魔法の世界で錬金術を   作:紅茶烈伝

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 長らくお待たせ致しました。
 なかなか執筆する時間が確保できず、手直しと執筆に長い期間がかかってしまいました。少しずつでも書き溜めて投稿していこうと思っておりますので、よろしければこれからもお付き合い頂けますと幸いです。



妖精女王(ティターニア)錬金術師(アルケミスト)

 

 

「こっちはフェアリーテイル最強チームよ、覚悟しなさい!」

 

 ホームにルーシィの声が響く。

 睨み合う二つのギルドを見て再びニヤリと笑ったエリゴールは、その場から更に上昇しながら口を開いた。

 

「あとは任せたぞ、オレは笛を吹きに行く。

 身のほど知らずの妖精(ハエ)どもに、鉄の森の……闇の力を思い知らせてやれ」

 

 

 そう言い放つと、エリゴールは自らの魔法でガラスを壊してホームの外へと飛んでいった。後を追おうとノーツが割れたガラスの元へ近寄ろうとする。

 しかし、エリゴールはノーツたちの立つ反対側から出て行ったため、立ち塞がる鉄の森のメンバーを突破してからでなければ追うことは不可能である。

 そのまま追うことは困難だと判断したノーツは魔法の構えを解いて奥の通路に目を向けた。あの通路を使えば追えそうだ。

 

 ノーツと同じことを考えていたのであろうエルザは、既にナツとグレイの二人にその通路からエリゴールを追うようにと指示を出していた。

 睨み合い、今にも喧嘩を始めそうな二人をエルザがキッと睨みつけると、二人はすぐさま肩を組んで例の仲良しアピール。相変わらず変わり身の早いことである。

 

 

「ま、まって、あの二人が行っちゃったら女子三人と猫しか残らないんですけど……?」

「心配ないさ。私とエルザがいるからこのくらい何とでもなるよ」

 

 

「聞いているのか二人とも!分かったら行け!!」

「あいさー!」

 

 焦ってナツたちが去るのを止めようとするルーシィにゆるく返答するノーツ。心配することは無いと言われても戦闘面での二人の実力を知らないルーシィからすれば不安は拭えない。

 そうこうしている間にエルザによって送り出された男二人はホームから出て行き、それを見て鉄の森からも男が二人ナツたちを追って出て行った。

 

 数え切れないほど大勢の男の前に三人の女と一匹の猫。傍から見れば後者が圧倒的不利な状況に思えるが、当の本人たち(一人は除く)は特に焦った様子もなくそこに立っていた。

 

「あの二人は好戦的だのう……。あんなの放っておいてお姉ちゃんと遊んだほうが楽しいだろうに」

「作戦のためだよ。お前よりずぅーっとエライ」

 

 

「こいつ等を片付けたら私たちもすぐに追うぞ」

「はいはい」

「う、うん」

 

 残された三人を見てニヤニヤと笑う男たちは彼女らに伸されるなどと微塵も思っていないようである。次々と投げられる低俗な言葉にノーツとエルザの眉間にしわがよる。

 

「女三人で何ができるやら……。それにしても三人ともいい女だなァ」

「殺すにはおしいぜ」

「とっ捕まえて売っちまおう」

「待て待て、妖精の脱衣ショー見てからだ」

 

 

「可愛すぎるのも困りものね」

「ルーシィかえってきて〜」

 

 ぶれることなく凛々しく立つ二人を見て少しは安心したのか、ルーシィはだんだんいつもの調子に戻ってきている。否、むしろ怖がる己を奮い立たせようと多少無理をしているのかもしれない。

 

「最低だね」

「下劣な」

 

 二人はそう呟くとそれぞれ魔法を発動させた。エルザはその手に召喚した剣を握り、ノーツは地に手をついて大ぶりの槍を作り出してそれを握った。

 

「これ以上フェアリーテイルを侮辱してみろ、貴様等の明日は約束できんぞ」

 

 

 二人はそれぞれの武器を構えて男たちと向き合う。背中合わせに経つその姿には一切の隙がない。

 

「剣が出てきた!魔法剣!!ってかノーツ、戦う時は武器作るのね」

 

 

「魔法剣士なんて珍しくもねぇ、こっちにだってぞろぞろいるぜえ!」

 

 二人は背を合わせたままお互いにチラリと目を合わせると次の瞬間、同時に地を蹴って走り出した。

 

 エルザが次々に剣を持つ男たちを切り倒していき、遠距離魔法などで遠くから彼女を狙う者をノーツが薙ぎ払う。時折エルザが空中で動きやすいようにと地に手をついて足場を作り、ついでに足場(それ)を更に変形させて男たちを殴る。

 

 

 動き出してからは視線すら交わさず、息ぴったりにそれらをやってのける二人。互いへの信頼が相当深いものであることが見てわかる戦い方である。

 

