バッドエンドの未来から来た二人の娘 作:アステカのキャスター
お久しぶりです。
大学の課題が多くて遅れました。では行こう!!
良かったら感想、評価お願いします!!質問等有ればネタバレ以外で受け付けます!!
調査から5日が経過した。
大した危険は無い上に、此方にはセリカやフィール、セラに成績優秀のシスティーナがいるのだ。大した危険もなく、遺跡の全体を調査して時間が過ぎていた。
夜までにテントの準備を整えようとフィールはトコトコ歩いていると、グレンに肩を掴まれて森に引き摺り込まれた。
「…………グレン先生?」
「フィール……正直に答えてくれ」
改まってグレンはフィールに対して真剣な眼差しを向ける。フィールも少しだけ真剣な顔をして、グレンを見つめていた。
「お前の訳わからない力、アレがなんなのか予想は付くか?」
「……どうしたんですか急に?」
「いや、今……お前に似た力っぽい何かを感じたんだ。幽霊みたいな奴がその像に座ってて」
「幽霊……?」
私に似ている力を放つ幽霊?
そもそも、私はあの力が何なのかまだ分かっていない。未来から過去に飛ぶ際に記憶の一部が消えていたからだ。
「(……この力に関わっているのは……多分ルミアさんと、銀の鍵)」
だが、それはあくまでルミアの能力と元あった自分の力と混ざったからだ。自分に眠っていたあの力は未だ分からない。
「……それ、ルミアに似ていませんでした?」
「っっ! ああ、てことは何が知ってんのか?」
「いえ、多分
やっぱりだ。
私は多分、
だとすれば……幽霊の正体は心を喰われた……
「……これ以上はわかりませんね」
「はぐらかすな。お前の力って何なんだ? セリカは古代の情報まで遡る力を持ってるって言ってたけど、それだけじゃねえだろ」
「私も分かりませんよ」
グレンもフィールもそれ以上は喋らなかった。
どちらにせよ、フィールはルミアと同様に何かある事は確かだが、フィールはそれを聞かれるのを避けている。唯一、アルベルトから聞いたのは『時渡り』に成功した存在とは知ったが、それ以上は分からなかった。
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調査は順調に進み、5日目の夜になっていた。
システィーナを筆頭に他の生徒達は食事を作ったり温泉に入っていたりしていた。ご飯を食べ終えた(グレン先生とシスティーナを除く)女子達はセリカの魔術で温めた温泉に浸かろうとしていた。因みに2人のご飯はリィエルが美味しくいただきました。
「…………!?」
温泉に入ろうとしていたその矢先、何故かお湯の中に何か気配がしたかと思ったら何故かグレン先生が居た。幸い気付いたのはフィールのみ、ため息を吐きながらも息止めに必死になっているグレン先生を片目に背を向ける。
「(……また何やってんだこの人)」
しょうがないので気付かない程度に黒魔【エア・スクリーン】で空気を与えて指を出口の方向に指した。と言うか裸を見られるのに抵抗はあったので直視しないようにグレン先生を誘導する。
「(ま、マジかフィール様! マジでありがとうございます!!)」
どうやら、上手く逃げられたようだ。
ため息が吐く程退屈しない先生な事だ……あっ、ちょっと待って? あっちってお母さ……セラさんが居る場所じゃあ……。
「《きゃあああああああああああっ》!!?」
「ぬおおおおおおおおおっ!!?!」
……遅かった。
絶叫を即興改変して放つ【ゲイル・ブロウ】によってグレン先生は素っ裸のまま宙に舞って行った。
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「フィールはまだ上がらないの?」
「もう少し浸かってる。私達が最後でしょ?」
「うん。私達は先に上がってるね」
ルミア達は先に温泉から上がって行ったが、フィールはまだ少しだけ浸かりたかった。精神的疲労も肉体的疲労も日頃の疲れもあったせいか、長湯が基本的になってしまっている。
「ハァ…………」
疲れた。
