「緑谷、ちょっといいか」
学生寮ハイツ・アライアンスには、寮母さんがいるわけでもないし、ランチラッシュが面倒を見てくれるわけでもないので、自炊である。
各々が自分の分を作ったり、合作したりと、そこは色々だった。
爆豪などは基本自分用のみ(激辛が好みなせいもある?)だったり、料理の腕に自信が無いので、誰かしらに混ざる上鳴、逆に面倒を見る砂藤がいたりと、個性的だ。
だが食事の時間は同じであり、彼らはそこでコミュニケーションをとったりもする。
そして後片付けも終わった、そんな食後のひととき。轟が緑谷に、声をかけたのだ。
「うん、いいよ、なに?」
「ちょっと聞きてえんだが」
食後のミルクをぐいっとキメながら、軽く応えた緑谷が、次の瞬間ミルクを派手に気管に入れてむせた。
「永久脱毛ってどう思う?」
BUUUUUU!
横で聞いていたお茶子と飯田は吹いた。緑谷と違って、飲み物は口に含んでいなかったのは幸運だ。
「エフッガハッ… ど、どういうこふぉ? エンデヴァーが嫌いすぎて、とうとう髪の色までストレスにふぁってきたとか!?」
ティッシュでミルクを処理しながら、緑谷がやや噛み噛みでひどい事を言い放ったが、誰もそこにはツッコまない。
轟の父の個性は、
「ちょっと合ってる」
(((合ってるんだ…)))
A組みんなの心をひとつにしつつ、真相は明かされる。
「だが髪の話じゃなくてな…… なんつうか、無駄毛の話なんだ」
「無駄毛」
顔からして母親似の轟は、体毛も男子にしては薄い方だった。しかしさすがに高校に入ってから、ここ最近。腕やら脚に生えてきてしまったという。
「しかも左側だけハッキリ濃いんだ」
「左側」
父親から受け継いだ、炎の個性の宿った左半身。思わずそこに注目した一同は、彼の父を思い浮かべて思った。
ああ、濃そうだもんな……
「色も左右で違うから、そういう意味でもバランスわりいし、いっそ永久脱毛しようかと思ってよ」
調べたら、メンズエステってやつで、そういうコースがあったんだ。
そう説明する轟の後ろで、A組一同が集まって緊急会議が行われていた。議題は
『永久脱毛はすべきだが、その前に一回見たい。なんなら写真撮りたい。で、誰が言う?』
「相談されたのはデクくんだよね」「いや、ここは学級代表の委員長が」「女子の誰か…」「かっちゃん?」ナンデオレガ「この際聞いちゃうけど、轟くんって下の毛も紅白なの?」「やめてやれ」
会議は短いながらも白熱し、女子にいいとこ見せようとした峰田が名乗り出たところ、どうぞどうぞと背中を押されて。
A組のみんなのスマホには、上半身裸に短パンの轟の写真が残されたそうです。
それもきっと。アオハルの1枚。