ノイズもこういう芸当をやる種が出てきてもおかしくないかもしれん」

「翼さぁん、止めてくださいよぉ」

「巨大アルカ・ノイズになるぐらいなら平気だけどな」

「こ、心なしか低温兵器が通じてない気がします……」

「おいっ! あいつが空を飛んだぞ!」

「何でもありかよっ!」

「デストロイア、か。名前の通り、破壊する存在なんだね……」

「響……」

 

 ミクロオキシゲンを超えてオキシジェン・デストロイヤーまで進化してしまったデストロイア。

 その力を使い、メルトダウン寸前のゴジラを倒してもらおうとする健吉の考えに基づき、ジュニアがデストロイアへと誘導される事となる。

 

「「「「そんなっ?!」」」」

「酷い……。でも、地球の事を考えたらやむを得ないのかもしれないわね……」

「それでいいのか? 地球のためならどんな犠牲も出していいと、どうして人間だけで決める? その権利は地球に生きる全ての命にあるはずだ」

「ヴェイグ……あんた……」

「ゴジラも、ジュニアも、必死に生きてる。地球の事を考えると言うのなら、そもそもゴジラを生み出したのは誰だ? デストロイアを生み出したのは誰だ?」

「ヴェイグさん……」

「人間、だよ。そうだね、原因はいつも人間にあるんだもんね」

「未来……」

「世界蛇だってそうだった。あんな風にしたのは人間だった。本当に私達って身勝手だよね。自分達が悪いのに、気付いたら原因を他のせいにしてる」

 

 未希達のテレパシーによってデストロイア飛行体へと誘導されるジュニア。

 だが、やはり優しいリトルだった名残なのかジュニアは戦う事への対応が遅かった。

 結果、デストロイアに先制攻撃を受けて大地へと倒されてしまう。

 そこへ追い打ちをかけるようにデストロイアのオキシジェン・デストロイヤーが放たれ、ジュニアを痛めつけようとする。

 ビルが倒れ、その下敷きにジュニアがなると、デストロイアは標的をジュニアから未希達の乗るヘリへと変更した。

 

「危ないっ!」

 

 しかし、デストロイアがヘリへ迫るのを見てジュニアが放射熱線を放った。

 その一撃がデストロイア飛行体を直撃し、墜落させる事に成功する。

 

「「「「「やったぁ!」」」」」

「やはりジュニアは優しいリトルの心を失っていないのか」

「ああ、絶対そうだっての」

 

 ただ、デストロイアもそれで終わりではなかった。

 集合体へと変化し、ジュニアへ襲い掛かったのである。

 その動きと力にジュニアは苦戦を強いられた。何しろまだ交戦経験自体が皆無なのだ。

 対して相手は最強の攻撃とも言えるオキシジェン・デストロイヤーを有している。

 

 それでも懸命に戦うジュニアはその体に傷を負いながらも、ゴジラとなった能力を使い、辛くもデストロイアを撃退してみせた。

 

「ちょっと怖かったデスけど、さすがゴジラデス!」

「うん。泡を吹いてた時は本当に怖かった」

「ジュニアが生きてて良かったぁ」

「最後まで諦めず勝ってみせるのは、まさしくゴジラです!」

「タダノ、ジュニアはゴジラだけどゴジラじゃないかもしれないな」

「と言うと?」

「ゴジラは人の心の闇なんだろう? だけどジュニアはリトルだった。なら、ジュニアは人の心の光になれるんじゃないか?」

「……そう、だな。たしかにジュニアは人の心の光のゴジラかもしれない」

 

 そして遂にゴジラとジュニアが出会う時がきた。互いに存在を確かめ合うように鳴き声を上げ、たった二匹しかいないゴジラが呼び合った。

 

「ウルウル……カンドーデス」

「やっと会えたんだね、ゴジラとジュニア」

「バース島がなくなってから、ずっとゴジラはジュニアを探していたんです。きっと嬉しいんだろうな」

「このまま二匹で暮らしていけたらいいのに……」

 

 その再会の裏でデストロイアが更なる進化を遂げていた。

 より凶悪に、巨大になり、完全体となったデストロイアは、先程の仕返しをするためなのかその場から飛び立ってジュニアを目指した。

 

「馬鹿な……まだ進化するというのか?」

「遂に二足歩行で飛行まで出来るようになりやがった」

「ゴジラ達を狙っているんでしょうね」

 

 刻一刻と迫るゴジラの炉心融解(メルトダウン)。それを考慮し、耕作はGフォースへ連絡を試みる。

 いざとなった場合に備え、スーパーXⅢの出動を要請したのだ。

 炉心融解(メルトダウン)の瞬間、冷凍攻撃を叩き込む事で被害を最小限に抑えるためにと。

 

 こうしてスーパーXⅢが出動する事となる。ありったけの冷凍弾に超低温レーザーのエネルギーも限界まで搭載した状態で。

 

 それを聞いた黒木特佐は呟くのだ。

 

――これで我々の来年度の予算はゼロだな。ま、来年度があればの話だが。

 

 出動体勢へ移行するスーパーXⅢ。場合によってはこれが最後の出動かもしれない中、それでも気負う事なく黒木特佐は平然と発進する旨を告げた。

 

「来年度の予算はゼロ、か。そんだけ凄い金額使ってんだね、スーパーXⅢ」

「冷凍弾にレーザーのエネルギーを限界まで、だからね」

「勿論例えでしょうけど、そこまでするのね」

「来年度があればってとこ、何だかちょっと好きかも」

「どうして?」

「だって、この人はこのままだと来年度がないって分かってる。それなのにこういう事言えるって、それだけ心は落ち着いてるって事だと思うから」

 

 再会を喜ぶゴジラとジュニア。そのまま近付き、互いの距離を詰めようとしたところへ現れるデストロイア。

 その一撃がゴジラを襲い、更にその巨大な翼でその体を斬り付けるように飛行、ゴジラを転倒させる。

 デストロイアの攻勢は止まらない。今度はそのままジュニアを掴むとその場から離脱。一路臨海副都心へと向かったのだ。

 

