コードインリバース ~護士の因子~   作:偽薬

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カスケード達若手の活躍によりカーマは撃破された。
しかし数名が負傷し、ロクショウに至っては意識不明の重体で病棟に搬送された……


第8話 ~ネクスト・ステージ~

「あまり戦績が芳しくないね」

 

コーディンは上層部からの叱責を受けていた。

 

「申し訳ありません」

 

「専用武器まで持っておきながら下位種に傷一つ付けられないとは、戦造人間最強が聞いて呆れるよ……ボイルが生きていた頃の方がまだましだったんじゃあないかね?」

 

「ッ…………!」

 

「今後は気を付けるんだね、君の部下にだって有望株が結構いるんだから」

 

「……はい」

 

コーディンは戦力部隊の隊長ではあるが、それでも経営上層部の人間には頭が上がらない。

 

いくら戦闘力が高くとも超えられない権力の壁があるというのが戦造人間の辛いところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃっ、二人の無事を祝って乾杯!」

 

「うん、ありがと」

 

「お前は無駄に元気だな……」

 

食堂でファラデーがカスケードやテルミットと共に食事を共にしていた。

 

三人ともカーマとの戦いから帰還したばかりだ。

 

「奮発して多めに買ったんだけど、食うか?」

 

ファラデーが蛇の天ぷらを一つテルミットに差し出した。

 

もちろんリバース獣ではないごく普通の蛇の肉だ。

 

「いや蛇はちょっと……さっき食べられかけたばっかりだし」

 

「お前、デリカシーってもんはねーのかよエエ?」

 

カスケードがファラデーを睨む。

 

「別にいいじゃんか終わったんだから。食うってことは勝利したってことなんだぞぉ?」

 

そう嘯くと、ファラデーは何食わぬ顔で蛇の天ぷらにかじりついた。

 

「ところでさカスケード、お前の貫通弾も俺の電気みたいな能力なのか?」

 

「ちげーよ、俺のは地道な訓練で編み出した純然たる技だ!」

 

「じゃあ俺にもできるかもしれないのか?」

 

「オイオイオイオイ止めろって……俺のアイデンティテがィ薄れるだろうが」

 

「そうそう!そんな簡単に出来ることじゃないんだからねっ!」

 

三人はいつもの調子で語り合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ……ひどい目にあったぜ」

 

病棟では、ロクショウが非戦闘員に看護されていた。

 

元々ロクショウも非戦闘員だった。

 

彼ら彼女らとは元同僚同士ということになる。

 

「大丈夫?」

 

「大体なんで戦闘員になんてなったわけ?適性検査の時も嫌がってたじゃない」

 

「いやさ、なんだかんだ言って戦闘員の方が給与いいわけよ。それに俺には相手の攻撃を受け流す特殊な拳法があるから何とかなるかなって」

 

最上位種のリクイダスは既に前隊長ボイルに倒され、現在の隊長は最強と名高いコーディン。

 

リバース獣との不毛な戦いも自分たちの代で終わる。

 

ロクショウはそう睨んでいた。

 

そして戦いが終わった後の老後を見据えて行動していたというわけだ。

 

「でも考えが甘かったってわけね」

 

「戦造人間が皆好戦的なわけじゃないんだぞ?出来る限り楽な暮らしがしたいだけなんだよ俺は。『余計な苦労は買ってでも避けろ』、それが俺の人生哲学だったのにあの野郎のせいで俺は……」

 

「ヤコブって野郎か?」

 

ヤコブの事は非戦闘員の間で話題になっていた。

 

非戦闘員の情報ネットワークには目を見張るものがある。

 

多くの戦闘員を日々見守り、些細な変化を感じ取るエキスパートなのだから。

 

戦力部隊の調和をかき乱す荒くれ者は格好のスキャンダルだった。

 

「いや、違う。あっいや違わない。違わないけど違うヤコブに投げられたのは本当だけど直接攻撃してきたのは」

 

「何?じゃあ一体誰がこんなことを」

 

「……言ったら今度こそ殺されるから言わねー」

 

この時、ロクショウはまだ知らなかった。

 

残酷な運命が近づいてきているということに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロクショウをやったのはお前か?」

 

人気を避けた廊下に、ただならぬ雰囲気の二人の男が立っていた。

 

ヤコブとゾルだ。

 

「なんだその言い草は?最初に奴を放り投げたのはお前じゃあないか。責任転嫁はよせ」

 

「そんなんじゃねえよ。戦闘員はリバース獣を駆逐するための存在。多少怪我したって全部自己責任ってもんさ」

 

「じゃあ何故こんなところに俺を呼び出した?」

 

「感じたんだよ、俺と同じ匂いをあんたから……何ならあんたの計画に一枚かんでもいいぜ?」

 

