ありふれた(平均)値で世界最強って言ったよね! 作:simasima
続きの戦闘回です。
砂ぼこりが収まり姿が露わになったそれは
二対のハサミと一対の尻尾を持つ
体長5メートル程のサソリモドキと呼べる
今までハジメ達が戦ったどの魔物より
強いプレッシャーを感じる魔物だった。
ガギィイイ ンッ
かん高い金属音が部屋に木霊する。
先手必勝とドンナー、ツヴァイ、ドライから
同時に放たれた弾丸がサソリモドキの外皮に弾かれた音だ。
お返しとサソリモドキは尻尾の先から紫色の液体をハジメに向けて噴射する。
かなりの速度で飛来したそれを再び柱の陰に入りかわす。
床と柱に着弾した紫の液体はジュワーという音を立て
床と柱を溶かしていく。
その液体を液体鑑定で見た経緯子が
「強酸性⁉︎溶解液!」
「香織さん。ユエさんの回復を」
とハジメは言いながら柱の陰からドンナーを撃ちつつ飛び出す。
やはりドンナーの弾丸はサソリモドキの外皮に弾かれ
六本の足をわしゃわしゃ動かしハジメへと接近してくるサソリモドキに
「泡沫水流!」
経緯子が試作品の洗剤を混ぜ込んだ水を
魔法でサソリモドキの足の付け根を狙い浴びせる。
「グルッウ」とサソリモドキは苦し気な唸りを上げ
いくらか動きが鈍った。
「あれだけ大きいと呼吸は気門だけじゃないかぁ」
とぼやく経緯子。どうやら経緯子はゴキブリ退治の様に
洗剤で節足動物の呼吸器、足の付け根付近の気門を
塞ぎ窒息させたかったようだ。
動きがを鈍らせた事は無駄にならず
そのすきを狙いハジメは手榴弾を投げつける
爆発と同時に中から黒い燃える泥を撒き散らし
サソリモドキに付着する。
これはフラム鉱石を利用して作った”焼夷手榴弾”
いわゆるナパーム弾で摂氏三千度の炎が纏わり着く
これは流石に効いてるようでサソリモドキは
炎を消そうと手足をでたらめに動かしている。
そのすきにハジメと経緯子はドンナーとツヴァイのリロードを終えて
次弾を撃ちこもうとする前に
サソリモドキのもう一つの尻尾の先端が膨らみ
一本の太い針がハジメ達に向けて射出される。
空中でその針は分離し散弾の様に二人に迫る。
二人はドンナーとツヴァイで迎撃するも
分離した針の数が多く撃ちもらした
針が二人に向かうハジメが義手の爪で
経緯子は長巻で針を打ち払うより早く
「聖絶!」
とユエの回復を終えた香織の魔法で防がれる。
ユエはハジメ達の戦いに驚愕していた。
見たこともない武器で閃光のような攻撃を行い。
何より三人は詠唱を行っていなかった。
それは自分と同じ魔力を直接操作できる
術を持っているということにユエは気付いたのだ。
自分と”同じ”が何故かこの奈落にいる。
ユエはそんな場合ではないと思いながらも
サソリモドキよりハジメ達を意識せずいられなかった。
ハジメ達はサソリモドキの外皮の硬さに
手詰まり感を感じていた。
ドンナーが通じないと基本、後衛補助職の三人は
攻撃力に欠ける。そんな中ハジメは
(奥の手をでもあれは一度きりだし)
と思案する中、サソリモドキが絶叫する。
「キィィィィィイイ!!」
その叫びの後サソリモドキの地面が波打ち
轟音なびかせ円錐状の棘が突き出しながら
柱の陰に隠れてるユエに襲い掛かる。
「くっ!」
ハジメはユエと棘の間に一寸速く
割り込み床に手を付き錬成でハジメとユエの周りを
壁で囲みなんとか防ぐ、壁の中で
「アイツ硬すぎる。こうなったら奥の手をゼロ距離で?」
ハジメがサソリモドキの攻略を考えてるとユエがポツリと零す。
「・・・どうして逃げないの」
