シンフォギアの消えた世界で   作:現実の夢想者

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ここで戦姫絶唱シンフォギアの要素を強く持った物語は終わりとなります。
これにて一応完結、ですかね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


アクシアの風

「終わったんだな、本当に……」

 

 綺麗な光の粒子になって消えていく悪意を、心の闇だったものを見送りながら呟く。

 最後の最後に拳を握り締める事なく、歌を唄って終わらせた響達に拍手を送りたい気分だ。

 

「はい、終わりました。本当に、全部、終わりました」

 

 静かに降りてきた響の言葉に込められたのは、きっと喜びだろう。

 あの悪意と最後には一緒に唄って終われたんだ。

 それは、きっと響からすれば一種の理想的な結末だろうし。

 

「そういえば仁志、依り代はどうして使えるんだよ?」

「ああ、それか」

 

 クリスの疑問に俺は手にした依り代へ目をやった。

 バッテリーは今も0%なのに画面がついているという不思議状態のそれ。

 

「多分だけど、今のこいつは電気以外のエネルギーで動いてるんだと思う。みんなのギアにあった欠片を全部回収させてもらったから」

 

 そう言って依り代をみんなへ見せると響とクリス、そしてエル以外が小さく頷いた。

 まぁ元々の状態を知ってるのは三人だけだもんな。

 

「でも、電気以外のエネルギーって……何?」

 

 セレナの質問へ俺は小さく笑ってこう答える事にした。

 

「そうだなぁ。それこそ人の心の光、じゃないかな? あるいは……」

「あるいは?」

「絆、のエネルギーかも。単なる欠片が依り代本体と同じまでになった。だからこそそれらを一つにした事で依り代は元々よりも強化されたかもしれないしさ」

 

 俺の記憶が間違ってなければ、あの時見た存在は絆の名を冠されたヒーローの究極状態だ。

 ただ、はっきりと見た訳じゃないし、そもそも俺の中にある記憶を使って星の声が姿を作っている可能性もある。

 だから、明言は出来ない。違う可能性がある以上、これはみんなにも黙っておこう。

 

 そんな時、微かにだが風が流れた。

 

「そよ風ね……」

「ああ……心地いいな」

 

 戦い終わって感じる風、か。たしかにいいもんだ。

 

「待ってください。風が流れると言う事は……」

「時間停止が解け始めてる……?」

 

 言われて空を見上げるも、そこはまだ色が抜けている。

 だが、よく見ると雲がゆっくりと動いていた。

 

「……マジだ。雲が動いてる」

「…………本当だ。じゃあ、やっぱり時間停止は星の声がやってた?」

「みたいです。悪意が光になってくれたからもう時間を止めてる必要がなくなったって事なんだ」

「やったデスよ! これでみんな元通りデス!」

「本部もきっとその内元の状態に戻るはず!」

 

 喜び合うザババコンビを見て俺は遠い目になった。

 時間停止が終わると言う事が何を意味するかを、俺は正しく認識出来たから。

 

「じゃあ、勝利の余韻に浸りたいところだけど俺の世界まで一旦来てくれるか? 今度こそちゃんとした区切りの時だし」

 

 俺がそう切り出すと、セレナ達は笑顔で頷いてくれたがマリア達はどこか悲しげな顔を一瞬見せた。

 どうやら年長組はやはり分かってるらしい。今回の別れこそ本当の別れになるかもしれない事が。

 

 ゲートを通ってすっかり綺麗に、元通りになったギャラルホルンの中を行く。

 切歌やセレナは響へここを綺麗にした事を凄い凄いと褒めちぎり、調はエルやヴェイグと父さんや母さんへも挨拶しないとなんて話をしていた。

 そんな会話を聞いたクリスへ未来が説明をする横で、奏がマリアや翼から似たような話を聞かされていた。

 

 俺の世界のゲート、つまり裂け目へ到着すると初めて見た時の半分程の大きさになっていた。

 そして同時に依り代が微かに震える。バイブにしたはずはないのにと思いながら画面へ目をやれば、バッテリー残量を示す電池の部分が点滅を始めている。

 

「これは……」

「一気に小さくなり過ぎデスよ」

「そうだね。大人一人ぐらいは余裕だろうけど……」

「みんなで通るのはもう無理ですね」

 

 セレナ達の言葉を聞き、画面の変化からやっぱりそういう事なんだろうと思う。

 ゲートの大きさもそれを後押しするようなもんだ。

 なら、ちゃんと切り出そうか。

 

「うん、どうやらここでお別れした方が良さそうだ」

「え?」

 

 俺の言葉に腕の中のエルが顔を上げてこっちを見つめる。

 

「多分だけど、もう俺の世界とのゲートは必要ないんだと思う」

「必要ないって……」

「どういう意味ですか?」

 

 調とセレナの言葉に俺は手にした依り代を見つめる。

 電池の点滅は心なしか早くなっていて、残り時間があまりない事を俺に伝えているようだった。

 

「どうやら時間がないらしい。星の声の加護も、そろそろサービス終了みたいだ」

 

 そう言って俺はみんなへ依り代の画面を向ける。

 

「見てくれ。バッテリー残量を示す電池の部分が点滅してるだろ? みんなが悪意と唄ってる時はこうなってなかったんだ」

「つまり、もうすぐ依り代は依り代ではなくなる?」

「かもな」

 

 ゲート間の移動を可能にし、デュオレリックを負荷無しで実現させ、各特殊ギアの強化形態どころか遂にはエクスドライブの強化まで成し遂げた。

 だからこそ、こいつは役目を終えようとしてるんだろう。

 そんな強い力に頼る事無く生きていけと言いたいのかもしれない。もしくは、これからは自分達でその力を掴んでみろかも。

 

「そうだ。えっと……」

 

 忘れない内に終わらせないといけない事を済ませておこう。

 そう思って俺はポケットから二つのブローチを取り出した。

 壊れてはいなかった事にホッとする。もし壊れていたら最悪だった。

 

「クリス、奏、これ、俺の父さんと母さんからだ」

「「は?」」

「仁志のご両親がこれまで仁志が世話になったお礼にって、私達全員へプレゼントしてくれたの」

「私とマリア、そして奏と雪音はブローチだった。立花達は学生と話したからか、私達四人を社会人と捉えたらしい」

「ちなみに赤のクローバーがクリスでオレンジのクローバーが奏だそうだ」

 

 我が親ながらいい着眼点をしてるなと思ったもんだ。

 幸運のお守りでもある四葉のクローバー。それを四人に、それぞれのイメージカラーで購入だもんなぁ。

 

「……先輩達のは?」

「私は青だ」

「私は白よ」

「そっか。仁志先輩の両親、ね。会ってみたかったよ」

「会えるさ。いつかきっと会える」

 

