DIOは夢を見ていた。
その夢にはハナコが出てきた。
夢の中で、許さないと言いながら、包丁をDIOにふりかざし、喚いて走り回っている。あまりにも恐ろしい形相で走ってくるので、たまらずDIOは走って逃げた。
夢の中でよくあることだが、なぜか特殊な設定を日常のように感じたり、なぜか有り得ない人物が夢に出て来ていてもそれが普通のように感じるのが夢なのだ。
夢の中にいるDIOにスタンドという概念は無い。何故か考えもつかない。なので、ハナコはとても楽しそうに好き勝手やっていた。
包丁を振り回し、DIOを捕まえ、筋肉の隙間に振り下ろす、四脚をもぐ、去勢するなど。あまりにグロテスクで恐ろしいし、なによりも痛みがあるため、寝起きは汗をぐっしょりとかいていた。
怪奇現象ともいえる連日の悪夢に心身共に参ってしまっていた。そしてこの朝、やっと犯人のめどかついたのだった。
「うう、このDIOが恐怖を感じているだと…このDIOが…クソ、ハナコめ、あの女の差し金に違いない……許せん…」
この男、悪夢を見るのは初めてでは無かった。
ここ一週間ほど続けて悪夢を見ており、その種類は様々であったが、最後は死んで夢から覚めるという悲惨すぎる夢であった。なぜこんなにも続けて悪夢を見るのか…?
DIOはこの一週間、アロマを炊いたり、ストレッチしてから寝るなど、あらゆる努力をして安眠に持ち込もうとしたが、無理だった。そして、最後にはなにかの暗示かと思って夢の内容をしっかりと振り返ってみた。
その結果、わかった。この夢の原因はハナコであると。1日目の夢など水を運んできただけのチョイ役であったが、確実にどの夢にもハナコが登場していた。ハナコにしてやられたのだ。
確かに、ハナコの能力には強い幻覚作用があり、テレンスから聞いた話だと、矢に射抜かれる前に既にハナコはスタンド能力者であったそうだ。
ならば、その拍子に何か変化があっても不思議では無い。新たな能力が本人も知らぬ間に兼ね備わっているなど。
それに気づいたDIOはすぐにテレンスに拷問器具を用意させて、ハナコを拷問にかけてやる準備をした。
「wryy…よくもやってくれたなハナコォ………貴様は許せん、骨の髄まで責め尽くして嬲り殺してくれる…」
DIOの殺意は止まることは無かった。考えれば考えるほど憎く感じて仕方ない…悔しくて悔しくてたまらなかった。
この男、自分がやられたままグッと我慢するということを絶対にしない男である。やり返さないと済まないという性格なのだ。
また、悔しく思うと同時に、ハナコを拷問するのを楽しみにする気持ちも芽生え始めた。あの女は、窮地に追い込めば追い込むほど本性を表していくタイプの女である。普段は牙を隠して生きているが、追い込まれると化けの皮が剥がれて牙を剥き出しにして、殺意を放つ。
そして、それは追い込まれた末の殺意であり、絶対的な絶望下で悔しがる顔である。それができる女はなかなかいないものだ。
「ククククク………カカカ…」
そんなレアな女を拷問するのだ。DIOの心情に悔しさよりも興奮が勝った。
今まで拷問などした事のないDIOであったが、いつかはしてみたいとは思っていた。己にはサディズムの傾向があると自覚している。
男でもいいが、その時はとびきりの美青年を。女なら、どんなに美しくても、簡単に泣き叫び命乞いをするただの女じゃ駄目だ。気が強くて、心の芯を折ったらどうなるのか、心の内の信じるものを失った時どんな顔をするのか。精神の向こう側を見たいと感じる女でなければ意味が無いのだ。
少し優しくされるとすぐ相手を信用する、騙されやすく、折れやすく、内に秘める思想は危うい。また、若く、未来溢れる少女だというのに、その目はどろどろと濁っていた。
なんで生きてるのかよくわからない女だが、ハナコは絶対に死にたいとは思わない。
俺は、奴のそう言うところを気に入っている。
だから、痛めつけてやりたいと思うのだった。
「いいぞ、いいぞハナコ……私はお前の様々な顔が見てみたい。お前を責め抜いて、もうやめて下さいDIO様、私が悪かったです、と言うまで許さないぞ。クククク………」
***
事の真相のお話
「そんなことだろうと思ってた。………クハハハハ、イヒヒヒヒヒククククク」
ハナコは勝ち誇った笑みを浮かべる。
眠りこけているDIOのすぐ隣でハナコは添い寝している。隣でハナコか大爆笑しているが、DIOはうんともすんとも動かない。
おいおい、Ms.ハナコ、さっきDIO様がハナコの事拷問してやるって意気込んで無かったっけ?
