ありふれた(平均)値で世界最強って言ったよね! 作:simasima
久しぶりに一週間以内で更新出来ました。
では本編です。
樹海に破壊音が響ている。木々は折れ、燃え、凍え、
地は穴が穿ちていた。その中心には小柄な影がひとつあった。
「でぇやぁああああ!!」
若い女の気合いのこもった声が響くと、
霧の中から直径一メートル程の樹が、
中央の小柄な影をめがけて飛んでくる。
だがその樹が届くことはなかった。
「……〝緋槍〟」
言葉と共に豪炎の槍が迎え撃ち、かの者を狙った樹は灰になり散った。
「まだです!」
霧の中、影が走ったかと思えば頭上の霧が爆ぜ、
中から砲弾のごとく丸太が飛び出し
轟音を響かせながら大地に突き刺さる。
目標の人物はバックステップで
衝撃波の範囲から脱出し魔法を放とうとするが、
そこに霧の中から飛び出した影が大地に刺さった丸太に飛び蹴りする。
どれだけのエネルギーが込められていたのか、丸太は爆散し破片が散弾と化し目標を襲う。
「ッ! 〝城炎〟」
だが散弾は炎の城壁に遮られる。
しかしその時
「もらいましたぁ!」
破片と炎を隠れ蓑のにして目標の後ろにまわっていた影が大槌を振りかざし迫る。
「〝風壁〟」
そして・・・
ユエとシアは正座していた。
いや経緯子と香織によってさせられていた。
香織が腕を組み二人を見下ろしながら、
「ユエにシアが傷をつけれたら、ハジメくんに付いて行くとか
全然、聞いてないかな?かな?」
ユエが言い訳がましく答える。
「ハジメに・・口添えすると言っただけ」
シアはユエに焦り口調で
「ユエさん、お二人をもう少し説得して欲しいですぅ」
「んっ・・私は四天王最弱」
ユエは二人に黙って、女の同行者を増やす賭けをしたことに後ろめたさを感じ押しが弱い。
そこに経緯子が周りの惨状を一瞥して、あきれた様子で、口を開く。
「しっかし。よくここまで森林破壊したわね・・・それで賭けとやらは、どうなったのシアさん?」
「よくぞ!聞いてくれました!経緯子さん!見事!ユエさんに一発入れてやりましたですぅ!」
シアはうさ耳をピンと立て。ドヤ顔でのたまった。
「うざっ・・・掠めただけ」
「それでも勝ちは勝ちですぅ。ユエさんこそ、すぐに傷を消してなかった様にしたくせにぃ」
「それでユエさん。シアさんはどれぐらい強いの?」
「魔法適正はハジメと変わらない・・・身体強化に特化している。
強化してないハジメ達の六割ぐらい、・・・多分まだまだ上がる」
「「おおっ・・」」
そのユエの答えに経緯子と香織は驚愕とも感心とも取れる声を出し、
二人は小声で何やら話をするとシアを見定めるがごとく、プレッシャーをかける。
最近とみに目つきの鋭さがました。その経緯子の目をシアは顔を背ける事もなく、真っ直ぐに見ている。
「わかったわ。ハジメちゃんに連れて行くように私も口添えしてあげる」
「シア!あくまで同行するように、口添えするだけでそれ以上は無いかな」
経緯子と香織はシアの覚悟を決めた顔を見てそう言った。
「はいです!」
シアは満面の笑みでそう答えたのだった。
四人揃ってハジメの所に行くと、ハジメはハウリア達の武器を錬成していたが、
錬成の手を止め、彼女たちを見る。
経緯子と香織は少し申し訳しそうな顔しておりユエは不機嫌そうで、シアは神妙な顔をしていた。
ハジメは何があったのかなと思い、そういえばユエとシアで何か賭けをしていると言っていたのを思い出し、
尋ねようとしたらユエが、嫌々な雰囲気でハジメに言った。
「ハジメ・・・シアを連れて行こう」
「なんで?」
その後ユエから、賭けの内容を聞いたハジメが呟く
「経緯子ちゃんも香織も、了承済みか・・・」
二人の態度から、既に外堀を埋められていると察した。
「シアさん。どうして一緒に行きたいの?
家族の皆に迷惑がかかるとか?
