シンフォギアの消えた世界で   作:現実の夢想者

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本編中にチラリと触れられていた思い出。
平成ライダーをシリーズとした人気作の終盤が今回のメインです。


番外編 仮面ライダー編(クウガ)

「ただいま~」

 

 俺がそう声を出して戸を開けるとひょこっとエル達年少組とヴェイグが廊下へ顔を出した。

 

「「「「「おかえりなさい(デス)」」」」」

「ただいま。もうみんな揃ってる?」

 

 その問いかけに五人が揃って頷いたのを見て、俺はならばと少しだけ急いで居間へと向かう。

 そこには響達の姿と既に準備完了しているモニターとDVDプレイヤーと化したゲーム機がある。

 

 とりあえず俺は手に持ってる荷物の中身をテーブルへ並べる事にした。

 手羽先、天むす、味噌カツ、ういろ、守口漬などなど、この地方の名物と思われる物を袋から取り出して置いていく。

 

「ししょー、これはてばさきデスか?」

「そうだよ。前回と違う店のやつ」

「これは……何でしょう? 串に刺さっていますが……」

「みそ串カツって書いてあるね。何のカツなんだろう?」

「これ、何だろう? 翼さん、分かりますか?」

「竹の皮、だとは思うが……」

「見た目は和風な感じだな。弁当とかじゃねぇのか?」

「こっちは……漬物かしら?」

「みたいだね。中身は見えないから気になるっちゃ気になるね」

「これは分かり易いですよ!」

「書いてあるもんね、ういろって」

「くんくん……微かに甘い匂いがするぞ」

 

 俺がテーブルに物を置き出すとみんながその周囲へ集まってくる。

 ヴェイグは未来に抱えられていて、それはそれで可愛い感じだ。

 きしめんは以前食べたので今回は除外してある。

 なら手羽先もと言うところかもしれないが、あの時約束した風来坊という店の物を用意したのでこちらはOK。

 

「お待たせ。とりあえず今から食べられる物を食べてみてくれ。その竹の皮に包んであるのは天むすって言って小エビの天ぷらを乗せたおにぎりだよ」

 

 どて煮は温めないと食べられないので後だな。

 そう思ってる間にもみんなはそれぞれに食べ物へと手を伸ばしていた。

 ただし守口漬に関してはまず洗う必要があるし、食べ易い大きさに切らないといけないので俺が支度を引き受ける事にした。

 たまにはこういう事をしないと、いつもマリアや調に甘えるばかりなので良くないと思ったし。

 

「このおにぎり美味しいデス」

「うん、小エビの天ぷらとおにぎりがすごく合う」

「大きさも小さ目で食べやすいです」

「切歌お姉ちゃん、このおみそがかかった串も美味しいです!」

「甘辛く濃い味だが、だからこそ油ものに合うんだろうな」

「そうだな。悪くねぇ。人によっちゃあソースよりも好きだろうぜ」

「手羽先もこちらの方が前回のよりもスパイス控えめよ」

「でもパリパリ感はしっかりあるし、これも完全酒のツマミだね」

「俺はこっちの方が好きだぞ」

「仁志さ~ん、このういろって最後ですか~?」

「えっと、響? どう見ても甘い物だから聞くまでもないでしょ?」

「そういう事。っと、よしこれでいいな」

 

 切り分けた守口大根を器に盛って運ぶ。

 

「はい、これも良ければどうぞ。守口大根って物を使った一種の粕漬け、かな。エルやセレナ達は止めておいた方がいいかもしれない。かなり酒粕に漬かってるからな」

「って言われると食べたくなるのが人間デース」

「切ちゃんだけだと思うよ……」

 

 我先にと箸を伸ばす切歌と若干呆れながら箸を伸ばす調。

 本当に息ピッタリだな、この二人は。

 

「ならこの天むすと共にいただきますね」

「おっ、それいいね。漬物とおにぎりなら合わない訳がないし」

「そうね。じゃあ私も一ついただくわ」

 

 ドライディーヴァは天むす片手に守口漬をパクリ。

 

「しっかり漬かってるって感じだねぇ」

「そうだね。匂いは若干お酒の匂いがする」

「甘い匂いでもあるな」

 

 仲良しトリオも箸を伸ばし……

 

「エル、どうする? 食べる?」

「ちょ、挑戦してみます」

「よし、なら俺も食べてみるか」

「ならエル達は一つを少しだけ齧るといいよ。ほら、これを齧ってごらん」

 

 残った癒しトリオへは俺が一つ差し出して食べさせる事に。

 まずはエルが齧り、次にセレナが齧り、最後をヴェイグがパクリ。

 

「「「…………変な味」」」

 

 で、揃って微妙な顔をする三人である。可愛いな、ホントに。

 見れば切歌と調も似たような顔だ。やはりまだ酒粕漬けは早かったかもな。

 

「こいつは酒粕に一年以上じっくり漬けるんだ。だから結構アルコールが利いてて大人でも苦手な人がいるぐらいなんだよ」

「「「「「「「そうなんだ……」」」」」」」

 

 エル達だけでなく響や未来までも納得していた。

 そんな訳で守口漬はドライディーヴァと俺で食べる事に。

 ちなみにこいつは食べると飲酒運転になるらしいと言うと全員が驚いて、同時に納得もしてた。

 

 ああ、そうそう。真っ先に無くなったのは天むすでした。さすがの人気である。

 次に手羽先でほぼ同時に味噌串カツか。前者は年上組に好評で、後者は年下組に好評だった。

 特に切歌とエルは、とんかつにみそだれをかけたものを丼に乗せるみそかつ丼があるんだと教えたら食べてみたいと言ったぐらいだ。

 それとういろに関しては三時のおやつにする事に決め、みんなへは鑑賞中に摘む用としてしるこサンドとなごやんを提供した。

 

「兄様、これはビスケットですか?」

「まぁそんな感じ。間に餡子が挟んであって名前の通りの味だから食べてみて」

「こっちはおまんじゅう?」

「そうだよ。中は黄身餡で周りの皮が美味いんだ」

 

 お菓子となれば目がキラキラするのが年少組だ。

 今もエルとセレナが主体になって質問しているが興味の強さは切歌やヴェイグ、更には響だって負けていない。

 

「はいはい、みんな飲み物を持ってクウガの続きを見ましょ」

「っと、そうだ。俺が買い物してる間でどこまで見た?」

「見てないよ。エル達が最後ぐらいは全部仁志先輩と一緒に見るんだってね」

「デスよ! なので特別編って奴を見てました!」

「ああ、あの一話と二話のディレクターズカットか」

 

 母さんは本当にクウガにドハマりしていたので、嬉々として買ったんだよなぁ。

 あと新春スペシャルのDVDも買ってたけど、BOXはさすがに買わなかった辺りはしっかりしてるよ。

 

 ……俺もガガガのブルーレイBOX、買わなかったし。

 

「でも、びっくりした。思ってたよりも見た事ないシーンが多かった」

「デスデス。だけど、ある意味納得デスよ。ししょーだってアタシ達の事を全部知ってた訳じゃないデス。なら、これがそういう事なんデスよね?」

「そうだな。俺がみんなの事を知ってるのはあくまで作品として作られた部分だけ。そこにはない……例えば学院での日常やレコーディング風景、ライブ前の苦労なんかはまったくと言っていい程知らない」

 

 今なら知らなくて良かったと思うけど、とは言わないでおいた。

 みんなのプライベートをほとんど知ってるなんて嫌われていただろうしなぁ。

 

「じゃ、クウガを見ようか。ここからは色々終わりに向かって動き出すから」

 

 俺がそう言うと切歌が意気揚々とゲーム機へと向かう。

 さて、なら俺は解説や説明役へ回りますかね。

 そして、いよいよクウガも終わり、か。果たしてみんなはどんな感想を抱くんだろう……。

 

 

 

「四号特別視の代償、か……」

 

 始まりは、ポレポレの開店準備をする五代とみのりの会話から。兄を、クウガを心配するみのりの問いかけに五代が答えようとした時、店内のテレビから前回グロンギ怪人を倒した際の大爆発の影響が流れてきたのだ。

 それはある意味でクウガへのバッシングなどでもあった。

 シンフォギア装者はその存在を秘匿されているためこういう事とは無縁に近い。

 だが、だからこそ思うのだ。こんな風に守ってきた者達から一方的に攻められる事が心優しい者にどう響くかなど。

 

「五代さんは、みんなの笑顔のために頑張ってるだけなのに……」

「セレナ、だからって何でも許される訳じゃない。それに、クウガが五代雄介と知ってる人の方が少ないんだ。なら、クウガは人間に味方するかもしれない怪物と考えてる方が普通なんだよ」

「やりきれないわね。今回の事だって彼は嫌な予感を感じて最大限の配慮はしたのに」

「まったくだぜ。死者が出なかっただけでも御の字だろ」

 

 何故クウガがここまでの力を得たのかを振り返る総集編も兼ねた展開となり、誰もがそのダイジェストとも言えるクウガの苦戦と奮闘の流れを見て表情を苦しそうなものへ変えた。

 以前はカッコイイと感じたライジングフォームも、その背景と現状を考えれば素直に喜べない事に気付いたのだ。

 

 強すぎる力を使わねば倒せない相手。どんどん凶悪に、残虐になっていくグロンギの手口。

 更にその倒した際の爆発までも無視できない威力となってきた事。

 全てがクウガにとってのマイナス要素でしかなかったのだ。

 

