時は流れて幾数年。
あの子こと、トムがホグワーツ魔法学校へ入学して何年か経ちました。
優等生だという話をよく聞きますが、どう考えても嵐の前の静けさなんですよね。
疑っているわけではありません。むしろ信じています。
…あの子がなにかやらかすことを。
ぜっっったい、何かやらかすだろ。おい。
といっても、構内には入れないため私はいつもと同じように周辺の森で散歩をしたり、他の生き物と戯れたりします。
姿は毛玉から獣の姿へ。四つ足獣は意外と動きやすいものなのです。
がぁーおぉー。たぁーべちゃぁーうぞーぉー。
なんちて。
長い時間ここで暮らしているため、完全に私の庭となっています。生き物とも顔見知りなので危険なことはまずありません。
私はいつものように樹の根元にまるくなって眠ります。
痛い。
以前飲み込んだ石の影響で、私の魂は時間をかけてゆっくりと変質していきます。
普通ならばすぐに石に取り込まれるはずの魂ですが、私の場合持っている魔力が大きいせいでクッションとなっているようです。
ゆっくりと、ゆっくりと。
石が自分に溶けていく。
自分が石に溶けていく。
side Tom
ホグワーツに来る前から一緒にいた毛玉が最近姿を現さない。
あの喋る毛玉め。
いくら構内に入ることができないからといっても、以前は充分すぎる位頻繁に見かけていたぞ?
あの事について聞いておきたかったが、しょうがないか。
このまま計画を進めることにしよう。
あの子が私を構内に呼び出しました。
嫌な予感しかしません。
呼び出された場所に行くと、閉められた扉から泣き声が聞こえてきます。
「…いじめですか?というか、ここ女子トイレじゃないですか」
「気にするな。要件はこれからだ」
それからあの子はいつか聞いた覚えのある言語を口にしました。
空気を吐き出すような特徴あるその言葉。
私はそれを聞きながら、体が剥がされるような異変を実感していました。
頭が痛い。
脈がやけに速い。
呼吸が荒くなる。
お前のいるべき時間はここではない。
拒絶してはいけない。これは私が選んだことだ。
もうすぐ、かえらなくてはいけない。
でも、
あと一個。しなければならない事がある。
体の長いあの方があらわれ、泣き声の主の方を向いたとき。
あの子は黒い手帳を手に持っていました。
扉が、開かれます。
私はあの方の頭に飛び乗ります。
そして、私はあの方の顔を向くようにして体を落とします。
あの子は一瞬泣きそうな顔をして
「どうして」
と言いました。
「忘れないで。私はいっしょです。
貴方に…を」
毛玉は消失したようです。