いやいや、Reader、上の文章、全部DIO様の夢ですよ。
そう、DIOは一週間悪魔を見続け、その末に犯人をハナコだと断定し、拷問にかけようとする、という夢を今現在見ている。ちなみに、ここまで濃度の濃い夢を見ているが、DIOが寝始めてから現実の時間、10分ほどしか経っていないのだった。
夢の中のDIOの予想は見事に的中しており、ハナコは死に至らない新たな幻覚作用を、元の能力の延長として手に入れていたのだ。催眠術のようなこの作用はスタンドのへその緒部分を耳に突っ込む事で完全な支配状態となる。なので、ハナコはDIOの部屋に赤ん坊の出汁を混ぜた香を充満させておくことで半催眠状態にし、夢を操るという所業を成し遂げたのであった。
手の込んだ真似をしなくても相手に自分の姿を認識出来ないようにするくらいは出来るが、DIOに事後、違和感を抱かれてない様にする為には、寝ているDIOを襲撃するのが安定策だったのだ。
さて、このままDIO様に、夢の中であっても、私を拷問させるなんてことはさせない。
次は梅毒末期の男性患者に犯される夢でも見てもらおう。お前も梅毒に侵され美貌が崩壊していく様を絶望しながら悔やむといい。
そしてその間に私はDIO様のケツにバイブでも突っ込んで恥ずかしい証拠写真を撮ってやる。
ハナコはトランクに3日置き去りにされた事を非常に恨んでいた。肋骨にヒビが入っていたり、腕を痛めていたりだと怪我をしたまま放って置かれた。その上、3日目最終日には災難なことに月に一度来る女の子の例のモノにぶち当たっていた。トランクの中は血生臭いわ、股ぐらから血が流れ出している不快さを味わった。また、迎えに来てもらったテレンスさんと気まずい雰囲気になり、迷惑をかけるわ、DIOにはバカにされるわで惨めだった。脱水症状も出ていたし、ロズウェル事件の宇宙人のように、引きずられて悔しいったらありゃしなかった。
「ふふふふ、はははははは、くくかかかか……」
ハナコは待ちわびた復讐のひと時を、悪魔のような笑顔で迎えたのだった。
※その後の所業はDIO様のコンプライアンスに関わるので、ハナコの胸にだけ留めておくことにします。ですが、ハナコは相当酷いことをやっています。※
ハナコは全ての事を済まして朝にはDIOが全てを忘れているように能力を設定した。この女は、復讐した相手の悔しがる顔を見たいやら、見下してやりたいやら、リスクを負うことはしない。次の日には全てを忘れ、ケツに謎の不快感を覚えるDIOの姿をクスクス眺めているだけで満足なのだ。
「DIO様の恥ずかしい証拠写真大切にしますね♡」
夜まで悪夢を見続けるがいい、そう嘲笑ってDIOの肛門に入れたバイブを引き抜き、当て付けでDIOの口内にそのバイブを突っ込んだ。
「自分のウンコの味は美味しいですかーーーー???」と、愉快な気持ちになりながら、部屋を後にした。ゆっくりと扉を閉める。
「………おや、ハナコさんDIO様の部屋で何しているのですか?」
「ワッ!脅かさないで下さいよ、テレンスさんか………いえ、少し仲直りしただけです。」
話しかけて来たのはテレンスだった。ハナコはヴァニラじゃなくて良かった、と安心した。
「ふぅん、全然そんな風には見えませんけど……それに、驚くと言うことは何かやましいことでも…?」
「ははははは」
質問に、ハナコは引きつった笑いを向けるしか無かった。
テレンスは疑うような顔をしたが、危害を加えてないならセーフかな、と呟き、歩き出した。そしてすれ違いざまに、
「………まァ、バレない程度の復讐なら許しますよ。あれはDIO様も調子に乗りすぎました。」
とハナコの肩を持ってくれたのだ。
「えへへ……ありがとう、ございます。」
