バッドエンドの未来から来た二人の娘   作:アステカのキャスター

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 明けましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願いいたします。

 ついに30話!長いよ道のりが!!    
 良かったら感想評価お願いします!では行こう!!


第30話

 

 

 戦争とは何か。

 無論、戦争とは殺し合いを示すものだろう。それは個人での決闘とは違い、多対多の団体戦に近いものだ。ただし、団体戦と違うのは戦争にはルールも誉れもない殺せば次の相手を見つけて殺し、油断すれば殺されるのが戦争だ。

 

 つまりだ。一対多数は基本的にあり得なくはない。

 敵を作れば、作る程に一に向けて多数に襲われる。

 

 戦争は無慈悲かつ希望などいない。

 英雄が生まれようものなら出る杭よろしく打たれるのがオチだ。だから戦争はあくまで最終手段だ。

 

 

 取り繕うのがめんどくさいから言うが……

 

 

「表に出なさい。世間知らずの三流お嬢様?」

「–––––––(唖然)」

 

 

 この学院の異常さにフィールがキレた。

 異常にブチ切れ、最初からクライマックスの最終手段『よろしいならば戦争だ』状態になった。

 

 いや、フィールは記憶を無くして少し臆病さがあった筈なのに今は青筋を浮かべて『黒百合会』と『白百合会』のリーダー達を睨んでるよ。俺も流石に驚いたわ。セラが聞いたら唖然で口をあんぐり開けているだろう。

 

 一体どうしてこうなったか。

 原因の説明をしよう。時は二時間前に遡る。

 

 

 ★★★

 

 

 聖リリィ魔術女学院校舎にやってきたグレン達は、早速、学院長室へと通される。

 

 

「ようこそ、遠路遥々我が校においで下さいました、皆さん」

 

 

 学院長室でグレン達を迎えたのは、四十前後の、人の良さそうな女性であった。この人物は聖リリィ魔術女学院の学院長マリアンヌ、国軍省でも噂になる程の器量がある人物だ。

 

 

「帝国が世界に誇る魔術の学び舎と名高きアルザーノ帝国魔術学院…そのような所から優秀な生徒や、高名な講師の方々を、この度、我が校にお招きできて大変光栄ですわ」

 

 

 嬉しそうに笑って挨拶するマリアンヌ。

 この聖リリィ魔術女子学院とアルザーノ帝国魔術学院を比べたら、アルザーノ帝国の方が指導力と人気がある。

 

 

「なにせ、我が校はこのような閉鎖的な空間にあります。余所の学生や講師の方が、この学院に新しい風を吹き込んでくれること、期待してますわ」

「ご期待に応えられるように頑張ります」

「まー、あんま期待されても困るんすけど。まぁ、それよりも……」

 

 

 グレンは探りを入れるようにマリアンヌに問う。

 

 

「なんで、うちのリィエルに短期留学のオファーなんざ出したんすか?」

「はて…なぜ?とは」

 

 

 不思議そうに、マリアンヌが小首を傾げる。

 リィエルは学力、素行(自覚無し)は壊滅的。オファーを出す理由など本来ならある筈が無い。フィールの場合とは違い、正式なオファーとは違うのにリィエルを名指しで指名するのはおかしい。

 

 

「ええと…今回、我が校はオファーを出して余所の魔術学院から、短期留学生を特別に受け入れることになったのですが…その際、我が校の本部事務局教育支援部の事前調査によれば、リィエルさんは、我が校に受け入れるに相応しい優秀な生徒だと聞き及んでいたので…何か問題でもあるのでしょうか?」

 

「………」

 

 

 誰かが、そう仕向けたのか。

 もしくは、このマリアンヌが嘘をついているのか。グレンはセラの顔を見るとセラも頷いていた。

 

 

 

「質問いいっすか?マリアンヌ学院長」

「はい、答えられる質問なら」

「貴女は『蒼天十字団(ヘブンス・クロイツ)』って知ってますか?」

 

 

 マリアンヌの眉が僅かに動く。

 知っている。その反応から確信を持った。

 

 

「ええ、噂は知ってはいます。私も一度魔導省に問い合わせた事がありますが、実在するかは不明と」

 

「調べたって、何でまた……」

 

「私が学院長に在籍する前の過去の資料から生徒の数名が名簿から消されていました。連絡も出来ず、行先も不明、魔導省に掛け合ってみましたが、生死すら不明と……」

 

「……そりゃおかしいっすね」

 