自分を見捨てれば助かるかもしれない。
その可能性を理解してるはずなのに
「助けると決めたのに少し強い敵が出たからって見捨てるのは
僕も経緯子ちゃんと香織さんも嫌だし」
ハジメも生きるための戦いの駆け引きなら
不意打ちも罠も必要だと考えてるし
そうでなければこの奈落の魔物相手に
生き残れなかった。どこぞの二代目紳士的宇宙人
のように「卑怯もらっきょもあるものか」である。
だけどハジメがユエを見捨てる事はない
何故ならそれは経緯子と香織が守った
ハジメの強さと優しさを裏切ることになるからだ。
ハジメが今もサソリモドキと対峙している
経緯子と香織の元にと向かおうとすると
ユエがいきなり抱きつく
「ユエ・・さん?」
「ハジメ・・・信じて」
と言うとハジメの首筋にカプッと噛みついた
ハジメは首筋の痛み感じ体から力が抜けていく感じがする
そういえばユエさんは吸血鬼だなと思い
なすがまま吸われるハジメ
徐々にユエの肌が艶と張りのある白磁の肌に戻っていき
頬は赤みをおびる。
「・・・ごちそうさま」
とユエは首筋から口を離し妖艶さを感じる仕草で
己の唇に残ったハジメの血を舐めとると
ユエはおもむろに立ち上がりサソリモドキに向けて片手を掲げた。
同時に黄金色の莫大な魔力が彼女から吹き上がり
ユエの魔力光、黄金の光が暗闇を薙ぎ払った。
「”蒼天”」
その瞬間、サソリモドキの頭上に直径六,七メートルは
ありそうな青白い炎の球体ができる。
ユエの指が優雅に振られるとサソリモドキに
青白い炎の球体が向かい直撃する。
「グゥギィヤァァァアアア!」
サソリモドキがかってない絶叫をあげる。
「「凄い・・・」」
経緯子と香織もユエの魔法を
ただ呆然と眺めていた。
魔法の効果時間が終わり炎か消滅する。
そこには外殻が赤熱化し表面をドロリと溶け
もだえ苦しむサソリモドキがいた。
トサリと音がしてハジメが音のした方見ると
ユエが肩で息をしながら座り込んでいた。
「んっ・・・最上級・・・疲れる」
「凄かったよユエさん。後は任せて休んでて」
「んっ頑張って・・・」
ハジメは軽く頷くと縮地で一気に間合いを詰めた。
サソリモドキは未だ健在で外殻を融解させながら
怒りハジメに向かってくるが。
「光縛鎖」
香織が魔法の鎖でダメージで動きが鈍っているサソリモドキを拘束する。
サソリモドキは動く尻尾でハジメに散弾針を撃つが
分裂する前に経緯子のツヴァイによって撃ち抜かれる。
そしてハジメはカバーを収納した左手を
サソリモドキに向けて構える。
左手の肘から先は無骨な造りの銃のような物が
ついていた。これはハジメが男の浪漫に走った結果の
試作の12.7ミリ弾を使う仕込み単発銃だ。
ハジメは左手に纏雷まとわせ右手で左の肘を支えると
右手の中指で肘の辺りにあるトリガーを押すと
ドッガアァアアンンッ
ドンナーと比べものにならない轟音が響き
サソリモドキに超音速の弾丸が命中する
ドンナーの数倍の威力を持つそれは
外殻が赤熱化そして表面が融解していた
サソリモドキの頭部を撃ち抜いた。
そしてサソリモドキはぐらりと傾き地響きを立て倒れこんだ。
一方のハジメはヒュ~♪とはいかず。
「いてぇー 肩がはずれかけたぁ!」
左肩を押さえて痛みでゴロゴロ転がってた。
ハジメの左手を見ると銃の固定部は歪んで外れかけている
威力の増大の反動に堪えられなかったみたいだ。
しかもハジメの肩に負担がもろにかかり
魔物の肉で変容した、今の体でないと
肩が抜けかけるではすまなかっただろう。
浪漫は浪漫だよと思うハジメだった。
