雄英高校 1年A組 教室にて。
「あっ。障子くん、ペン落としたよ」
「おっ、おう。は、葉隠か。ありがとう」
他の学校でもありそうな、そんなありふれたやり取りがあった。
それを見ての、女生徒らのコメント。
「なんか、男子ってたまに、葉隠さんにキョドるよねー」
「え? なになに私ってばモテてる? モテ期?」
「いや見えないとは言え、たまに全裸でいるクラスメイトを意識するなって、それ男子高校生には酷やからね?」
まあ、その通りではあるのだが。
それだけではなかった。
障子くんのポケットには今、とあるものがこっそりと隠されているのだ。
異形系向けに、やたらとサイズの大きなトイレの個室。
そこへと逃げ込んだ障子くんは、その隠し持っていたものを慎重に取り出して、手の平へと置いた。
「…………間違いないな。これはアレだ」
それは、偶然に拾ったものだった。
それは自分の個性 "触手" の優れたセンサーで、たまたま見つけたものだった。
それは床に落ちていた、透明なものだった。
それは。ちぢれた 毛 だった。
ストレートではなく、太くて短めの毛だった。
短いとは言え、スネなどの毛ほどではない長さの、毛だった。
「どうすればいいんだろうな、コレ……」
障子くんは健全な高校生男子だ。
十代男子ゆえに、性欲は強い。だが。級友の背の低い彼とは違って、特殊な性癖はあまり無かった。
ゆえに、それを口にするとか嗅ぐとか、そうしたい衝動は無く。
使い方が、さっぱりわからなかった。
だが捨てるのは何かもったいない。
クラスメイトのJKのナニとか、普通は手に入らないどころか、見ることも無いのだ。
いや、コレは透明なので見えないけども。
捨てがたいが、どうすればいいのかはわからない。
誰かに相談も出来ないし、本人に返すのは絶対に間違いだと、さすがにわかる。
悩みに悩んだ彼は、結局それを自室の机の引き出しの奥へと、しまいこんだ。
物が透明だけに、隠しやすかったのも捨てなかった理由の一つだろう。
ところで。最初のあたりで、こんなセリフがあったのを思い出して欲しい。
「なんか、男子ってたまに、葉隠さんにキョドるよねー」
今日の障子くんの悩みは、実は他の男子も何名かが通った道だったようだ。
首の部分からブラとか、背中やお腹がチラッとした時にパンツとか。
身体が透明なので、透けて見えてしまう葉隠さんは、授業の関係で脱ぐ時とか、脱いだ後とか。
そのまま、履いてない付けてない状態の時もあるようで。
そんな時に、落し物をしてしまう事も、まあ、あるようなのだ。
誰か指摘してやれよと思うが。
切り出す難易度が高すぎるので、おそらく彼女はこのままなのだろう。
まあ、実害は無い、と思うので。
男子も女子も。
ドンマイ。