「ただ戦って倒せばいい段階を過ぎてしまったのか……」

「しかもだ。相手のルールを解明して先回りしないといけないってのも追加されてる。これ、あたし達に置き換えたら……」

「心がすり減るわよ。だってもっと早く解き明かせれば犠牲は減らせたってなるもの」

「それだけじゃないぜ。倒す際の事まで考えねぇといけないんだ。あたしらはおっさん達がいるからまだマシだけど、それをもし一人でギリギリの戦いをしながら考えろって言われたら……」

 

 クウガは戦いの場では一人きりと言えた。一条刑事という支えはいるが、彼とてグロンギ怪人との戦いに巻き込みたくないのが五代の想いだ。

 故に戦闘が激化すれば五代はたった一人で色々な事を考えないといけない。一条もサポート出来る事は限界がある。

 

 今まで二人三脚でやってきた戦いも、互いの力だけではどうにもならないところまできていると、そう響達は感じ取っていた。

 

「ししょー、これからどうなるデスか? けーさつはクウガと協力してくれなくなるデス?」

「そんな事はないけど、クウガを味方として考える論調は小さくなる。ただ、それは上層部であり現場の、クウガと関った事のある人たちは違う」

「そっか。杉田刑事はクウガに直接助けられてます」

「それだけじゃない。同僚の警察官達だってクウガがメビオを倒すところを見てる。しかもその後彼らへ危害を加える事なく去った事もね」

「分かりました! クウガを本当に支えている人達は今回の事で黙ってないって事ですね!」

「響正解。そしてその現場の声を上層部に届けられる人が対策本部にはいる。しかもその人はこれまで一条さんへ理解を示してきた人でもあるんだ」

 

 クウガへの世論が厳しさを増す中、いよいよ次のゲゲルが始まろうとしていた。

 その実行者はバッタ怪人でもあるゴ・バダー・バ。そのルールは……

 

「鉄の馬から引き摺り下ろして……」

「ひき殺す……」

「つまりバイクに乗ってる奴が狙いか」

「それってクウガもって事じゃない?」

「成程な。邪魔者さえもその気になったら数に入れれるってか」

 

 そして遂に始まるバダーのゲゲル。そのやり口は残虐極まりないもので、見ている響達が辛そうな顔を浮かべていく。

 

 そのルールも早々に判明したもののバダーは警察が手を打つ前に犠牲者を増やしていく。

 それがクウガとのバイクバトルへと発展した時、思わず全員が声を上げた。

 

「おおっ! 凄い事になったデスよっ!」

「クウガも凄いけど怪人も凄い……」

「これ、実はバイクトライアル選手の兄弟がやってるんだ。クウガが兄でバダーが弟。世界で活躍してた二人だから腕前はご覧の通り」

「翼、どう?」

「……っ!? そんな方法でバイクの向きを変えるのっ!?」

「あー、もうダメだ。先輩は画面に夢中らしい」

「カッコイイなぁ。バイクであんな事出来るんだ」

「絶対五代さんの技の一つはバイクアクションだよね」

 

 仮面ライダーの名に恥じないバイクアクションの応酬。

 海岸近くの岩場で展開される激しいバイクバトル。

 だがそこで恐れていた事が起きてしまう。

 

「あっ! トライチェイサーがっ!」

 

 クウガのバイクであるトライチェイサー2000が、ゴウラムとの融合による金属疲労やこれまでのダメージなどで機能を停止してしまったのだ。

 動かなくなったトライチェイサーを見つめ五代が何とも言えない表情を浮かべるのを見て、響達も同じような顔をしていた。

 

「トライチェイサー……頑張ってくれましたからね」

「デスよ。ゴウラムとの合体が負担になってるって言われてたデスしね」

「時には怪人の攻撃で傷付く事もあったし、お休みさせてあげる時なんですね」

「だが今はよりにもよってバイクを使う怪人が相手だ。このままじゃクウガはあいつに追いつく事さえ出来ないぞ」

 

 本来ならばクウガの手に渡るはずの新型専用バイク、ビートチェイサー2000は未だ上層部判断によりその授与を止められていた。

 このタイミングで力になれない事を悔やむ一条へ、五代は何とかしてみせると明るく返す。

 その笑顔と気遣いに一条は何とか力になろうと動き出す事となるのだ。

 

「どんな時も前向きに、か。本当にヒーローって強いわね」

「しかもヒーローだからこうじゃないんだよな。こういう事を言える、出来るからヒーローなんだからね」

 

 機動力を失ったクウガを嘲笑うようにバダーはゲゲルを進めて被害者を増やしていく。

 そんな中、一条は科警研へと向かいビートチェイサーを接収しようとする本庁の人間と対峙し、自分に出来る事をとの思いで説得を開始する。

 

 同じ頃、対策本部の本部長である松倉は、上層部相手にビートチェイサーの引き渡し停止の報告を行うと同時に一警察官としてその想いを吐露としようとしていた。

 

「おおっ……本部長さんも一条さんも熱いデス!」

「みんな、クウガを、五代さんを助けようとしてくれてるんだ……」

 

 それは彼女達には風鳴弦十郎達を想わせた。

 時には組織に逆らってでも現場で命を賭ける者達の代弁をし、その便宜を図ろうと戦う姿はそういうものだった。

 

 一方五代は量産型であるトライチェイサー2000Aやゴウラムを駆使して対抗するが、やはりバダーの速度には敵わず絶望感が漂い始める。

 

「速い……」

「仁志さん、ゴウラムの飛行速度って知ってます?」

「時速500キロで、クウガが掴まってる時は時速250キロぐらいだったかなぁ? まぁ、その速度で動きながら圧縮した空気弾を放ってるんだよ。それをおそらく風の流れだけで察して回避するんだからバダーの恐ろしさったらないよ」

「ホントにゴの集団は化物ぞろいって訳か……」

 

 一条の説得を聞いた本庁の人間は一瞬彼の言葉を一蹴するかに思われた。だが、その手に持っていたビートチェイサーの起動キーが入ったアタッシュケースをその場へ残し、警察組織のために何が正しいかを考えた結果だと言い残して去っていく。

 

「カッコイイなぁ、この人達も」

「うん。この人達も警察官なんだね」

「力無き人達を守る。それが警察の使命だ。その正義を彼らも胸に持っていると、そういう事だな」

 

 その裏では警察による必死のバダー誘導策が実行されていた。

 全ては被害の少ない場所へ誘導し、五代に、クウガに全てを託すという作戦だ。

 パトカーでそこへ向かう五代と杉田刑事だが、何かに気付いて五代が後ろへ振り向き車を止めさせる。

 車を降りた二人が見たのは、陽炎の中を突き進んでくる一台のバイクとスーツの男性だった。

 

 それはビートチェイサーを駆る一条だったのだ。

 

「す、スーツでバイクに……」

「それ程急いでたんでしょうね」

 

 その姿が一条の手によって本来のものへと変わった瞬間、全員が感嘆の声を漏らした。

 

「「「「「「「「「「「カッコイイ……」」」」」」」」」」」

「トライチェイサーにもあったマトリクス機能だ。解除パスコードは五代さんの誕生日らしい」

 

 その姿を見た五代もならばとその場で変身。

 一条によって届けられたビートチェイサー。託される想いと願い。

 それらを受け取り、五代はクウガとなった。

 初めてクウガへの変身をその目にした杉田刑事から思わず感嘆の息が漏れる。

 

 サムズアップを見せ、クウガはビートチェイサーに跨るとバダーの追跡を始めた。

 その速度はあっという間にバダーに追いつき、追い越す程のもの。

 それに対抗心を燃やし、バダーがマシンを加速させるも速度はビートチェイサーの方が上。

 それでも喰らい付こうとするバダーとクウガによる激しいチェイスが展開される。

 

「すげぇな……」

「でも負けてない。だってビートチェイサーはクウガ専用なんだよ。それに、未確認からみんなの笑顔を守りたいって警察の人達の想いと願いが込められてるんだから」

「そうだな。疾風(かぜ)よりも速く駆けるのが仮面ライダーだ」

「あっ、クウガがウィリーをしましたっ!」

 

 白熱のデッドヒートはクウガがアクセルを解き放ち、バダーを突き放す事で終わりを迎える。

 何とか追随しようとするバダーだったが、最高速の違いは埋め切れずそのまま完全に姿を見失ってしまった。

 

「「「「「「やったぁ!」」」」」」

「仁志さん、ビートチェイサーの最高速ってたしか……」

「時速420キロ」

「うひゃあ、そりゃ速いわけだよ」

「それを制御出来るのはクウガだけ、か」

「仮面ライダー、ですからね」

 

 そしてその時は来た。

 最高速だったビートチェイサーに急制動をかけ、パラシュートを展開させての急減速を行い、クウガは静かに地面へ足を着けるとただ正面を見つめる。

 やがてゆっくりとその視線の先にバイクを駆るバダーの姿が見えてきた。

 相手との距離が必殺の間合いになるのを計るように若干待ち、クウガは全身に電流を走らせライジングマイティへと変わる。

 

「くるよ。クウガの中で一番かっこいいライダーキックが」

 

 そのままキックの前準備として構え、向かって来るバダー目指してクウガは走り出した。

 

 その足に感じる熱を踏みしめるようにしてクウガは走る走る走る。

 

――うおりゃあぁぁぁぁぁっ!!