魔力操作を使える。僕達との同胞意識から?」
ハシメはシアに理由を尋ねると
シアは顔を赤らめ、体をもじもじさせながら言った。
「はい。それもありますけどぉ・・・
いっ一番は・・ハジメさんのことが しゅきなのでぇ!」
(((噛んだ)))
「はぁ?僕なにか?したっけ?」
「長老達の前で、全てと戦ってでも、
視たのです。私のこれからは、ハジメさんとあるのだと」
少し捏造したシーンが入ったセリフを言ったシアはハジメを潤んだ瞳で見つめ、
ハジメは経緯子達を一瞥しそしてガシガシと頭を搔いてからにシアに言った。
「危険な旅だよ?」
「人より力持ちで、化け物で良かったです。一緒に戦えます」
「僕達の望みは、故郷に帰る事。二度と家族に会えなくても?」
「ふるさと後にしてもです。ハジメさんの傍に居たいです」
「シアさんでも・・」
「未来視は役に立ちますよ。それにです・・」
「それに・・・?」
シアは顔を更に上目遣いで、ハジメにボソッと言った。
「ハジメさんになら・・どぱっと裸を見せても・・」
「シアさん、それはいいから。そんな機会はないから」
「ハジメさん。すでに三人いるのだから、もう一人ぐらい増えても」
「経緯子ちゃん、香織、ユエ。これ以上”特別”を増やす気はないよ。
それに・・・物理的にも無理だし」
「物理的・・・?」
シアが三人を見ると。経緯子は照れ隠しに頬をかき、
香織はテヘッと舌を出し、ユエはドヤァと胸を張っている。
そんな三人の様子から感想を述べる。
「むっつり。陰獣。やり手ババァ」
その言葉に、特に香織とユエの表情が強張る。
(シアさん。やり手ババァは意味が違うよ)
と「あひぃー」とユエの風魔法で飛ばされてる。
シアをあきれ顔で眺めつつ思った。
どぐしゃ!と車田落ちしたシアを香織が纏雷で追い打ちをかけていた。
「アパパパパッ」の叫び声が響く中、経緯子は
「私って・・むっつり・・ムッツリーナなの」
と何やらショックを受けている。
ハジメはその光景を見ながら
「やっぱりシアさんは、残念ウサギだなぁ」
と呟いた。
「えへへ、くふふ~、ハジメさん~
これからは親しみを込めて”シア”と呼んでください」
ハジメから同行を許された、シアは緩みっぱなしの頬に両手を当てて、体をくねくねしていた。
「・・・キモイ」
見かねたユエがぼそりと呟き、ラビットイヤーは地獄耳で
その呟きを拾ったシアが文句を言おうとした時。
影がハジメ達の前に舞い降りる。
「ボス!熊人族が我ら梁山泊に進軍中との報ありです」
シアは目の前に現れたハウリアの男を見て呆然する。
その男は父親のカムであったが、口調といい雰囲気といい
明らかに変だった。
「父様!何があったのです。それに梁山泊とは
ここはハウリアの里ですよね?」
シアが慌てて問い質すと。カムはシアに温和な顔で。
「シアよ。我らハウリアは立ち上がったのだ。樹海の未来を憂う者として、そしてこの場所は宿星の導きに集いし”梁山泊”と生まれ変わったのだ!」
シアが意味不明な事を言うカムに唖然としいる中、経緯子がカムに問う。
「そう、今日の大樹の霧が晴れる日に攻めてきたのね。
私達が居なくなる。タイミングを狙って。カムさん準備は?」
「イエス!ビックママ!ノープロブレムであります」
とカムが返事すると、霧の中から影が次々飛び出して瞬く間にカムの後ろに全てのハウリア達が整列する
「ボス!我ら梁山泊!108名揃いました。お言葉を!」
「どうする?お前たち?契約期間中だ。私達が相手しようか?」
「ボスたちのお手を煩わせる。必要はないであります。
我々だけで向かい討つ、所存であります」
カムが好戦的な笑顔を浮かべ自信ありげに答える。
他のハウリア達も皆、不敵な笑みを浮かべている。
そんな彼らを見て香織が言う。
「皆に、まかせてもいいかな?」
「マム!イエスであります!」
その返答にハジメは、瞑目し深呼吸した後、クワッと目を見開き。
「聞け!ハウリア諸君!今日をもってあなた方は糞蛆虫を卒業する。
もう淘汰されるだけの無価値な存在ではない!