「いえ、その代わり私は責任を負いませんからね。あと、ヴァニラにはバレないようにした方がいいですよ。」
「了解です。」
「では、私はこれで。」
ハナコは心底テレンスが融通の効く男でよかった、と思ったのだった。
日が沈んだ後、DIOは起きてきて、案の定、夢の中の記憶を失っているのだった。そして、「なんだかケツに違和感がある。」とぶつくさ呟きながら一日中不機嫌だった。
ハナコはそんな姿を見て、あんなことをされたのにもかかわらず、「ああ、可愛い人だな」と思ってしまった。その気持ちは、母性本能というか奇妙な感情なのであった。
DIOも大概だが、この女も言ってしまえば、サディストなのであった。
DIOに優しく話しかけて慰めてあげようと思った。なんとも白々しいが。
「DIO様大丈夫ですか?」
「………ハナコか。いや、なんでも無いさ。」
「あら、そうですの?何かあったら出来る限りお力になるので、なんでも仰ってくださいね。」
「………おい、お前私を恨んではいないのか?」
「ホホホ、まさかそんなはずありませんわ。私あの後よく考えたんですのよ。私はDIO様に生きながらえさせてもらっている人間なのだから、何もされても感謝すべきだと思ったのです。だから、貴方様を恨めるはずありませんの。」
ハナコは花の咲き誇るような笑顔でそう言った。この言葉を聞いたDIOは何か考えるような素振りを見せた。フン、と鼻で笑って
「ならば、永く、丈夫で良い女で居よ。お前は気の利く、器用な女なのだからな。」
と、意外にも気の利いた言葉を言ったのだった。ハナコは数秒面食らったが、すぐに当たり前ですよ、と言うふうに返事をしたのでDIOはハナコの本当の心の内に気づかなかった。
退室した後ハナコは一人廊下で、「クククク、掌返しもいいところだ虫のいい男よ。馬鹿め。」と、独り言を呟いた。
不気味に女は廊下を歩いて行った。
***
ハナコと母親についての話
「オギャーオギャー!」
「カナエさん、貴方DIO様に許可を貰って帰るか、本当に逃げた方がいいですよ。」
「………ハナコさん、前も言いましたけど私には帰る場所がありません。日本に帰れたとしても私はこの子を養っていけませんわ。」
ハナコは子供を産んだばかりのカナエをほったらかしておくDIOに不満を感じていた。この子は間違いなくDIOの子供だ。しかし、当人はカナエの事などどうでも良いという風で、全く興味がなさげだった。そればかりか、今も他の女と情をかわしている。
前からこの館に妊婦が数人いるということは知っていた。
少し前から私は、テレンスさんから「女性が配膳した方が安心するだろう」と館で生かされている女性にご飯を配膳する仕事を任された。
そのうちの1人がこのカナエであり、彼女は日本人である。そして、女性達の中でも珍しい、子供を出産したタイプだ。他にも汐華という、2歳になる子供を連れている方がいるが彼女は子どもなんてどうでもいいわ、という、良〜く言えば放任主義だ。一方のカナエさんは子供を愛しみ、大切にしている。
正直、汐華みたいな女、ハナコはどうでもいいと思っていたが、カナエのような女は長生きしてほしいと思ってしまう。このDIOの館に来た時点で希望は薄いけれどね。
「カナエさん、DIO様が貴方の事生かしておく保証はどこにも無いんですよ。」
「いいえ、ハナコさん。子供だけなら生かしておいてくれるわ。」
ハナコは、「何言ってんだこいつ、お花畑か。」と呆れた。なんで私がここまで脅して逃げ出さないのかしら?DIO様、女1人くらいなら見逃すのに。カナエさんって、真実の愛とか信じているのかしら?ちょっと救えないわ。
と、思った。
また、もしかすると意地でも帰りたく無い理由があるのかもしれないとも思った。
