「至高の御方だけど浮気は良くないと思う」 作:abc
この世界が夢であったならどれほど良かっただろうか?
高級感あふれる執務机に座りながらペンを走らせる彼は、ついそんなことを考えてしまう。どうにも手元にある書類に書かれている内容もあまり頭に入って来ない。最近の彼は心ここにあらずと言った様子が連日見受けられた。
彼は2138年の日本を生きるごく普通の青年であった。
2138年の世界は環境・治安の悪化、貧困層と富裕層の格差拡大、政治の腐敗など昔に比べ人が生きていくには過酷な世界になっていた。そんな世界の中で富裕層に生まれてきた彼は幸運であると言える。教育、生活、自分を愛してくれる人、などそれら全てに恵まれてきた彼は立派な社会人として生活していた。
この異世界に来るまでは……。
彼はとあるDMMORPGをプレイすることを趣味としていた時期があった。
名前は『ユグドラシル』。かつてDMMORPGの頂点とまで呼ばれたゲームであった。彼自身も当時の流行に乗りこのゲームをプレイしていた。そしてとあるギルドに所属することになる。ギルド名『アインズ・ウール・ゴウン』ゲーム内種族で異形種と呼ばれる物だけで結成されたギルドに彼も参加したのだ。
アインズ・ウール・ゴウンは41人ものメンバーが在籍し、ギルドランキングにも載るほどのギルドであった。仲間と共に冒険をし、時には助け合いなどを経てこのゲームにのめり込んでいた。
しかしそんなユグドラシルとアインズ・ウール・ゴウンにも盛者必衰の理に逆らうことは出来なかった。12年という決して短くない時の流れの中で多くのものがアインズ・ウール・ゴウンを去っていった。ギルド長であるモモンガを残しほぼ全てのギルドメンバーがゲームを引退していく。
もちろん彼も例に漏れず、引退することを決めた。
現実の世界「リアル」は、昔に比べ人が生きていくには過酷な世界になっている。メンバーそれぞれには、その過酷な世界の中でやらねばならないことがあったのだ。モモンガも含め、生きていくために必死で働く必要があった。それでもギルド長の誇りとアインズ・ウール・ゴウンへの愛があったモモンガだけが一人残るという結果になってしまった。
そしてついにユグドラシルが12年の歴史に幕を下ろそうという時が来た。多くのゲーム内ギルドが終焉の悲しみにくれたり、これまでの思い出に花を咲かせたりと、騒いでいる中で、アインズ・ウール・ゴウン、ギルド拠点のナザリック大墳墓は通夜のような静けさに包まれていた。
ユグドラシルの最後を一緒に過ごさないかと誘いを掛けたモモンガであったが、数人が短い間だけ顔を出しに来た程度であった。
そんな中で最後まで付き合ってくれたメンバーがいた。
それが彼であった。
モモンガに会うためにわざわざ新規でキャラクターを作り、会いに行ったのである。そして二人は共にユグドラシルの終わりを迎える……はずだった。
端的に言えばナザリックごと異世界に転移してしまったのだ。そして虚構の存在であったナザリックやNPC達、さらにゲームで使っていたキャラクターの見た目や能力などが現実となった。
それからは彼とモモンガの二人は異世界で情報などを今現在も集めながら生活している。
◆
そして現在彼はナザリック内の執務室で事務仕事をこなしていた。基本的に彼はナザリックの外に出ることはない。というのも新規キャラで最終日を過ごしたために、レベルが現時点では一桁程度しかないからだ。そのため身の安全を確保するという意味も込めてナザリック内に留まっている。
そんな彼も悩みは尽きない。
NPCとの関係性、異世界での情報収集、そして何より現実世界に残してきた者たちへの思いが彼の心を曇らせていた。
愛している存在がいた。交際を始めて今年で丁度一年になる筈だった。ずっと一緒にいたい、心からそう思える相手だった。だがその思いも今は無常に引き裂かれてしまっている。この異世界に流れ着いてから数ヶ月が経過しようとしているが、彼女は元気だろうか?自分の事を心配しているのではないかと考えてしまう。
