雄英体育祭も終わり、職場体験へと各々が日本各地のヒーロー事務所へと散って。
そして久々に帰ってきた学校の教室。
机と黒板と、コンクリの壁と床。
殺風景なはずなのに、なぜか暖かさを感じるのは、クラスメイトの存在ゆえか。
事件やヒーローの職場の体験という、刺激のある日々を送ったせいだろうか。
1-Aの面々は、短い間離れただけだったのに、帰ってきたという懐かしさすら感じていた。
確実に、気のせいである。
十代の多感で繊細な感覚による、ただの錯覚だ。
だがその錯覚は、彼らのテンションを確実に上げていた。
そこへブチかまされる、唐突に始まった『笑ってはいけない雄英 in 授業』。
笑わせにかかっているのは、爆豪(8:2坊や)だ。
いや、彼もわざとそうしているわけではない。
体育祭優勝者として、多くのヒーロー事務所からの誘いが来た中で、爆豪がベスト・ジーニストを選んだ結果、そうなってしまっただけだ。
第4位というヒーローランキング上位のノウハウを学ぼうとしたのだが。
エレガントさが足りない。という謎の理由で、まずは髪型がいじられてしまったのだ。
そして戻らなくなった。
何度セットしても、勝手に髪が爆発するように逆立つ爆豪ヘアーに、ベスト・ジーニストが意地と執念で仕込んだ髪型。
それが、キッチリセットされた8:2ヘアーだ。
洗髪しても戻らなかったらしい。
人には、キャラ。キャラクターというものがある。
普段は粗暴な態度の爆豪が、キッチリした髪型で普通に授業を受けているだけで、もう、なんかギャップで面白いのだ。
「手を上げて答えるだけで面白いのは、なんかもう卑怯だと思う」
とは、電気系の個性の級友の談。はい。という返事だけで笑ってしまったそうな。
「かっちゃんは態度は悪いけど、姿勢はいいから、一見するとマジメな生徒に見えちゃうのも卑怯なんじゃないかな」
というのが幼馴染の談。なおこの後、本人に怒られた。
最終的には、爆豪の怒りで髪型はぽんと爆発するように戻ってしまうのだが。
イベントの終わりを惜しむ者はいたが、もう一回やってくれと思うものは、生徒の中にはいなかったそうな。
生徒の中には、というのは。
1-Aに限らず、教師らも、この笑ってはいけないイベントに強制参加であったからだ。
特に授業は普通と評判の、プレゼントマイクがヤバかったらしい。
授業中は教師としてマジメにやっているのに、ついいつものノリに戻りそうになったそうな。
また担任として爆豪を良く知っている分だけ、相澤先生も地味に危なかったらしい。
ミッドナイトは指差して笑ったらしいが。
ひとしきり笑ったあとは、特にいじらず普通に授業を進めたそうな。
短い職場体験でこうなったのなら、本格的にインターンへ行ってしまったらどうなるのか?
1-A男子の一部の間で、軽い賭けの対象になったりもしたが。
その答えがわかる日は、来るのだろうか。
それを一番待っているのは、実は爆豪なのかもしれない。