ありふれた(平均)値で世界最強って言ったよね! 作:simasima
ゆっくりと目を開いたハジメはすぐに二人を探す。
背後に居た経緯子と香織の無事な姿を確認すると
次に周囲を注意深く見渡す。まず目に入ったのは、
縦横十メートルはありそうな壁画だった。そこに描かれているのは、
後光を背負い長い金髪を靡かせて薄らと微笑む中性的な顔の人物が
両手で世界を包み込むよう描かれている。美しい壁画だ。
だが、ハジメはその壁画に何故か薄ら寒さを感じて無意識に目を逸らす。
どうやら自分たちは、巨大なドーム状の最奥にある台座の様な場所に居るようだ。
パッと見確認しただけだが、あの時教室に居た全員が巻き込まれた様だ。
自分たちの居る台座の前には三十人近い人々が
両手を胸の前で組み、祈りを捧げる様に跪いている。
しばらく彼らを観測していると。
一人の老人がハジメたちの居る台座に近づいてくる。
その老人の服装は周りの人物の中で一番豪華で煌びやかであり。
多分かなり上の人物だろうと思われる。
そんな人物がハジメたちに、威厳に満ちた声で話しかける。
「ようこそ。トータプギャあぁぁ!!」
話の途中で踏み潰されたカエルの様な叫びを上げた。
何故ならイキナリ老人の頭上に現れた光を纏った人らしきモノに
文字通り踏まれて、倒され背中の上に立たれてた。
ハジメたちが啞然としていると、件の人らしきモノの
光が収まってくる。どうやら女性の様だ。
完全に光が消え姿形が明らかになる。
腰まである艶のある黒髪、形の良い眉、目は閉じているが
それがかえって彼女に大人びた印象与えてる。
どこか儚げな感じのする美少女だ。年齢はハジメたち同じ頃に見える。
彼女の服装はハジメたちも知る有名な進学校の制服だった。
その時ハジメと経緯子は彼女を微動だにせず凝視していた。
まるで二人の時間が止まったように。
「南雲くん・・・・?経緯子ちゃん・・・・?」
と側に居た香織が訝しげに二人に声をかける。
と同時ぐらいに例の彼女がゆっくりと目を開ける。
その様子を見たハジメと経緯子の二人は、
いきなりその彼女に向かって走り出す。
何事かとクラスメイト達が困惑している中、
あっという間に台座を飛び降り、
何かを踏みつけたが、気にせず。
「お姉ちゃん!!」
と叫び例の彼女に抱きつく経緯子。
ハジメもすぐ近くに立ち、声を震わせ
「海里姉ちゃん・・・・」
そう、現れた少女は二年前事故死したその当時と変わらない
栗原海里の姿をしていた。
「・・・経緯子? ・・・ハジメちゃん?」
彼女は困惑した様子で声を出す。その声を聞いた経緯子は
「お姉ちゃん!お姉ちゃん・・・うわぁぁん」
抱き締めたまま泣きじゃくる。
ハジメも海里を見つめ只々涙を流している。
その様子を呆然と眺めていたクラスメイト達だったが、
誰かがボソッと言った。
「確か栗原さんのお姉さんて・・・」
「交通事故で亡くなったはず・・?」
「現れた時光ってたよね?」
「栗原さんを迎えに出てきた?」
「じゃあ教室光ったのは・・・」
「何かが爆発して巻き込まれた」
「・・・俺たちその時に死んだ?」
「えっ⁉︎ 死んだのか?」
「そんな‼︎ やだやだよー!」
「うわあぁぁぁぁ‼︎」
阿鼻叫喚である。普段ならココまで簡単にパニックにならないだろうが、
目を開けたらいきなり見知らぬ場所に居て、
その上で故人と思われる人物が突然現れたのだ。
ストレスが限界突破するのも仕方ない。
そんな中で一人ノリ遅れた感のする雫は、
騒ぎを納めようと左往右往する光輝。
そして人を踏み付けたまま彼女の姉らしき人を抱き締め泣いてる経緯子。
その側で泣いているハジメ。
そんな中でもハジメの側に行こうとする香織の首根っこを掴みながら、
改めて周囲を見渡し一人ツッコミがちに言う。
「なに?このカオス。グダグダだわ」
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あの後踏みつられていた老人が退場し、
まだ海里にしがみついている経緯子の代わりに、
周りで祈っていた人達にハジメがジャニーズ謝罪DO☆GE☆ZAをかまし、
それを香織が、「ほわわぁぁ」とキラキラした瞳で見たり。
となんだかんだあって、取り合えず説明すると言うので
