魔法の世界で錬金術を   作:紅茶烈伝

10 / 10


 大変長らくお待たせしました……!
 とりあえず生きてます、最近創作意欲が徐々に顔を出し始めてきているのでこれを枯らさないように書いていきたいと思います
 構想だけは練ってあるのですが……書き起す時間と気力が…………!

 作品が大好きな気持ちは変わらないので何とか完結まで持って行けるよう努力だけはしたいと思いますので、何卒ムラある紅茶烈伝に今後もお付き合い頂けますと幸いです


魔風壁

 

 

 

「あぁ、君は……さっき中に入って行った魔導士だね!中の様子はどうなんだい!?」

 

 三人と別れ、避難を呼びかけるためにと民衆の前へ姿を現したノーツに駅員が声をかける。

 先程援軍だと名乗る魔導士が入って行ったからという安心感もあったのだろうか、不安を叫ぶ民衆に注意を呼びかける事もなくメガホンを握ったまま立っていた彼らに目を止めると、彼女は簡潔に現状を伝えるためにとその口を開いた。

 

 

「駅を占拠していた連中はだいたい伸したよ」

「おお、それでは……!」

 

 

 緩く首を横に振ったノーツは重たい瞼を持ち上げてその目に強い光を宿すと、駅員に手を差し出しつつ「拡声器(それ)、貸してくれるかい?」と言い放った。

 

 その有無を言わさぬ雰囲気に圧された駅員がおずおずと拡声器をその手に置くと、ノーツは民衆と向き合って大きく息を吸う。民衆はといえば、ただならぬ雰囲気で駅から出てきたノーツに気づいてか、静まって彼女を見上げていた。

 

 

「駅を占拠している連中の目的は、聞く人を殺す効果がある笛の音を放送することにあるらしい。今はウチのメンバーが笛を持つ首謀者を追ってるけど、まだ捕まえられていない。

 死にたくないならさっさとここから離れるのが利口だよ」

 

 

 静かな声が魔法のかかった拡声器よってに街中に響き渡る。

 情報を処理しきれなかったのか誰一人動こうとしない様子を見て「自殺志願ならとめないけれども」と再度声をかけると、静まり返った民衆が一斉にパニックに陥って我先にと街の外へ走り出した。

 

 

「ちょっと君、何を……!?」

 

「今言ったことは事実だ。さっき街の警備隊にも連絡してきたからじきに街中の避難も済むだろうし、君たちも早いところ逃げた方がいい。放送させる気なんてさらさら無いけど、万が一ってことがあるからね」

 

 

 ひっ、と顔を青くさせた駅員たちは先程まで駅前に詰めかけていた民衆のあとを追うようにその場から走り去っていった。魔法が存在する世界の住人は危機察知能力が長けているらしい。

 

 ノーツ自身も避難誘導に加わり、警備隊に頼んで数箇所に集めてもらった住人たちを地面ごと街の外へ運ぶ。正直魔力不足で今にも倒れそうではあるが、多数の人命には代えられない。割合小規模の街だったからこそ出来たことだった。

 

 

 

 

 

 警備隊を含めた全ての住人の避難を終えたノーツが駅に戻ろうと体を向けると、多大な魔力を感知すると同時に駅の周囲を暴風が覆った。

 

 

「は……急になんだ、あの風は!?」

 

 目を凝らせば、鮮やかな緋色と宙に浮かぶ人影が視認できる。あれは恐らくエルザと……

 

「エリゴールか……!」

 

 

 外の様子を確認しに出てきたエルザと鉢合わせたらしいエリゴールは、渦巻く風の中にエルザを押し込むと駅に向かって駆けるノーツに気づくことなく去っていった。

 

「あいつらの目的はこの街で呪歌を放送する事じゃなかったのか……!?」

 

 足と思考は止めずに先程エルザが居た位置まで走れば、中の様子が伺えない程に周囲の物を巻き込んで吹き荒れる風の壁が、その場と駅舎を完全に隔てていた。

 

 

「エルザ!そこにいるのかい!?」

「ノーツか!」

 

 少しでも油断すると引きずり込まれそうな強い風が吹き荒れる中、声を張り上げて中へ呼びかければ同じく張り上げられた声が返ってきた。

 

 

「さっき飛んでいったエリゴールはどこに!?というかこれは何!?」

「知らん!これは魔風壁というらしい、内側から外に出られないらし……!」

「エルザ!?」

 

 バチッと何かが弾かれるような音と共にエルザの声が途切れ、ノーツは反射的に壁の中へ飛び込んだ。

 中には血塗れの腕を抱えて座り込むエルザと恐らく今風に弾かれたのであろう大剣が転がっていた。

 