 寂しげに呟く奏を見た俺は反射的に口を開いていた。

 その瞬間奏だけじゃなくみんなが俺を見たのが分かった。

 

「希望を信じて待ち続けるってのはかなり辛いと分かってる。だけど、それでも俺は諦めるつもりはない。いつか必ず、みんなとまた遊びに行ったり出来ると信じて生きていくよ、これからも」

 

 あの時よりも強い気持ちでそう告げる。

 そうだ、ベアトリーチェにも約束したんだ。また悪意が現れて何かする時、俺は必ずそれに立ち向かい阻止してみせるって。

 

 例えそれが出来るような力はなくても、それでもと。

 

「っと!?」

 

 いきなり体が後ろへと引っ張られる。

 振り向けば裂け目が吸いこむように動きながら収縮を始めていた。

 

「仁志さんっ!」

「兄様っ!」

 

 響が手を伸ばしてくれたけど、俺はそれを掴むのではなくエルへ依り代を握らせて差し出した。

 

「エルとこいつを頼む!」

「仁志さんっ!?」

「約束なんだっ! そうだろエルっ!」

「兄様ぁっ!」

「待ってるからっ! 返しに来てくれるのをっ! 俺は待ち続けてるからっ!」

「兄様ぁぁぁっ!」

 

 遠くなっていく大切な人達へ俺は右手の親指を立てた。

 もう言葉を出す事も出来なかったけど、せめてと思って気持ちを伝えた。

 

 みんなの俺を呼ぶ声が遠く聞こえる中、俺は意識を失った。

 目覚めた時には俺はリビングにいて、ゲートだったはずのノートPCの画面は何も映さず沈黙していた。

 

 これが、俺の有り得ないような日々の終わり。

 そしていつ終わるか分からない再会までの戦いの始まりだった……。

 

 

 

「よく無事に戻ってきてくれた!」

 

 発令所に師匠の声が響く。

 でも、師匠の表情がそこで微妙なものへ変わった。

 

「とはいえ、今回に関しては想像以上に困難な出来事の連続だったようだな」

「そうですね。まさか時間が停止していたなんて……」

「正直あの時の経験がなかったら信じられませんよ」

 

 友里さんも藤尭さんも一度依り代で意識だけ取り戻した時がある。

 だから私達の報告も信じてくれるんだけど、これはきっと他の人達は信じられないだろうなぁ。

 

 仁志さんが裂け目に吸いこまれて見えなくなった後、そこは何もなかったように綺麗な状態へ戻った。

 みんな、あまりの事に呆然としてた。しばらくそこから動けなかった。

 その内切歌ちゃんが涙混じりに師匠って呟いて、それを切っ掛けに一部が泣き始めた。

 エルちゃんは仁志さんが持たせた何も表示しない依り代を抱き締めてしばらく泣いてたし、セレナちゃんや調ちゃんなんかも涙混じりに仁志さんの事を呼んでた。

 クリスちゃんや未来でさえ涙を流して何度も目元を拭ってた。

 マリアさんはエルちゃんとセレナちゃんを後ろからそっと抱きしめてたし、翼さんは調ちゃんの、奏さんが切歌ちゃんの肩へ手を置いて傍にいてあげていた。

 

 私は、不思議と涙は出なかった。どこかでまた必ず会えるって、そう思えたからかもしれない。

 もしくは、あそこで泣いたらもう泣き続けて動けなくなると思ったのかもしれない。

 

 それと、一つだけ分かった事がある。

 それは、依り代はバッテリーがなくなっても平行世界を渡る力はあるって事。

 エルちゃんが言うには、多分だけどあのスマホ自体がもうギャラルホルンを通過出来る物質に変換されてるんじゃないかって事みたい。

 ただ、前のように砕いて欠片をっていうのは止めた方がいいかもしれないって事だった。

 

――依り代のバランスが狂う可能性があります。

 

 あの頃は星の声が保護してくれてたみたいな依り代も、今はただのスマホに近い。

 だから何がどうなってギャラルホルンを、平行世界を渡る力を失うか分からないって言うのがエルちゃんの意見だった。

 

 本部へ戻る間ずっと泣き腫らした目で私達へそう説明するエルちゃんが、エルフナインちゃんじゃなくてやっぱりエルちゃんのままで安心はしたけど。

 

「とにかく、だ。悪意とやらの企みを阻止し、こうして全員元通りの状態へ戻れた事は喜ばしい。現地の協力者である只野氏へも感謝を伝えたいところだが」

「実はその事なのですが……」

「ん?」

 

 翼さんが師匠へ一歩だけ前に出た。

 それに師匠が不思議そうな顔をしたけど、私達はもう何を言うか分かっている。

 

「上位世界へのゲートは、裂け目は跡形もなく消えてしまいました。現在、あちらとの行き来は不可能です」

「…………そうか。出来れば感謝を述べたかったが」

 

 師匠の複雑そうな声に誰も何も言えない。

 私達も、ちゃんと改めてお別れと再会の約束の言葉を言いたかった。

 最後の光景を思い出すと胸が苦しくなる。

 

「大丈夫ですっ!」

 

 そこへ涙声が聞こえてきた。

 声のした方へ顔を向けると、エルちゃんが依り代を抱き締めたまま師匠を見つめてた。

 

「僕は、僕は必ず依り代を、このスマホを兄様へ返すと約束しましたっ! 幸いギャラルホルンの中を行き来する力は失っていません! これを分析し再現出来れば、今後の平行世界関係の事件への相互協力がより容易なものとなります! もしかしたら、その研究途中で上位世界への行き方やゲートの痕跡を発見出来るかもしれません!」

「それはそうかもしれないが……」

「エルフナインちゃん、それでも上位世界とのゲートは……」

「そもそも裂け目だったんだろ? そうなると仮にまたゲートが出来たとしても、同じ場所へ繋がるかどうか……」

「だとしてもっ! 僕は決して諦めません! 必ず、必ず兄様との約束を果たしてみせます!」

 

 エルちゃんのその言葉に師匠達が目を見開いた。

 でも私達はむしろ微笑んだ。ああ、エルちゃんもそうなんだって。

 

「司令、悪いけど私達もエルと同じ気持ちよ。たしかにゲートは消えた。だけど、私達は知っている。あの世界を、フィーネも神の力も錬金術も聖遺物さえも存在しない、そんな世界を」

