──フィオーレ王国 とある農村──
「いやぁ助かった!ホントにいつもありがとな、ノーツちゃん」
「いえ、お役に立てたのなら何よりです」
男はガハハと大口をあけて笑いながら正面で農具を修理してみせた少女に礼を言う。少女はなんて事ないように受け答えするが、その顔は少しばかり呆れたような色を映している。
「それにしても……マーカーさん貴方、一体何本鍬を壊したら力加減を学ぶんです?お仕事なので受けますけど、今月に入ってまだ2週間も経っていないのに私ここに来るの5回目ですよ?」
「いやぁすまんすまん。最近ようやっと息子が家継ぐ気になってくれてなぁ……息子と肩並べて作業してるとついつい力が入りすぎちまうのよ」
心なしか先程よりも重さを増した視線を向けてくる少女に、男は今度はへにゃりとした表情を浮かべながら返答する。
今まで頑なに魔導師になると言って聞かなかった息子の変化が余程嬉しいのだろう。
「いやまぁ、それがダメだという訳ではありませんが……ともかくもう少し頻度を抑えてくださらないと。私が言うのもなんですが、依頼料だってタダじゃないんですし
……下手したらまた奥さんにお酒禁止にされるんじゃないですか?」
「そうだよなぁ。…………もうちっと気ぃつけることにすっかねぇ」
「是非そうしてください。私だって他の仕事に行って長くギルドを空けることもありますし……毎度毎度ここに来られるわけじゃないんです。
なにより、ものは大切に扱わないと……私、怒りますからね?」
「そりゃあおっかねぇこった!」
再び大口をあけてガハハと笑うこの男に、少女はこれ見よがしに大きな溜息をつき、“こいつ、近いうちにまたやるぞ”と確信に近い予感を持ちながらその場から立ち上がった。
「で、農具類以外に何か壊れたものはありますか?」
「いんにゃ、今回はこいつらだけだ!」
「そうですか、分かりました。依頼料は先程奥さんに頂いたので今回はこれで失礼しますね」
「おう、気ぃつけて帰れよ!また頼む!」
「そう近いうちに“また”がないことを願いたいですが……まあ、何かあればまたウチにご依頼ください」
そう言ってから一礼して去っていく少女の腰元には、このフィオーレ王国随一と名高い魔導師ギルド、フェアリーテイルの紋章が刻まれていた。
「…………帰ったらまた修理、か」
今日はまだ