「ど、どうするつもりデスか?」

「ジュニア、何で放射熱線を使わないんだろう? 落ちちゃうから?」

「セレナ、よく見てごらん。デストロイアはそれを封じるように首を掴んでいるんだ。あれじゃ放射熱線は使えない」

「何て奴だ……」

 

 未希達の見つめる中、デストロイアはあろう事か上空からジュニアを落下させる。しかも、その真下には当然のように建物があった。

 

「「「「「「「「「「「ジュニアっ!」」」」」」」」」」」

「相変わらずこのシーンは怒りが沸くな……」

 

 未希達が落下したジュニアへと駆け寄ると、そこには今にも命の灯を消しそうな目をしたジュニアが倒れていた。

 未希の呼びかけに一瞬だけ反応するも、そのままジュニアは目を閉じていく。そしてその目は、もう開かれる事はなかった。

 

「「「「ジュニアぁ……」」」」

「酷い……酷いよ……せっかく、せっかくゴジラと会えたのに……っ」

「響……」

「これも、人間の犯した罪の一つだ。ああ、ヴェイグの言う通りかもしれない。自分勝手に命を弄び、科学を弄んでおきながら、こうして失われる時だけ涙を流すなど……どれだけ私達人間は……っ」

「先輩……」

「ゴジラが……泣いてる、のか?」

「仲間を失ったと、分かったのでしょうね。これで地球に自分だけになったと、一人ぼっちになったと、分かったんだわ……」

「それだけじゃないです。本来なら先に死ぬべき自分が生き残った事も、悲しんでるのかもしれません」

「タダノ……そうなのか?」

「分からない。でも、ゴジラも自分が長くない事はどこかで察してると思うよ。だからこそ、最後にジュニアに、仲間に会っておきたかったんじゃないかな?」

 

 傷心のゴジラの前にジュニアを殺したデストロイアが降り立つ。

 オキシジェン・デストロイヤーを使い、ゴジラへと襲い掛かるデストロイアだったが、守るべきものを失い、怒りに燃えるゴジラの前にはそれさえも動きを止める力とはなり得ない。

 

 激突を始める二体の怪獣。その中で流れるゴジラのテーマ。

 その勇壮で微かな悲哀さえも宿った音楽を背負い、ゴジラは最後にして最悪の敵へと立ち向かう。

 どれだけ傷付けられても怯む事なく歩みを止めないゴジラ。全身から発光しながら放射熱線を放つその姿はまさしく破壊神と呼ぶに相応しいもの。

 

「凄い……」

「カッコイイデス……でも、でもっ!」

「どこか悲しいです。ゴジラ、苦しそう……」

「負けないでゴジラっ! 死なないでっ!」

「エルちゃん……うん、そうだね。ゴジラ、頑張って! ジュニアの分まで生きてっ! 生きるのを諦めないでっ!」

 

 ゴジラの連続放射熱線に怯んだデストロイアは分裂して攻撃するも、それさえも今のゴジラには通用しない。

 まさしく手の付けられない状態となったゴジラは悠然とジュニアへと向かって歩き出す。

 無言でジュニアを見つめるゴジラ。するとゆっくりと顔を近付け、まるで自分の息吹を吹き込む様にジュニアへと送ったのだ。

 

「今のは……?」

「分からねぇ。でも、まるで息を送り込んだように見えたぞ?」

「それでジュニアが目を覚ます……なんて事はないんだね」

 

 と、そこでゴジラに異変が起きる。勝手に体が発光し、放射熱線を吐いたのだ。

 

「ゴジラっ!?」

「最早ゴジラでさえその身のエネルギーを制御出来なくなりつつあるのか!?」

 

 自身の体の状態にゴジラが戸惑っている背後から一筋の閃光が襲い来る。

 それはデストロイア完全体の攻撃だった。

 

「っ?! あいつ、まだ生きてたのかっ!」

「不意打ちとは……」

「でも、それでも今のゴジラは止められないわ。きっと、アブソリュートゼロがあったところで一緒でしょうね」

「私もそう思います。今のゴジラは、きっと誰にも止められない……」

 

 そんな中、遂にゴジラの背びれが溶け始める。

 それはゴジラの命の灯が尽き始めた事を意味していた。

 だが、それ故にゴジラの攻撃は苛烈さを増して、遂にデストロイアさえも恐怖を感じる程となった。

 

「デストロイアが……逃げる……」

「無理もないデス……。今のゴジラ、とっても怖いデス……」

「あの放射熱線、見ましたか? その準備だけで背中の方から炎が出てました」

 

 デストロイアは空中でスーパーXⅢなどの攻撃で墜落させられ、そのまま散った。

 そして遂にその時はくる。

 

――メルトダウンっ!

 

 そこからはもう誰も言葉を発しようとしなかった。

 ゆっくりとレクイエムのような音楽だけが室内を包んでいく。

 誰も何も発しようとはせず、ただ黙ってモニターの中へ意識を向けていた。

 そこでは、炉心融解(メルトダウン)を迎えようとしているゴジラへありったけの超低温攻撃などが放たれていた。

 

「ああっ……」

 

 誰かの悲痛な声が漏れる。遂にゴジラが溶け始めたのだ。

 その姿はこれまで何があろうと生き残り、死と無縁だと思わせてきた怪獣王とは思えない程痛ましいものだった。

 

 肉が溶け落ちて骨となり、その骨さえもすぐさま溶けていく。

 それと同時にまるで火山が噴火したかのように心臓が弾けて血液が噴出し、ゴジラの生命の終わりを彩る。

 

 そうしてこの世全てから痕跡を消すかのように、ゴジラはドロドロに溶けていった。

 

 全てが終わった。東京に死の灰が飛び散り、凄まじい量の放射能が検知される。

 ゴジラの死と共に東京という名の街も、また死んだのだ。

 

――放射能のレベルが急激に下がっていく……。

 