「私達の世界とは歩んでいる道は違いますが、それでも目指すものは、願うものは同じ人達がいる世界を」

「何より、あたしらの事を知っていて、ヒーローが大好きで、子供みてぇな大人の顔を持つ奴を」

「ししょーはアタシ達に約束してくれました。諦めないって。アタシ達が会いたいって気持ちを持ち続ける限り、いつか必ずまた会えるって」

「あの人は、師匠は生きるのを諦めないって言いました。きっと今も私達と再会出来るって信じて頑張ってるはずです」

「あの世界はあたし達には色々と誘惑に満ちてるのは認めるよ。だけど、あの人は、仁志先輩はあたし達がそこに逃げる事をよしとしない人なんだ」

「きっとお兄ちゃんは私達が装者を辞めて逃げてきたら、ちゃんと自分のするべき事をしないとダメって言うと思います」

「せめて引き継ぎをしてからおいでって言うんじゃないかな、只野さんなら」

「ヒトシならそっちだろうな。セレナ達が装者を辞める事は理解するはずだ」

「うん、そうだと思う。仁志さんは私達をただのひとにしたがってたし」

 

 その言葉にみんなが頷いた。

 出来ればあれがずっと続けばいいのにって思ってたけど、それは言わない。

 だって仁志さんは言ってた。あそこは休憩場所だって。逃げ場所じゃないんだって。

 それに仁志さんは私達とまた会えるって信じて生きると言った。逃げないって、そう言ったんだ。

 

 なら私達が逃げる訳にはいかない。これからも自分達の居場所で、世界で頑張っていかないと。

 

 でも、ちゃんとシンフォギア辞める事が出来たらいいですよね?

 それなら仁志さんも、星の声も許してくれるよね?

 

「君達をただの人に、か。只野仁志、だったか。一度会って話をしてみたいものだ。一般人でありながら君達の心をそこまで掴み、支えた男と」

「おっさんとは話が合うかもな」

「ほう?」

「仁志さんは特撮のヒーローだけでなく怪獣映画なども好きなのです。巨大ヒーローなどもですが」

「きっと司令があの世界へ行ったらレンタルで映画を食い入るように見ていきそうね」

「それは別の意味で楽しみな話だ。俺も休暇を取ってそこへ行ってみたいものだな」

 

 師匠はそう笑って言うとエルちゃんへ顔を向けた。

 

「エルフナイン君、そういう訳だ。俺個人としても、そしてS.O.N.Gとしても出来る限りの支援はしよう。依り代のギャラルホルン渡航能力を分析解明し、今後の平行世界との連携へ役立ててくれ」

「はいっ!」

「それと、君達平行世界の装者達はそれぞれの世界へ帰還後、今回の顛末を報告して欲しい。そして可能ならば依り代の分析に協力を依頼するかもしれない事もな」

「分かったよ。了子さんへ話しておく」

「私もマムへ話しておきます」

「頼む」

 

 これで話は終わりってそう思った時、エルちゃんが手を挙げるのが見えた。

 

「あ、あのっ」

「どうした? まだ何かあるのか?」

「ぼ、僕は奏さんについて行きたいんです。キャロルに、もう一人のキャロルに会いたいんです」

「もう一人のキャロルに?」

 

 そっか。そもそも仁志さんが依り代をエルちゃんに貸したのはそういう目的なんだっけ。

 

「師匠、それなら私が護衛もかねて同行します」

「それは構わないが、疲れていないのか?」

「そうだよ。特にエル、あんたはかなり泣いてたんだし、今日のところは止めときな。キャロルに関してはあたしが旦那に頼んで向こうへ連絡入れてもらうよ。きっと依り代の事を話せばあっちだって興味を示すはずだしね」

「私もそれがいいと思うぞエル。立花も気持ちは分かるがここは体を休めるべきだ。お前も悪意に体を操られていたしな」

「うっ、そ、そうですね。分かりました」

 

 言われてみればちょっと体が怠いかも。

 今になって疲れが出てきた気もする。

 

 こうして奏さんとセレナちゃんにヴェイグさんを見送って私達は体を休める事になった。

 エルちゃんは今日だけはマリアさん達と一緒に過ごす事になって嬉しそうに笑ってた。

 出来ればこれからずっとエルちゃんが一人にならずに済むようにしたいけど、今はちょっと無理そうかな?

 

 私は未来と一緒に帰る事にしたし、クリスちゃんは翼さんと一緒に今日は過ごすみたい。

 こっちはこっちで一人が辛いって思ってるんだって分かって、翼さんもクリスちゃんも苦い顔をしてた。

 でも、そうなるとセレナちゃんはヴェイグさんいるからいいとして奏さんはどうするんだろ?

 寂しく思いながら一人暮らし続けるんだろうか?

 そんな事を考えてる内に本部の外へ出た。そこには一台の車があって、緒川さんがその傍に立ってる。

 

「ではゆっくり休め」

「またな」

「うん、またねクリス」

「翼さんもちゃんと休んでくださいね」

「ああ」

 

 緒川さんの運転する車に乗ってクリスちゃんと翼さんは帰っていく。

 それを見送りながら私は未来と歩き出す。

 と、そこである事を思い出した。

 

「あっ!」

「ど、どうしたの?」

「クリスちゃん、お部屋の炊飯器仁志さんの世界に残したままだ……」

「……別にいいんじゃない? 多分今夜は二人もご飯作る気力はないと思うし」

「そ、そうかもしれないけど……」

 

 今後困るんじゃないかな。クリスちゃん、まだもう少しこっちにいるんだし。

 

「それに、クリスが翼さんの部屋でしばらく泊まる理由にもなるし」

 

 そう言って未来が笑う。そっか、そうだよね。

 

「じゃあ、帰ろっか」

「……うん!」

 

 そうだ、帰ろう、私のいるべき場所へ。

 もうそこにクリスちゃんはいないけど、隣に仁志さんは住んでないけど、代わりに未来がいてくれるから大丈夫。

 

「未来、そのヘアピン、似合ってるね」

「響の方こそ可愛いよ。また今度、改めておばさんとおじさんにお礼言わないとね」

「そうだね。また今度会いに行かないと」

 

 私と未来の頭にある可愛い花飾り。私がヒマワリで未来がナデシコだ。

 おばさんとおじさんが私と未来にくれたプレゼントで、あの世界との確かな繋がりでもある大事な物。

 二人してそれをそっと触って笑い合う。

 あの世界は今も私達へ元気や希望をくれる。未来と一緒に歩いているけど、思えばそれも久しぶりだ。

 

 そしてこの服もだ。大切に着よう。そして絶対にあの世界へ行く時には着ていくんだ。

 

「ところで今夜のご飯はどうする?」

「そうだなぁ……牛丼とか?」

「ふふっ、オレンジの看板も赤い看板なんかもこっちにはないよ?」

「そっかぁ。じゃあ……」

 

 しっかり私達の中にあの日々は生きてる。

 いつか、きっといつかあの日々を思い出話として語り合える日が来る。

 その時には、必ずあの人もいてくれるはずだ。子供みたいに笑う、私の初恋の人が……。

 

 

 

 上位世界とのゲートが消えて、ゆっくりと響達の生活は本来のものへと戻り始めた。

 訓練や時折入る出動要請をこなす日々も戻ってくる。勿論、平行世界関係の面倒事も。

 だが上位世界で得た有形無形問わぬ様々な力がそれらを本来よりも少しだけ、ほんの少しだけ良い方向へ変えていく事を彼女達は気付けない。

 

――翼さんっ! クリスちゃんっ! ユニゾンを試しましょうっ!