 

 繰り出されるライジングマイティキックが見事バイクに乗ったバダーを蹴り飛ばして地面を滑らせていく。

 何とか勢いを殺して立ち上がるとバダーはまだ戦えるとばかりに歩き出すが、クウガはそれに慌てる事もなくその場に佇むのみ。

 やがて封印の文字がバダーの体へ作用し爆発させる。

 爆発の規模を考えての誘導により、見事人的被害もなく周辺への被害も最小限へ留まった。

 

 まさしくクウガと警察の連携による勝利。そしてこれが今後のクウガの戦い方の基本となるのだった。

 

「いやぁ、最後のキックカッコ良過ぎるデスよっ!」

「やべぇよな。分かってるのにゾクゾクしたぞ」

「あれだけ苦戦した相手も、力を合わせる事で勝利する。クウガだけでも、警察だけでも勝てない相手にも、双方が力を合わせる事で勝ち目は見える、か」

「連携とは良いタイトルだよね。まさしく連携の勝利だし」

「三話連続のバダー、だったかしら。その怪人回だけど、仁志が言ったようにターニングポイントだと思ったわ」

「そういえばタダノ、あの怪人の変身ポーズ、一号と似てないか?」

「おおっ、よく気付いたなヴェイグ。赤いマフラーもそれをイメージというか、オマージュしてるんだよ」

 

 そこから始まるちょっとした寄り道的小話に響達は小さく感心した。

 どうしてそういう事をやったのかという背景までも仁志は話したからだ。

 

 だが、バダーを倒した後に続く話は先程までの雰囲気を一気に嫌なものへと変えるような展開となる。

 緑川高校という場所の二年生男子だけを狙うという、今までにないルールでのゲゲル。

 しかもその手口はどのような方法でも見つからず、取り除く事も出来ない針を打ち込み、四日後に殺すという陰湿極まりないものだったのだ。

 

「酷い……っ!」

「今までで一番苛立つやり方と相手だよっ」

「わざわざ煽りにきて、苦しみ死ぬのを見るのが楽しいって……っ!」

 

 彼女達が今まで相手にしてきたどんな相手よりも残虐非道で陰湿なゴ・ジャラジ・ダ。

 だが、仁志はポツリと呟く。

 

「でも、似たような思考や趣味をしている人間もいる。人が苦しんだり困るのを見て楽しそうに笑う奴は。それでも、そんな存在でさえも命懸けで守るのがヒーローであり自衛隊や警察関係者に医療従事者だ」

「お兄ちゃん……」

「例え死んで当然な存在でも、そいつを見捨てたら、見放したら、自分まで最低な人間の仲間入りだ。俺は、そうヒーロー達から学んだ。勿論君達からも」

「兄様……」

「優しさは強さだ。それはそういう事でもあるんだってね。みんな、このジャラジ回の二話はクウガを語る上で外せない部分だ。俺はこれを見たからこそ、ヒーローも人間なんだって心に刻む事が出来たんだから」

 

 ゲゲルはその方法もあってか成功してしまう――かに思われたが、死の恐怖から一人が自殺してしまい、ジャラジは転校してきたばかりの生徒を最後の一人とするべく動き出すのだった。

 

 ここにきて、響達の口数が減った。いや、減ったではない。なくなった。

 誰もが悲痛な表情を浮かべ、画面から目を逸らしたい衝動に駆られていた。

 ノイズに怯える人々よりも、四日後という明確な期限を示されて死と強制的に向き合わされた存在が見せる恐怖と不安、その心情の吐露は胸に、心に響いたのだ。

 

――何で俺達殺されなきゃなんないんですかぁ……。

――理由なんてないよ。だから……殺させない。

 

 そんな絶望しそうな少年へ五代がかけた言葉に誰もが息を呑んだ。

 どうして自分達が怪人に殺されなきゃいけないのかという言葉への、真正面からの断言であり約束だった。

 

「五代さん……」

「そうだ。相手が何であろうと殺されていい命などない。理由などあろうとなかろうと、だ」

「ああ、どんな悪人だろうがそのけじめは法の裁きってもんでつけるべきだ。暴力なんかで終わらせるのは、獣や化け物のやり方だぜ」

 

 ただ、そんなやり取りがあっても響達の心は沈んでいた。

 

 やがてジャラジが少年のいる場所へ現れ、陽動を仕掛けて護衛を引き離していく。

 その毒牙が眠る少年へ迫る中、クウガが間一髪助けに来てもそれでも彼女達の心は完全には晴れない。

 もし、自分達がジャラジのような敵と出会ったらどうすると、そんな有り得ないと言い切れない事を想像しながら響達が見つめる画面の中では、クウガがジャラジへトドメを刺すシーンが流れていた。

 

「……え?」

 

 そこで、彼女達は見るのだ。漆黒のクウガが炎の中で動いているのを。

 まるで闇の化身のようなそれに、マリアと未来、エルフナインやヴェイグ以外は思い出すのだ。

 そう、かつて仁志が言っていた言葉をだ。

 

――アマダムが警告として見せる黒いクウガとか。

 

 その言葉を思い出して仁志へいくつもの視線が向けられると、彼は画面を見つめたままこう告げた。

 

「聖なる泉枯れ果てし時、凄まじき戦士雷の如く出で、太陽は闇に葬られん」

「それが……さっきのクウガって事ですか?」

「ああ。聖なる泉は優しい心。あの瞬間の五代雄介は、優しさを失い憎悪に突き動かされていたんだ。それを感じ取ってアマダムが見せたのさ。そのままじゃお前はこうなるぞって」

「憎悪に突き動かされて……」

「どうして仮面ライダーは怪人とは違うのか。それは気高い人の魂があるからだ。そこにはこういう意味もある。優しさを失わない事だ。どれだけ残虐非道な行為を目の当たりにしても、その怒りや憎しみをそのままにせず、犠牲者への祈りや平和の誓いへ変えて力と成せる。だからこそ彼らは欲望のままに動く怪人とは違うんだ」

 

 そこで仁志は息を吐いてその場の全員へ少し疲れた笑みを見せた。

 

「少し、休憩にしよう。ちょっと早いけどさ、みんなでういろを食べようじゃないか」

 

 

 

 思っていた以上にジャラジ回はみんなの心にダメージを与えたらしい。

 俺も覚えてはいたけどくるものはあったし当然か。

 エルやセレナが俺の服を掴んできたし、切歌や響も俺の手へ手を重ねてきていたぐらいだ。

 

「はい、どうぞ」

 

 食べやすい厚さに切った白ういろと黒ういろが載った皿へ爪楊枝を持った手が一斉に伸びる。

 俺はそんなみんなを見つめて反応を待った。

 

「あ~、甘くて美味し~」

「デスデス。ねっとりしてるデスけど、これは?」

「ういろは米から作ってるんだよ。だから粘り気があるんだ」

「こっちの黒いのはどうやってるの?」

「そっちは黒砂糖が入ってるんだよ」

「ヴェイグさん、どうですか?」

「俺は黒い方が好きだ。でも白い方も美味いぞ」

 

 良かった。甘い物のおかげで少しだけみんなに明るさが戻ってきた。

 クウガはここからどんどん残忍なゲゲルが続く。その中でもトップクラスに酷いのがジャラジの一件だからな。

 次の鬼門は……ジャーザかな。ガドルに関してはむしろある意味で納得しそうだし、バベルは……怒りや憎しみよりも驚きが先に立ちそうだ。

 

「そうだ。なごやんはどうだった?」

「アタシは好きデスよ。ししょーの言う通り皮が美味しいデス」

「うん、美味しかった。中のアンコも好き」

「しるこサンドは、何というか新鮮な味でした。不思議と言ってもいいかも」

「うんうん。たしかにおしるこの味なんだよねぇ」

「でもサクサクするんだよなぁ。妙な感じだけど、美味いとは思うぜ」

 

 意図的にかもしれないけど切歌が率先して明るい声を出してくれる。

 それに周囲も合わせるように明るく感想を述べてくれて、やっと場の空気が軽くなってきた。

 

「そういえば、今日のお昼はどうするの?」

 

 セレナの問いかけで全員の視線が一斉にマリアへ注がれる。

 まぁこういう集まりの際は最終決定権はマリアにあるので仕方ない。

 

「何よ、みんなして」

「いやいや、ここはあたし達の母親役なマリアの意見を聞こうと思ってさ」

「だから、そういうの止めて。エルやセレナならともかく、翼や奏の母親役なんて受け入れられないから」

「それは置いておくとしてもだ。マリア、昼食はどうする?」

「……仁志、意見は?」

「俺?」

 

 まさかのこちらにお鉢が回ってきた。

 昼飯、ねぇ。内外食ってのは面倒だし、前回のクウガ鑑賞会はホットプレートを使っての焼きそばやお好み焼きだったし、何か楽しくて安上がりな物は……あっ!