「生徒の数名が国に属さない集団に攫われたのならと考えた瞬間、思わず聞いた事のある組織を調べました。しかし、私は学院長で宮廷魔導師程の実力は無いので、『天の智慧研究会』や『蒼天十字軍(ヘブンス・クロイツ)』を調べようとしても、突っぱねられました。学院長にそんな権限は無い、と」

 

 

 まあそればかりは魔導省の言う事が正しい。

 ただの学院長にそんな権限はない。マリアンヌの器量でも調べられるのには限度がある。

 

 とは言え、マリアンヌはグレーだ。

 決して気を許してはいけない気がした。

 

 

「あの、私も質問してもよろしいですか?」

「ん?何か俺たちにありますか?」

「えっと、リィエルさんはそこにいますけど、フィールさんは?」

「フィールなら後ろに……はっ?」

「あれ?」

 

 

 グレン、セラが振り返るとそこにフィールは居なかった。

 白魔【イリュージョン・イメージ】でフィールが入ったように見せかけて、どっかに行ったようだ。

 

 地面に書き置きが残されていた。

 フィールの文字と思える書き置きを拾い、グレン達は読んだ。

 

 

『記憶の手掛かりを探してきます』

 

 

 なんともまあ、学院長の挨拶すっ飛ばす辺りグレンに似ている。曖昧とはいえ、フィールが

蒼天十字軍(ヘブンス・クロイツ)』が居るって言ってたのに脳天気で自由な所にグレンは珍しく青筋を浮かべていた。

 

 

 ★★★

 

 

「ごめんねエルザさん、無茶言って」

「ううん、大丈夫。フィールさんこそ良かったの?学院長の挨拶すっぽかして」

「後でしっかり怒られます」

「全然良くなかった!?」

 

 

 後でグレン先生達に怒られるとして。

 やはり、()()()()()()()()()()。記憶ではなく、身体がここの歩き方を知っている。綺麗な校舎の中、窓を見上げれば光が差し、廊下を見つめれば特注の赤いカーペットが目に入る。

 

 身体が自然と向かっていた。

 二年間学び、過ごしたその場所に……

 

 

「ジニーさんも、ごめんね」

「いえいえ、あのお嬢様と比べたらまだマシですよ。しっかし寮を見たいって……」

「うん。32号室……だったような気がするの」

「今は私とエルザの部屋ですね。何があるんですか?」

「……強いて言うなら、記憶かな……」

「「?」」

 

 

 32号室の寮の部屋を開ける。

 ベッドと机が二つと、角に置いてある荷物。クローゼットが二つ。寮にしては贅沢な広さだ。

 

 いつも、自分は学院など早く卒業したかった。

 宮廷魔導師団に入って、女王陛下と約束したエルミアナ王女の捜索をしたかったからだ。

 

 けど……少しずつ、思い出してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……フィールちゃん、でいいのかな?』

『……誰、アンタ』

『私?私はエルザ。分からない所教えてくれない?』

『他に聞けば?』

『お願い!私、風の魔術の行使が苦手で……』

『知らん。私は忙しいんだよ』

 

 

 覚えていない。

 今のフィールは、エルザもジニーの事も知らない。

 

 けど、覚えていた。

 記憶ではない。身体が、心が……魂がそれを覚えていた。

 

 

『フィールちゃん』

『あ?またアンタか……』

『勉強教え––––』

『昼飯奢り。それでチャラ』

 

 

 未だに分からない。

 流れ込む記憶に頭痛があっても、その記憶から目を背けない。背けてはならないのだ。

 

 

『フィールちゃん!』

『今度は何……?』

『剣の相手してくれない?』

『嫌に決まって……』

『じゃあ私の不戦勝だね!ありがとうじゃあ–––』

『んな訳ないだろ。完膚なきまでに叩き潰す』

『剣で!?』

 

 その記憶はフィールにとって記録だ。

 体験していた自分を見ているだけのただの記録。記憶が戻る訳ではないかもしれない。思い出せるかなんて未だに分からない。

 

 

『ちびっ子!今日も勝負だ!』

『今日こそ負けませんわよ!ミニ魔術師!』

『《いい加減チビとかミニとか・訂正してから出直せぇぇぇぇ》!!』

『『ぎゃあああああっ!?』』

『うわ【ショック・ボルト】で完膚なきまでに……殺してませんよね?』

『………ウザったい羽虫を払った程度だよ』

『派閥のトップが虫扱いですか』

 