 その言葉にモニター前の誰もが俯いていた顔を上げる。

 白いもやのようなものの中へと画面が迫っていく。

 やがてその中で動く何かが見えた。その動きと姿に誰もが息を呑む。

 すると、それを合図にしたかのようにあの咆哮がこだましたのだ。

 

「ゴジラ……生きてたんだ……」

「いえ……いいえっ! あれはジュニアです! ジュニアが、ジュニアが放射能を吸収して甦ったんですっ!」

「新しいゴジラの誕生と、そういう訳か……」

「ちくしょぉ……喜んでいいのか悲しめばいいのか分かんねぇ……」

「いいじゃないか。あたしは、喜ぼうと思うよ。だって、ゴジラは生きてていいのさ。それを生み出して、迷惑がるのは人間だろ? あいつらは悪い事をしようとしてる訳じゃない」

「ただ生きている。地球という、星の一員として、ね。ええ、そうだわ」

「また、人間とゴジラの戦いが始まるのかな……」

「どう、だろうね? でも、もし人間が核を、科学を弄ぶのなら、ゴジラはきっと暴れる。そんな気がするな……」

「ゴジラが人間の闇の象徴なら、あいつを暴れさせるのは身勝手な人間の欲望だ。俺は人間はそこまで弱くないと思いたい」

「ヴェイグ……お前……」

「そうデスね。アタシも、アタシもそう信じてるデス」

「うん。きっと人間はゴジラが暴れるような生き方をしないように出来るはずだよ」

 

 EDのスタッフロールの流れる中、仁志達は多かれ少なかれ瞳を潤ませていた。

 流れている映像がこれまでの映画のシーンを集めたものだと気付き、本当にゴジラという作品が終わったのだと強く感じられたからだ。

 

 そうして全てが終わったところで仁志が口を開いた。

 

「あのゴジラでさえ最後は核を制御出来なくなった。それだけ核というものが恐ろしいと、この作品は描いているんだと思う。エル達には分かるだろうけど、ザ・パワーもそうだったろ?」

「はい、Zマスターさえもその力を制御出来ずに滅びました」

「結局強すぎる力は身を滅ぼすんだ。そして、往々にしてそういう時、大抵人はこう言うんだよ。自分は大丈夫とか今回は大丈夫って。そこに絶対の保障などないのにさ」

 

 悲しげな眼差しで仁志はそう告げてエルフナインへ顔を向ける。

 

「エルは、そんな事を言わないままでいてくれ。聖遺物だけじゃない。科学も錬金術も、元々はみんなを幸せにするための力だったはずだから」

「……はいっ!」

 

 仁志の言葉にイザークの考えを見た気がして、エルフナインは力強く頷いた。それを見て仁志が優しく笑みを浮かべて深く頷く。

 

 そのやり取りを見て誰もが微笑みを浮かべた。

 やはり仁志とエルフナインのやり取りは親子のそれにしか見えないためだ。

 実際今のエルフナインにとって仁志は兄というよりは父に等しいと言えた。

 

 彼女は知らないが、かつてキャロルが様々な事を父であるイザークから教わったように、エルフナインもまた仁志という父にも似た存在から様々な事を教えてもらっているために。

 

「でもししょー、ゴジラ映画はこの後もあるんデスよね?」

「ああ、あるよ。君達が見た機龍が出てくる作品もこれ以降だ」

「やっぱりゴジラは悪者扱いなんですか?」

「まぁ、どうしても人類側から見ると、ね」

 

 いつの間にか膝の上に座っているエルフナインの頭を撫でながら仁志は苦笑する。

 何故なら更にセレナも撫でてとばかりに密着していたからである。

 映画の余韻で未だ涙目なままのセレナに上目遣いで見つめられ、仁志は敵わないとばかりに残る片手でその頭を優しく撫でた。

 

「すっかり仁志さん、エルちゃんとセレナちゃんのお父さんって感じだね」

「そうだね。ただ……」

 

 未来の視線はセレナへ向いていた。そう、セレナはもう無垢な少女ではないと彼女は知っているのだ。

 

(娘や妹って思って接してるとは思えないんだよね、最近のセレナちゃん。女、になりつつあるのかも。只野さんに恋して、そうなり出した私達みたいに)

 

 その気持ちが行き過ぎて暴走すると困る。

 そう思って未来はどうしようかと考え始める横で、切歌が仁志へ自分も撫でろとばかりに接近していた。

 

「ししょー、さっきの映画だけだとちょっとしんみりしちゃうデス。他にも何か見ようデス」

「他って言っても……」

「あるのはクウガだけですよ、切歌お姉ちゃん」

「う~……ししょー、どうしたらいいデスか? クウガじゃ明るいだけじゃないデス」

「あー、それはそうだなぁ」

 

 切歌の望んでいる物がただただ明るい事と察し、仁志はどうしたものかと考える。

 基本的に物語というのは起承転結を考えるので明るいだけでは作り難いのだ。

 と、そこで仁志は気付いた。切歌が求めているのは悲しい事や辛い事がない物語ではないかと。

 

(クウガにはどうしてもそういう要素が入ってくるからな。じゃあ……)

 

 よしと思い立った仁志は小さく頷くと切歌へこう切り出したのだ。

 

「切歌、今こそあれを借りてこよう」

 

 

 

 目の前の光景にみんなから感嘆する声が上がる。

 そう、何故なら画面の中には二人の南光太郎が並んでいたからだ。

 そしてその二人が同時に構えると一部から“おおっ!”って声が聞こえた。

 

 やっぱりこの話が一番衝撃的だよなぁ。何せ本当なら不可能なBLACKとRXが同時に変身するんだから。

 

――俺はっ! 太陽の子っ! 仮面ライダーっ! BLACKっ! RXっ!!

――仮面ライダー、BLACKっ!