 エルザが敵を伸してはそれをノーツが一箇所に集めながら地面を波立てて周囲に立つ男を吹き飛ばす。更には遠くでエルザの背後を狙う男には穂先を潰した槍を投擲して撃退してみせた。

 緋色が舞う邪魔をせずに、その補佐さえしながらも着々と敵を屠っていく白緑。あまりに圧倒的な二人の妖精に、相対している男達は戦慄した。

 

 為す術なく次々と倒れていく男たち。ルーシィはあんぐりと口を開けてその様子をただ見ていた。あまりに圧倒的な戦いぶりに言葉も出ないようである。

 

「この女……なんて速さで換装するんだ!?」

 

「換装?」

「魔法剣はルーシィの星霊と似てて、別空間にストックされてる武器を呼び出すっていう原理なんだ。その武器を持ち換えることを換装っていうんだよ」

 

 一人の男がこぼした聞きなれない単語を復唱するルーシィにハッピーが説明する。

 

「こっちは造形魔導士か!?つーかこんなバカでかい槍振り回すって本当に女かよ!!?」

 

 エルザからノーツへ視線を移すと、なるほど男の言いたいこともわかる。

 エルザと並んでいた時には身の丈ほどの長さだった槍が、いつの間にか最初の二倍くらいの長さになっている。

 

「あれ、あの槍今ちょっと縮んだ……?」

「うん、さっきから槍を伸ばしたり縮ませたりしてるよ」

 

 説明を求めるようにハッピーを見るルーシィ。その視線を受けたハッピーは「仕方ないなぁ」と呟いて解説を始めた。

 

「ノーツの錬成魔法は、触ったものを別のものに作り変える魔法だからね。武器の長さを変えるくらいわけないんだ。長くすれば柄が細くなるし短くすればその分太くなるけど、ノーツはそういうのも全部計算して武器を調節しながら戦うんだ!因みに、魔法使ったりエルザの援護したりしながらあの動きだから、相当頭の回転も早いよ」

「ノーツってそんなすごい人だったの……?」

 

 唖然としながら思わずこぼしたルーシィを見てニヤリと笑ったハッピーは、少し楽しげに再度口を開いた。

 

「ノーツだけじゃない、エルザだってすごいんだ!それに、二人の本当にすごいトコはここからだよ」

「え?」

 

 怪しげに笑うハッピーを不思議そうに見返すルーシィ。すると次の瞬間、敵の集団の中心で二人が再度背中を合わせて動きを止めた。

 

 

「まだこんなにいるのか……」

「想定していたよりもだいぶ数が多いみたいだ」

 

 まだ数がいるからか戦慄した己らを奮い立たせ、かろうじて余裕の表情を保てている鉄の森に対して、二人も涼し気な表情を崩さずにいる。だが、あまりに多い敵にうんざりしているようであり、加えて早くエリゴールを追うためにも彼らの相手にあまり長く時間を割くことも出来ないとして、エルザが静かに剣をしまった。

 

「……面倒だ、一掃する」

「了解した。天輪の鎧かい?」

「ああ」

「じゃあ、私は()を増やそうか」

 

 言いながらノーツはエルザの背後で両手を合わせて目を瞑り魔力を高め始め、エルザの方もその一拍後に魔法を発動させた。

 まばゆい光がエルザを覆うのと同時に、彼女がその身に纏う鎧が瞬く間に剥がれ落ちた。次の瞬間には先程までとは異なる鎧を纏ったエルザが、そこに立っていた。

 

「魔法剣士は通常“武器”を換装しながら戦う。だけどエルザは、自分の能力を高める“魔法の鎧”にも換装しながら戦うことができるんだ。

 それがエルザの魔法、騎士(ザ・ナイト)!」

 

「うわぁ、すご……」

「おおおっ!」

 

 露出の増えたことへの男たちの歓喜の声と、その圧倒的なまでの凛々しさに見惚れて零れたルーシィの声が重なった。しかしハッピーはまだだと言うようにノーツに前足を向けた。

 

「エルザとノーツはギルドの中でも特に息ぴったりのコンビなんだ!ノーツはエルザの戦い方をよく知ってるし、エルザもノーツの考えそうなことはだいたい読んでる。

 エルザと組んでる時のノーツは凄いよ。ただでさえ強いエルザを何倍も強化しちゃうんだ」

 

 

「……準備完了だ。いつでもいける」

 

 ハッピーの説明が終わると同時、ノーツが閉じていた目をゆっくりと開いた。いつの間にか揺れていた彼女らの周りの空気がピタリと静止する。それを受けてエルザは再度手元に剣を召喚し、頭上に掲げた。ノーツも同じく片腕を頭上に掲げている。

 

「──舞え、剣たちよ」

剣を創造しよう(クリエイト・ア・ソード)

 