 

 けれど……それでもこの記憶は……

 

 

『フィールちゃん、勉強教えて!』

『ああもう、ちゃん付け止めろっ!ナメてんだろ眼鏡貧乳!』

『はうっ!』

『うおー、ちゃん付けで子供扱いしていたエルザの心を深く抉ったーフィール選手のKO勝利!』

『ジニーうっさい!』

 

 

 そんな鬱陶しくも退屈しない日常。

 フィール=■■■■は鬱陶しく思っても、他人と関わろうとしなくとも、自然と仲間が集まっていた。仲間のドジに苦笑して、怒って、頭を抱えて、それでも笑って……

 

 

『フィール、よろしくね!』

『飛び級したらアンタと一緒の部屋とか何の罰ゲームだよ……』

『おらっ、エルザ、フィール、遊びに来たぜっ!』

『今夜は寝かせませんわよ!ジニー!』

『トランプっすねー、畏まりましたー』

『突入の仕方一世紀前くらいのチンピラか!?』

 

 

 上手くは言えない。

 上手く、自分がどうだったのか表現出来ない。

 

 けれど、ただ一つ言えるのは……

 

 フィール=■■■■にとって……

 

 

 この記憶は……

 人生で一、二位を争うくらい幸せな日常だった。

 

 

 ★★★

 

 

 目を開けると、フラつく。

 記憶喪失は辛い過去の認識にロックをかけているようなものだ。記憶の欠片を手にすればするほど、記憶は形を取り戻していく。

 

 

「………少し、思い出せたかな」

 

 

 自分の腿に装着しているホルダーを開ける。

 セラがフィールから隠していた何かの一部を纏めたものだ。何かを隠しているのは知っていた。けど、聞いたところで教えてはくれなかった。

 

 そこから取り出したのは、一枚のタロット。

 

 

「………『愚者』」

 

 

 入っていたのは6枚のタロットと、圧縮され小さくなった業物の刀。『魔術師』『女帝』『戦車』『世界』『正義』……そして『愚者』。このタロットがフィールの歩いてきた鍵だ。未だ思い出せない。思い出す事が出来ないけれど。

 

 

「私は……そう、なんだね」

 

 

 私はきっと、この世界に居ない人間なのだと。

 それだけは、はっきりと理解出来た。

 

 

 

 ★★★

 

 

 グレン先生にこめかみをグリグリされ、セラにお説教を食らった。ものすごく痛かったと追記しておこう。

 

 まあ、マリアンヌの挨拶は後にするとして、グレンは月組の担任を請け負い、セラは太陽組の担任を請け負っている。フィール達は月組で、セラだけ担任の立場が違くて若干涙目だった。仲間はずれじゃないし、仕方のない事だが……

 

 

「うわぁ……」

「これ、酷いわね」

 

 

 フィールとシスティーナが呟く。

 今、月組の教室内では、四十人近いクラスの女子生徒達が半々くらいに分かれ、それぞれ教室の左右に寄り集まり、それぞれとある生徒を中心に二つの集団を作っている。

 

 

「おーっほっほっほ!中々良いお味ですわ!わたくしに相応しい一品ですわね!」

 

 

 向かって教室の右側の派閥。フランシーヌを中心とした『白百合会』の集団。ティーセットや三段トレイに載った茶菓子を山のように用意し、詩集を片手に優雅なティータイムを満喫し、雑談に華咲かせている。教室という場所であるにも関わらず。

 

 

「よっしゃ、いい引きっ!チップを十枚レイズだぜっ!」

 

 

 向かって教室の左側。コレットを中心とした『黒百合会』の集団。

 コレット達はコレット達で、賭けトランプやチェス、賭け事のオンパレードで大盛り上がりだ。何処ぞの不良を思い出すような光景にグレンは白目むいていた。

 

 

「エルザさん」

「さん付けはいいよ。私もフィールって呼ぶから」

「じゃあエルザ、これ何?」

「えっとね……『派閥』問題かな?」

 

 

 この学院では『派閥』の問題がある。

 正確に言うのなら、派閥に入っているのは権力者の娘だったり地位や身分が高い存在が入っている。それらが派閥を作り、学院で自由気ままに過ごしているのだ。単位も取得する事は決定している為、授業の無視など痛手にすらならない。

 

 まあ、露骨すぎるため流石にグレン先生が可哀想だが。

 

 