重くそれでいて気が滅入るような長い溜息を一つ零しながら、止まっていた手を再び動かそうとする。その時同じ執務室内で側に控えていたメイドが声を掛けてくる。
「お疲れのようでしたら少し休憩を挟んでは如何でしょうか?」
「ありがとうユリ、でも大丈夫少し考え事をしていただけだから……」
話しかけてきたメイドの名は『ユリ・アルファ』。ナザリックに存在する七姉妹の戦闘メイド『プレアデス』の長女であり、かつてのギルドメンバーが作り上げたNPCの一体だ。
黒い髪を結い上げて眼鏡を掛けているメイドである。
異世界転移と共にNPCは意思を持ち、彼やモモンガに対して絶対の忠誠を誓っている。そのあまりにも高い忠誠心に彼も最初は戸惑うこともあったが、今は何とか上手く接することが出来るようになっていた。
またこのユリ・アルファを含め基本的にナザリックのNPCは全て異形種で構成されている。それがナザリックの特徴であり個性でもある。彼自身も現役時代は異形種のアバターを使用していた。
「僭越ながら進言させて頂きますが、休養を取ることも重要なことです。最近は溜息をつく回数が多いと他のメイドからも聞いております」
「溜息まで聞かれていたのか……まあ、ちょっと悩みがあって……」
「悩みですか……差し出がましいようですが話してはもらえないでしょうか?至高の御方が悩みを抱えているのであれば、僕として助力させていただくのが務め……悩みを打ち明けるだけでも気分が変わることがありますし……」
「う、うーん、どうしようかな……」
彼としては自分の中身をNPC達に話すつもりなど無かった。NPCは現実世界のことは一応知ってはいるものの、その世界についてあまり良い感情を持っていないのではと彼は考えている。
現実世界の事情のせいでNPCたちが至高の御方と呼んでいるギルドメンバーが、結果としてナザリックを離れてしまっているためだ。だから彼やモモンガは積極的に現実世界やその周辺の話をすることはない。
だがユリの真に彼のことを心配する表情に、少しだけ話をして見ても良いかもしれないと思い始める。
そして少しだけ口を緩めた。
「じゃあ、話させてもらおうかな」
「はい」
それから彼は自分の隠していたつもりの悩みを打ち明ける。彼女が現実世界にいること、そしてその彼女のことが心配であること、本当の居場所に帰りたいという思いが残っていることなどを話してしまう。
ユリは真剣に彼の話を聞いている様子であった。そんな姿に思っていたよりも饒舌になってしまう彼。
「それで…どうしても残してきた人たちのことが不安なんだ……急にいなくなって大騒ぎになってるんじゃないかって。だから出来れば早く帰りたいなとも考えているんだけど、今は何も手掛かりがなくてさ」
「…………なるほど」
「うん、この世界に来る前はほぼ毎日会ってたから……きっと心配しているだろうな……はぁ……」
「…………」
ユリが小声で何かを呟いているがその言葉は彼に届くことはなかった。
また彼が気付かない程に、ほんの一瞬だけ苦虫を潰した様な顔をしたユリ。
そして無意識のうちに再び深いため息を付いてしまう彼。
「ごめんねユリ、愚痴ばっか聞いてもらってさ、ユリの方も何か悩みとかあれば聞くよ?ユリにはいつもお世話になっているから」
ユリを含めたプレアデス達は交代で彼のお付きのメイドとして働いてくれている。だから彼自身はどこかでその恩返しを出来ればいいなと考えていたのだ。
彼の提案を聞いたユリは、少しの間思案を巡らせた後に口を開く。
「そうですね……それでは明日の夜に、少しの間お付き会いをしてもらいたいのですが如何でしょうか?」
「別に良いけど……どこか行きたい場所でもあるの?」
「あなた様の気分転換のお役に立てればと思いまして、バーにお誘いしたいのですが如何でしょう?」