 二人が詠唱するのと同時、再度空気が震えたかと思うと彼女らの背にそれぞれ大きな魔法陣が展開された。緋色の魔法陣からは羽のモチーフで飾られた大量の剣が、白銀の魔法陣からはそれを模したであろうこれまた大量の氷の剣がそれぞれ出現する。

 

 大量に出現した氷の剣のせいか、はたまた下がった湿度のせいか、辺りの空気は急激に冷え、ルーシィは思わずその身を震わせた。

 数え切れない程の剣が頭上を埋めつくしたかと思えば、ひと呼吸おいた後には凛々しい二つの声がホームに響き渡った。

 

循環の剣(サークルソード)!」

「散れ!」

 

 

 強い風と共に大量の剣が 舞う、舞う、舞う。

 

 それらは一直線に呆気に取られて魔法の発動を眺めていた男たちに向かい、的確に彼らの衣服や武器を捉えて動けないように捕らえる。

 

 咄嗟に逃げようとした男も舞う剣たちの速度には適わず、その服を地面に縫い止められた。白銀の剣はその鋭い刃で男達の動きを止めるようにそこらに刺さり、刃の潰された氷の剣は男達を傷つけることなく的確に意識のみを刈りとっていく。

 言葉の通り、彼女らは一瞬で男たちを“一掃”した。

 

「す、すご…………え……?なんであんなに大量に剣撒き散らしてるのに血が一滴も出てないの……?」

「あい!それはノーツの凄いところだよ!

 エルザだけだと割と大雑把に剣を放つから敵の血が飛ぶんだけど、ノーツが一緒だとノーツの出した剣で風を起こしたり他の魔法で風を操ったりして剣の落ちる位置を調整するから、確実に無傷で大勢捕まえられちゃうんだ」

「他の魔法って……ノーツって錬成魔導士なんじゃないの!?」

「ノーツは器用だからね〜……魔力の量が少ないから大体錬成魔法を使ってるけど触りだけなら色んな魔法が使えるって言ってたよ」

 

「それって…………強すぎない?」

「あい。錬成魔法自体も強いしね。魔力さえ尽きなければまず負けないよ」

「…………ノーツって魔力量(それ)以外に弱点ある……?」

「……ない?あ、くすぐられるのにも弱いよ!!」

「それって戦闘に関係ある?」

「でも魔力量が致命的なまでに少ないからね……大技使うところとかは見たことないです」

 

 終始二人の……主にノーツの戦闘力の高さに驚いていたルーシィは結局一度も戦闘に参加せず、いつの間にやら全ての男たちが氷の剣 ()()()()()に拘束されていた。

 

「結局ルーシィの出番なかったね」

「いや、あんなの見せられたら流石に割って入りになんていけないわよ……」

「あい!誰も割って入れないコンビネーションこそあの二人の売りです。伊達に妖精女王(ティターニア)とか錬金術師(アルケミスト)とか呼ばれてないからね」

 

 

 

「これで全員か?」

「ホームに残ってたやつは全員捕まえたよ。あとはナツたちを追いかけてった奴らとエリゴールだけだね」

 

 ふむ、とひとかたまりになった男たちを見ながらエルザが何事か考え込んでいる。あまり悠長に考える時間をとることが出来ないとノーツはくるりと振り向いてルーシィとハッピーに声をかけた

 

「一先ず私は外の民衆を避難させてこよう。ヤツらが呪歌を放送するつもりなら、街の人全員が危険だからね……。

 ルーシィたちはナツたちが帰ってきた時のためにもここにいてもらえるかな」

「わ、分かったわ!」

「あい!」

「エルザも、これでも食べて少しでも休んでておくれ。君の方も限界が近いだろう。私も避難を促したら戻ってくる」

 

 そう言ってノーツはエルザに包みに入った飴玉のようなものを投げ渡した。エルザもそれを受け取ると、頷いてから大人しくその場に座り込んで再び何事かを考え始めた。

 エルザが座ったのを確認すると、ノーツも三人に背を向けて外へと向かう通路を辿って去っていく

 

 

「あのエルザ、それって……?」

「ん?ああ、ノーツ手製の魔力回復補助薬だ。あいつは魔力の総量が少ないからな。不測の事態に備えて携帯しているらしい薬のひとつだ」

「魔力回復……?え、てことはノーツって唯一の弱点も克服しつつあるって事!?」

「あくまで()()だがな。彼女ほど向上心が強い人間を、私は知らない。」

 

 投げ渡されていた飴玉のようなものは薬の一種だったらしい。なんでも、その魔法の性質から本物の錬金術師じみたことまでできるらしく、家では薬の材料の栽培や調合まで行っているとか。

 

「なによそのチート……あたし、ノーツへの認識だいぶ改めなきゃいけないみたい……」

「あい。あらゆる所でハイスペックなのがノーツです」

 

 

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