最近はそれしか浮かばない。まだ15歳の少女の精神は摩耗し始めている。ジャティスとの戦い、過去の現実、そして今を生きる世界でグレンとどう向き合うのが正解なのか。
セラだってこの世界では別人。
けど、本当の家族のように接してくれる。
分かってる。
こんな気持ちは嬉しいと同時に薄れていってしまうような優しい記憶は過去にしかないと。今の甘い世界で生きる事はもう僅かな時しかない事を。
「…………結果、自己満足なんだよね」
過去を変える事は自己満足に過ぎない偽善だと噛み締めながらも、フィールはこの世界を守りたいと。
ただの自己満足で終わる偽善者なのだと。
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「へぇ、このくそ広い部屋が『タウムの天文神殿』が誇る
遺跡調査開始から六日目。
おそらく最終日となろうその日、一同はついに最深部である
「中々、広いですね」
これだけ広いのに汚れや埃があまり無い。
綺麗に磨き抜かれた半球状の大部屋の中心に、謎の巨大な魔導装置が鎮座し、その傍らには黒い石板のようなモノリスが経っていた。
「私は見たことはないが……ここの
「あ、あぁ……そうなのか?」
セリカはいつも通りだった。
グレンは少しだけホッとしていた。あの時、セリカには何故か余裕がなかった。まるで最初に会ったフィールの様に余裕がなかったように、迷子になって逸れた子供の様だったが、今はすっかり消えている。
「あの……先生? せっかく『タウムの天文神殿』にやって来たんだし、この天象儀プラネタリウム装置で星空を見てみませんか?」
「はぁ? 星空ぁ? めんどくせえな……」
「お願いします、先生! 私……ここの
「あっ、私も見たい!」
セラもシスティーナの意見に同意する。
いつもの態度とは違い、真摯にグレンに頼み込むシスティーナ。それもその筈、システィーナのお爺さまは天空の城へ到達を夢に見ていた。そして、この遺跡の古代式の転移魔方陣の可能性を書いたのはその人だからだ。
「うーん、どうしたもんかなぁ……」
「いいんじゃないですか? 私も見てみたいですし」
「んじゃフィール、お前起動して」
「人任せですか。まあいいですけど」
フィールはモノリス版を操作して、起動させる
「──起動しますよ」
空間内に映し出される無数の星や惑星。
圧倒的な臨場感と迫力に一同全員が押し黙る。だがその凄さは誰もが眼で見て分かる。まるで一つの世界に飛び込んだかのようだ。
「はぁー、古代人ってのは……超高度な魔法文明を築いておきながら、時々、こういうどーでもいいところを大掛かりにやるよな」
「でも凄いよね。ここまでの物を作るなんて」
フィールはその星空を見ながらも、触れていたモノリス版に目を向ける。何か感じたものがある。まるで、それに惹かれているような、口では説明できない何かが、このモノリス版から微かに感じていた。
「(あれ……? まだ何か操作出来るものがある?)」
フィールの
右眼は既に青く染まって治らなかった。片眼だけだと思っていた変化が両眼に宿っている。フィール自身も気が付いていないが、少しだけ好奇心もあり動かしてみる。
「(これを……こうしたら、次は……こうして……何で、この手順を知ってるんだ私は?)」
ズキっ! と頭の中に痛みが走る。
この時の痛みはアレだ。力が暴走したかの様な鋭い痛みに顔を顰め、操作する手を止めようとしたその時、フィールは初めて異常に気がついた。
「(なっ……! 身体が勝手に……!?)」
操作する手を止められない。
無意識の内に身体が勝手に動いていた事に、無理に動かそうとするが、まるで腕を押さえつけられて動かされているようでぴくりともしない。
「……フィール? お前、さっきから一体どうした?」
星空を見ずにモノリス版を動かすフィールが妙に気になったグレンが、問いかけたが、フィールの左眼が青く染まっている事に気がついたグレンはフィールの元に駆け出した。
その顔は、何故か悲痛な顔をしていたからだ。
「おいフィール!」
「グレン君? フィールちゃん……っっ!?」