 

「餃子はどうだ?」

「「「「「「「「「「「ぎょうざ?」」」」」」」」」」」

「そう。で、基本の餡を作って、包む時にそれぞれ一つだけ追加材料を入れるんだ。自分以外は誰が何を入れたか知らない状態で品評会をするってのはどう?」

「面白いデス! アタシはサンセーデスよっ!」

「僕も賛成します! 楽しそうです!」

「私も! ヴェイグさんも今回は一緒にお買い物に行きましょう!」

「それはいいが、俺の手でやっても大丈夫か?」

「そこは心配いらないよ。餃子を包む器具が百均で売ってる。それを使えばほとんど触らないで餃子が包めるんだ」

「そうか。なら俺も賛成するぞ」

 

 ヴェイグが賛成した以上反対者などいるはずもなく、ならばと気分転換も兼ねて全員で買い物へ出かける事に。

 ただ俺はスーパーの後で百均へ行く事にしていた。ヴェイグ用の餃子包み器を買うためだ。

 全員でぞろぞろとスーパー目指して歩き出す。

 先頭は切歌と調にエルとセレナ。そのすぐ後ろを響とクリスに未来が歩く。俺は後方でドライディーヴァの少し前。

 

「基本のあんってどういう物ですか?」

「調、どーゆー物デス?」

「えっと、豚ひき肉に白菜とかニラとかを混ぜる?」

「白菜の代わりにキャベツでもいいよ。あたし達はそれでやったけど美味しかったしね」

「要するにご飯のおかずになる物で考えて欲しいって事ですね。エル、分かった?」

「はい」

 

 もう本当の姉妹と呼べるようなセレナとエルである。

 心なしか二人を見つめるみんなの眼差しも優しい。

 スーパーへ入るとカゴをマリアが持って、年少組が四人固まって動き出す。

 響達は……三人で行動か。もうこの光景も見慣れてきたなぁ。

 

「さてと、何を入れようかね?」

「仁志さん、もし誰かと同じ物になったらどうするの?」

「それならそれでいいと思うよ。要は話題になればいいんだ。美味しい食卓の要素は明るく楽しい事だしな」

「そうね。じゃあ、私はカゴに入る物を見ないようにするべき?」

「あ~……そうだな。そうしてくれ」

 

 会話がまるで夫婦のそれだなと、そう思いながら俺はマリア達と別れてスーパーの中を歩き出す。

 一体何を入れようかなぁ。と、そこで閃く思いつき。

 きっとみんな具材を入れる方向だ。なら、俺は具材じゃなくて調味料やスパイスにしようと。

 

「そうなると……」

 

 目指すは香辛料などが置いてあるだろう場所だ。

 色々考えると液体じゃない方が望ましいし、残っても別の物に利用出来る方がいい。

 ズラリと並ぶスパイスの数々を眺め、俺は目的の物を見つけた。

 

「あったあった」

 

 それはズバリカレー粉。以前クリスが俺のために作ってくれた炒め物はカレー粉が良い仕事をしていたし、これなら残っても色んな用途がある。

 今の調やマリアならこれを使ってカレーを作る事もしそうだし、これなら手軽に違う味へ餃子を変えられるしな。

 

 出来るだけ値段の安い物を選んでマリアの下へ。

 彼女は普通に餃子用の野菜を選んでいるようで今は白菜を睨むように見つめていた。

 まだ若干高いからなぁ、白菜。

 

「マリア、いっそキャベツって手もあるぞ」

「……美味しいの?」

「甘味は白菜よりも出るから好きな人は好きだよ。この辺りで人気の餃子もキャベツを使うって聞いたし」

「そうなの? じゃあ……」

 

 あっさりと白菜から手を離してキャベツへと向かうマリアを見てると、本当に彼女が根幹世界では世界の歌姫と呼ばれているんだろうかと思ってしまう。

 今なんて真剣にキャベツを手にして、どれが一番良いかをプロのような眼差しで見つめているぐらいだ。

 けど、そんな横顔はやっぱり美人で、彼女が二つの意味で俺とは違う世界の住人だと思わせてくる。

 

「これにしましょう。で? 一体どうして戻ってきたの?」

「え? あ、ああ……俺の入れる物を決めたからカゴに入れようとね」

「そういう事ね」

 

 キャベツをカゴに入れるのを見て、俺はふとある事を思い付いた。

 

「なぁマリア。昼夜兼用にしないか?」

「はい?」

「その、餃子を沢山作っておいて、昼は焼き餃子で夜は水餃子やスープ餃子にするんだよ」

「……まぁ手間は省けるし、調理法が変われば飽きもしないだろうけど……」

「そうだ。なら春巻の皮も買っていこう。それならどうだ?」

「あら、いいわね。なら春巻は海鮮にでもしようかしら」

「おおっ、いいじゃないか。じゃ、俺は春巻の皮探してくる」

「じゃあ私は春巻用の具材を選んでおくわ」

 

 俺は持っていたカレー粉をカゴへ入れると笑顔のマリアと別れ、精肉コーナーへと向かう事にした。

 往々にして餃子や春巻の皮は豚ひき肉の上辺りに置かれている事が多いからだ。

 

「おっ、あったあった」

 

 目当ての物を発見し、春巻の皮を手に取る。

 ついでに餃子の皮も手に取り、そこで気付いた。

 

「……餅粉入りの皮、かぁ」

 

 そちらはきっと水餃子やスープ餃子にしたら美味いだろう。

 と言う事でそれも手に取ろうとしたところで……

 

「あれ、仁志さん?」

「何だ? 春巻の皮ぁ?」

「餃子じゃないんですか?」

 

 響達仲良しトリオに声をかけられた。

 手には何も持っていないので既に選び終えてカゴへ入れてきたのか、あるいはまだ決めてないかのどちらかだろう。

 

「実は……」

 

 さっきマリアと話した事を教えると三人は納得するようにある事を教えてくれた。

 どうやら選んだ物をカゴに入れに行ったら、マリアが春巻の材料をエルにスマホで検索してもらっていたらしい。

 最初は春巻のような具材の餃子を作るのだろうかと考えたそうだが、俺の話を聞いて理解出来たと苦笑したのだ。

 

「それにしても、昼も夜も似た物で済ませるたぁ……」

「完全考え方が楽をしたい人だよね」

「マリアさんも只野さんに影響されてるんじゃない?」

「否定はしないよ。俺からの提案だしさ」

「兄様~」

 

 そこへ聞こえる可愛い声に顔を向ければ、そこにはヴェイグを両腕で抱えたエルがいた。

 ちょっとだけ小走りで駆け寄ってくる様は何とも言えない愛らしさがあるな。

 

「エル、どうした?」

「はい、姉様が揚げ餃子を追加したいと」

「ああ、春巻で油を使うからか」

「みたいです。なので揚げ餃子にも何か案を欲しいそうです」

「ならピザ風にすればいい。トマトソースとチーズならあとに何を入れても大抵の物がマッチするはずだよ」

「美味しそう……」

「揚げた皮の中からアツアツのトマトソースと溶けたチーズ……」

「止めろって。想像してよだれ出てくんだろうが」

「エル、マリアのとこまで案内よろしく」

「分かりました」

 

 俺が両手に餃子や春巻の皮を持って歩き出すとそれにつられるように響達も動き出す。

 エルの先導に従って歩けば既に全員集合していた。

 カゴは結構色々な物が入っていて重そうだけど、それを平然と持っている辺りにマリアの筋力が俺よりもある事を如実に示してる。

 

「じゃ、これでよろしく」

「ええ」

 

 マリアへ一万円を渡して俺はスーパーを後にする。

 ヴェイグ用の物を買うついでに何か珍しいお菓子がないか探してみるか。

 そうやって外へ向かおうとすると俺の後をついてくる愛らしい存在がいた。

 

「ししょー、アタシ達も一緒に行きますデスよ」

「兄様、ダメですか?」

 

 見た目だけならセレナやマリアよりも姉妹らしい組み合わせだ。

 なので構わないと言うように笑顔で頷いた。

 それに切歌とエルが嬉しそうに笑って俺の両隣へと移動してきたので手を繋ぐ事にした。

 三人なら手を繋いだ方が周囲の目は誤魔化せるのだ。

 それに切歌とエルなら見た目も相まって姉妹らしさに溢れてるので、こうして手を繋いでおくと俺は完全親戚のおじさんと見られると言う訳だ。

 

「切歌お姉ちゃん、何か買うつもりですか?」

「う~ん、どうしようかなって思ってるデスよ。ししょーはどう思うデスか?」

「そうだなぁ。正直ここから重たい展開が多いから甘い物を用意しておこうかなとは思ってる」

「「重たい……」」

 

 若干不安そうな声を出す二人を見て、きっと他のみんなも似たような感想を抱くだろうなと思いながら歩く。

 重たい気分になるかもしれない可能性を考慮すると、甘さが強めのお菓子を選ぶべきだな。それもくど過ぎない物が望ましい。

 

 そんな事を考えながら俺は切歌とエルを連れて百均へと向かう。

 ちなみに、二人の表情は店へ入ってお菓子コーナーに着いた瞬間眩しいばかりの笑顔へ戻った事を記す。

 

 

 

 餃子作りとその味を楽しんだ仁志達はクウガの鑑賞会を再開していた。

 あれだけの一件の後、五代雄介達が直面したのは人が王水以上の酸で溶かされるというゲゲルだった。

 その犯行場所も最初こそタクシー限定と思われたものの、タクシーの営業を自粛した直後別の乗り物でその殺害は続いたのだ。

 

「今度は溶かすなんて……」

「これ、ギアでも溶けるんだろうなぁ」

「おうすいって何?」

「金さえも溶かす酸性の液体、だったかな?」

「はい、間違ってません。おそらく耐えられる生物は存在しないかと」

「ブルブルっ……恐ろしいデス」

 

 そんな中、ズ・ゴオマ・グの暗躍が始まる。

 これまでも怪しげな動きをしていたゴオマだったが、ここにきてその体に明らかな変化が出たのだ。

 しかもあれだけ貧弱だったはずの身体能力が、ゴの怪人やクウガを相手にしても引けを取らないレベルにまで上がっていたのだから響達の顔にも驚きが浮かぶというもの。

 