「ってか、今、授業中だぞ!?お前ら、何やってんだ!?学級崩壊とか、授業拒否とか、もうそんなレベルじゃねーぞ、なんだこれ!?」

 

「もうっ!『黒百合会』っ!さっきから煩いですわよ!あと、先生も!」

 

「ああ!?うっせえのは、てめえら『白百合会』だろ!?あと、先生もなっ!」

 

「ハァ……これじゃあ授–––い"い"っ!?」

 

 

 そう言いながら教科書を投げ合っている派閥の流れ弾(教科書の角)がフィールの頭に突き刺さる。教科書は意外と質感がある以上、投げられたらかなり痛い。その気になれば人を殺せると思うほどの凶器(教科書)がフィールの頭にとばっちりで当たったのだ。

 

 

「っつぅ〜〜〜〜〜!!」

「だ、大丈夫!?」

「お前らいい加減に……!!」

「「「「「「部外者の貴女は黙ってくださいっ!」」」」」」

「ぎゃあああああああ――っ!?」

「はうっ!?」

 

 

 一斉に飛んできた、電撃、突風、水撃、空気衝撃、冷気、熱風の雨あられに、グレンがもみくちゃにされながら吹き飛ばされ、フィールも流れ弾で電撃と冷気の攻撃をモロに食らった。

 

 ……二回に渡ってとんだとばっちりである。

 

 

「フィ、フィールー!?」

「か、かなりモロに行ったわよ!ホント大丈夫!?」

「い、今治癒魔術を……!」

 

 

 エルザ、システィーナ、ルミアの三人がフィールに駆け寄る。ブスブスと紫電の余波が身体に走り、若干制服が焦げていながらも軽く凍結していた。かなり痛そうだ。

 

 

「……ふ、ふふふふふふ」

「……フィール?」

 

 

 そんな中で何事もなかったように立ち上がる。

 不気味に笑い、長い髪で顔が隠れてしまっている。

 

 

「フィール、大丈夫?斬る?」

「リィエル、いいよ」

「でも………ひっ」

「えっ、どうしたのリィエ…………」

 

 

 リィエルがフィールの顔を見た瞬間悲鳴を上げた。

 覗き込むようにルミアがフィールの顔を見ると、顔を真っ青にしていた。無理もない、フィールが怒った所はあまり見た事がない。怒るにしても、精々注意する時のシスティーナと同じくらいだ。

 

 しかし、今のフィールは……

 この物語の主人公にあるまじき形相をしていた。

 

 

「グレン先生、窓を開けてください」

「はっ?お、おう………」

 

 

 フィールの顔を見た瞬間、察した。

 これヤバいやつだと。フィールが立ち上がってグレンのいる教壇の前で立ち止まり、怒りのままに魔術を唱えた。

 

 

 

「《いい加減にしろ・この・阿保共がああああああああっ!!!》」

 

 

 即興改変した黒魔改【ストーム・グラスパー】で風を掌握し、教室に小さな台風が現れた。トランプが、菓子が、チェスが、お茶や食器だけが浮かび上がり、フィールの前に集まっていく。

 

 システィーナも戦慄する程の風の支配力。

 ここまで精密には出来ないし、並列してそんな事不可能だが、怒りに震えたフィールを見て、何故か出来そうと言う根拠の無い言葉が浮かびあがった。

 

 拳を強く握るとプレス機のように集まったものが圧縮され、風の大砲が如く窓へとボッシュートされた。

 

 まるで通り過ぎる台風のように、原因を全て掻っ攫って残骸となった遊戯道具だけが外に消えていった。

 

 

「!?!?!?」

「……すげぇ。やりやがりました……」

 

 

 あまりの光景にシスティーナも絶句。

 目を白黒させるエルザに、唖然として呟くジニー。風の技量以上に、フィールが真っ向からお嬢様に喧嘩を売りつけるような真似をするとは思わなかったようだ。

 

 

「「「「……………………」」」」

 

 

 流石に、教室中の全ての生徒が、この事態には呆然とするしかなく、視線が全てフィールに届くと、やり切ったような顔をして呟いた。

 

 

「ふっ、少しは気が晴れた」

「お、おお良かったな。みんな授業中は静かにね☆」

 

 

 フィールは満足げな顔をして元の席に戻り、グレンは再び教壇に立ち、笑顔で生徒達へと振り返って、サムズアップであった。こう見るとやはり親子だなとシスティーナ達は感じながらも、その沈黙を破るかのように二つの派閥がフィールに近づいた。