 その姿を確認すると同時、ノーツは腰から下げたウエストポーチを外しながらエルザに駆け寄った。

 

 

「そんな腕でこの剣を振り回すなんて、馬鹿じゃないのか君は!」

「すまな……いや、お前こそ何故中に入ってきたんだ馬鹿者!この魔法は外から中の一方通行なんだ!私に構わずエリゴール(やつ)を追え!」

「馬鹿はどっちだ!話してる最中にあんな音たてられたら入るに決まっているだろう!?それに、悔しいが今の私には単独でアイツを抑えるだけの魔力は残ってない!あと、今更言われたところで遅いよ!!」

 

 

 素早く手当をしながらも怒鳴るノーツに、負けじと怒鳴り返すエルザ。ナツやグレイなどの多くのギルドメンバーが居れば間違いなく震え上がる絵面だが、ここには居ないため関係の無い話である。

 

 互いに怒鳴ることを辞めずに、けれどもしっかり情報共有していた所に、ルーシィとハッピーと共にグレイが駆け込んできた。

 二人と一匹は共に目に入ってきた状況に思わず一瞬震えたが、そんな場合ではないと二人と一匹に気付かず未だ怒鳴り合う二人に向かってグレイが声を張り上げた。

 

 

「おい二人とも!怒鳴りあってる場合じゃねえぞ!!」

「「あ゛!?」」

「ピッ……」

 

 これは勝てない。同時に、かつ勢いよくグリンと自分の方に鋭い眼光を向けてきた二人。グレイは思わずルーシィを盾にして縮こまった。情けない男である。

 自分に向けられた訳では無いと分かっているルーシィも、怯えてしっかりとハッピーの尻尾を握りしめており、ハッピーは恐怖よりも痛みに悶えている。

 

 

「……いや、すまん。続けてくれ」

「ごめんよ、想定外が重なりすぎてちょっと情緒が荒れてるみたいだ」

 

 処置された両手を擦りながら謝るエルザに続いて手当に使った道具を仕舞いながらなんとなく申し訳なさそうな雰囲気のノーツも謝る。

 

 幾分か落ち着いた様子の二人に息をついて……ハッとして表情を変えたグレイがルーシィの後ろから出て二人に向かって口を開いた。なお、この際ルーシィの目が生暖かかったことには深く触れないでおく。

 

 

「本当にのんびりしてる場合じゃねぇんだ!鉄の森の本当の狙いはこの先の街……奴らはじーさんどもの定例会の会場で呪歌を使う気だ!」

「なんだと!?」「なんだって!?」

 

 

 バッと勢いをつけて立ち上がったエルザとノーツ。二人はほんの一瞬目を合わせたかと思うと、次の瞬間にはエルザが走り出していた。

 

 

「エルザが鉄の森(アイゼンヴァルト)の連中に魔風壁の解除法について聞きに行っている間に、私たちはナツを探そう!」

「え、今の間に何があったの!?」

「解除法が見つからなくてもいざとなったら私が地面でも掘って出ればいいし、とりあえずナツ含めて一旦全員合流するよ!」

「無視!?」

「……穴を掘る?」

 

 

 何やらハッピーが反応した気がしたが気にはとめない。奴らの狙いがマスターたちだと分かったからこそ、一刻の猶予もないのだ。最大限に急いでやつを止めなければならない。

 疑問をとばすルーシィも申し訳ないが無視して、ナツなら破壊音がする方にいるはずだと一人走り出したノーツ。

 

 これが“閉じ込める為の魔法”だとすれば、脅されれば簡単に話すであろう連中に正攻法での解除法が伝えられている可能性は低い。飴玉のような魔力回復薬を口に放り込み、噛み砕きながら考える。

 

 

駅舎(これ)直すのも私の仕事なんだろうな……」

 

 

 下の階から連続して聞こえてくる破壊音に、「あの馬鹿は全部屋の壁ぶち破りながら移動してるんじゃなかろうか」と青筋を立てながら音に向かって走り続けるノーツ。

 

 ──その予想は、残念ながら大当たりである。

 

 

 

 

─────

 

 

 

「かっかっか!俺の勝ちだな!!