――そうだな! 例え依り代の欠片は失おうともっ!

――あたしらには、あの世界で過ごした時間と同じ男への想いがあるっ!

 

 本部内へ突如として出現した謎の侵入者とその使役する蛇のような存在を相手に、響達はユニゾンを以って対抗。

 何と侵入者を追い詰めその逃げた先の世界で新たな出会いと絆を掴む事となる。

 本来ならば起きるはずだった衝突や誤解をある程度回避し、メックヴァラヌスと呼ばれる力を強化しながら。

 

――どうしてそっちはわたし達を、メックヴァラヌスを信じてくれたの?

――闇から生まれた力でも、魂が光を目指せば光になれるって知ってるから、かな?

 

 どこまでも生きる事を諦めない気持ちと姿。そこに目指すべき在り方を見た少女達は闇から生まれた禁じられた力を御してみせた。

 ヒーローになりたい少女とヒーローを知っている少女はまたの再会を約束するように手を繋ぎ、笑顔で別れる。

 

――貴方達がウルトラマンだと言うのなら、最後の最後まで希望を捨てず不可能を可能にしようと出来るはず。

――そうデスっ! 地球人だって宇宙人デス! それなのにどうして他の星の人達を簡単に殺そうとするデスかっ!

――本当のウルトラマンだって神様じゃない。だからこそ悩みもがいて手を伸ばし続けた。力だけあっても大事なものは守れない。一番大事なのは、本当の優しさを持ち続ける事です。

 

 ギャラルホルンのアラートによって繋がった新しい世界。

 そこでマリア達はウルトラマンを名乗る若者達と出会い、彼らへ復讐しようとする侵略者の先兵とされていた宇宙人を助け出す。

 新たなギアの入手にも成功するが、それは本来とは違い彼女達が本当のウルトラマンを知っているからこそ得た姿だった。

 

――マリアさん、俺、これからも悩み迷いながらも足掻き続けるよ。みんなの笑顔のために。

――ええ。今の貴方ならそれが出来るわ。今の貴方は、立派なウルトラマンだもの。

 

 スペシウムの光ではなく心の光でウルトラマンギアになった事実。

 それをウルトラマンを真に知らぬ若者への指針として残して三人は帰路へ就く。

 

――呪いの魔剣……。イグナイト、か……。それしか、ないのかもね……。

――例え呪いの力でも、心さえ強く持ち続ければ光に出来ます。なら、やってみましょう。

――そうです! 闇から生まれた力でも、誰かを、笑顔を守る事は出来るって私達は見せてもらったからっ!

――ああっ! 今のセレナ達なら呪いの力だって光に出来るはずだっ!

 

 ヴェイグの同胞を助けるためにイグナイトギアを使用可能としたセレナ達へ、エルフナインはかつて依り代だったスマートフォンを手渡した。

 それがあればもしかすれば呪いに囚われたドヴァリンを解放出来るかもしれないとの、淡い希望を込めて。

 

――依り代よ頼むっ! 俺に、ドヴァリンを助け出す力を貸してくれっ! ヒトシがセレナ達を助け出したように、俺も大事な仲間を、友をっ、家族を助けたいんだっ!

 

 セレナ達が道を切り開き、ヴェイグがスマートフォンを握り締めてドヴァリンへと押し付ける。

 その結果、一瞬だけスマートフォンが光を放ち、ドヴァリンを包み込む事に成功。

 呪いの魔剣の大元であったドヴァリンが光に包まれた事を受け、その力で動いていた機械群は全て機能を停止。

 全世界に己の技術や力を見せつけようとした小物の野望を潰し、事件は解決される事となる。

 

――ヴェイグ、ありがとう。お前も、成長したんだな。

――ああ、セレナ達が、そしてヒトシが俺に心の光を思い出させてくれたんだ。それにこいつも、依り代も応えてくれたんだと思う。

 

 ドヴァリンは奇跡的に一命を取り留めたものの衰弱が激しいため、少しの間根幹世界に残って治療を受けた後、ヴェイグとは別の世界で人を見つめ直したいという理由で自ら奏と共に暮らす事を選び、ビルデガント社が引き起こした一件は幕となった。

 

 そんな激戦が一段落した辺りでエルフナインは一人寝の寂しさを切歌や調へ相談する。

 

――切歌お姉ちゃん、調お姉ちゃん、僕はもう一人で寝るのが辛いです……。

 

 研究室はとてもではないが誰かが泊まれる場所ではない。

 そのため、お姉ちゃんとして二人はそれを何とかしようと弦十郎へ相談し、研究室とは別にエルフナインの私室とも言える場所が用意される事となった。

 

――エルフナイン君が自室を研究室にした時から考えていた事ではあったんだが、要らぬ世話かと思ってな。

 

 実際かつてのエルフナインであれば丁重に断った話であった。

 こうしてエルフナインは本当の意味で自室を得る事となる。

 そしてそこへしばらく客員研究者という形である少女がやってくる事となるのだ。

 

 そう、その少女とは平行世界のキャロルだった。

 

――は、はじめましてっ! 僕はエルフナインです! エルと、そう呼んでくださいっ!

――……キャロル・マールス・ディーンハイムだ。

 

 依り代を使って平行世界のキャロルへ会いに行くという仁志からの提案を叶えたエルフナインは、沸き上がる喜びや嬉しさを殺す事もなく満面の笑顔で挨拶する。

 そんな彼女を見たキャロルは、自分そっくりだが雰囲気や喋り方が異なる相手に奇妙な感覚を覚えながらも、エルフナインとの時間は案外楽しいものだったらしく依り代の研究への協力を快諾するに至る。

 

 これによりエルフナインとキャロル、そしてオートスコアラー達の賑やかな共同生活もとい共同研究は幕を上げる。

 

――キャロル、起きて。もう朝だよ。

――んっ……もう少し寝かせろ。寝たのが遅いんだ。

――だから日付が変わる前で寝ようって声かけたんだゾ……。

――仕方ありません。私達で着替えさせましょう。

――地味な仕事だがマスターのためなら受け入れよう。

――エル、あんたは先に食事に行っていいわよ。あとはガリィちゃん達がやっておくから。

――ううん、僕はみんなを待つよ。ご飯は一人で食べるよりも大勢で食べた方が美味しいし、僕はキャロルともっと仲良くなりたいから。

 

 あの上位世界での日々で家庭的な思考へ変化したエルフナインは、キャロルにどこかかつての自分自身を思い出させ、更に彼女自身の中にいるキャロルへも刺激を与えた。

 そんなキャロルの反応を見て、オートスコアラー達は学友というべき存在の大きさを実感し、エルフナインをマスターに次ぐ重要人物として認識していく事となる。

 

 当然エルフナインだけではなく響達学院組にも変化は起きていた。

 

――調、今日はちょっと帰りが遅くなるデスよ。

――……補習?