 

 

「あ、あ、貴女っ!?これは一体、どどど、どういうつもりですの!?」

「おい、てめぇ。留学生よぉ…これ、どう落とし前つけるつもりだ、ああ、こらぁ?」

 

 

 そして案の定、フランシーヌとコレットが肩を怒らせ、殺気立つ取り巻きを引き連れ、フィールを取り囲む。だがフィールはどこか吹く風のように全く気にせずにリィエルに勉強を教えていた。

 

 

「フィール、ここが分からない」

「それ?ああ黒魔術の変換式を組み直して……」

「人の話を聞きなさいぃぃぃぃ––––っ!?」

「人の話を聞けぇええええええ––––っ!?」

 

 

 世間知らずのお嬢様である以上、部外者からの煽り耐性が弱い。フィールが煽っている所は見た事が無いが、グレンに似て煽りが上手い。派閥のトップが怒り狂っている。

 

 

「まったく…アルザーノ帝国魔術学院からやってきた留学生が何か知りませんが…どうやら貴女には、教育が必要なようですわね!」

 

「おい、留学生よぉ?教えてやろうかぁ?誰がこの学院の支配者なのかをなぁ?余所モンがあまりデカい顔してんじゃねえぞ?…ああ?」

 

「……粗野、凶暴、世間知らず、気品あるお嬢様の格が知れるね。ここは動物園なの?二足歩行と喋る事が出来る犬と猿を初めて見た」

 

「「はあ(ああ)っ!?」」

 

「「ぶっふぉ……!?」」

 

 

 グレンとジニーが後ろで笑う口元を隠している。

 笑い声に睨む視線が集まる前にジニーは咄嗟に机の下に隠れ、グレンは最早隠そうとすらしなかった。フィールはため息をついて立ち上がり、二人を前に見下しながら、言い放った。

 

 

「さっきからキャンキャン発情した犬みたいに騒いでた白犬会とギャーギャー喧しく騒いでた黒猿会、ハッキリ言って大した力のない二足歩行哺乳類が動物みたいに縄張り意識気にして、アンタら人間出来てますか?って聞きたいくらいだった」

「このっ……!!」

「テメッ……!!」

「はいストップ」

 

 

 これ以上熱くなると収拾がつかなくなるのでグレンが止める。フィールを見たら分かる。相当キレてるなと。と言うかキレ過ぎて記憶喪失が嘘と思えるくらいの強気に苦笑いが溢れた。

 

 まあ、このままでは授業にならないのでグレンもそれに乗っかって挑発をかける。

 

 

「なら試してみるか?お前らが必要ないと見限った授業を受けたウチの生徒と」

「「!」」

「丁度、次の授業は『魔導戦教練』…一対一の決闘戦じゃ味気ねーし、複数同士で戦う軍団戦じゃこっちは戦術単位を組めるほど頭数がねえ。てなわけで、俺の教え子とお前達とで、四対四のパーティー戦ってのはどうだ?」

 

 

 フィールもその言葉を聞いて成る程と口にした。

 実戦形式なら、世間知らずのお嬢様を力尽くで黙らせられる。

 

 

「要するに格の差を見せようって訳ですね––––表に出なさい。世間知らずの三流お嬢様?」

 

「レーン先生といい貴女といい、随分と吹きますわね…いいでしょう!ここまで言われて退くのは貴族の名折れ、受けて差し上げましょう!」

 

「はっ!後悔すんなよ!?テメェら!」

 

 

 二つの派閥がいち早く教室から出ていった。

 システィーナやルミア、エルザもついていけずにポカンとした顔でグレン達を見ていた。

 

 ふう……と息をついたグレン達。

 これが終わればお嬢様達を黙らせられるとは言え、あんな個性的なお嬢様を相手するのは疲れたのだろう。

 

 

「まっ、これなら文句なしに黙らせられるな」

「そうですね…あだっ」

「だけど言い過ぎ。お前なんであんなに好戦的になったんだ?」

「いや……なんか……」

 

 

 フィールが好戦的なのは記憶が無かった時には見ていなかった。まあ魔術を食らった仕返しにしては少し煽りが強いようにも見えた。

 

 フィールにも上手く言い表せないが。

 あのお嬢様達を見ていると、何処か思うのだ。何処か好戦的になってしまうような自分がいた事を……

 

 

「懐かしかったから……かな?」

 

 

 彼女達もフィール=■■■■の記憶の欠片なのだから。

 

 

 

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