ユリは彼の悩みや憂鬱な気分を払い除けるという意味を込めて、ナザリック第九階層に存在するショットバーに行くことを提案してくれる。ナザリック内には様々な施設が存在している。しかし彼自身は一度もそうした施設を利用したことがなかったために今回はいい機会だということで行って見ることに決めた。
「バー……ああ、そう言えば第九階層にあったな……いずれ行こうとは思っていたから別に構わないかな」
「それでは明日の夜にバーで」
「うん、分かった」
その後、少し休憩した後に再び事務作業に戻る。少し休んで気分をリフレッシュさせた効果なのか集中して作業に取り組むことが出来た。
ただ、彼自身はバーに行くにあたって懸念事項が一つあった。それはお酒に弱いということである。そのためこの世界に来てからもNPCの前で一度も飲酒をすることはなかった。それでも友人であるやまいこの作成NPCであるユリの提案を断ることは出来なかった。
明日は飲みすぎないように気を付けよう……そう心に決めた彼であった。
◆
翌日。
彼は自室の姿見の前で自分の服を確認していた。彼は基本的に華美な服装を好まない。そのためいつも通りの白のYシャツに黒のスラックス、そしてお気に入りの黒い革靴を履き、比較的フォーマルな格好になる。
現時刻はユリと約束していたバーに向かう少し前の時間であった。一応服装を整えることにしたのである。
今日の仕事のノルマは昼間のうちに終わらせていた。そして明日は休日を取るとモモンガには伝えてある。だから今日は少しくらい長く酔っても良いだろう、などという風に考えていた。
「こんなもので良いかな……それにしてもバーか、あっちにいた時は割と通っているところがあったな……懐かしい」
富裕層であった彼はよく彼女ととある場所の行きつけのバーを利用していたことを思いだす。下戸な彼と違って、彼の彼女はほぼザルの様に酒を流し込んでいた。そのためいつも彼の方が先に酔ってしまい、彼女に家まで送って行ってもらうというのが習慣になっていた。
「うっ、ダメだ……元の世界のこと考えれば考える程気が滅入ってしまう……はぁ、今日は良い気持ちで酔えればいいなぁ」
気分が落ち込んでしまう前にさっさと酔ってしまおうと考える。ナザリック内のほとんどを自由に瞬間移動することが出来る魔法の指輪『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を手にはめる。
彼は魔法やスキルが低レベルのためほとんど使えない。そのためそれらを行使する際にはマジックアイテムやスクロールなどを使用する。ちなみに完全武装でスクロールを湯水のように使った場合は、レベル35程度まで戦闘力を上げることが出来る。なお何も装備していないと一般メイドにすら勝てるか怪しい。
「ゲームを引退するときにアカウント消さなければ良かったなあ……」
服装を正し直すと指輪を使い、第九階層のバーの目の前に瞬間移動する。
このバーはナザリックの中でも一部の者しか利用しない。そして今日は初めて彼がバーに来るということで副料理長が貸し切りにしたのであった。
「入らせてもらうよ」
ドアノブに手をかけてゆっくりと扉を開ける。店の中は落ち着いた色合いの照明や綺麗なデザインのカウンターやイスなど、この空間にあるもの全てが特有の静かな雰囲気を醸し出している。
店内には既にユリが待っていた。
服装はいつものメイド服ではなく黒を基調とした完全な私服であった。
普段とのギャップに可愛らしさを感じさせられる。
「思っていたよりも良い所だ……」
「いらっしゃいませ、こちらの席にどうぞ」
「あ、はい……」
バーテンダーに促されるままにユリの隣に座る。
「ごめん、遅くなっちゃって」
「いえ、ボ……私も今来たところなので気にしないでください。このバーに来るのは初めてだと仰っていましたが……」
「うん、だから何を頼もうかなって迷ってるんだ……知っている定番を頼んでも良いけど、折角ならナザリック限定のものを飲んでみたい。ユリは何かおススメのとかある?」