 

 あー、やっぱりこの安心感が凄い。オリジナルキャストの強みはここだよなぁ。

 唯一ライダーの主演俳優の中で二年間、同じ役柄で主役をしただけあって倉田さんの頼もしさと力強さは群を抜いている。

 

「こうやって並ぶとBLACKとRXってヒーローの色じゃないデスね」

「切歌、黒はどんな色でも変えられない色だからこそヒーローの色とも言えるんだよ」

「お~……」

「そういえばガオガイガーも黒が基調です!」

「そっか。黒もヒーローの色なんだね」

 

 よかったよかった。これでクウガのあの二つの姿を見てもみんなが納得してくれるだろう。

 アメイジングマイティとアルティメットはBLACKと同じぐらい黒がカッコイイ姿だからなぁ。

 

 で、場面は四人のライダーと怪人軍団の戦いとなっていた。

 

「二体相手に苦戦どころか圧倒してるデスよ……」

「RXってやっぱり強い……」

「しかも武器もなしで、だもんなぁ。ちょっと憧れるよ」

「響は響で凄いと思うけど?」

「ああ、あたしも同感だ。さすが繋ぐこの手がアームドギアなだけあるぜ」

「あ、あはは……」

 

 クリスの言葉に照れくさそうに笑う響だけど、俺としてはあの名乗りをクリスが覚えてた事に驚きだ。

 そういえばあの名乗り、ちゃんと全員分出来たんだろうか? 俺は全員での決め台詞や決めポーズなんかを翌日相談されたけど……。

 

「切歌、そういやあの名乗りってちゃんと全員分考えたの?」

「へ? えっと、未来さんと奏さんのはまだだったデスね」

「あ~、成程」

 

 キュウレンジャーにはまだ二人分足りないらしい。じゃ、俺はそれを考えてみますかね。

 

「な、何だぁ? このディケイドってやつ、超変身したらカッコ悪くなったぞ」

「く、クリスちゃん……」

「てか、そもそもあの道具使うの不便過ぎだろ。どんだけタッチしないといけねーんだ」

「クリス、勘弁してやって。もうこの頃はライダーや戦隊はオモチャ優先の作りなんだ」

 

 クウガやアギトの頃はまだ何とかなっていたオモチャとのバランスも、龍騎以降はバランスが崩れていくんだよな。

 特に音声ギミックが売れると分かってからは喋るのが当たり前になっちゃって、最近では、なぁ……。

 

「おおっ、別のライダーが出て来たぞ」

「兄様、これがアギト、なのですか?」

「ああ、うん。アギトの最強フォームのシャイニングフォームだよ」

「二刀流なのか……」

「あっちの青い方は銃だったし、仁志先輩の言うようにオモチャありきってのは間違ってない感じだね」

 

 気付けばディケイドがコンプリートフォームになって怪人を倒してた。

 という事はそろそろか。

 場面はディケイドとディエンドがアポロガイストを挟んでパーフェクターを奪取しようとするところになった。

 

「こいつらは仲間じゃないのか?」

「仲間、とは言い辛いなぁ。おそらく腐れ縁が妥当だと思うよ」

 

 ディケイドとディエンドのやり取りを聞いてヴェイグが当然のように疑問を浮かべたので補足する。

 ま、本当にこの二人に関しては仲間と単純に言ってはいけないものがあるから仕方ない。

 で、パーフェクターはディケイドが手にしたものの一瞬の隙を突いてディエンドが掻っ攫い、そのまま逃げおおせてしまう。

 そこへクウガこと小野寺ユウスケ登場。夏海ちゃんの容体が急変した事を伝えたところでRXとBLACKが合流し、ディケイドへ夏海ちゃんのところへ行けと告げる。

 

「後は俺達に任せろ、かぁ。安心感凄いよね」

「何せこっちもある意味ダブルライダーデスからね!」

「本当なら揃う事のないダブルライダー……」

「今の僕とキャロルがいるようなものでしょうか?」

「うーん……このディケイド版に関してはそれぞれ別の世界の存在だからちょっと違うかな。例えるなら、ガングニールしか持っていないマリアと最初からアガートラームのマリアみたいなものだし」

 

 そう言うと全員が納得するように頷いた。

 こういう時ギアを二種類持ってるマリアは例えに使いやすい。

 

 さて、ディケイドがいなくなった後アポロガイストと対峙するRXとBLACKだが、ここでRXはアポロガイストが一人で戦うなら自分も一人で戦うと告げる。

 まさしくヒーローらしい宣言だよな。すると、その言葉通り一人で戦い始めるアポロガイストへRXも応じる形で一対一が始まった。

 

 その一方でディケイドこと門矢士はユウスケと共に夏海ちゃんのいる病室へと到着。

 でもパーフェクターがないから夏海ちゃんは死んでしまう。

 そうなれば当然……

 

「あいつ、これを知っててパーフェクターとかいう奴を奪ってったのか?」

「分からない。でも、もしそうなら私は……ちょっと、あの人の事、嫌いになっちゃうな」

「ディケイドはやはり仮面ライダー、なのね。目の前の命を助けるために全力だもの。でも、ディエンドは……」

「あいつは、仮面ライダーの力はあっても魂がないよ。少なくても、あたしはそう感じた」

 

 うわっ、奏が確信を突いた。俺もそう思うんだよなぁ。ディエンドは力こそライダーだけど、その魂というか在り方が仮面ライダーじゃないんだよな。

 まぁ、お宝云々言ってる時点で当たり前なのかもしれないけど……ね。

 名護さんは立派なライダーになったのに。そして照井も立派なライダーになるのに。どうして海東だけはどこまでも二号ライダーにならないままなのか……。

 

 と、そうこう思っている内に海東登場。そこでツンデレみたいな台詞を吐いてパーフェクターを渡し、すぐさま立ち去るという若干どうかと思う行動を取る辺り、本当に男のツンデレはどうかと思う。

 

 で、予想通りみんなの評価もよろしくない。まっ、それでもある程度理解はしてくれているようで、特にクリスは自分に似ている部分もあると思ったのか複雑そうな顔をしていた。

 

 そしてモニターは再びRX達を映し出す。

 

「あっ、RXが飛び上がったデス!」

「アポロガイストが盾を投げた……けど」

「まぁ弾き返すよな」

「だが咄嗟であの行動が出来る辺りが歴戦のヒーローというところだろうか」

「このまま押し切れるよっ!」

 

 ところがぎっちょん。ここでアポロガイストが約束を破ってサイ怪人召喚。その攻撃でRXがダメージを負う。

 

「卑怯な……」

「でもBLACKが……」

「ライダーパンチ一発で……怪人を倒した……」

「強いです……」

 

 原典では中々の強敵なんだけどな、サイ怪人。バトルホッパーを傷だらけにしちゃうんだよな、たしか。

 

――行くぞBLACK!