「カナエさん、帰れないわけじゃ無いなら、その子を連れてお帰りなさい。私は妊婦がDIO様によって殺されるところを幾度もこの数期間で見て来ました。生まれてきた子どもが殺される場合もありました。」
「………分かっています。でも、正直に申しますと帰れないんです。」
「殺人罪やら警察に追われてるわけじゃなきゃ帰れると思いますけど‥………」
「そうですよね。」
「だから帰りましょうよ。」
「はい。ですから殺人罪で警察に追われているのでございますよ、私。」
「さいですか……」
ああ、この人私とおんなじ境遇でここに来たのね、と少し共感するところを見つけてしまった。可哀想だけど確かに刑務所に入って子どもと離れ離れになるより、この館に置いてもらった方がいいかもしれない。死ななければだけど。
ハナコのカナエに対する高感度は更に上がった。
「アッ、ハルノ坊ちゃんそれは落としたらDIO様に怒られます。」
「ねーね」
「姉やはここです。お母様のところに戻りましょうね。」
汐華は息子の面倒をとことん見ない女だった。ハルノ坊ちゃんはほとんど私が面倒を見ているし、明日この屋敷を出ていくそうだが、この子はネグレクトを受けるだろう。
この館のカオスな状況にため息が出る。
「カナエさん、何かあったら私にお申し付けくださいね。」
「何か起こらないようにこの子をしっかり抱きしめておきますね。」
「それがいいですわ。………さ、ハルノ坊ちゃん行きますよ。」
「ばいら〜い、おとおと」
「失礼しました。」
まぁ、これからどうなるかは彼女の運次第で、私がどうこうするのはメイドには出過ぎた真似だな…
ハナコが一人で考え事をしていると、ハルノがハナコの袖を引いた。
「ね〜ね、ママが、さんじまで、あっちいってろってた。」
「あら、あと2時間もありますね。でも姉やはこれからお仕事があるんですの……」
「やだ!」
「ハルノ坊ちゃんいい子ですよね?」
「ね〜ねと一緒らいいの!」
「………お洗濯手伝ってくれますか?」
「う!」
ハルノ坊ちゃんを2時間も放置させようとしていたなんてあのクソ女め。
ハナコは母親にも当たり外れがあるものだと思った。そして、自らかハズレ母親の元で育ったため、ハルノの未来もさらに心配になって来たのだった。
「ね〜ね!あとでおやつ!」
「クッキーの生地がありますから、洗濯機を回してる間に型を一緒に抜きましょうね。」
「あい!」
この子の花のような笑顔はいつまで続いてくれるのだろうか。ハナコはハルノが歩むであろう普通で無い人生を見据えて複雑な気持ちになるのだった。
翌日、カナエがDIO殺された。
残った子供の始末はハナコに任された。その騒動があったせいで、ハナコはハルノに別れの挨拶が出来なかった。門を出るところが窓からチラリと見えた。ハルノに持たせた、2人で焼いた不格好なクッキーを「なにこれ」と取り上げて踏みつけ、泣き叫ぶハルノを引きずって出て行く母親の姿が見えた。
カナエの子を抱いてハルノに持たせたクッキーを拾い、自分の部屋で食べた。我ながら美味しく出来たと、満足していたクッキーだ。ハルノが泣きながら自分の名前を呼んでいた様を思い出して、腕の中で泣くカナエの子の泣き声も自分を呼んでいるように聞こえた。
「…………大丈夫、大丈夫よ、姉やが守ってあげるわ。お母さんはいなくても、私がいるわ。絶対に傷つけない…守ってあげる。」
そう言いながら、ハナコはそっと赤ん坊を自分のベッドに持っていき、ベビーベッドをどこに置くか考え始めたのだった。
ハナコのクソどうでもいい話⑤
ジョルノ君はハナコちゃんのこと少しだけ覚えてます。クッキーのお姉さんとして覚えていますが、ギャングの男性ほど大きな存在ではありません。
えっ、黒髪が金髪になるってあるんですかハルノ坊ちゃんーーーーーー☆