コードインリバース ~護士の因子~   作:偽薬

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ボイルとミセルの戦いによって壊滅した戦力部隊。

”隙間に亜空間を作る”能力を持ったコ―ディンが新たに隊長の座に就いた。

民間人の平和のため、そして会社の尻拭いのために、戦造人間コ―ディンは戦い続けなければならないのだ。


第一章
第5話 ~新世代の予兆~


バースコーポレーション戦力部隊が壊滅してから16年が経過した。

 

ボイルがいなくなったことにより、生き残っていたリバース獣は各地に散らばり、再び繁殖し始めていた。

 

新隊長に就任したコ―ディンは自ら戦力部隊の最前線に立ち、殲滅活動に勤しんでいた。

 

そして現在、彼は巨鳥ブラーフの討伐にあたっていた。

 

「KUWOOOOOOOOOOOOOOOOONNNN!」

 

一直線に向かってくるブラーフ。

 

その体はまるで鉄の塊のように巨大だ。

 

しかし、コ―ディンは動かなかった。

 

それどころか彼は手で自分の衣服を掴み、引っ張り始めた。

 

そして、あろうことか繊維を引きちぎり、その隙間に手を突っ込んだのだ。

 

一見するとまるで意味のない行動だ。

 

傍から見れば、戦意喪失したのかと思われるかもしれない。

 

しかし、それは無知による大きな間違いだ。

 

「!?」

 

次の瞬間、ブラーフの眉間の肉が抉り取られていた。

 

しかも攻撃対象であるコ―ディンの姿が消えている。

 

急にブレーキをかけきれずに、岩壁に傷口をぶつける。

 

「GWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOONN!?」

 

あまりの激痛で、コ―ディンが既に背後に回り込んでいることに気が付いていないようだ。

 

そしてその手には、先程までは無かったはずの金属が握られている。

 

サーベルのような持ち手がついているが、その先端は丸く、剣というよりもむしろ鈍器に近いものだった。

 

「民間人の避難は済ませた。後は任せる」

 

コ―ディンは胸部から取り外したヴァイタルコアを手に持ち、それに向かって話しかけた。

 

それを合図に、物陰からおよそ10人もの戦闘員が姿を現し、ブラーフに向けて集中射撃を始めた。

 

「NOOOOOOOOOOW……」

 

既にダメージを追っていたブラーフがそれを避けられるはずもなく、頭部を蜂の巣のようにされて息絶えた。

 

「これでまた一匹減ったな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本部に戻ってきたコ―ディンは、今回の事件を報告書にまとめて上層部に提出した。

 

「全く……16年も経っているというのにまだこれだけ倒せていないのかね。リバース獣は全部でまだまだ沢山いるというのに!」

 

上層部の人間との面会だ。たとえどんなに強くても、戦力部隊隊長の権限は経営部上層部には及ばない。

 

「申し訳ありません」

 

コ―ディンの殊勝な態度に、上司の怒りは薄れたようだ。

 

「……まぁ、あの惨劇から生き残った有力者は君ぐらいだから仕方ないかな。だが、明日からは新人達の研修期間が終了して本格的に戦いに加わることになる。だから今後はもっとペースアップしたまえ」

 

そう、それなんだ。

 

コ―ディンは内心そう思った。

 

リバース獣にも階級というものがあるらしく、下位種と上位種(それと最上位種であるリクイダス)がいる。

 

詳しいことはわかっていないが、下位種の数が多いところにはなぜか上位種は現れないという習性がある。

 

だから新人達が戦力部隊に加わるときまで、下位種の数を減らし過ぎないように討伐ペースを調整していたのだ。

 

そして明日がその時だ。

 

「……ノギさん、今からそちらに向かうので例のリストを準備しておいてください」

 

コ―ディンはヴァイタルコアでノギにメッセージを送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよっしゃーーーーーーーーーーーー!!」

 

訓練生の部屋が並んだ廊下に威勢のいい叫び声が響き渡った。

 

「うおぉい……相変わらずうるせぇなお前は」

 

声の主の隣にいる足の長い男、”カスケード”が呆れ顔でぼやいた。

 

「なんでだよ!!お前だって聞いただろ?明日から選抜メンバーの選別が始まるって噂!俺達が選ばれるかもしれないんだぞ!!?」

 

声を張り上げ続けている青年の名は”ファラデー”。

 

見ての通り、血気盛んな若者だ。

 

「まだそんなこと言ってんのか?選抜なんてする意味ないだろぉ。わざわざ数絞ってどうするんだよ」

 

カスケードは冷静そのものだった。

 

今更じたばたするぐらいならこれまで通り任務を遂行すればいいだけ。

 

それが彼の考えだからである。

 

「こらそこの二人!廊下を歩く時ぐらい静かにしなさい!!」

 

怒った顔をした女性が歩み寄ってきた。

 

「まぁまぁそうカリカリしないでテルミット!!」

 

「お前ときたら、叱られてるのにその態度……ってちょっと待ってなんで俺も!?」

 

カスケードが渾身のノリツッコみをかました。

 

たまたま近くでその様子を見ていた一人の男がその様子を後目に立ち去った。

 

(選抜?お前らのようなカスどもは選ばれんよ……新世代のエリートはこのゾルなんだからな)

 

三人から離れた場所で、男はほくそ笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ロクショウお前、聞いたか?上位種討伐に向けた選抜メンバーが選ばれるっていう噂!」

 

食堂の片隅で訓練生達が雑談をしている。

 

「そんな噂があるのか……?まぁ俺には関係ないな、非戦闘員だから」

 

”ロクショウ”と呼ばれた男がそうそっけなく答えた。

 

ファラデーと違ってあまりやる気が感じられないが、彼もまた訓練生であった。

 

「まーたそうやって。お前なら十分戦闘員としてやってけるって」

 

「嫌なんだよ、そういう面倒なの」

 

この時、ロクショウはまだ知らなかった。

 

自分の名前が選抜メンバー候補のリストに入っているということを。

 

 

 

 

 

to be continue…

 

 

 




「”富久”」

「……”バルクアップ”」

「あいつ、まさか……!?」

「ンンンンンスパァァァァァァキンッッッッッッッ!!!!」

(このレベルの実力者がまだいるのか……?)


次回  『発揮される力』

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