 

 ここからだ。RXとBLACKが並び立ち、同時に大地を蹴って飛び上がるんだけど、RXは原典と同じ動きを入れて地面を叩いてくれるんだよなぁ。

 

――ダブルキックっ!!

 

 ここで“ライダー”と付けないところにこだわりを感じる。本来ならば彼らは並び立たないライダーだし、そもそもは同一人物だ。

 だからこそのダブルキックであり、ライダーダブルキックではないんだろう。ある意味では、彼らも二人で一人の仮面ライダーと言えるか。

 

「「カッコイイ(デス)っ!」」

「RXは両足で蹴るんだ……」

「単純に威力は二倍ですっ!」

「じゃ、二人で蹴ったからその二倍だねっ!」

「何だか感動するな……」

「ヴェイグ、分かってくれたか。この展開を、俺は小さい頃からずっと夢見てたんだよ」

 

 RXとBLACKが共に戦うのは“仮面ライダー世界に駆ける”で見たけど、同時変身と合体攻撃はなかったからなぁ。

 

「そこまで好きなのね……」

「ああ。もうこの回を見た時の興奮と感動は忘れないよ。そっちで言うツヴァイウィング復活や幾多もの平行世界から援軍が来た時よりも上の衝撃だったんだからさ」

「そ、そこまでですか?」

「本気でこの二人のライダーが好きなんだね、仁志さんは」

 

 翼が苦笑するけど、そこに嘲笑するような感じはなかった。どちらかと言えば、大はしゃぎする子供へ仕方ないなという感じの親である。

 

 ……今の俺、そこまで子供っぽい? 頑張ってテンション抑えてるんだけど……。

 

 最後は士が光太郎を写真に収めて、その現像された物を見てみんなが感心するような声を出した。

 

「いい写真デスよ。アタシ、欲しいデス」

「二人の光太郎さんの上にBLACKとRXがそれぞれ浮かんでるなんて……素敵」

「しかも、お二人共笑顔が優しいです」

「多分だけど、士がクリスを撮ったら優しく微笑むご両親が浮かぶと思うよ」

 

 きっとクリスの肩へそっと手を置いて。そう思ってクリスを見つめると、その顔が慌てて逸らされた。

 

「そ、そういうの止めろよ。想像しちまうじゃねーか」

「なら、私はお父様とお母様が浮かぶのだろうな。出来れば門矢さんに会って撮影をお願いしたいものだ」

「私も、お願いしたいわね……」

「僕は……キャロルが写るのかな?」

「意外とイザークさんが中心でエルとキャロルの肩を抱いてるかもな」

「そう、かもしれません。僕も会いたいなぁ」

「会えるかもしれないぞ。こいつも平行世界を、様々な世界を渡り歩いてるんだ。いつか、エル達の世界やセレナや奏の世界にも現れるかもしれない」

 

 ヴェイグはそう言ってこっちへ顔を向けた。

 

「そうだろタダノ」

「かもしれない。本当に彼はふらっと世界を渡るんだ。で、ほんの少し関わっていなくなる事もある。必ずしも事件が起きる訳じゃない」

「でもぉ、なんとな~く私は出会う場合は事件絡みな気がします……」

「右に同じく、かな?」

 

 響の苦い顔で告げた意見に未来が苦笑しつつ賛同する。うん、まぁ、俺も内心そう思ってるけどさ。

 

「まっ、ライダーだもんねぇ」

「その場合、一体どんなカードが出るのかな?」

「ズバリ、エクスドライブへのフォームチェンジデス!」

「いや、ディケイド自身がギアを纏うんじゃない?」

「なら俺はデュランダルの召喚って言ってみるよ」

 

 フィーネとの決戦で失われた完全聖遺物。ネフシュタンは後に平行世界で出て来たし、果てには鎧以外も出現したけど、デュランダルだけはさっぱりだからな。

 

「まずはどういう方向か決めないとダメな気がします。フォームライドなのかアタックライドなのか」

「いっそアタックライドで新しい歌とかどうですか?」

「いいねぇ。あたし達でディケイドのOP歌ってやるの?」

「有り得るかもしれないわね。もしくはディケイドの力を受けてギアが変化する?」

「おおっ、ディケイドギアデスか」

「私達もカード使えるのかな?」

「ワクワクしますね」

 

 年少組が盛り上がり始める中、俺は内心安堵の息を吐いていた。

 すっかりゴジラでの空気が払拭出来ていると感じて。

 ありがとう、二人の黒い太陽。おかげでみんなが明るくなれました。

 

「そういえば師匠、最後の光太郎さんとの会話シーンで少しだけ青いバイクが見えたけど、あれってRXのバイク?」

「ああ、前に話しただろ? あれがアクロバッターだよ」

「バトルホッパーの生まれ変わった姿ですね!」

「そんなの気付かなかったな……」

 

 悔しがるようなセレナに笑みを浮かべつつ、俺はDVDの再生を止めた。

 そしてDVDを取り出すとケースの中へと戻してみんなへ顔を向ける。

 実はもう一本借りてきたDVDがある。それを手にした時、切歌が不思議そうに首を傾げていたけど、まぁ無理もないと思う。

 何せ、それはRXの二巻だ。何故そんなところをと思った切歌から理由を聞かれたけどその内分かるで誤魔化したし。

 

「ししょー、それで次はRXデスか?」

「ある意味そうだな」

「「「「「「「「「「「ある意味?」」」」」」」」」」」

 