香織が駆け寄りハジメに治療魔法をかけ。
仕方ないなぁハジメちゃんはと苦笑いする経緯子に
同じく苦笑し返すハジメ
そんな彼らの姿を無表情だが眩しそうに嬉しそうに
女の子座りをし眺めるユエの姿があった。
やがてハジメは立ち上がり
三人はユエの方へ歩いて行く。
闇の中で見つけた黄金色の仲間のもとに。
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同じ頃再びオルクス迷宮に潜った
海里とクラスメイト達は歴代最高到達点の65階層に続く階段の前で小休止していた。
パーティリーダーである、光輝と重伍はメルドから65階層の注意点を聞き
他のメンバーは装備の点検を行い。海里は騎士団と生徒達にスポーツドリンク擬きを
配っていた。檜山はそんな海里を昏く濁った目で見ていた。海里が現れてから
自分は碌なめに遭っておらず。クラスの女子からは汚物扱い
教会や王国も要注意人物と監視が強くほぼ自由が無い。
だからこそ檜山は城に引きこもらず光輝達に付いて戦っていた。
役に立つところを見せ、上の人間に媚びる以外居場所が無いことを
彼自身の価値観に合わせ行動していた。
「君も飲みますかぁ?」
と海里が檜山に声をかける。
「ヒギッ いっいらねぇよ」
「そうですか。水分補給しっかりしてくださいねぇ」
と言うと海里は雫達の方へ戻っていく。
檜山は海里が自分がハジメに魔法を撃ったことを
知らないはずだ。クラスメイトの誰にもばれてないはずだ。
しかし自分たち4人に他の女子と違い表面上
普通に接してくる態度に何かを探っているのでは
勘ぐってしまう。もっと力を入れたその時こそと考える。
雫は軽く目を閉じ壁に持たれかかっていた。
何かを決断するために
そんな雫に海里がドリンクをすすめる。
「雫さんも今のうちに水分補給を」
雫は海里に礼を言い飲み物受け取り一口飲むと
「海里さん次の階でアイツが出たらアレを使います」
「雫さんあんなに嫌がってたのに」
「甘い事を言ってたら香織達に追いつけないから
使えるものは何でも使います」
と言うとドリンクを一気に飲み干す雫だった。
65階層に降りしばらく進むと大きな広間にでた。
そして中に足を踏み入れる同時に部屋の中央に魔法陣が浮かび上がる。
赤黒い脈動する直径十メートル程の魔法陣。
それは、とても見覚えのある魔法陣だった。
「ま、まさか……アイツなのか!」
光輝が額に冷や汗を浮かべながら叫ぶ。他のメンバーの表情にも緊張の色がはっきりと浮かんでいた。
「マジかよ、アイツは死んだんじゃなかったのかよ!」
龍太郎も驚愕をあらわにして叫ぶ。
それに応えたのは、険しい表情をしながらも冷静な声音のメルド団長だ。
「迷宮の魔物の発生原因は解明されていない。一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある。
気を引き締めろ! 退路の確保を忘れるな」
そのメルドの言葉に光輝は不満げに応える。
「メルドさん。俺達はもうあの時の俺達じゃありません。何倍も強くなったんだ!
もう負けはしない! 必ず勝ってみせます!」
「南雲。香織。栗原」
と龍太郎は決意を込めハジメ達の名を呟く。
そんな光輝の態度に メルド団長はやれやれと肩を竦め、
確かに今の光輝達の実力なら大丈夫だろうと、
しかも海里がいるのだと思い同じく不敵な笑みを浮かべた。
そして、遂に魔法陣が爆発したように輝き、かつての悪夢が再び光輝達の前に現れた。
グゥガァアアア!!