「髪の毛が生えただけじゃないデスか!?」

「な、何だか強くなってねぇか?」

「こ、ここにきて意外な展開過ぎるよっ!」

「もしかして、これって以前体に取り込んだ何かの影響?」

 

 以前の話でゴオマは自分の体へ何かの破片を取り込んでいたシーンが存在していた。

 それをマリアは覚えていたのである。

 

 そしてそんな異常な強化を見せたゴオマを圧倒してみせる存在が出現する。

 ゴ集団のトップであるゴ・ガドル・バだ。

 カブトムシをモチーフとする彼は、そのデザインや強さから強敵の風格が漂っていた。

 

「カッコイイデス……」

「か、怪人なのにヒーローみたいな感じです」

「クウガのモチーフはクワガタ。対するガドルはカブトムシ。対になってるんだよ」

「立ち振る舞いから只者ではないと思っていたけど、まさかここまでなんてね」

「きっと最後に立ちはだかるのはこいつだな」

 

 桜井のメモから五代はゲゲルのルールを解明。

 何と今回は乗り物とその使われている色でローテーションしていたのだ。

 最初の被害者のタクシーの色から順番に考えていき、判明した色合いと合致する乗り物は電車。

 

「やっと判明したデス」

「あのネイルの色がルールだったんだね」

 

 遂に本格的戦闘を開始するクウガとゴ・ザザル・バ。

 その強酸性の体液に警戒しながらも桜井達が一瞬の隙を突き、ザザルへその体液を中和させる効果を持った弾丸を使用した射撃を行い、そこへクウガのマイティキックが炸裂する事で形勢はクウガ優勢へと傾く。

 

「相変わらず警察の人達のナイスアシストっ!」

「クウガの危機を何度も救ってくれますねっ!」

「クウガ一人じゃ守れないし負けてたかもしれないと痛感するぞ」

「みんなで出来る限りの無理をする。それを警察の人達もやってるからだろうね」

「地味に拳銃を渡す辺りもポイント高いよな」

「怪人の特性的に直接攻撃は不向きと察しているからだろう」

「一条刑事以外もクウガの事を熟知し出しているって事ね」

 

 ザザルをある程度弱らせた事でビートゴウラムのカウルへ乗せる形で移送を始めるクウガ。

 選ばれたのは酸性の体液を撒き散らしてもいい密閉空間に出来る地下倉庫。

 杉田刑事達が待ち構えるそこへクウガが到着。通信機を使い、シャッターを下ろさせるやペガサスへと変わり、ふらふらとしているザザルへビートゴウラムで接近しつつライジングフォームへ変化するやライジングブラストペガサスを叩き込む。

 

 そして素早くターンしつつマイティフォームへ戻るとビートゴウラムで来た道を急いで戻り出す。

 一枚目のシャッターを通過し、二枚目も何とか通過していくクウガ。

 

「ま、間に合うデスか?」

「クウガ、急いでっ!」

 

 最後のシャッターが下り切る寸前で車体を傾けて潜り抜け、ビートゴウラムを停車させてクウガが振り返ると同時に下り切ったシャッターが内側からの衝撃で変形する。

 

「間一髪、だな」

「痺れるねぇ。あの冷静だけど大胆な判断。ホント、ヒーローって感じじゃん」

「で、でも三枚もシャッターがあるのに最後のシャッターが爆発で変形するなんて……」

「ホントに凄い威力なんだね……」

「響達はフロンティア事変の最後を覚えてるだろ? ゴの怪人と戦うって事は、あのネフィリムを倒す時の心配を常にしないといけないって事だよ」

 

 仁志の例えに響達六人の装者が息を呑み、話だけは知っている未来とエルは目を見開き、まったく知らない奏達三人が首を傾げた。

 

 画面では、クウガが使っていた拳銃を杉田刑事へ返して別の現場へと動き出していた。

 そう、実は同時に究極体となったゴオマが別の場所で暴れており、警官の被害者が増えていたのだ。

 

「い、今のゴオマの強さは異常です」

「残虐性も高くなってるような気がするよね……」

「太陽光が効かないって時点でヤバいと思ってたけど、あれ、下手したらライジングフォームでも勝てないんじゃねぇか?」

「ダグバの力を取り込んだって言ってたわよね。じゃ、第0号はあれ以上の強さって事?」

 

 マリアの言葉に全員が息を呑んだ。何せゴオマの弱さはよく知っている。

 それが最強集団であるゴの怪人達と戦えるレベルまで強化され、今などその体が明らかに別物へと変わっていたのだ。

 

「みんな、あのゴオマの体に見覚えない?」

 

 そんな中で仁志が問いかけた質問にほとんどの人間が疑問符を浮かべる中、エルフナインが目を見開いた。

 

「そ、そんな……で、でももしそうだとしたら……」

「エル? どうしたの?」

「似ているんです! あの黒いクウガの体と、今のゴオマの体は似ているんですっ!」

 

 まさかの発言に誰もが目を見開いていた。

 黒いクウガとは凄まじき戦士を意味する。クウガが優しさを失った時になってしまう、禁断の姿。

 それとゴオマの体が似ているという事が意味するのは、ダグバとクウガは同質の存在だと言う事に他ならないからだ。

 

「ひ、仁志さんっ! どういう事ですか!?」

「く、クウガはライダーなんデスよね!? ど、どうして怪人のボスの力が凄まじき戦士と似てるデスかっ!」

「4本角の戦士の文字とダグバが残したと思われる署名の文字は酷似してるって事、覚えてる?」

「まさか、戦士という文字は本当にグロンギのもの?」

「俺が以前クウガとBLACKの共通点を話しかけた事、覚えてるかい? あの時しなかった事を今こそ話すよ。キングストーンは太陽と月の2つでそれを取り合う事で創世王を決める。一方クウガではこんな言葉がある。黒き闇と白き闇。黒い方がクウガで、白い方がダグバだ」

 

 絶句。それが響達全員の反応だった。

 既にBLACKがどういう展開と内容だったかを把握している彼女達にとって、仁志の話はクウガの本質も闇であり、尚且つ敵対する存在と同等の存在だと理解出来てしまったのだ。

 

「凄まじき戦士を意味するクウガの古代文字だけは4本角。そしてダグバの署名も4本角。戦士の文字はリントが考えたのではなくグロンギ由来だとすれば、もう分かるだろう? リントはクウガがダグバと同じか類似する存在だと知っていた。あるいは知った。ではそれはどうしてだ?」

「凄まじき戦士になったのね、古代のクウガは」

「おそらくね。その姿を見たリントが凄まじき戦士の文章だけ文字を変えたんだと思う」

 

 画面の中ではクウガをあっさりと圧倒してみせたゴオマがダグバの名を呼びながら移動し、最後には人間体での無残な姿で屍を晒すラストが流れていた。

 

 誰もが言葉を失っていた。その頭の中には“戦うためだけの生物兵器”という言葉が浮かんでいるのだ。

 誰よりも笑顔が好きで、青空が好きで、冒険が好きな五代雄介。そんな彼がみんなの涙を見たくないと決意し覚悟して手にした力が、よりにもよってその涙を流させる存在と同じであるという事実が重くのしかかっていた。

 

「それって、私達で言ったらギアがノイズから出来てるって感じですか?」

「そう、だね。あるいは、使用し続けて制御に失敗すればノイズになる、とかかも」

「やりきれねぇ……。やりきれねぇよ。それでも、大丈夫って、そう言うんだよな、あいつ」

「心強い者だけがヒーローになれる。その言葉の意味を痛感しました。こんな、こんな事とは……」

「仮面ライダーって、本当に重たい称号なんデスね。ししょーが好きなの、分かるデス」

「カッコイイだけじゃない。その裏に人に言えない辛さや苦しさを隠してる。だけど、みんなには笑顔を見せて生きてる」

「ウルトラマンもスーパー戦隊もそうでした。ヒーローは、必ず秘めた苦しみや辛さがあります。でも、それを言い訳に悪い事をしたりはしません」

「きっと、そこがヒーローか悪者かの違いなんだよね。力に善悪はないってお兄ちゃんが教えてくれたけど、そういう事なんだ」

「私達も、分からないでもないわ。ギアも超常の力よ。誰でも使える訳じゃない。それに、使い方次第では容易に悪となれる」

「まさしく壊す者と守る者、だね。あたし達は守る者で居続けられるといいんだけど」

「俺は大丈夫だと断言してやる。セレナ達なら、必ずヒーローのままでいられるはずだ。その心は、魂は、気高いままでいられるはずだ」

 

 暗いはずの話題でも、それでも最後には明るさを、希望を感じさせるように出来る。

 今のヴェイグは仁志に負けず劣らずのポジティブシンキングをするようになっていた。

 上位世界で見聞きした事や響達との関わりで感じ取った事。それらが彼の本質であった光を甦らせていた証拠であった。

 

「そうとも。いつだって力を振るう事に疑問を抱き、それでもみんなの笑顔のために戦おうと出来るなら、きっと大丈夫っ!」

 

 最後に仁志が言葉と共にサムズアップを見せれば響達の影も薄れていく。

 