 約束通りエリゴールの居場所言えよ!」

 

 

 四人と一匹が非常事態だと走り回っていた頃、ナツはエリゴールを探す最中に奇襲を受けたカゲヤマとの戦闘を開始していた。

 見慣れぬ魔法ではあったが、さほど苦戦することも無く打ち破り、勝利宣言をしていた時のこと。

 

 人並外れて優れたナツの耳には、両側から駆け寄ってくる多数の足音が届いていた。

 初めは敵かと警戒したが、その足音の大半が長年聞き慣れたものであり、まだ聞き慣れない一つも、最近一緒にいることが多い新人のものであったためその警戒もすぐに解いた。

 

 

「ナツ!それ以上はいい!!彼が必要なんだ!」

「うお!?なんだな……ブッ!?」

 

 一つの足音と、三つの足音。前者はエルザのものだったようで、大声でかけられた声に反応してそちらを向いたその瞬間。ナツの視界からは遠くにいたはずのエルザが消え、代わりに冷たい床が広がっていた。

 

 後頭部に感じる物理的な圧と背後から感じる感覚的な冷気。よく覚えのある感覚……さらに言うなら数日前に依頼先の屋敷を半壊させたと()()()()()に報告した際にも受けた仕打ちに、ナツの背に冷たい汗が流れた。

 

「…………何か言うことは?」

「ゴペンナサイ!!」

「お、おいノーツ」

 

 

 床と熱烈な接吻を交わしながらも何とか答えるナツに刺さるのは相変わらずの冷たい視線である。

 今にも説教が始まりそうな怒気を放つノーツに恐る恐るグレイが声をかけるが……

 

「エルザが必要って言ったってことはその黒髪は魔風壁を解除するのに必要な人材なんだろう。

 ちょっと私はこの馬鹿炎に扉というものの存在と破壊される物の気持ちを叩き込んでくるから……そちらは頼んだよ」

 

 殆ど一息で言い切った。

 いつもの無表情だが、瞳孔は開ききっている。これはキレている。下手したら建物ごと倒壊させかねないナツの壊し具合にキレている。

 

 

 鉄の森の連中を脅しに行ったエルザと、真っ直ぐ音に向かって走っていたはずのノーツ達が同時にこの場にたどり着いた理由。それこそが、この場に来るまでに目にしたナツの破壊痕を何ヶ所か直していたことにある。

 廊下の先からは大きな破壊音、目の前には壊された壁たち。立派な造りの大きな駅舎であるため、ちょっとやそっとでは壊れないだろうが、万が一衝撃のせいで建物が崩れでもしたら全員生き埋めである。洒落にならない。

 

 急ぎながらも最低限の修理と補強をし、ただでさえ回復待ちで残量少ない魔力を絞りながら走ってきたのである。キレるのも当然だとノーツは自分を肯定した。

 

 

 ハッピーを挟み、グレイとルーシィが互いの手を握ってカタカタ震える中、エルザはそんなメンバーには目もくれずに剣を片手にカゲヤマを脅している。勿論その間ナツはノーツに後ろ頭を踏まれたままである。

 事態の収拾がつかない、まさにカオス。

 

 

「カゲ!!!」

「「「「!?」」」」

 

 本格的にノーツがナツを引き摺って移動を始めようとしたその時、突然エルザが声を張り上げた。

 その場の全員がそちらを見れば、そこにはカゲヤマの背後の壁から上半身だけ出した男と背後から短剣で刺されたカゲヤマの姿があった。

 

「カゲ!しっかりしろ、お前の力が必要なんだ!!」

「エルザ!とりあえず止血するから、あまり揺らさず抱えていてくれ!!」

 

 手当をしようとその場を離れたノーツと、抑えていたノーツがいなくなったことで体を自由に動かせるようになったナツ。

 ナツは呆然と目を見開いて壁の男に顔を向けていたが、逃げようとしたのか壁と一体化した様を見て瞬時に目を釣り上げると、その壁に殴りかかった。

 

「同じギルドの、仲間じゃねぇのかよ!!!」

 

 

 壁諸共男を殴り倒したナツ。今までのものと比較にならない規模の壁が破壊されたが、ノーツはナツにチラリとも目を向けなかった。

 ひたすら呼びかけ続けるエルザと、衝撃から立ち直って処置を手伝うグレイと共に、必死にカゲヤマを生かそうと作業を続けている。

 

 ギルドメンバーに対する攻撃に、彼女も思うところがない訳では無い。幸い命に関わるほどに深くはない刺傷を見て、気の弱そうなあの男が率先して殺そうとしたのでは無く、話を聞いた誰かの入れ知恵だろうと察した。

 

 察したからといって同意できる訳でも無い、故に慈悲もない。ナツに対して今だけは許すから派手に殴れと思っているくらいである。最低限直してあるから早々崩れないだろう、と考えながら

 

「それがおまえたちのギルドなのか!!!」

 

 

 怪我人の横で派手に砂埃を立てるのはやめろ、とは思っているが。まあ、思うことは同じだし申し訳程度に塵よけの壁も創っていたので問題なしとしておこう。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。