「私もあまり通っているという訳ではないのですが、気に入っているのがあるのでそれを注文しましょうか。すいません、カクテル「ナザリック」をお願いします」
バーテンダーはユリから注文を受けると早速カクテルを作っていく。
彼はユリが自分のために注文したカクテルが何なのか気になって聞いて見る
「あの、ユリ……そのナザリックっていうカクテルはどういう……」
「十種類のリキュールを使ったカクテルで、ここナザリック大墳墓の名前が付けられたものになっています」
「それは楽しみ」
彼は副料理長の腕は知っている。変なものは出してこないだろうと予想を立てていく。そして出来上がった綺麗な色をしたカクテルを二人は飲んでいく。
私服で来ているユリに対して今回の誘いの礼と、一応服装のことを褒めておく。
「今日は誘ってくれてありがとう、それといつものメイド服じゃないユリは少し不思議な感じがする」
「やまいこ様から頂いた服なんですが……変ですか?」
「ううん、そんなことないよ、とても似合っている。ただいつもメイド服しか見てこなかったから何だか新鮮な感じするかな」
「……ありがとうございます」
彼は副料理長の腕は知っている。変なものは出してこないだろうと予想を立てていた。そして出来上がった鮮やかな色をしたカクテルを二人は飲んでいく。
「割と甘くて飲みやすい、美味しい」
「…………それは良かったです。他にも様々な種類のお酒があるので違いを楽しむのも面白いかと思います」
「そうなんだ、じゃあ少しだけ飲み比べをしてみるかな」
その後はユリと雑談をしながら酒を味わい、他愛もない話を肴に飲み進めていく。また、二人きりということもありユリの口調もいつもよりは柔らかいものになっていった。
話が進むにつれて更にユリに勧められるままにアルコールを飲んでいく彼。勧められたお酒を断ることが出来ず飲んでしまう。それに対してユリの方はゆっくりと味わように飲んでいた。その仕草は上品さを感じさせられると同時に、女性特有の可愛らしさが漏れ出ていていつもより魅力的に見えた。
「こうして誰かとお酒を飲むこと何て久しぶりかな。現実世界では彼女と一緒によく飲みに行ったりしていたんだけどね」
「そうですか……やはり現在はお会いになれなくて寂しいですよね」
「う、うん、でもまあ、こっちにはユリや皆がいるから賑やかではあるかな」
ここでもついついと愚痴を漏らしてしまう彼であった。
先に酔いが回ったのは案の定彼の方だった。
バーに入店して数時間後、完全に彼は酔いつぶれてしまっていた。目の前が歪んで見え、呂律が回らなくなり、上手く思考することが出来ない。その様子を確認したユリは彼に肩を貸しながらバーを出る。
「うぅ……少し……飲み過ぎたかも……」
「大丈夫ですか?……部屋までお送りしますので転移をお願いします」
「あ、ありがとう、ユリは優しいね」
「……僕として当然のことです」
彼がリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを使い自室まで転移する。自室の中に到着するとユリは彼の服に手をかけ脱がしてくる。
「寝衣に着替えさせて頂きますね」
「えっと、いつも通り……一人で着替えるから大丈夫だよ……」
「いえ、今の状態での着替えは転倒などの危険があります。ここはメイドである私に任せてください」
「は、はい……」
そうして彼の服装を脱がしにかかるユリ。だがその行為自体に少し違和感がある。積極的に体と体を密着させてくるのだ。背中に胸を押し付けたり、触り方が妙に艶めかしかったりする。
彼は最初は自分の勘違いか考えすぎ、または意識のし過ぎだと思っていたのだが、どうにも様子がおかしかった。
ユリ自身がどこか色を含んだ表情をしていた。
「ね、ねえ、ユリ、少し距離が近くないかな……」
「そんなことはありません」
「……でも」
「…………ああ、あなた様は本当にいじらしいですね」