 揃って疑問符を浮かべるみんなを微笑ましく思いながら俺はDVDを入れ替える。

 で、メインメニューを再生……の前にOPだけ見てもらおうか。

 

「じゃ、今からRXのOPを流すよ。そこでアクロバッターがしっかり見れる。まぁ、響達はカラオケで見た事があるだろうけど」

 

 流れ始める“仮面ライダーBLACK RX”。ただバイクで滑走路を走り続けるだけなのにカッコイイんだよなぁ。

 

「これがアクロバッターデスか」

「青くて赤い目……」

「これは……どこかの滑走路でしょうか?」

「光の~オーロラ~身にまとい、君は~戦う~人になれ~」

「タダノが歌い出した」

「ああ、うん。仁志さん、この歌大好きなんだって」

 

 小声で歌い出すとヴェイグが少しだけ驚いた顔でこっちを見てきた。

 で、響が説明をしてる。そうとも。BLACKも好きだけどな。

 しばし画面を見つめるみんな。ただ、ようやくみんなが気付き出した。このOPは延々同じ光景が続くだけだって。

 

「ただバイクで走り続けるだけなのか……」

「あ、ああ、シンプルだな……」

「愛に勇気を~与えてくれ~」

「愛に勇気を……」

「ヒーローって感じの歌詞ですね」

「仮面ライダー! 黒いボディ!」

「声が大きくなった」

 

 いや、正直ここは少し大きく歌いたい。

 

「仮面ライダー! 真っ赤な目!」

 

 みんなが苦笑しながら俺を見る。だけど気にしない。

 

「仮面ラ~イダ~ブラ~ック、RXっ!」

 

 歌い切ると同時にメインメニューを表示させる。いや、このままじゃRX本編が始まるからな。

 そこから仮面ライダー世界に駆けるを選んで再生っと。

 

「ししょー、一体何が始まるデス?」

「えっと、ある意味究極のお祭り作品」

 

 そう言っている間にも話は始まる。この話の脚本、カーレンジャーとか書いてる人なんだよなぁ。

 だからか、若干耳を疑うような台詞が出てくるんだけど、それを吹き飛ばす力と勢いがあるのがこの話のいいとこだ。

 

「こ、怖いですね……」

「こいつらはスカル魔。光太郎が最初に戦ったクライシス怪人だ」

「死神をイメージしてるのかしら?」

「同じ鎌使いとしては、若干複雑な気持ちデス……」

「あっ、カエルさんが……えっ?!」

「た、食べた!?」

 

 まずは特撮あるあるな見慣れた撮影場所でのシーンから。

 そこでバイクでやってきた光太郎がスカル魔達と接敵するところからスタート。

 生身でのアクションが多めなのも改造人間ライダーの定番。だけどクウガなどの平成ライダーしか知らないみんなにとってはそれがやや新鮮に映るらしい。

 

「おおっ、光太郎さん強い!」

「改造人間だから、だろうか。怪人相手に善戦しているな」

「伊達にゴルゴムと一年間やりあってなかったって事だな」

「あっ! 光太郎さんが落とされた!」

「いや、大丈夫みたいだよ」

「おおっ! 変身するぞ!」

「カッコイイなぁ……」

「ここでタイトルなんだ」

 

 仮面ライダー世界に駆ける。飛びかかろうとするRXと共にその文字が表示されてOPは終了。

 ここから先は、まぁ良くも悪くも浦沢ワールドだ。

 

 RXと三体のスカル魔との戦いは続く。ここ、地味に長回しのアクションシーンなんだよなぁ。

 

「何だか、こう見てると私達の戦いとは違いますね」

「どういう意味だ?」

「えっと、ライダーの戦いって、やっぱりどこか人知れずって言うか、誰にも知られないような場所でやってるって言うか」

「そっか。大勢の人がいる場所に怪人が出るって事はそこまでないもんね」

「デスデス。だけど、そこの戦いは世界の運命を賭けた戦いデス」

「そうなんだよなぁ。あたし達の戦いはいつも世界の運命なんて背負う訳じゃないけど、ライダーの場合はいつもそうなんだって考えると……」

「重たいわよね。それも、ほとんどがたった一人で挑まないといけないなんて」

 

 薄暗い建物の中で戦ってるからか、より一層みんなはライダーの影の部分が感じられたらしい。

 常に世界の運命を賭けて戦う、か。言われてみればヒーローってそうなんだよな。

 さて、では問題のシーンその一に突入だ。画面がクライス要塞内へと変わる。

 

「うおっ、こ、こいつらがRXの敵か……」

「うん、四大隊長だ。女性がマリバロン、柱のようなものにくっついてるのがゲドリアン、青い一つ目のロボットがガテゾーン、残りの一人がボスガン。そして金色の体で杖を持っているのが司令官のジャーク将軍」

 

 簡単に説明している間に問題の台詞が出てくる瞬間が近付いてきた。

 みんなは一体どう反応するんだろうか?

 

「ちょっと、今RXには勝てないって言わなかった?」

「言ったわね……」

「待って欲しい。BLACKなら勝てる可能性があると言ったぞ。可能性がある、なのか?」

「な、何だか情けねぇ悪の組織だな、おい」

「ある意味じゃちゃんと客観視出来てるって言えますけど……」

「勝てないって分かってるなら地球侵略なんて諦めて欲しいです」

「そもそもBLACKに勝てるのなら変身機能を封じたりする必要はなかったはずですし、ある意味ではクライシスは冷静に自分達の力を計れていたと言えます」

 

 エルの情け容赦ない正論に俺は苦笑いするしかない。

 そこからクライシスのRXの過去を消滅させよう作戦が語られると全員が一斉に“え~っ!?”って感じの声を上げた。

 

「い、いやいや! そんな事出来るの!?」

「過去を消すって……どうやって!?」

「仁志、これマジか!?」

「マジもマジの大マジ」

 

 実際、どういう方法か分からないけどクライシスはRXをBLACKへと戻してしまうんだよなぁ。

 