 気持ちを切り替えた響達は次の怪人であるゴ・ジャーザ・ギに怒りを露わにした。

 何せ彼女は、ゲゲルを簡単に進めるために老人や子供を狙うような残虐極まりない効率重視の思考をしていたのだ。

 その殺害方法も残忍の一言で済ませる訳にはいかない程の惨さで、狭い通路へ追いやり、逃げ場を無くしたところを銛で貫くというもの。

 

「あのハリネズミと同じぐらいムカつく野郎だっ!」

「許せないよっ! 弱い人達を狙って動くなんてっ!」

「今までは特殊なルールに沿っていただけで、そこに狙う相手の性別も年齢もなかったが、今回は逆とはな……っ」

「ああ。こいつは楽に終わらせるためだけにルールを作ってやがる。胸糞悪いね、この女怪人」

「いかにも私は優秀だと言わんばかりですものね。虫唾が走るわ……っ!」

 

 奇しくも画面の中の警察官達も同じ心情だった。

 ジャーザの殺害方法とそのターゲットを知り、怒りや悔しさを隠せない杉田刑事などはその典型であった。

 

 飛行機から飛び降りたジャーザを迎撃しようとしたクウガは、ライジングペガサスになった事でダグバの気配を感じ取ってしまい、それに意識を乱されたところをジャーザに狙われ肩を銛で貫かれ、磔のようにされてしまう。

 結局何とかその場から脱したものの、限界時間を迎えてしまい変身は強制解除。再変身まで二時間を要するという事態となってしまった。

 

「い、痛そう……」

「いくらペガサスつったって、ライジングともなれば強化されてるはずだ。その肩を貫いてあそこまで出来るって……」

「あの女怪人、見た目以上に力があるって事でしょうね」

「水中から投げて、だからな」

 

 変身出来ない間五代は一旦ジャーザの事件から離れて過ごすが、そこへ問題が起きる。

 おやっさんの親戚である朝比奈奈々が、オーディションから戻ってきてから様子がおかしいらしいのだ。

 事情を聞こうとする五代へ奈々はオーディションであった事を話し始める。

 元々彼女は女優になりたくて上京してきた。それから半年としない時期に大好きな芝居の先生を未確認に殺されているのだが、今回のオーディションの最終試験が好きな人を未確認に殺されるというテーマだった。

 切り替えて芝居に集中しようとするも、どうしてもかつての先生を思い出して割り切れない奈々。

 そんな彼女へ同じオーディションを受けていた仲間がこう告げたのだ。

 

――先生が未確認に殺されたの、役に立ちそうだね。

 

 その言葉に奈々は気が付いたらオーディション会場を飛び出していた。

 一部始終を話した奈々は叫ぶ。そんな事言った相手を一発殴ってもいいはずだと。

 だがそれはクウガとして望まぬ暴力を振るい続けている五代にとっては心の痛い意見であった。

 だからこそ、五代は奈々へ殴ってしまうと殴り返され、それが延々と続くかもしれないから止めるべきだと告げる。

 

 それを綺麗事だと叫ぶ奈々へ五代は己が心の内を述べるのだ。

 

――そうだよ。でも、だからこそ現実にしたいじゃない。

 

 ヒーロー達全員の心の声とも言えるそれに、響達は言葉に詰まった。

 心の真芯を貫かれたのだ。

 綺麗事で世界は変えられないと幾多の悪が、闇が口にしてきた事実。

 それに対する模範解答がそれであった。変えられないからと言って、それは綺麗事を諦めていい理由になどならないのだと。

 心を強く持ち、優しさを失わずに生きる事。それがどういう事かを、その台詞は簡潔に述べていたのだから。

 

「……私、五代さんの気持ち分かります」

「響……」

「サンジェルマンさんにも、これを見せて感想を聞きたかったです。ううん、可能ならみんなにこれを見て考えて欲しいかもしれない。綺麗事じゃ何も出来ないって言う人達に、だからこそそれを現実にしようとする事を忘れないでって」

 

 奈々の言い分が、響にはサンジェルマンのそれと重なって聞こえていた。

 統一言語無しでは人は分かり合えないままだという、そんな意見と。

 五代雄介ならその言葉にそんな事はないと返すと響は確信していた。

 何故なら同じ人間同士なら分かり合えると彼は信じているからだ。

 

 そしてそれは立花響も同様だと、今なら強く断言出来るのだから。

 

「そうだな。立花の言う通りだ。話せば分かるを貫けないのは、一種の逃げだ。この身を剣として戦場にて歌い踊らせるのは、ある意味では負け戦と同義か」

「本当に、これは私の心を容赦なく突き刺すわね。だけど、だからこそ私は五代雄介の言葉に賛同するわ。綺麗事を現実にしたい。それから逃げた結果が、あのフロンティアの一件だったもの」

「姉様……」

「でも、きっと五代さんならあれを責めたりしないはずデス。きっと、きっとマリアやマムの決意や覚悟をダメなんて言わないデスよ」

「うん、私もそう思う。五代さんは頭ごなしに否定したりはしないと思うから」

「姉さんが何をしたのか私はよく知らない。だけど、きっとそれがその時姉さんに出来たみんなの笑顔を守る事、なんだよね? なら、大丈夫」

「セレナ……」

 

 綺麗事を現実にしたい。そう告げた五代はジャーザが狙う客船へゴウラムで向かい、その甲板へと降り立つと拳を無言で握り締める。

 それはまるで、あんな事を言いながら綺麗事とは真逆の行動を取るしかない自分への怒りと悔しさを押し殺すようだった。

 

 ジャーザとの戦いはクウガが終始圧倒される展開となる。

 何とか対抗するクウガだったが、何とジャーザはその体を変化させて俊敏な状態から怪力を誇る状態へと変わってみせたのだ。

 

「「「「「「「「「「「超変身っ!?」」」」」」」」」」」

「そう。ゴの怪人の一部はクウガのようにその能力バランスを変える事が出来る」

「余計クウガとグロンギが同種の存在だと裏付けられていきます……」

 

 そんな強敵にクウガも予想外の手段で対抗する。

 ライジングタイタンとなったクウガは、なんと両手にライジングタイタンソードを持つ二刀流でジャーザを突き刺したまま共に海へと落下したのだ。

 

 やがて海の中から巨大な爆発が起こる。ジャーザが倒された証明だった。

 

「何と……」

「まさかのタイタンソード二刀流かよ……」

「考えてみれば可能なんだよね。でも、頭の中から抜けてたよ」

 

 残す未確認も片手で足りる程となり、いよいよ物語の終わりも近くなった。

 ゴ・バベル・ダとの戦いも一条のアシストとビートゴウラムへ金の力を使用した攻撃で勝利を収め、束の間の平和の中、一条の持つ二面性を目の当たりにし夏目実加が衝撃を受ける事件が発生するも、怖い面も優しい面もどちらもその人の持つ顔なのだと五代が諭す事で幕となる。

 

「怖い顔も優しい顔もその人の本当、か……」

「ライダーやってる奴が言うと重みが違うよな」

「彼も、表で見せてる顔と怪人相手に見せる顔は異なっているものね」

「でも、五代さんは本当なら未確認だって殺したくないんだよ。話しても分かり合えないって分かっちゃったから拳を握るんだもん」

 

 セレナの言葉に仁志は静かに頷いた。

 

 そして遂にその時は来る。最後のゴの怪人であるガドルがゲゲルを開始したのだ。

 狙いはリントの戦士である男性警察官。彼らのみを狙いとしたゲゲルは強者との戦いを切望するガドルらしいルールだった。

 クウガは警察官を殺害しようとするガドルへ対して落ちていた拳銃を使いブラストペガサスを放つも、それはガドルにはダメージにさえならない。

 それどころかそれを受けたガドルは瞳の色を緑へ変え、手にしたボウガンのような物でクウガへ反撃を開始したのだ。

 

「なっ!?」

「同じ色っ!?」

「まさかこいつ、クウガと同じ超変身が出来るのかよっ!?」

 

 そこからもガドルは紫の力を使い、最後には金の力まで使用。

 ライジングマイティキックを正面から受け止めた挙句、お返しとばかりに放った電撃キックはクウガを戦闘不能まで追い込んだ。

 

「嘘、だろ……」

「あの発電施設で行った行動はこのため?」

「クウガの頼みの綱であり唯一の切り札を怪人までも……」

「こんな相手にどうやって勝つデスかぁ」

 

 病院へと運ばれた五代は命に別状はなかった。

 知らせを受けて駆け付けた桜子へ椿医師はそう説明した矢先の事だった。

 何と五代の心臓が停止し、一気に危篤状態へと変わったのだ。

 

「兄様、これはまさか五代さんの意思を汲み取ったアマダムが?」

「どうしてそう思うんだい?」

「その、以前五代さんは電気ショックをもう一度浴びれば更なる強化が出来るかもと言っていましたから」

「だから完全敗北した事でその事を実行に?」

「マジデスか!?」

「五代さん……そこまで……」

 

 椿も桜子からの言葉でそれに思い至り、五代の意を酌んで電気ショックを行う事にした。

 

――強くなったお前の笑顔、見せてもらうぜ。

 

 その一言を意識のない五代へ呟きながら。

 

「椿さんも一条さんと同じですね」

「ああ、彼の身を案じながらもその意を酌んで動く。これも信頼だ」

「何だか絆の力ってものをすっごく感じます」

「だね。五代雄介って人の在り方に周囲が共感して支えていく。結果としてクウガは一人で戦うけど孤独じゃない」

「見事に奏やセレナと同じね。前線に立つのは一人でも、それを周囲が全面的に支えている」

 