――違うデスよっ! その、お友達からクレープを食べに行かないかって誘われたデス。

――そっか。私も一緒にコスメ見に行かないって誘われた。

――デスか。じゃ、寮に帰る前に連絡するデス。

――うん、私も連絡するね。

 

 まず切歌と調は二人一緒の行動を常に取らないようになっていた。

 それ故にクラスメイト達とこれまでなかった付き合いを出来るようになり、その交友関係を広げ始めたのだ。

 

 その距離感が変化した響と未来も、仲の良い板場弓美・寺島詩織・安藤創世の三人娘からそれを指摘される事となった。

 

――何だかビッキーとヒナの雰囲気変わったよね?

――そうですわね。以前よりも距離は近くないのにより親密さが増した気が……。

――そう?

――そうよ。何? もしかして一線越えた?

――ないからっ! 私も未来も好きな人いるからっ!

――へぇ……詳しく聞かせてもらいましょうか? 当然男、よね?

――え、えっと……それはそうだけどぉ……。

――えっ!? 嘘でしょ!? あんた達が揃って男に惚れるとかアニメでも有り得ないわよっ!

――さ、さすがにそれは言い過ぎでは……。

――ま、まぁ気持ちは分かるけどね……。

――酷いっ!? 

――言っておくけど私と響だって女の子なんだからね?

――うんうん、それはそうだよねぇ。で、一体どこの誰?

――是非教えていただきたいです。

――そうね。さぁ、ちゃきちゃき吐きなさい?

 

 響と未来は、それまでの恋人のようにも感じられる接し方から幾分落ち着いたものへと変わり、その裏には二人が異性に強く心惹かれたからと響の失言から発覚。

 これを切っ掛けに響と未来は根掘り葉掘り追求される事となり、色々な意味で学生らしい日々を送る事となる。

 

 勿論翼達も変化を起こしていた。

 

――個人でライブ配信、ですか?

――はい。様々な理由で会場などへ来れないファンのために不定期ですがやってみたいのです。

 

 翼は上位世界での日々で感じた事を活かして新たな活動を始めた。

 生で接する事にこだわるのではなく、また販売などを考えないで純粋に自分の歌を聴きたい者達へ届けたい事だけを考える試みを。

 

 そこで唄われたのはあの上位世界で知った歌の数々。

 さすがに固有名詞が出る歌は避けたが“甲賀忍法帳”や“ETERNAL BLAZE”などが好評を博し、CD化を望む声が多く上がる程の人気を得る事となる。

 

――やるわね翼。じゃあ私だって……。

 

 翼に触発される形でマリアも同様の試みを開始。

 こちらも上位世界で覚えた歌を唄い人気を得るが、それだけで終わらせないのがマリアである。

 

――まさかこんな形でマリアと唄う事になるとは……。

――ふふっ、個人的な事だしお金を取る訳じゃないからいいのよ。

 

 あの凱旋ライブの被害者への追悼も込めた二人のライブ配信は、事前の予告もなかったのにも関わらず凄まじい反響を呼び、特に最後に唄われた“自分REST@RT”はこれまでの二人らしくない歌詞と雰囲気もあり話題となった。

 

――ホントは仁志にも見送って欲しかったけど仕方ねぇか……。

 

 クリスも留学先へと出発し、両親の夢を継ぐ為の道を歩き出す。

 慣れない異国の地で生活するのはかつても同じだったからか順応するのも早く、何より歌への真摯な取り組み方とあの上位世界での日々は周囲との交流を図る上でプラスに働いたのだ。

 

――クリス、先に行ってるよ。

――遅れないでね。

――ああ、分かってるっての。

 

 数人ではあるが友人も出来、クリスは新しい場所でも自分の居場所を得る事となる。

 夏休みに一時帰国した際にはかつてのクラスメイトとも過ごし、そこで彼女達とは初めてカラオケへ行く事に。

 そこで楽しそうに唄う姿を隠す事なく見せた事で彼女達ともより強い友情を結び、クリスは笑顔を深くして呟くのだ。

 

――仁志のおかげであたしは笑顔が増えてるぜ。だから、今度はあたしがそっちの笑顔を増やしてやるからな。

 

 当然根幹世界だけでなく平行世界側にも変化は起きていた。

 

――適合係数が著しい上昇を見せている、だと?

――そうなのよぉ。どういう事かしら?

――さてね。可能性があるとすれば、あたしに惚れた男が出来たからかね?

――あるいはあの呪いを制御したからかもしれないな。

 

 奏の適合係数が正規適合者と呼んでもおかしくないレベルまで上昇し、そのギア形状も多少ではあるが変化を起こしたのだ。

 白い色合いが増したそのギアを見て、奏はあの最後の戦いの影響だろうと思って一人微笑み、そんな彼女の笑みを見たドヴァリンも微笑むのだった。

 

――はい、飲んでみてマム。

――安心しろ。ちゃんと味見はしてある。

――……いただきましょう。

 

 自分の世界へ戻ったセレナはナスターシャへ野菜多めの豚汁を振舞った事を皮切りに、毎日必ず野菜を使った味噌汁を作るようになっていた。

 それを飲んだナスターシャの表情が驚きから笑みに変わるのを見て、セレナとヴェイグは笑みを見せ合う事となる。

 

 これまでと同じなようで少しずつ変わっていく日々。

 未だアルカ・ノイズという災厄は存在しているが、それでもあの戦いを経験した装者達には敵ではなかった。

 ツインドライブやダブルドライブなどなくても、デュオレリックさえ必要ない程に今の彼女達は強くなったのだから。

 

 そして時は経ち、桜が散って、蝉が鳴き、木枯らしが吹いて、クリスマスを過ぎたある日の事……

 

