完全な処女作です。
温かい目で見守って頂けますと幸いです。
稚拙で拙い文章故、誤字脱字その他不適切な表現等ありましたら申し訳ございません。
十年前
全ての始まりはきっと、そこからだった。
大きな屋敷、その時代じゃ珍しい高価そうな車、庭の置物、厳重そうな見張り。誰が見ても金持ちの家その物
それだけで、狙われるには十分な理由だ
普段、決して庭の外に子供だけで出る事なんてない屋敷の娘達
大事な家の跡取りとして蝶よ花よと育てられてきた娘
だが、幼い子供2人揃えば、好奇心旺盛な時期、抜け穴の一つや二つ、探して抜け出してみよう!なんて、よくある話
「今ならここから抜けれるわね」
そう言って手を引いたのは姉か妹かどちらだっただろう
もしくは同時だったのか
背徳感と意欲のままに裏庭から屋敷の外へ抜け出した。その先には、知らない外の世界
なら、
どれだけ良かったか
今思えば、屋敷前に厳重な警備を置くような屋敷の塀に穴など空くだろうか。あまりにも不自然ではなかろうか。ちょうど子供1人が通り抜けられるくらいの穴など。
気が付けば、先に出た姉は知らない男達に囲まれていた
戻ろうにも穴は、そう、ちょうど
姉は迷わず身体を半分出していた妹を押し込んだ
「戻って!」
「姉さまっ…!姉さま…!待って!!」
妹の叫び声で、何人かの使用人が駆けつけてくる気配がした。
もう少し早ければ、などとは考えたところで仕様がない事だが、何度もそう思った
姉は、姉だけが、戻る術も暇もなく連れ去られた
「どういう事なんだ!!あの子はプルヴィレンティ家の大事な長女だぞ!!」
怒号
「よりによって姉の方を
怒号
「なんたる失態だ…あのような穴、いつの間に…ここの使用人共は揃ってなんの仕事をしていたというのだ!何のための警備だというのだこの役立たず共め!」
怒号
父親は怒り狂い、嘆き、呪った
出来の良い上の娘を連れ去られた事を。
下の出来の悪い娘が残ってしまった事を。
母親は悲観に暮れ、一言も言葉を発していなかったが、内心は同じ様な事を思っていたのかもしれない
しかし、ミレーナにとってはどうでもよかった
父親の言う事は紛れもない事実であり、ミレーナ自身も姉ではなく私ならよかったのだと疑う事なく、そう思っていたのだ
それから父親は、死ぬまでミレーナとまともに顔を合わせる事は無かった
母親は、死ぬまでよそよそしい態度だった
それでもよかった
それでも、よかったのに、
父親と母親さえもミレーナが15の時にいっぺんに死んだ。
彼女は、父親にどんなに恨まれようが、母親に避けられようが、決して両親の事を嫌いにはならなかった。憎まなかった。
父親と母親の自分への感情は、姉を犠牲に残ってしまった自分に対して相応しいとさえ思っていた
変わらず、彼女自身は父親を尊敬し、母親を愛していた
それは変わらない。が、両親の死を前に、
彼女は涙一つ見せなかった
悲しいとすら思わなかった
なぜなのかは自分でも分からなかったが、それ以上深く考えることすら彼女はしなかった
彼女は、知らせを受けると同時に使用人を集め、淡々と言った
「プルヴィレンティ家、当主と夫人が亡くなられたと、先程報告が入りました。
「ミレーナ様!何を仰られるのですか。旦那様と奥様が亡くなられたと聞いて動揺されるお気持ちは分かりますが、余りにも不謹慎では…」
「
「しかし!貴女様は15の歳、今からでも旦那様が見繕っていた方を配偶者に迎えさえすれば」
「もう一度言うわね。この家の正当な後継者は
「いい加減にして下さいな!貴女の姉君は十年ほど前に……いなくなられたでしょう!」
「そうね、なのでこの家はもう終わりよ。私がどうこうできる規模じゃないわ。…あるいは姉様ならこういった事態でもきっと上手くやっていけるのでしょうけど」
「ミレーナ様…」
使用人達の困惑を他所に、彼女は続けた
「
「しかし、使用人の分際で差し出がましい事を申しますが、私共めは職を失うのです。お嬢様の一存で、簡単にはい分かりましたともいきませぬぞ。」
「マルコ、貴方お父様の仕事を少し手伝っていたわね」
「はい。あくまで、旦那様の指示通りに動いていたに過ぎませぬが」
「なら、この家が手を出していた事業全てから上手く手を引いてくれるかしら?出来る限りでいいわ。お金で解決できるのであればそうして頂戴。貴方か、それに準ずる誰かにこの家全体の売却と使用人への充分な退職金の配当も任せるわ。私にだってこの家と諸々の価値が安くない事くらいわかるわ。きっと十分な退職金にはなるでしょう」
「…お嬢様は、今後どうするのですか。」
「そうね、余った分と遺産でどこかで静かに暮らすわ」
「……畏まりました。直ぐに手配致します」
「ありがとう、マルコ」
「滅相もございません」
ごめんなさい、と彼女は呟く
彼女は姉が居なくなってからこの家に居てもいないようなものだった
正直、この家にトラウマのような嫌な思い出はあっても、思い入れはあまり無い
それでも、使用人達は彼女に優しかった。たとえそれが哀れみでも、同情でも、優しかったという事実は彼女に、歳頃の女の子にとって少なからず救いであった事は事実である
そんな優しい人達に、申し訳ないと思う気持ちはあったらしい
(…それでも、優しい人達との別れにもやはり寂しいとは思えないのね)
姉が消え、両親も死に、家を売り払った
ミレーナ・プルヴィレンティは齢十五にして、彼女の全てを失い、そして、一人になったのだった
ミレーナ・プルヴィレンティ (原話時点)15歳
マルコ・サロモーネ (原話時点)58歳
補足:プルヴィレンティ家の使用人
バルド・プルヴィレンティ 父親 故人 47歳
ダリラ・プルヴィレンティ 母親 故人 41歳