「あの、そういえば先程から気になってたのですが」

「どうしたエル」

「えっと、ところどころ妙なシーンが多いのは何故でしょう?」

「ああ、これは元々3Dで公開された短編映画だったんだよ。エルが疑問に思ったシーンは本来飛び出て見えた場所なんだ」

「そういう事ですか」

 

 そう話している間に劇中では問題のシーンその二へ突入。RXがBLACKのED曲に反応するシーンとなっていた。

 

「……なぁ仁志」

「うん、言いたい事は分かるよクリス。でも、言っただろ? これは究極のお祭り映画だって。細かい事は気にしたらキリが無いんだよ、これ」

「細かいって……」

「あは、あはは……クリスちゃん、きっと細かいんだよ、うん」

「これ、いつの作品なんですか?」

「1989年だよ」

 

 俺がそう言うと全員が黙り込んだ。何かあっただろうかと、そう考えたところで思い出す。

 そう、彼女達は近未来人。つまりは俺よりも更に先の西暦生まれな訳だ。なら、これは彼女達の感覚で言えば生まれる遥か前の作品だろう。

 

「まぁ、昭和の頃はリアリティよりも面白さ重視だから。というか、そもそも特撮なんてリアリティからかけ離れるのが常なんだし」

「ま、まぁ言いたい事は分かるけどよ……」

「だから平成からは結構そういう傾向から脱却してるんだ。これはその過渡期のものだから大らかな気持ちで見てくれよ」

 

 クウガ以降のライダーが面白いのは認めるけど、昭和の頃のライダーだって面白いと思うんだ。

 リアリティよりも大事なノリや勢いっていうパワーを感じられるんだよな、あの頃の作品って。

 とにかく面白いものを作ろうって、そんな風に思える力が。

 

 物語はゴルゴムの三神官が現れ、RXをその進化前であるBLACKへと戻った場面になっていた。

 もうみんな黙って急展開のそれを見つめていた。ただ、凄いのは呆れてる様子も馬鹿にしている様子もない事だろうか。

 

 ……そっか。みんなにはこれは作り物でありながらどこかで本当にあった事って認識だっけ。

 ならそれも当然か。意識を作り物からどこかであった有り得ないような現実へ切り替えたんだ。

 

「友情って……これが?」

「けっ、悪のいいそうな友情だぜ」

「手を繋ぐと見せかけて裏切るなんて……っ」

「酷い……酷過ぎる……」

「BLACK! 頑張れ!」

「ゴルゴムなんかに負けないでっ!」

 

 エルとセレナの応援も虚しくBLACKは三神官にいいようにやられていく。

 そしてどう見てもクライシス怪人らしき手に動きを封じられ、腹部へ巨大な棘を落下させられこれまでと思われたその時、不思議な事が起こった。

 

「「「「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」」」」

 

 ライドロンを知らないみんなは一体何が起こったのかを正確には理解出来ないだろう。

 だけど、何かが助けに来た事だけは分かったはずだ。

 で、ライドロンがその先端の部分で棘を受け止めた後、俺以外全員が大きな声を出した。

 

――ええ(な)っ!? RXがどうして?!

 

 そう、そうなんだ。この作品の凄いところはここにある。

 何とRXは未来から来たのだ。自分の過去であるBLACKが死んでしまうと自分まで消えてしまうから、と。

 

「な、何がどうなってるデスかっ!?」

「BLACKが進化したのがRXなのに、どうしてRXがここに?」

「過去と現在の時間軸が交差しているの……?」

「あれだよマリア。細かい事は考えない方がいいって事さ」

「そうだね。もしかするとキングストーンの不思議な力かもしれない」

「あたしはもうそれで納得する事にした。ギャラルホルンも考えてみれば大概だしな」

「だよねぇ。私達も普通に考えたらどういう事って言われそうな事体験してるんだよね」

 

 聞いて納得。そういえば彼女達も十分不思議な事をやってのけていた。

 そうこうしている内に、状況はBLACKを連れて逃げていたRXの前にクライシス怪人達が現れる場面となっていた。

 

「デスガロンカッコイイデスね」

「トリプロン、強そう」

「ガイナギスカンって騎士なの? へぇ」

「ムサラビサラ? ……ムササビモチーフ?」

「でも可愛くない……」

「姉さん、怪人ですから」

「デスガロンは実はシャドームーンの強化体って設定のデザインだったらしい。しかもそのせいかRXを一度は圧倒してる」

「凄いじゃん」

 

 説明をしている間にも戦闘が始まっていた。

 数の上では二対四と不利なのがライダー側。ただ、怪人側が有利なのはここまでなんだよなぁ……。

 

 追い詰められたかのように見えた二人のBLACK。そこへムサラビサラの火炎攻撃が襲い掛かる。

 

「こ、このままじゃ不味いデス……」

「待って切ちゃん。火炎の中へ誰か来た」

「っ! ロボライダーです!」

「……もう俺は驚かないぞ」

 

 ヴェイグの諦めたような声に思わず笑ってしまう。いや、遠い目をしてるんだよヴェイグ。まるでクライシスの幹部達のようだ。

 でも、どうやらヴェイグだけじゃないらしい。クリスやマリアさえも遠い目をしている。ま、ご都合どころかここまで来ると悪夢だ。

 何せBLACKだけでも厄介なのに、そこへRXが来て、更にロボライダーまで出て来たのだから。

 

 ……本当の悪夢はこの後だけども。

 

「ロボライダーって強いんですね……」

「相手の攻撃を全部物ともしてないよ……」

「ゆっくりとした動きが逆に強そうって感じデス」

「よ、四対一なのに余裕さえ感じられるね」

 

 感心するエルと響。笑顔の切歌とやや苦笑いの未来。

 うん、やっぱり本当にいい子達だ。正直今回は呆れられてしまうかと思っていたんだが、これさえもちゃんと見てくれるとはなぁ。

 

 さて何とか逃げたBLACKとRXだったが、そこを狙う人影がある。それは四大隊長の一人、ガテゾーン。

 