「……ほう?」

 

ゾルに促され、ヤコブは戦造人間の存在意義に抵触する言葉を言い放った。

 

「この組織は腐っている。だから……」

 

その時、ヤコブの台詞を遮るかのように緊急サイレンが鳴り響いた。

 

戦造人間への招集命令だ。

 

「チィッ……続きはまた次の機会にしよう」

 

「そうだな」

 

二人は別々に散らばり、待機位置に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソっ、蛇の次はトカゲかよ!しかもこんなに沢山!!」

 

コーディン、ファラデー、カスケード、テルミットの4名の前には、トカゲのリバース獣が複数匹群がっていた。

 

しかし、今までのリバース獣とは異なり普通のトカゲと変わらないサイズだ。

 

「痛てぇっ!」

 

見るとファラデーの足に数匹のトカゲが噛みついていた。

 

戦造人間共通装備の特殊繊維を貫いて皮膚に達するのだからかなり鋭利な歯であることは間違いない。

 

「ええいっ消え失せろ!!ちゃあああああああああああああああ!!」

 

ぐっと気合を込めると足から電流が迸り、トカゲ達を焼き尽くした。

 

「やるぞテルミット!」

 

「うん!」

 

カスケードが宙に向かってエネルギー弾を放ち、空中に飛び上がったテルミットがそれにオーバーヘッドキックを食らわせた。

 

すると一つだった弾が複数個に分裂し、大量に群がるトカゲ達を一度に焼き払った。

 

「フンッ!」

 

コーディンがフラクチュアを一振りすると、そこから生じた風圧だけでトカゲ達の体は消し飛ばされる。

 

(こいつら、下位種にしては小さすぎる……まさか!?)

 

一通り片付いたタイミングで突如ビークルから通信が入った。

 

「どうした?」

 

「たっ、助けて……うわぁぁああああ!?」

 

激しい衝撃音と共に通信が途絶えた。

 

「!!」

 

その場にいた全員に緊張が走る。

 

「馬鹿なッ!?リバース獣っていったら大抵は暴れることしか考えてないようなやつなんじゃないのか?それなのに、俺達ではなくビークルを直接狙いやがっただと!?」

 

カスケードの言う通り、下位種がビークルが直接狙うなどということは普通なら考えられないことだった。

 

「……!?ファラデー!後ろから何か来るっ!!」

 

テルミットに指摘され、ファラデーが振り返ったその先にいたのは、大きな(と言ってもこれまでのリバース獣に比べれば小さい。精々乗用車ぐらいか)トカゲが迫ってきていた。

 

「うぉいつの間に!?」

 

「HAAAAAAAAAAAAAAA……」

 

そのリバース獣を見て、コーディンは違和感を感じた。

 

あまりにも落ち着き払っている。

 

「まさか……」

 

「食らえスパァァァァァァキンッッッッッッッ!!」

 

ファラデーはいつものように拳から電流を放った。

 

しかし、その攻撃は当たらなかった。

 

大トカゲは飛び上がり、交わしてみせたのだ。

 

「何っ!?」

 

一瞬でけりをつけるつもりが、逆に間合いを詰められてしまったファラデー。

 

 

「うっ、があああああああああああああああああああああ!!」

 

次の瞬間、ファラデーは突然苦痛に叫び、地面に倒れ伏した。

 

「そんな……っ!?」

 

カスケードとテルミットは目を疑った。

 

大トカゲは、自らの尻尾の針をファラデーの足に突き刺していたのだ。

 

「やはり異常だ……精密すぎる!足だけを的確に破壊するとは、やはりこいつは……!!」

 

「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!なめんじゃあねええええ!」

 

頭に血が上ったファラデーは再び電気攻撃の構えに入った。

 

「よせッファラデー!!」

 

「だぁぁあああああぁぁあああああああああ!!」

 

「…………プッ」

 

突き上げた腕から電流が放たれると同時に、大トカゲは口から何やら液体を放った。

 

それが触れた瞬間、電機は炎に変わり、ファラデーの全身に襲い掛かった。

 

「なにッゥワアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」

 

全身炎に包まれたファラデーは、もがき苦しみ、地面をのたうち回ることしかできなかった。

 

「……マズハ一人」

 

その時、不思議なことが起こった。

 

大トカゲの口から、片言ではあるものの人間の言葉が発せられたからだ。

 

「遂に出てきたか……上位種ッ!!」

 

戦力部隊は今、新たな窮地に立たされようとしていた。

 

 

 

 

 





「上位種には明確な知性がある」

「今度ハ我々ガオ前達ヲ狩ル番ダ」

「俺の言う通りになっただろう?」

「このままじゃ終われねぇ……もっと強くなりたい!」

次回 『生存抗争』

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