 ガドルはゲゲルを台無しにしたとして記録係であるラ・ドルド・グとの戦いを望み、それをドルドも受けた事で怪人同士の戦いが始まる。

 その場所へ一条達も駆けつけ、逃げ去るドルドを杉田・桜井の両刑事が追い、一条は一人建物の中へと潜入する事となる。

 そこで一条はガドルの襲撃を受けるも、新型弾丸である神経断裂弾を発射した。

 それは何と同じ物を使って杉田と桜井がドルドを倒した程の威力を持っていたため、ガドルもその場に倒れ、一条は窮地を切り抜けバルバ、B1号と対面し究極の闇やダグバの謎に迫ろうとする。

 

 だが……

 

「なっ!? 立ち上がるだと!?」

「嘘だろ!? あっちの鳥怪人は倒せたってのにっ!」

 

 神経断裂弾を喰らったガドルが意識を取り戻して一条へと襲い掛かったのだ。

 その間にバルバは一条の前から去っていく。

 

「本当にこいつは強敵って事デスね……」

「クウガ、早く来て。一条さんが危ない……っ!」

 

 一条が殺されそうになったその瞬間、ビートチェイサーの駆動音と共に五代が登場。

 そのままガドルへ突撃し一条を救出する事に成功する。

 変身した五代は最初からライジングフォームとなり、常時金の力で戦えそうだと話すのだった。

 

「ずっと金でいけるって……」

「時間制限のあった金の力の弱点を克服したと、そう思えばいい事かもしれないが……」

「それは裏を返せばそれだけ五代雄介の体が人間離れした事を意味する。素直には喜べないわね」

 

 そんなクウガへ一条は誘導地点である付近の雑木林を教えて周辺の避難誘導へと回った。残ったクウガはライジングフォームの力でガドルと戦う。

 

「こいつ、やっぱつえぇ」

「赤の金で互角がやっとだもんね」

「しかも、相手はまだ金の力を使っていません。このままでは初戦と同じ結果になってしまいます」

 

 夜の闇の中、対峙するクウガとガドル。

 静かな雑木林に二人の息遣いと格闘戦の音だけが響く。

 そして、その時は来た。

 

「クウガが構えた……」

「っ!? 左足に装飾品が増えたぞ!」

「それだけじゃないよ。電流は体へも走ってる」

「あの体色、黒じゃないですか!?」

「ま、まさか、ライジングフォームの力とは凄まじき戦士の力の一端?」

「目が光ったデス!」

「カッコイイ……」

「……決まるぞ!」

 

 同時に飛び上がり蹴りの体勢を取るクウガとガドル。

 それは両足でのキックの応酬だった。

 互いに蹴り合い、だがクウガは咄嗟に腕で体を庇う。

 同時に地面へと落下する二人。しかし先に立ち上がったのはガドルだった。

 

「そんな……」

「……いや待て。様子がおかしい」

 

 よろめいたガドルが胸から手を離すと、そこには封印を意味する二つの古代文字が浮かび上がっていた。

 胸への直撃を防いだクウガと防がなかったガドル。その差が勝負を分けた瞬間だった。

 一条から受けた神経断裂弾のダメージなどもあったガドルは、その封印エネルギーに耐え切れなくなり爆発する。

 

「二つの封印エネルギーがないと倒せないなんて……」

「セレナ、世界蛇の時と同じだ。ミョルニル一つじゃ倒せなくなってたあいつは、大勢が力を合わせる事でようやく眠らせる事が出来たんだからな」

 

 その爆発はまるで昼間のような明るさで周囲を照らす巨大な火柱となった。

 だがしかし、それは最後の敵を動かす狼煙でもあった。

 ガドルが倒れた事でダグバが究極の闇を始めると宣言。物語はクライマックスへと雪崩れ込もうとしていた。

 

「あれが、ダグバ……」

「ずっと登場してきた白い服の存在がやはりダグバだったのか」

「あんなどこにでもいそうな感じなのに……」

「究極の闇って一体……」

「仁志さん、もしかしてそれがブラックで言う創世王ですか?」

「かもしれないとも言われてる。実態は全人類の殺害って考えられてるけど」

「黒いクウガはどういう事です?」

「あれはアメイジングマイティ。言うなれば凄まじき戦士の手前。クウガが限りなく凄まじき戦士に近付いている証拠。あるいはアルティメットフォームへの準備段階かな」

「アルティメットフォーム……」

「究極の形態? 待って。じゃあやっぱり究極の闇ってそういう事なの?」

「ダグバが負けても、クウガが凄まじき戦士になったら同じ事って意味かよ!」

 

 そのクリスの言葉に仁志は静かに頷き、一旦DVDの再生を止める。

 

「時間も時間だ。晩飯にしよう。残りは三話だしね」

 

 それはつまり残り三話が持つ重さやエネルギーが凄いという事だろうと響達は感じ取った。

 こうして仁志達は少々遅めの夕食準備に取り掛かる事となる。

 

 

 

 誰もが固唾を飲んで見守っていた。

 画面の中では五代さんと一条さんの最後の会話が流れている。

 ここは、誰もが挙げるクウガの名シーンだろう。

 

「一条さんに会えたから、か……」

「私なら、クリスちゃん達に会えたから、かな?」

「響……」

「あのライブへ行ったから今がある。辛い事や苦しい事、悲しい事もあったけど、だけど今はそれ以上に嬉しい事や楽しい事があるから」

 

 響の言葉もある意味でヒーローの言葉だと思う。

 生きるのを諦めるなとの言葉で一命を取り留め、天羽奏の残したガングニールを継ぎ、今も彼女の遺志は響の胸に生きているんだから。

 

 そして五代さんが一条さんへ初変身の時と同じ言葉を告げて目の前で変身。

 普段とは違うそれは、アルティメットフォームへの超変身だ。響達も声を出さずに見つめている。

 

「あれ?」

 

 そんな中、セレナが不思議そうな声を出した。

 

「どうしたデスか?」

「えっと、たしか凄まじき戦士って目まで黒だったと思うんです」

「タダノ、どうなんだ?」

「そうだよ。凄まじき戦士は目が黒い」

「え? で、でもでも五代さんは赤い目をしてましたけど?」

 

 響の言葉に俺は仮面ライダークウガのOPの一節を口にする事にした。

 

「伝説は塗り替えるもの、俺が変えてやる、って事さ」

「……仁志さん、もしかして凄まじき戦士とアルティメットフォームを分けて言ったのはそういう事?」

「今は物語に集中して。答えはいずれ出るよ」

 

 雪山の吹雪の中、たった二人だけの最終決戦が始まっていた。

 クウガが負ければ世界は闇に、ダグバが負ければ世界は未確認の恐怖から解放される。

 だけど、どちらにせよ五代雄介の心には大きな傷が残るのだ。

 

「ただ殴り合うだけ……」

「お互いの能力は同じだから特殊能力が効果を発揮しないんだよ。だから純粋な格闘戦しか選択肢に残らない」

「五代さん、泣いてる……」

「対してダグバは笑ってやがるのか……っ」

 

 辛そうな未来の声と苛立つクリスの声に俺は何も言わず画面を見つめ続ける。

 響は、きっと一番五代さんへ感情移入しているだろう。

 拳を握って誰かへ振るう。その事が嫌なのは彼女も同じだからだ。

 だからこそ、この戦いは響にとって自分の戦いと同じに見えてるはずだ。

 ただ、唯一の違いは響は殺人を犯した事はなく、五代雄介は殺人を行ってきたも同然と言う事だろうか。

 

 そして一条さんがやっと二人が戦っていた場所へ到着した時には、雪原に横たわって動かない五代さんとダグバの姿があった。

 

――ごだぁぁぁぁぁいっ!!

 

 絶叫と呼ぶに相応しい叫びで“空我”は終わる。

 凄まじい吹雪の残響を耳に残して。

 

「ご、五代さんどうなったデスかっ!?」

「師匠、死んだりしてないよね?」

 

 切歌と調が不安そうな表情で俺へそう尋ねてくるけど、答える訳にはいかないと思ってそっと二人の頭を撫でた。

 

「次の話が最後だ。それで仮面ライダークウガは終わる。答えはそこにあるから」

 

 そして始まる最終回予告。そのサブタイトルを見てみんなが息を呑んでいた。

 何せ“雄介”なのだ。しかも予告で流れた台詞は、みなどこか五代雄介が遠くへ行ってしまったかのようなものばかり。

 

「……五代さん」

 

 セレナの泣きそうな声に心が痛むも俺は何とか歯を食いしばって耐えた。

 ネタバレは駄目だ。俺が初めて見た時に同じ事をされたらどう思うかを考えろ。

 

 最終回は前話、空我の三か月後から始まる。

 未確認対策本部はその役目を終える事となり、解散に向けて動き出していた。

 ダグバの死の後、他の未確認は出現せず、もう全滅したと判断されたのだ。

 

「良かった。世界は、守られたんだ」

「でも、クウガは、五代さんはどうなったデスか?」

 

 そこから長野へ戻る事となった一条さんが今まで世話になった人達へとあいさつ回りを始める。

 そう、最終回は戦闘など一切なく、平和な日常が戻ったと言う事を描くためだけの話だ。

 これはライダーシリーズでもクウガのみの展開だ。最終回こそラストバトルとして盛り上げるのがほとんどだし。

 

 みんなもその事に気付いたのか意外そうな表情でモニターを見つめていた。

 