 その銃口が二人を捉え、火を噴いた。

 

「ま、まさかのここで幹部勢揃いデスかっ!?」

「さすがにこれは厳しい……」

「いえ、待ってください。RXの超変身はもう一つあります!」

「そっか。バイオライダーだね!」

 

 セレナの言葉に応えるように登場するはご存じバイオライダー。手にしたバイオブレードで四人の幹部を相手に大立ち回りを演じる辺り、やっぱり強いよなバイオライダー。

 

「あっ、四人揃ったデスっ!」

「凄い……圧巻かも」

「これ、全部同じ奴なんだよなぁ」

「いかに南光太郎と言う人物が特異な立ち位置かを教えてくれるな」

 

 そして始まるそれぞれの名乗り。それにエルと切歌だけでなくヴェイグもテンションを上げていた。こういうとこは好きなんだな、ヴェイグも。

 

「BLACKのポーズ、カッコイイデスね」

「バイオライダーは独特です」

「ロボライダーはいかにもロボットって感じ」

「RXの名乗りは力強いな。動きも鋭さがあるぞ」

 

 そこから始まる大反撃。もう切歌とエルのはしゃぎようったらなかった。

 響もヴェイグと一緒に拳を握りしめ、セレナは笑顔で頑張れ~と声援を送り、残るみんなは苦笑しっぱなし。

 

 そして遂にしっかりと描かれたリボルクラッシュと、その後の四人での決めポーズには全員が感嘆するように声を漏らした。

 かっこいいんだよな、このシーン。まさしく勝ったって感じがしてさ。

 

「あっ……四人が……」

「一人に、RXへと重なっていく……」

「ししょー、これは?」

「過去と未来が現在のRXへ収束したって感じだと思う」

「ゆっくり歩いてくるだけで強そうな感じが凄い……」

「はい、頼もしい感じですよね」

 

 調とセレナが噛み締めるように言ってくれた言葉に俺は小さく頷く。

 

「あのつくった男たちでは朝日と共に帰ってくると言ったけど、もう一つ俺は表現を作りたい。ヒーローは、風のように現れて、嵐のように戦って、夕日の中へ去っていくって」

「それも、カッコイイですね」

「うん、これもそんな感じだよね」

 

 画面の中にはアクロバッターが日差しを浴びて映っている。そこへRXが現れ、跨って音楽が流れた。

 

「やっぱりライダーはバイクに乗ってる時が一番カッコイイデス!」

「はいっ! 僕もそう思います!」

「お兄ちゃんも?」

「俺は……RXならリボルクラッシュ後の決めポーズかな?」

「おおっ、あれはカッコイイな」

「あれ、動きが独特ですけど何か意味あるんですか?」

 

 嬉しそうに賛同してくれるヴェイグと握手していると響がそんな事を聞いてきた。

 まぁ普通は分からないよな。俺も後から調べて知ったぐらいだし。

 

「あれ、RXって動きで書いてるんだって。要するにRとXを足したような形で」

 

 そう言うと少し間を置いて全員が納得するように頷いた。

 そして当然ながらもうみんなからは完全にゴジラでの悲しさや辛さは消えていた。

 見事にRXとBLACKがキングストーンフラッシュで暗い気分を払拭してくれたらしい。

 

 で、そこからはみんな相手に詳しくRXやBLACKの事を話す事に。

 楽しいし嬉しくはあるんだけど、俺だって完璧に覚えてる訳じゃないし知ってる訳でもない。

 

 いっそ、こうなったらBLACKとRXの本編を見てもらうべきだろうか?

 でも、きっとそんな時間はないんだよなぁ。

 

 そうだ、時間がない。みんながこっちで過ごせる時間に余裕はないんだ。

 年越し前って思ってたけど、それでも遅い。やっぱり可能なら十月までに決着を着けるべきだ。

 時間をかければかける程、きっと悪意は強くなる。なら、短期決戦を挑むべき、なんだと思う。

 

 けれど……

 

「そういえば姉さん、今夜は何?」

「まだ決めてないわ。奏、何か案はない?」

「え? うーん……中華?」

「いいですけど、家で作れる物は限度があります」

「麻婆茄子や回鍋肉などだな」

「ん? 他に何があるんだ?」

「は? って事は何か? ヴェイグはそれぐらいしか知らないのかよ?」

「無理もないってクリスちゃん。だってヴェイグさん、外のお店じゃぬいぐるみの振りしないといけないんだし」

「そもそもマリアさん達って外食とかしてるんですか?」

「してないデスよ?」

「僕らはお家で食べるご飯が一番美味しいって思ってますから」

 

 こんな光景を見せられるとその気持ちが鈍る。

 何故なら、ここでのみんなは本当の意味で一般人だからだ。

 誰一人として特別な立場などなく、その過去にまつわる因縁さえもない。

 みんなそれぞれがただの一人の人間として生きていけるのだから。

 

「……うし、車借りて買い物がてら中華食べに行くか!」

 

 その瞬間エル達の嬉しそうな声と笑顔やマリア達の苦笑する顔が見えた。

 まずはレンタカーの店へ電話し車があるかを問い合わせようと動き出すと、その間にみんなが出かける準備を始めた。

 

 その様子を眺めながら俺は笑う。例え過ごせる時間が残り少なくなってきたとしても、ならその密度を少しでも濃くしてみせるんだと思って。

 

「あっ、もしもし? 車を借りたいんですけども……」

 

 視界に見える沢山の笑顔達を少しでも増やしていきたいから。そんな気持ちで俺は目の前の光景に笑顔を返す。

 

 準備出来たとばかりにこっちへ笑顔を向ける、十一人の大事な人達へ……。




時系列としては複雑なのですが、次回更新回の途中という時間軸です。
なので次回の話を読むと違和感を覚えるかもしれませんがご理解ください。

本当はこちらを後にするつもりだったのですが、本編の方がすぐ続きを上げないと気になるだろうという感じなので、先にこちらを投稿するべきと判断させていただきました(汗
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