「すまんなクリス君。せっかくの休暇中に」

『別にいいっての。むしろあたしがいる時で良かったぜ』

『アタシ達四人でも大丈夫デスけど、クリス先輩がいればカンペキデス!』

「油断は禁物だ。今のところ相手の数は少ないがこちらの動きを知ってどう出るか分からん」

「装者達、間もなく現着します」

「っ!? 現場のアルカ・ノイズ反応増殖っ! その数……およそ200!?」

「しかも施設のあちこちに分散していきますっ!」

「防衛を困難にするつもりか……」

 

 渋い顔をする弦十郎だが、そこへ凛々しい声が響く。

 

『大丈夫ですっ! こっちは五人ですし、離れたって心は一つですから!』

『そういうこった。それに折角の冬休みだ。面倒事はさっさと終わらせて遊びたいんだよ』

『アタシ達は戦姫絶唱シンフォギアデス。それが五人なら十分デスよ!』

『うん、今の私達なら五人も揃った時点で勝ちは確定』

『司令、私達を信じてください。必ず施設を防衛して全員無事に戻ります』

「……分かった。くれぐれも無理はするな」

 

 その言葉に響達は小さく笑い、頷き合うとヘリから地上向かって飛び降りていく。

 聖詠を唱え、ギアを纏い、別々の場所へと降り立つ五人の戦姫。

 いや、敢えてこう言おう。五色の戦士と。

 

「「「「「希望を紡ぐ光のシンフォニー! 戦姫絶唱シンフォギアっ!」」」」」

 

 一瞬その背に個人のイメージカラーでの爆発が起きたような光景が浮かび上がったのか、その宣言にアルカ・ノイズ達が若干怯むように後ずさり、通信で聞いていた弦十郎達が絶句する中、五人の戦姫はそれぞれ小さく笑みを零すと同時に弾かれるように動き出す。

 

 あの仁志と心が繋がっていた時に名乗った口上を言う事で、今も彼と繋がっているような気になれるためだ。

 

「本当はっ! ちゃんとしたのを言いたいんだけどぉ!」

「仕方ないよっ! そんな時間の余裕はないから……ねっ!」

「まったくだっ! でも意外と悪くねぇっ! ……な」

「デスよっ! 本当にぃ! っと、戦隊みたいデス!」

「個人名乗りはっ! ……ふぅ……また別の機会かな」

 

 ふざけている訳ではない。油断している訳でもない。

 ただ、今の彼女達には心の余裕があった。揺るがない強さがあった。

 想いを寄せる男が考えてくれた心強くする言葉。自らを鼓舞する行為。

 それらを行う事で、自分達が今も彼と一緒にいるような気がしていたのだ。

 

「各装者のフォニックゲイン上昇? どういう事?」

「歌ってもいないのにか?」

「そのようです。え? げ、現在も上昇中っ!」

「凄いな、これ。まるでギアが装者の感情と共鳴してるみたいだ」

 

 これまで起きなかった現象に疑問符を浮かべ続けるあおい。

 朔也は感心するようにモニタリングを続ける。

 そんな二人とは違い、無言でモニターを見つめているのがエルフナインとキャロルであった。

 

「エル、どういう事だ?」

「きっと皆さんのギアが強くなったんだ。あの日々で得た色々なものを、絆を力に変えて」

 

 既に依り代の欠片はない。それでも、同じ物を食べ、同じ時を過ごした日々は、時間は消えない。

 そこで培われた絆は今も彼女達の胸で黄金色に輝いている。

 いつか、もしかすると彼女達は本当に自力でツインドライブのような事を成し遂げるかもしれない。

 それでもきっと彼女達はこう言うのだろう。それはツインドライブではないのだと。

 

 何故ならそれは、只野仁志という男との絆で至る姿を言うのだから……と。

 

 

 

 あの別れから少し時は流れ、上位世界は新年を迎えていた。

 仁志は店長となって初めての年越しを店で迎え、年越しそばとしてオーナーが用意していたカップそばを受け取り、店を出て寒さに震えながら自宅へと戻る。

 片手には廃棄となったおでんのタネがいくつか入った容器入りの袋を持ち、残る片手には同じく廃棄のおにぎりが三つ程とカップそばが入った袋がある。

 

「結局今回も年越しは店だったなぁ……」

 

 悲しそうに呟きながら仁志は人気のない道を歩いていた。

 元旦の朝6時過ぎなど普段よりも人気がなくなるものだ。

 ましてや仁志の暮らす街など観光地でもないために余計静かなものである。

 

「さっさと帰って飯食って、散歩する気持ちになれたら散歩して、どっちにしろ風呂には入って、仮眠取ったら実家帰るか」

 

 本来であれば今すぐにでも帰りたいところではあったが、仁志も新年早々汗を掻いたままで年始の挨拶をする程ズボラではなかった。

 玄関の鍵を開け、ドアを開けて中へ入る。当然ながらそこは外よりマシな程度の温度であり、仁志は靴を脱ぐや逃げ込むようにリビングへと入った。

 

「あ~、あったかいなぁ」

 

 タイマー設定で暖房を作動させておいたため、リビングの中はそれなりに暖まっていた。

 それでも厚手の防寒着を脱ぐ事なくテーブルの上へ袋を置くや、仁志は手近な椅子に座ると脱力するようにテーブルの上へ頭を乗せた。

 

「はぁ~……寂しいなぁ」

 

 あの引き離されるような別れから既に一か月以上が経過し、一人の寂しさに仁志は心身ともにすっかり疲れ果てていた。

 何とか現状を維持してはいるものの、中々マリアや調が食事を作ってくれていた頃のようには出来ず、食生活がかつての頃に近しくなっていた事も原因の一つかもしれない。

 

「さてと、飯にしますかね」

 

 このままだと寝ると判断した仁志は体を起こし、椅子から立ち上がるとキッチンにある冷蔵庫へと向かった。

 そこから紙パックのお茶を取り出し、フラフラとコップを持ってテーブルへ戻る。

 コップへお茶を注ぎ、袋の中からおでんの容器やおにぎり、割り箸を取り出してテーブルの上へ並べると、仁志は再び椅子へと座った。

 割り箸を袋から取り出して二つに割り、さあ食べようとなった時、仁志は思い出したかのように顔をある場所へ向けた。

 

 それは響達が使っていたクッションや座布団などが置かれている場所。

 正確にはその一番上に置かれているノートPCだった。

 

「……みんな、元気にしてるかな?」

 

 毎朝ノートPCを見て、そう呟きながら食事をとるのが仁志の日課となっていたのだ。

 

 そう、あの日から戦姫絶唱シンフォギアは元に戻った。

 ただ、仁志が知らぬ間にアプリのゲームはいくつかのイベントを経た事になっていて、まったく知らないイベントやコラボなどを後から知った仁志はがっくりと肩を落とした。

 勿論、そのイベントの中に今回の事件は存在していなかった。

 

