魔法の話   作:犬屋小鳥本部

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始めまして。
ここから、はじめましょう。

きっと、きっと、長い話となるでしょう。
ですが、どうか最後までお付きあいくださいまし。
「私たち」はそうやっておとなになっていくのでしょうから。


プロローグ-「私」というこども
「私」というこども


机の中の引き出しに入っている日記帳。

それすなわち、私の黒歴史でございます。

 

更に言うと、そのノートに挟んである一枚の手紙こそが黒歴史そのものでした。いつ書いたのか、いつ届いたのか全く記憶のないその手紙。

しかし宛名は私の名前。

最後に書かれた差出人も私の名前。

 

意味が分かりません。

 

捨てることもなんとなくできないまま、その手紙はノートの一番最後のページに何年も何年も居座り続けたのです。おかしなことに、私はそれを何度も何度も読み返しました。

頻繁にという訳ではございません。

日記帳に挟んであったので毎日触れていたというのも理由の一つかもしれませんが、そもそもなんで日記帳に挟んだのか。

 

まあ、なんにしても黒歴史の大半を占めたのがその手紙だったわけです。

 

 

 

「私」について話しましょう。

 

同年代の子どもからは特に好かれるわけでも嫌われるわけでもない、いたって「普通」の子どもです。

大人からは「中二病を患っている」等と言われました。若干痛々しいものを見る目で見られていましたよ。自覚しているので構いませんが。

ええ、構いませんとも。

 

本が、漫画が、アニメが、映画が好きでした。

特にSFが。

勉強も好きですね。知識を得ることはとても楽しい。

感情を表現することは少し苦手ですね。ですから、漫画やアニメの台詞を真似してみたりしますよ。これが中二病と言われる理由ですね。

 

友人たちには結構人気があるんですよ?このキャラ。

世界はいつだって自分中心にしか見ることはできない。

見ているものこそ世界なのだと信じて疑いませんでした。

 

私の日本語での名前は「烏刃 真黒(からすば まくろ)」。

まっくろと呼ばないでくださいませ。

9月からホグワーツ魔法学校へ入学する「この物語の主人公」でございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千切れた紙切れを握りしめて、私は下を見下ろす。

今日は私の最期の日。

復旧作業に追われている先生や生徒・その保護者や卒業生たち。

誰もが明日に希望を抱きながら力を合わせている。

 

ごめんなさい、私はこの先へいけないのです。

 

私の名前を呼ぶ声が聞こえる。

たくさんの人が亡くなった。

たくさんの人が傷ついた。

本当に多くの犠牲と引き換えに手に入れた「明日」という名の勝利。

 

私はどうしても納得できなかった。

全ての犠牲が本当に必要であったのか。

違う選択肢は、可能性はなかったのかと。

 

私は違う未来を望んでしまった。

 

自らの命と引き換えに。

 

「今」の私は1999年の壁を越えることはきっとできないだろう。

笑って2000年を迎えるにはこうするしかなかったのだ。

 

どうかあのときの私よ。

全てを閉じてしまわないで。

 

そう祈りながら、私は握った手と反対の手に持つナイフを

 

首にあて

一気に

引いたのだった。

 

 

 

 

『さようなら、私の素敵な世界』

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