「えっ?」
そう言って下着だけの状態になった彼をユリはベッドに寝かせる。そして彼の腰にまたがる様にして座ってくる。急な行動に思わず目を見開いてしまう彼。自分の上からユリをどかそうとするが酔った状態では力が出ないし、何よりユリの方が彼よりも何倍もレベルが上であるため無理なことであった。
ユリ自身も着ている服を脱ぎ捨てながら彼の言葉に返答する。
「あのー、ユリ、どうかした?えっと、退いてもらえるとありがたいんだけど」
「……至高の御方の僕として今宵はボクが夜伽を務めさせて頂きたく思います」
「夜伽って……そんなこと望んでいないんだけど……」
「そうでしょうか?こちらの方は既に準備をし始めている様子ですが」
「うぅ……そ、そんなこと……」
ないとは言い切れない。彼のそれはこの状況に興奮を感じていた。
こちらの世界に来てからそういったことは全くと言っていい程してこなかった。常にメイドやら護衛やらが付き従っている状況が当たり前だったからだ。
それらを我慢している状態で、現在のユリからのアプローチにより不覚にもこうなってしまったと言うのが真実であった。
だが夜伽はないと言い切れる彼。
NPCとはいわば今は消えたギルメンの思いを受け継ぐ子供のようなものである。そんなNPCに対して自分の醜い劣情をぶつけるようなことをすることは出来なかった。それをしてしまえば自分の中の何かが変わるような気がしてならない。
だから……引くわけには行かない。
「とにかく……今すぐ退いて……こ、これは命令だ」
自分達に絶対的な忠誠心を持つNPCに対して命令という言葉は絶対である。あまり口に出すのは憚られるが今回の状況では仕方ないと判断した。
「至高の御方の真意を汲み取り、それ忠実に実行するのが私達僕の仕事。大丈夫です、何も怖いことなどありません。あなた様の本当の思いのままに従ってみてください」
そう言って着ている服を全て脱ぎ去るユリ。
彼の色白の顔が少しだけ朱に染まる。
男としての本能なのかその美しい裸体から目を離すことが出来ない。
こちらに来てずっと我慢していた思いが漏れ始める。さらに追い打ちをかけるようにアルコールの効果で思考が上手くまとまらない。
本能が叫ぶ。体に血が集まる。だけど理性はまだ崩れない。
「で、でも、やっぱりこんなことは……」
「それは……愛する人がいるからですか?」
「そ、そう、あとキミを汚すようなこともしたくないから……だから……」
「では、こうしましょう。あなた様は酔ったボクに迫られて仕方なくことに及んでしまったと。抵抗はしたものの力により無理矢理やらされてしまったのです。だから……負い目何てなに一つなく、何も悪くない。全ての罪はボクにあります。だから『仕方がなかった』のです」
「仕方がなかった……」
なんて甘美な響きなのであろうか。
彼の酔いで霞がかっている頭では最早正常な判断は出来ない。
目の前に禁断の果実が落ちていたのだとしら、それを食べずにはいられない。
特にその根源たる欲求が深ければ深い程に求めてしまう。
そして何より禁忌を犯すことの罪さえ消えるのだとしたら……
噛り付かない訳などなかった!
「そう……か……そうだ、これは仕方なく、だ、だから……」
彼も最後の一枚を脱ぎすて、情欲に負け、溺れていく。
勝負は最初から負けが決まっているようなものであった。
◆
「ごめん……ごめん……(現実世界に残してきた彼女に謝りながら腰をふる)」
「あっ……あ、謝る必要などありません……ん、あなた様は悪くない……!」
彼をこの世界に繋ぎとめるための一つ目の楔は撃ち込まれた。
◆
モモンガは彼の側に忍ばせていたシャドウデーモンの報告を聞き歓喜する。
「素晴らしい……素晴らしいぞ!そうだ!あんな「リアル」の事なんて忘れてナザリックに心を移すことのほうが正しいんだ。ユリは忠実に動いてくれたが……まだ足りないな。もっともっと彼の心を縛り上げないと……」
物語はまだ始まったばかりだ。