キン、キン、キンという音が響き渡る。辺りに突如、魔力反響音が響き……一瞬、床の紋様をなぞるように蒼い光が走った。星空が加速して回っていき、頭上の全ての星が動いていく。
「何……?!」
慌ててグレンが振り向く。
すると、そこには
「(な、なんだ……あの動きは……さっきと違う動きじゃねえか……!)」
何事かと呆気にとられるグレン達だが、頭上に浮かぶ星々が映らないくらいくらいに回転し、銀線となって無数の同心円を描き──やがて、
「なっ……!」
「おい、マジかよ……」
そして、星空が消えたのと同時に
「(あり得ねえ!? あのモノリス版にはそんな機能は無かった筈だ!? フィールはどうやってアレを……!?)」
それを見たグレンは驚愕するが、それ以上に驚いていたのはセリカだった。知らない筈のあの光景がノイズのように頭に浮かぶ。
「回廊……馬鹿な……『星の回廊』だと……!?」
明らかにその『扉』は異質なものだった。
扉と言うには扉の先が全く見えない深淵にでも繋がっているんじゃないかと言うくらいに異質だが、フィールには悍ましいものに見えた。
「っっ……! かはっ!」
動いていた身体は呪縛から解き放たれたかのように戻った。
意識もハッキリしているし、身体は動く。グレン先生とセラの元に戻ろうとしたその瞬間──
「……えっ?」
いや、まるで死神の手のように溢れ出た呪われたような手が次々と溢れ、セラは生徒達の前に立ち、魔術を放てる体制になっていた。
「なっ……! ぐっ……!?」
黒い無数の手が扉から
余りの速さに躱す余裕が無く、その扉から無数に伸びた黒い腕がフィールの右手と胴体を掴み、引き摺り込んでいく。
「なっ!? フィール!!」
「フィールちゃん!?」
詠唱なんてとても間に合わない。
引き摺り込もうとする黒い腕からフィールを捕まえようと手を伸ばすが、駆け出すのが遅く、伸ばした手は届かない。
「フィール!」
「セリカ伯母–––––」
それに反応し、魔術で加速するセリカ。
扉に引き摺り込まれたフィールを追うようにセリカは扉に飛び込もうとする。
「この先に、何かが……!」
「待てセリカ!」
グレンの忠告は届かずにセリカは飛び込んだ。
フィールを捕まえようとするセリカはそれ以外に、何か
その瞬間、2人を引き摺り込んで扉はグレン達の前から消えていった。
「フィール! セリカァァァァ!!」
残されたグレンは叫ぶが、そこに2人は居なかった。
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「ここは……」
セリカは扉に飛び込んでいた。
そこは広く、空気が淀んでいる。しかし、この場所は何処だか分かってしまった。
「アルザーノ帝国の……迷宮の50階層だと!?」
この先にセリカの失われた記憶の全てがある。
それが、直感で理解出来た。この場所は私の知らない記憶の道標だ。
「この先に、私の全てが……!」
そう考えた瞬間、セリカは下へ進もうと歩き始める。最早全てがどうでも良く感じた。失われた全てが取り戻せるならば、なんだっていいと思った瞬間、フィールの言葉を思い出す。
『私……やっぱり……寂しいよ……独りは辛くて……悲しくて……』
セリカの足が止まる。
あの時、幸せにはなっていけないと言ったフィールの言葉の裏をセリカは感じ取っていた。何故今、どうして今それが頭を過ったのかは分からない。
けど、あの時の言葉を思い出す。
弱々しく呟いて聞こえた言葉は子供相応の弱さと震えた体でセリカに流した涙が今脳裏を駆け巡るようだ。
『ひとりに……しないで』
「っっ! ……フィール?」
辺りを見渡してもフィールは何処にもいない。
あの時、黒い腕に掴まれて引き摺り込まれたフィールの魔力を感じない。いや、恐らくはこの辺りには居ないのだ。
「ははっ、何やってるんだ私は……」
この迷宮には何かがある。
セリカ自身に関する何かが存在する。だが、それよりも扉を潜ったのはフィールを助けたかったからだ。それ以上の感情を出せば、フィールを見失ってしまいそうだ。
「自分探しか、フィールか、……考えるまでもない事だな」