 それと、仁志が開設した“戦姫絶唱シンフォギアチャンネル”は残っていたもののほとんどの動画が消えており、唯一の救いはドライディーヴァオリジナルの二曲が残っていた事だった。

 それを知った時、仁志は心の底から安堵の息を吐いたぐらいだ。

 そしてその二曲のコメントを読んで理解したのだ。悪意のしていた事の最後の影響が動画のほとんどと全てのコメントを消したのだろうと。

 

 何故なら“天鳴ノ協奏曲”と“貴方ト云ウ 音流レ 満チルナラ”にはどうやって作ったのかと不思議がるコメントが後を絶たず、元々のコメントは消えていたのだ。

 ちなみにタグとして付けていた“ドライディーヴァ”というユニット名もファンの中で浸透しつつあり、仁志は知らぬが関係者の耳にもその二曲は知られつつあった。

 

 後日、この二曲が縁で思いもよらぬ関わりを得る事になるとこの時の仁志は知る由もない。

 

「いただきます」

 

 言い終わっておでんの容器の蓋を外す仁志。

 立ち上る出汁の香りに表情を緩めながらおでんを食べ始める。

 合間におにぎりを食べ、出汁を汁物代わりにしながら仁志の朝食は進んでいった。

 

「……ごちそうさま」

 

 一心地ついたところで仁志は空き容器やごみを片付け始める。

 それが終わると仁志はやっと厚手の上着を脱ごうとして手を止めた。

 

「……散歩に行くか」

 

 外の寒さを思い出すも、いつか響達と再会した時に少しでも外見を維持しておこうと思って、仁志は脱ぎ掛けた上着を着直して玄関へと向かう。

 と、その足が何か思い出したように動きを止め、反転すると風呂場へと向かって歩き出した。

 外出前に風呂の準備をしておこうと思ったのである。

 

「帰ってきたらすぐ入りたいから……」

 

 寒い中を帰ってくる事を考え、仁志は入浴の支度を前もって始めた。

 着替えやバスタオルを脱衣所でもある洗面所へ運び……

 

「よし、こんなもんか」

 

 全ての準備を終えた仁志は玄関へと向かう。

 靴を履いてドアを開けると刺すような痛みにも似た冷たさが仁志の顔を襲った。

 その寒風に表情を歪めるも、仁志はドアへ鍵をかけると身を縮ませながら歩き出す。

 

「……適当に歩くか」

 

 そう呟いて仁志がまず向かったのはかつてマリア達が住んでいた平屋だった。

 その前で少しだけ立ち止まる仁志。

 仁志が解約してから借り手が未だに見つかっていないそこは、あの日々が本当に終わった事を突き付けるような静けさに包まれていた。

 仁志の脳裏に浮かぶ幾多の思い出、笑顔、声。全てがもう戻らないものだ。

 

「……行くか」

 

 それを噛み締めるように白い息を吐いて仁志はまた歩き出す。

 そこから少し歩いてあの駐車場を通過しつつ次に向かったのは奏達が暮らしていたアパート。

 あの部屋は解約してから二か月近く経った現在、新しい入居者が入ったようで住宅情報からは消えていた。

 

「やっぱここまでは結構あるな……」

 

 少しだけゆっくり歩きながらアパート前を通り過ぎる仁志。

 そこもまた思い出の場所だ。

 奏、翼、未来の三人とジョギングや散歩した事を思い出し、自分の人生が大きく変わった第一歩でもあった事をどこかで噛み締めながら仁志は歩く。

 

 アパートを通過した仁志はそのまま公園へと到着し、そこの中をゆっくりと歩き始めた。

 最初に彼が行った体力作りの再現である。

 

「ここをこうやって歩くのも久しぶりだな……」

 

 公園内のウォーキングは一月もしない内に町内の散歩へと変わったため、こうやって仁志が歩くのは半年以上振りだった。

 

「……あの頃はまだ初夏になるかならないかだったんだけどなぁ」

 

 思い浮かぶのは奏が来たばかりの頃の記憶。

 まだ悪意の恐ろしさもよく分からず過ごしていた頃の事だ。

 

 そして公園内を一周した仁志は来た道を戻るように歩き出す。

 だが、その足はもうマリア達の暮らしていた平屋へは行かなかった。

 しかし仁志の歩みは止まらない。何故ならその道のりはかつては帰路であったものだったからだ。

 

 やがて仁志の視界に古い木造のアパートが見えてくる。

 そこは彼が十年以上住んだ思い出の場所。この街で彼が生活する起点となった場所だった。

 

「あそこも四月には取り壊しか……」

 

 しみじみと呟く仁志の視線の先には、彼が引っ越ししてきた頃よりも幾分寂しさを増したアパートの姿がある。

 いよいよ今年春には目の前の建物は取り壊しが始まるのだ。

 

 仁志がそれを知ったのはふとした偶然だった。

 今のように散歩をしていた時にアパートの大家と出くわし、そこで軽い世間話をした際に教えられたのだ。

 

「……出会いの数だけ別れがあって、別れの数だけ出会いがある、か。よろしくと言った数とさよならと言った数、今の俺はイコールになってるといいんだけど……」

 

 そう呟いて仁志は小さく笑みを見せるとアパートへ背を向けて歩き出すなり歌を口ずさむ。

 

都会(まち)の人ごみ、肩がぶつかってひとりぼっち~」

 

 そうやって仁志が歌を口ずさみながら歩いていた頃、彼の暮らす借家のリビングに置かれたノートPCに小さな変化が起きていた。

 

 何も映さない真っ暗な画面に、ほんの少しではあるが揺らぎのようなものが現れたのだ。

 まるで水面の波紋のように広がっては消えるを繰り返す揺らぎ。

 それは何かの余波で起きているようでもあった。

 あるいは、何かを発している影響なのかもしれない。

 

「ただいま……っと」

 

 それからしばらくして仁志は帰宅し、着ていた上着を脱いでソファへ投げ捨てるように放ると風呂場へと向かった。

 ノートPCには相変わらず波紋のようなものが出現していたが、当然のように仁志はそれに気付かないままだ。

 思いもしないのだ。ノートPCに変化が起きているなどと。

 しかも劇的な変化ではなく静かな変化なのだから余計だろうか。

 

「寒いなぁ……」

 

 キッチンを通過して脱衣所で着ている物を素早く脱いで、下着類はそのまま洗濯かごへと入れるや仁志は風呂場へと入った。

 風呂の蓋を外せば湯気が一気に立ち上って風呂場を包む。

 そうして仁志が風呂で汗や疲れを流し始めた頃、ノートPCの画面の揺らぎはその起きる感覚を短くしていた。

 