豪華な広間に案内される。
上座に近い所に畑山先生と光輝とその幼なじみ達
(香織は雫に南雲くんの側に座ろうと言ったが、
雫から「後で光輝が面倒くさくなるので
今は我慢して」と言われ未練タラタラに座る)
ハジメ達三人は最後方に座る。経緯子とハジメは
海里の事は本人から後で事情を説明すると聞き、今は落ち着きを取り戻している。
この広間に来るまでクラスメイト達が静かだったのは、先程の自分たちの醜態が
落ち着くと恥ずかしくなり若干賢者モードに入っており、無駄にカリスマのある光輝が
先導し、彼らの教師である愛子先生が居たのも理由であろう。
全員が着席するとカートを押して見た目麗しいメイドさん達が入ってきた。
そして傍に来て飲み物を給仕してくれる。
男子生徒たちは、そんなメイドさんを凝視して受け取る(1名オッサンが棲む女子も)。
そんな男子を女子は冷ややかな目見ていたのだが・・・。
後一人だけ飲み物を貰いそこねかけた。遠藤ェ・・・
ハジメの所にもメイドさんが給仕に来てくれたときに凝視しそうになった瞬間、
背筋に悪寒を感じて見るのをやめた。チラリと悪寒を感じた方へ視線を向けると、
香織が満面の笑顔だがそうでない目でハジメを見ていた。うんコワイ。
ハジメは視線を逸らし誤魔化す様に海里と経緯子に小声で話しかける。
「これはハニトラだよね?」
「ハジメちゃんの言う通りだろうね」
とハジメと同じくこの様な創作物に詳しい海里が答える。
そして先程退場した老人(のちにイシュタルという名前が教えられる)程ではないが、
位の高い人物がイシュタルが聞いたと言う“エヒト神”からの神託を話し始める。
長いので要約すると彼ら人間族は魔人族と言う種族と何百年も戦争続けているのだが、
個々の能力は魔人族の方が高いが、人間族は数が多いので戦力的には拮抗し、
ここ数十年は小競り合いばかりで大規模な戦争は起きていないそうだ。
だが最近魔人族は魔物を大量に使役する術を手にしたらしく、それによって
数の有利が覆され、人間族は滅びの危機を迎えているのだ。
其れを憂慮したエヒト神が自分たちを召喚したらしい。
そして自分たちの地球はこの世界“トータス”より上位にあり
その為自分たちは現地の人間より何十倍の力を持っているそうだ。
一通り説明を受けた時、畑山愛子先生が立ち上がり抗議する。
「ふざけないで下さい!結局、この子達に戦争させようってことでしょ!そんなの許しません!ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい!あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」
ぷりぷりと怒る愛子先生。今年で25歳になる社会科の教師で、何時でも生徒達の事を
一番に考える先生で非常に人気があるが、百四十センチの低身長に生徒たちより
若く見える童顔の故に、今も生徒達の為必死に抗議してるにも関わらず、
生徒たちは「ああ、愛ちゃん頑張ってる・・・」とほんわかとした気持ちで眺めている。
そんなクラスメイト達を見て雫は心の中で
(この状況でほんわかできるとか、余裕あるのね)
をツッコミを入れた。
その余裕も還す事が出来無いと聞かされるまでであった。
クラスメイト達の間に動揺が広がるがパニックにまではならない。
何故なら一度死んだと思い込んだのだ。死ねば戻れないのは当たり前。
伊達にあの世は見て無いぜ(嘘)である。
だがどうすれば良いのか?わからないのも現状である。
ハジメや経緯子が考えるも情報が無さすぎて判断出来無い。
ふと横に居る海里の顔を見る。海里は無表情で話している人物を見ていた。
それを見てハジメたちは海里が怒っている事を悟る。
この表情は海里が冷たく冷静な状態で、相手に対して厳しく対応をとる。
地球でストーカーなどに対処する状態である。
事実、海里は怒っていた。命掛けの戦い、戦争を知っているからこそ
そんなモノに経緯子とハジメを巻き込もうする者たちに。
自分一人ならココから出て行けば良いが、大切な二人がいるのだ。
最優先するべき事は無事に帰すこと。だとすると彼らの要請を
完全に断るのはいけない等考えていると、
クラスメイトが困惑し沈黙している中、光輝が立ち上がり