落ち着きを取り戻したセリカはため息をつく。
間違える所だった。間違えてしまえば後悔しかないのは目に見えていた。不思議と頭を過ぎる使命の声は掻き消えていた。
セリカはエリエーテの剣を持ち、フィールを探す為に下の階層へと歩き始めた。
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「くそっ! やっぱ俺や白猫でも無理か!!」
ひたすらモノリス版を操作しているが、扉を開く為の操作方法が分からない。何度、何度、何度やっても扉が開く法則性が見つからずに、焦っている。
「グレン君……」
「考えろ、フィールはどう動かしてた、何か法則が──」
「グレン君!!」
「っっ!」
セラは叫んで両頬を軽く叩く。
落ち着けずに、愚者になったかのような集中を切らして落ち着かせる。
「落ち着いて、焦りは一番解決から遠いんだよ? 少し、落ち着いて」
「だけど……!」
「私だって不安だよ。だけど、セリカさんが行ったなら少なからず落ち着くだけの気持ちはあるでしょ?」
そう言いながらも、セラの腕は震えている。
フィールやセリカが心配なのはグレンだけじゃない。セラは冷静だが、冷静で居なければグレンと同じ、余裕がない状態で不安を煽るだけに過ぎないからだ。
「セラ……悪い、大分冷静じゃなかった」
「……とりあえず、考えよう。先ず、フィールちゃんがどうして引き摺り込まれたのか?」
「……異能に近い何かしらがあるからだろ」
「うん。それは私も同意、
先ず状況確認だ。
とりあえず生徒達全員、キャンプ地に戻り話を始めた。あの場所で長く居ても狂霊達が湧き出てくる為、危険と判断した。
「セリカも何で名前を知ってたんだか、まあそれはいい。問題はあのモノリス版の操作がプラネタリウム以外の方法が分からないっつー事だな」
「……先生、もしかしたら出来るかもしれません」
「はっ? 白猫、何言って……」
「ルミアの力が有れば、出来るかもしれない」
「……いや感応増幅だけじゃ……いや、出来る事を試すしかないか。悪いルミア、協力してもらえるか?」
グレンは真剣な顔でルミアに問う。
もし開けるなら、ルミアの力はただの感応増幅ではない。それが確定する事になるが、それを今気にしている暇はない。
「はい。でも先生、その後はどうするんですか?」
「俺1人で……いや、俺とセラ、リィエル……後はルミア、白猫、お前らも来てほしい。ルミアは悪いが半強制的だ。ルミアの力で開けたとしたら、帰り道もルミアの力が必要になってくるからな。白猫に関しては強制はしねぇ、生徒達を守ってほしいが、下手に気を使えばアイツらが怒りそうだしな」
わざわざ遺跡から離れた以上、大した危険は訪れないがそれでもあんまり危険な目に合わせたくないのはある。だが、狂霊程度の問題なら自分達より2人を優先しろと言うだろう。
「行きますよ。私だってフィールが心配なんだし」
「そうか……まあ言うと思ってだけどな」
セラとグレンは立ち上がり、準備を進める。
自分の装備は魔銃ペネトレイターと何本かの秒針、愚者のアルカナにフィールが渡してくれた『切り札』だ。少し手持ちが少ないが、どうしようもないので仕方ない。
「ギイブル」
「……何ですか急に」
「お前筆頭にこの場所を任せる。頼めるか?」
「! ……誰にモノ言ってるんですか」
ギイブルは鼻で笑い、カッシュ達もそれに同意していた。フィールが引き摺り込まれた時、自分達は何も出来なかったのを悔いているが、まだ生徒だ。どうしようもない事だ。
「さっさと2人を連れて帰ってきてください」
「先生、俺達なら大丈夫だから、2人を頼みます」
「私からも、お願いします」
「お前ら……」
カッシュやウェンディは頭を下げる。
生徒達に責任はないが、それでも友達を思ってくれている。グレンはフッと笑い、ならこのグレン大先生が戻るまで任せたわ、と告げて歩き出す。
「んじゃ行きますか……アイツら連れ戻しに!」
「うん!」
「了解」
「はい!」
「行こう!」
このメンバーなら宮廷魔導師団も顔負けだ。
グレンを筆頭にセラ達を連れて再び