 最初の頃は1分間に一度だったのが今は10秒に一度波紋が起きていたのだ。

 だがそこから変化は起きなかった。ただただ波紋のような現象がノートPCの画面に起き続けるのみだった。

 それは仁志が風呂から上がった後も変わらず、しかも彼は気付く事も無かった。

 

「さてと、昼過ぎまで寝るかぁ」

 

 欠伸をかみ殺しながら暖房を停止させてフラフラとリビングを後にする仁志。

 静まり返ったリビングでノートPCの画面だけが変化し続ける。

 波紋は遂に常となり、画面はまるで揺れ続けているかのような状態となっていた。

 だがしかし、変化はそこが終点だったらしくそれ以上の進展は一切見られなかった。

 それは仁志が起きてくるまで延々と続き、画面の中だけが振動し続けているかのようだったのだ。

 

 やがて仁志が目覚め、寝惚けた顔でリビングへと戻ってくる。

 

「ふわ~っ……しまったなぁ。いっそ風呂は起きてからにするべきだったか? 眠気が酷いや……」

 

 独り言を呟き、ふらふらと歩いていた仁志は軽くその場でよろけてしまう。

 

「ととっ……ぶっ!」

 

 そしてその体は座布団やクッションを積んである場所へと倒れ込んだのだ。

 無論、そこの上に置いてあるノートPCへも仁志が咄嗟に突き出した手が触れた。

 その瞬間、画面の波紋が止まった。ただ、それを仁志が見る事はなく気付く事さえもない。

 

「まいったな。倒れた先がここで良かったよ」

 

 体をクッションや座布団に埋もれさせるようになりながら、仁志は一人そう言って苦笑する。

 立ち上がると顔を洗いに移動を始めた仁志だったが、その後ろで何かの気配がしたので振り返った。

 

「っと……え?」

 

 そこで仁志が見たのはノートPCの画面から現れたのだろう立花響、だったのだが格好がおかしかった。

 身に纏っているのは見慣れたガングニールではなく、どこか禍々しささえ感じさせるような物だったのだ。

 

 だが、仁志はそれを知っていた。更にはそれを身に纏っている立花響の事も。

 

「嘘……だろ……」

 

 それはいつかの再現のようだった。違いがあるとすれば現れた異邦人だろうか。

 しかしその彼女に異変が起きる。

 

「な、何?」

 

 身に纏っていたエレクライトと呼ばれる装備が細かに振動し、何故か待機状態へと戻ってしまったのである。

 

「どういう事っ!? 故障っ!? くっ、起動しないっ!」

 

 突然の事に動揺するもう一人の立花響へ仁志は何かを察したように頷いた。

 

「もしかしたら、それはこの世界じゃ展開出来ないんじゃないかな?」

「……何でそんなに平然としてるの?」

 

 警戒心を全身から感じさせる立花響へ、仁志はある思い出との違いを感じ取って内心でため息を吐いた。

 

(これ、あの時以上に面倒な事になるなぁ)

 

 それでも見捨てる事も見放す事もしたくない。そう決断し、仁志はまず立花響へ状況説明などをするべく行動を開始する。

 

「それを説明する前にまず自己紹介するよ。俺は只野仁志、見ての通りのただのおっさんだ」

「……立花響」

「うん、名前を教えてくれてありがとう。じゃあ立花さん、まず聞いて欲しい事があるんだ。落ち着いて聞いて欲しい」

 

 仁志がこの世界の異常性を説明し始めた頃には、ノートPCの画面は何事もなかったかのように静かになっていた。まるでもう役割は終わったとばかりに。

 

 仁志が出会ったのはもう一人の立花響。彼女は歌を捨てて繋ぐ手も硬く握る事を決めた、そんな存在。

 シンフォギアをよく知り、ヒーローをよく知り、そして何よりも彼女がどうして今のようになったかを知っている仁志は、果たして復讐鬼となろうとしている少女とどうやって関わっていくのだろうか。

 

 そして、何故エレクライトは展開出来なくなったのか。依り代がなくても立花響が動けるのは一体どうしてか。

 

 新しい謎を感じさせつつ、只野仁志の物語は新しい局面を迎えようとしている。

 それがどうなっていくのかは、誰にも分からない。

 けれど、一つだけ確実な事がある。

 

「シンフォギアはここで展開出来た。でもエレクライトは展開出来ない。その差は、きっと君の意識にあると思うよ」

「わたしの……意識……?」

 

 九人もの装者やエルフナインにヴェイグと絆を結べた仁志ならば、必ず荒んでしまったもう一人の立花響とも絆を結べるだろうと言う事だ。

 

 かつて仁志は言った。復讐を目的として動き続けた者はヒーローではないと。

 だがしかしこうも思っている。復讐を切っ掛けにヒーローになる事はあると。

 果たして彼の目の前にいる少女はどちらだろうか。

 

「哲学兵装って……知らないか」

「……知らない」

「あ~……っと、そうだ。とりあえず今から俺は出かけるところなんだ。悪いけど一緒に来てくれ」

「は? 何でわたしが」

「いいから。そこが当分君の暮らす場所になる」

「いや意味が分からないんだけど」

「分かるように言ってないからな。ほらほら行くぞ」

「っ!? 気安く手を引っ張らないでっ!」

 

 新年早々厄介事が始まった。そう思いながらも仁志はどこか笑っている。

 一方手を引かれる形の立花響は不服そうだ。

 それでも今は従うしかないと分かっているのだろう。大人しく歩いていた。

 

 かつての時とは違い、波乱が起きる事は約束されているような二人。

 だが、それを乗り越えた先に仁志が、そして立花響が望む結末が待っているのだ。

 今はそれを知らず二人は行く。

 大事な者達との再会を信じ続けて生きると決めた男と、大事な者を失ったと思い復讐に生きると決めた少女が。

 

――ねぇ、いい加減離してよ。ちゃんとついてくから。

――分かった。それと無理に手を繋いでごめん。

 

 いつか少女は知るのだ。目の前の男の口から語られる陽だまりに関する真実を。

 いつか男は知るのだ。少し離れて歩く少女こそが世界の壁を突破する鍵なのだと。

 

 いつだって運命を切り開くのは諦めない気持ち。

 男を支え、かつて少女も聞いたはずのあの言葉が、定められた流れを変えるのだから。

 

 生きるのを諦めるな。その言葉を胸に今日も仁志は生きていく。

 あの日々を支え、自分を変えてくれたシンフォギアの消えた世界で……。




なのはとのコラボに関してはあのままな結末や展開でした。
最後に関しては、作品としてはここで完結だけど物語としては……な感じです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
お気に入り、評価、感想、全てが支えでした。
もしよければ、その内書くだろう予定の番外編なども読んで感想などいただけると幸いです。
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