机をバンッと叩いた。その音でクラスメイトの視線が集まる。
「皆、ここで文句を言っても意味がない。彼らにだってどうしようもないんだ。
俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。
それを知って、放っておくなんて俺にはできない。
それに、人間を救うために召喚されたのなら、
救済さえ終われば帰してくれるかもしれないどうですか?」
「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」
「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」
「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると
数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。
俺が世界も皆も救ってみせる!!」
光輝がそのカリスマ性でクラスメイトたちを扇動しようとした時、
「少しお話いいですかぁ・・・・・」
と地獄の底から聞こえてくる様な海里の声が響く
その声にその場の全員が恐怖する。
そのままの声で海里は話し始める。
「ただ、全員が戦争に強制参加はいかかがなものかとぉ・・・
いくら力を得たとは言え能力、性格などぉ・・・・
前線に向かない者もいると思うのですよぅ・・・・」
「し・・・・しかしそう言われましてもエヒト神様の意向ですし・・・・」
怯えながらも海里に答える担当者。海里は話を続ける。
「何も協力しないとは言って無いですよぉ・・・・
帰るためなら力を貸します。
ただ戦争参加は志願制してくださいと言う事ですぅ・・・・
良いですかぁ・・・?いいですよねぇ・・・?・・・・ねぇ?」
「・・・・あっハイ」
とりあえず言質を取った海里だったのだ。
その後、この国ハイリヒ王国の顔合わせを兼ねた晩餐会があり、
流石にいきなり前線という事ではなく、明日から訓練を開始するとの事。
そして各自に豪華な部屋を与えられ解散となった。
その日夜
「雫ちゃん。水洗ポイので良かったよ」
「そうね香織。中世の城みたいな感じだから、
下手したらオマルとか思ったから」
どうやら二人はトイレに行った帰りみたいだ。初めての場所なので二人で行った様だ。
自分達の部屋向かって廊下歩いていると、突然香織が「スワッ」と目を見開く。
その視線の先には海里と経緯子が連れだって誰かの部屋に入っていく所だった。
「あの部屋は南雲くんの部屋!」
「えっ?香織?いつ南雲くんの部屋把握したの?あの後彼とは話して無いよね?」
「こんな夜遅くに二人は南雲くんに・・・私も行かないと」
「えっ?えっ?・・・・かっ・・香織?ちょっ、ちょっと待ちなさ・・・」
香織を止めようとしたが、雫が戸惑っている間に部屋に入ってしまう。
普段の香織なら部屋に勝手に入る事はないであろうが、
知らない世界に連れて来られ、家族等から引き離された不安から
自分の好きな人の傍に居たいと言う気持ちが抑えられなかった故の行動である。
仕方なく香織を連れ戻すため雫もハジメの部屋には入る。
部屋の中には香織と雫を戸惑い気味に見る。ハジメ、経緯子、海里の三人が居た。
雫はすぐ謝罪して香織を連れだそうとするが
「ごめんなさい。ほら香織、自分達の部屋戻るわよ!」
「待って。2人は経緯子とハジメちゃんの友達?」
と海里が引き止める。
「ハイ!南雲くんと経緯子ちゃんの友達の白崎香織です」
「私は、八重樫雫と言います」
「そう二人の友達・・・」
呟いて経緯子とハジメ見て二人がうなずくと
「そのまま居てもらっても構わないよ。私が誰か経緯子達と一緒に話を聞いて」
その言葉に緊張する。香織と雫。しばらくの沈黙後おもむろに口を開く
「私は経緯子の死んだ姉の栗原海里よ。そして今は異世界転生して“マイル”と呼ばれているの」
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何処の空間
「ココは捨てられたはず」
「なぜアレの・・・・・が?」
とつぶやくモノがあった。
イシュタルの爺さんが話す間も無く退場で、
勇者を都合良く使い扇動する事に失敗します。