咆哮と共にベヒモスが姿を現すそして
「イナズマァアアアキックゥウウ!!」
バガァアアアンッンン
いきなり海里が天井付近まで飛び上がり
重力魔法で増やした体重をのせた飛び蹴りを
ベヒモスの頭部に叩き込み床に頭をめり込ませる。
めり込んだ頭部から降り立つ海里
ベヒモスは抜け出そうともがいていた。
それを海里は見て剣を抜こうとするが
「海里さん!私にやらせてください!!」
この場にいる全員が怒涛の展開についていけない中
後方から雫が叫ぶ。そして雫を見た光輝達は更に呆気にとられる。
雫が真剣な顔をして犬耳を付けていた。
これこそ海里とハジメが無駄な技術で無駄にこだわった
雫専用犬耳型(ドーベルマンタイプ)思念波補助器具である。(*07 イジメとイカリ参照)
光輝達が呆然としている中を雫は悠然と歩きながら
カプセルを口に入れる。海里からもらった
緊急強化用の”ミクラス”である
これを使うと一時的に体内のナノマシンが増大する
その効果はというと今の雫だと神速剣二倍が限界だが
それを短時間だが最大五倍まで引き上げる事ができる。
ある意味勇者の限界突破を超える作用がある。
そして海里と入れ替わり雫が先頭に立ち
ベヒモスと対峙する。
刀を抜きベヒモスを正面に見据え
上段に構える。
(あの時に使っていればどうにかなったと思わないけど。
今ならだから力を貸してナノちゃん)
「私の行く道を阻む物を全てを切り裂く烈しい風の刃」
雫が言葉を紡ぎながら魔力を練り上がげていく
雫のポニーテールが揺らめき
それに合わせ刀のコーティングに使われた
ナノマシンも呼応して刀身が輝く。
ベヒモスが床から抜け出しキイィィンンという
高音と共に角が赤熱化していく
それを見た光輝が何か叫ぼうとした時
雫は限界までため込んだ魔力を
「烈風ぅうう斬ぁああんん!!!」
の叫びと共に刃にのせ全力で振り下ろす。
凄まじい衝撃波が刀の軌跡に沿いベヒモスに飛んでいく
ドガガァアアアアアンン
部屋全体を揺さぶる轟音が収まった時
そこにはベヒモスの足が一本残っているのみ
他は全て消し飛んだ様だ。
奥の壁にもひびが入っている。
雫は自分が思った以上の威力に内心オロオロしていた。
その証拠に雫の犬耳は伏せている。
この犬耳は感情を読み取りそれに合わせ動く
無駄なこだわりがあるのだ。
そんな時海里が何かに気づき叫ぶ
「格子力バリアー!最大!」
と海里、雫と生徒達、騎士団全員を覆う
ガラス板を繋ぎ合わせたような半透明ドームが現れる。
そしてゴゴゴゴゴと音がしたかとおもうと
部屋全体にひびが広がり崩落が始まった。
しばらくして音が鳴りやむと
完全に部屋は埋まっていて
雫は犬耳を伏せ体育座りで落ち込んでいた。
そして上目遣いで海里に私が悪いのと訴えかけている。
(ナノちゃんもしかして張り切りすぎた?)
『どうも雫様の専属達が海里様に良いところを
見せたかったみたいなので』
雫のナノちゃん達も悪気はないしこれからの事も
考えるとやりすぎ位でいいと思うので海里に
次はもう少し周り環境を配慮するようにお願いした。
遠まきに生徒達が見守る中
なんとか雫を励まそうと海里が奮闘中に
とにかくメルドの判断で地上に戻り
迷宮の攻略ルートを再検討する事が決まった・
真面目な戦闘回でした。
雫たちがつり橋で立ち止まる所はカットしました。
雫に鈴も恵里も奈落の底でハジメ達がよろしくやって生きてるのを
知っているので恵里の降霊術の下りはなくなるし
わざわざ勇者(笑)の頓珍漢なセリフは書く必要無いと思い無しに
檜山の言葉からわかる通りこの世界の恵里は
檜山と接触してません。香織が落ちてハジメとアレな関係になってると思ってる
上に檜山が要注意人物とみられて余りにも利用価値が低いからです。
雫の犬耳について、思念波補助にメーヴィスと同じ剣より
海里(マイル)とハジメがいるなら拘りケモ耳かなと
そして日本刀→ポニテ→坂本少佐で技がアレに
なのでベヒモスごとき一撃です。
オマケ
ハジメ 「ユエさんなに踊ってるの?(色々見えそうだよ////)」
ユエ 「裸マント・・・吸血鬼・・・踊らないとダメ・・トキメキの夜だから」