 そんな中、みんなが揃って息を呑んだ言葉がある。

 

――でも、四号なんかいなくてもいい世の中が一番いいと思うんだ。

 

 五代みのりの“ヒーロー達の本音の代弁”だ。

 どんなヒーロー達もこれをどこかで思ってるはずだ。

 自分達のような存在が必要ない世界が一番だと。

 

「……これが五代さんが、ヒーローが、願ってる事なんだ」

 

 響が呟いた言葉が胸に響いた。何故なら彼女達もまた、そういう意味ではヒーローだからだ。

 シンフォギアなんかなくてもいい世の中。それを彼女達はこの世界で見て感じている。

 故に、きっとこの言葉の意味と尊さが分かるんだろう。

 俺と違い、ノイズなどの恐ろしい存在を相手にしてきた彼女達ならより強く。

 

「平和って、ヒーローが戦いを終わらせる事じゃないんですね。ヒーローが必要ない世界になる事なんだ」

 

 セレナの言葉に改めて考える。

 平和と、そう口にするのは簡単だ。でも、その意味は、内容はとても一言じゃ言い表せない。

 ただ、みんなが笑顔でいられる事。それが本質だとは思う。

 

「凄まじき戦士になったらゴウラムは砂になっちゃってた、デスか」

「じゃあ、やっぱり五代さんは凄まじき戦士にならなかったんだ」

「憎しみの心でしかなれない姿にそれ以外の心で超変身したんですね!」

「それはきっとみんなの笑顔のために、だろうな」

「成程な。伝説を塗り替えた、か。まさしく仮面ライダークウガだぜ」

「そうだな。戦士クウガではなく仮面ライダークウガになった。いや、そうだったからこそのアルティメットフォームか」

 

 もう物語も終わりへと近付いている。

 一条達日本での描写は終わり、砂浜をゆっくりと踏みしめるように歩く誰かが映し出されたんだ。

 

「もしかして……」

「これ、五代さん?」

「良かったぁ。生きててくれたんだ」

「子供の喧嘩? 外国人?」

「じゃあ冒険に出たんですね!」

「ここで走り出すのが五代雄介って感じだな」

「おい、ズルいだろ。ここでED流すとか」

「ジャグリングだ……」

「クウガの力を使わず笑顔を取り戻す、か。これが本来の五代雄介なんだったな」

「みんなイイ笑顔してるよ……」

「ホントね。青空の下を歩く、か。彼らしい終わり方だわ」

 

 “青空になる”が流れる中、雲一つない青空の下を五代雄介は歩く。

 やっと彼はクウガではなく一人の青年へと戻れたのだ。冒険家という、元々の在り方へと。

 そう思うとこのEDは感慨深いものがある。

 仮面ライダーはそれまで悪を倒すと次なる悪に備えるように旅立った。だけどクウガは違う。

 彼はもう自分が必要とされない事を願っているし、そうであると信じているはずだ。

 拳を固く握り、誰かへ振り下ろす必要などない事を。

 

 そして最後に五代の願いというか胸に抱き続けている言葉が表示されて物語は幕となった。

 

「これで仮面ライダークウガの物語は終わり。RXとはまた違うけど、根底にあるものは同じって分かってもらえたかな?」

「はい。ライダーは全てが終わると一人の人として平和を願って生きていくんだって」

「そう。ただ、昭和ライダー達はまた新たな悪が現れるかもしれないと思って旅立つんだけどもね」

「クウガには悪の組織はいなかった。それも違いですね」

「でも、人間の中にはグロンギも驚くような事をしでかす奴もいるかもしれねぇ」

「だけど、その人だって人間なら話せば分かるはずだよ。五代さんならそう言うと思う」

「もう、私は五代さんに寄り道、させたくないです」

「アタシもデスよ。クウガとしての寄り道なんて、二度とあっちゃダメなんデス」

「それでも、それでも必要となったら五代さんはまたクウガになるんだと思う。戦う悲しみを仮面に隠して」

 

 調の言葉に俺は小さく頷いた。

 それこそが仮面ライダーだからだ。争う痛みを正義感で抑えつけ、戦う悲しみを仮面で隠す。

 クウガはそれがもっとも強いライダーだった。だからこそ今でも五代雄介を理想のヒーロー像に挙げる人は多い。

 南光太郎と五代雄介。この二人はライダーの中でもかなり辛い事を経験し、乗り越えて笑顔を見せてくれる心の強い優しい存在だ。

 

 俺も、その十分の一でもいい。心の強さを持たないといけない。

 目の前にいる女性達は、少なくてもそんな彼らに近しい生き方をしているのだ。

 それを支え切るには俺も心強くいないといけない。

 

 せめて、悪意との戦いが終わるまでは……な。

 

「さて、エル、セレナ、お風呂入っちゃいなさい。その後は切歌と調よ」

「いや、いっそ今からスーパー銭湯に行こう。その方がいい」

 

 俺がそう言うと笑顔があちこちから向けられる。

 っと、ヴェイグだけが微妙な顔をしてるけど、それはある意味いつもの事か。

 

「やったぁ。久しぶりの広いお風呂です」

「エル、セレナ、風呂上りに何飲むか相談だ。俺はコーヒーがいい」

「ふふっ、じゃあ私はイチゴにします」

「その前に準備、準備をしないとデスよ」

「バスタオルは忘れないでね、切ちゃん」

「じゃあ、私とクリスちゃんは一回部屋へ戻ります」

「現地で合流しようぜ」

「なら私達も?」

「そうすると時間かかり過ぎません?」

「マリア、あたし達三人分のタオル、貸してくれない?」

「いいわよ。仁志達は悪いけど」

「了解してるよ。俺達あのアパート組は一旦帰宅してから現地へ向かうさ」

 

 こうして俺は響やクリスと共に一旦部屋へと戻る事に。

 

 夜道を歩いて空を見上げる。そこには僅かな星明りが見えるだけ。

 まぁこの辺りも田舎って表現をされる程じゃないから仕方ないか。

 

「これでクウガも見終わっちゃったなぁ」

 

 寂しそうな響の声に顔を向ける。

 彼女も少し上を向いて歩いていた。

 

「まぁ、もうこういう時間も取れないしな。何とか見終われてホッとしてるぜ」

 

 そう言いながらクリスは下を向いている。

 寂しがってくれているようだ。

 

「俺もまさかみんなとクウガを最後まで見れるとは思ってなかったよ。その、目を背けたくなるような話もあるからさ」

 

 そもそもの切っ掛けはBLACKの話をした事か。装者に近い立ち位置の仮面ライダー。

 それも特にクウガは警察との関係もあってより装者達に似ている。

 だからこそ、途中から若干不安を覚えたのも事実だ。クウガの中盤からかなり辛い事が増えてくるから。

 

「でも私、クウガを見れて良かったです。握ると痛いこの手を、それでも握り続けられた五代さんは、とっても強くて優しい人だった。私、可能なら五代さんに会ってお話をしたいです」

「そっか」

「自分の笑顔を擦り減らして、みんなの笑顔のために戦う、か。ライダーだけじゃなく、それがヒーローってもんなら、あたしはそうはなれねぇな」

「いいんだよなれなくて。ヒーロー達だってなって欲しいとは言わないさ。ただ、そうあって欲しい時になってくれたらとは思ってるかも」

「「そうあって欲しい時……」」

「人は強くある事は出来ても強くあり続ける事は出来ない。だからその強くあって欲しい時だけでも強くなってくれたら、それがみんなが出来る限りの無理をするって事じゃないかな。俺はそう思うよ」

 

 きっと響達はそれを無意識にやってきたはずだ。

 心強くなければいけない時は決して折れない心で戦ってきたんだろうと。

 

「ヒーローって大きく分けると二通りなんだ。一つは世界とかの大きなものの平和や自由を守る存在」

「もう一つは何です?」

「簡単だよ。家族とか友人とか自分の手の届く範囲の人達を守る存在。それだってヒーローなんだ。誰もが誰かのヒーローになれるんだよ」

 

 そう言いながらふと思う。今の俺は誰かの、彼女達のヒーローになれているんだろうかと。

 俺自身はそんな風に思えないけど、これは本人がどう思うかは関係ないからな。

 子供にとって父親や母親がヒーローのように見える時もあれば、とんでもない悪者に見える事もあるように。

 俺も、出来るだけ誰かから見た時にヒーローのように見えるようになりたいとは思う。

 

 実行できるかは分からないけれど、な。

 

 そんな風に思っている内に目の前に見慣れたアパートが見えてくる。

 今はとりあえず久々の広い風呂を楽しみにしておくとしよう。

 

「仁志さん、す~ぐ準備しますから」

「待っててくれよ?」

「分かってるって。そっちこそ置いていかないでくれよ?」

 

 響とクリスと別れて俺は部屋の鍵を開けた。

 

「……次の集まりは、もうこういう事ではないだろうな」

 

 終わりは見えている。残るカオスビーストは一体。それを倒せば必ず悪意は何らかのアクションを起こす。

 願わくば、それがみんなにとって最後の戦いとなってくれる事を祈るのみだ。

 

 そして、可能ならばみんなとの絆が途切れる事無く、今の様な触れ合いが続けられる事も……。




とりあえずこちらでの鑑賞会描写はこれで一旦終了としておきます。
というのも、他の作品は見た時期が分かりにくいためです。
ですので、今後はアナザーの方でそういう事はやっていくと思います。

あちらなら平和的ですし(汗
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