力を以て理不尽を粉砕し、知恵を以て敵意を捩じ伏せる!
最高の戦士だ! 最強の兵士だ!
私怨に駆られ状況判断も出来ない〝ピッー〟な熊共にそれを教えてやれ!
奴らはもはや唯の踏み台に過ぎん! 唯の〝ピッー〟野郎どもだ!
奴らの戦意をくじき、プライドを叩き潰し、その上に証を立ててやれ!生誕の証だ!
ハウリア族が生まれ変わった事をこの樹海の全てに証明してやれ!」
「「「「「「「「「Sir、yes、sir!!」」」」」」」」」」
「答えろ! 諸君! 最強最高の戦士諸君! お前達の望みはなんだ!」
「「「「「「「「「勝利!勝利!勝利!」」」」」」」」」
「相手に与えるものは!」
「「「「「「「「「恐怖!恐怖!恐怖!」」」」」」」」」
「敵はどうする!」
「「「「「「「「「蹂躙!蹂躙!蹂躙!」」」」」」」」」
「そうだ!恐怖!蹂躙!君たちはそれが出来る!自らの手で生存の権利を獲得しろ!」
「「「「「「「「「「Aye、aye、Sir!!」」」」」」」」」
「いい気迫だ!ハウリア諸君!愚か者共を拿捕し!晒してやれ!
そして全ての亜人族に最強が誰か証を立てろ!作戦開始だ!」
「「「「「「「「「「YAHAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」」」」」」」」」」
知らない間に変わってしまった。家族たちに打ちひしがれる。
シアの隣を少年が駆け抜ける。彼は特にシアに、なついていた。
なので咄嗟に呼び止める。
「バルくん! 待って下さい! ほ、ほら、ここに綺麗なお花さんがありますよ?
君まで行かなくても……お姉ちゃんとここで待っていませんか? ね? そうしましょ?」
バル少年は花が大好きな少年だった。なのでシアは花で釣ろうとしたのだが
「シアの姉御、古傷を抉らねぇでくだせぇ。花を愛でてたそんな過去は捨ててしめぇやした。
今の俺は百八の宿星の一つ”天英星.必滅のバルトフェルド〟これからはそう呼んでくだせぇ」
と言い残すと森の奥に消えて行った。
「はっハジメさん!父様たちに何をしたのですか!
皆!別人じゃないですか!それに梁山泊とか!」
シアは涙目でハジメに詰め寄る。
「HAHAHA!シアさん。地球の効率的かつ合理的な
訓練をして。彼らの特性、隠蔽能力と敏捷性を
最大限に生かす。術を教えただけさ」
ハジメは右手を上げ、わざとらしく笑い言った。
「梁山泊の宿星の集いとか訳がわかりません」
「その辺は、訓練が行き過ぎて、殺意の歯止めのために
故郷の逸話(アニメ・ゲーム)とか訓示として話したら」
「話したら・・・」
「ハウリア的にツボッて、ああなった」
「あんなに穏やかだった。家族たちがぁ・・ぐじゅ」
と言って両手を地面につき。項垂れるシアの肩にポンとユエの手が置かれ
「・・・定めじゃ」
「なるべくしてなったと思う」
「抑えてたのが、解放されただけかな」
経緯子と香織もユエに同調するように言った。
「皆さん!ひどいです!」
とシアが憤慨するが、ハジメ達はシアのある料理風景を思いうかべる。
それはシアが、森で珍味様を見つけたので振舞ってくれたのだが
「ふんふんふ~ん♪切るぜ切るぜぇ、めったぎりぃ~♪」
『ギョォオエェエエエエエ⁉』
「あなたは~森の泉の妖精さぁん!とっても美味しい妖精さぁん!
どうして、ここにいるのかな~♪どうでもいいよねぇ~♪
だってとっても美味しいから~♪」
『アギョォオオオオオッ』
シアが陽気に歌い料理している。叫び声を上げているナニか
それは、胴体は一メートル程の魚で、頭は異常に血走った目と
カメレオン舌を持つ牛で、しかも胴体からはムカデの様な多数の足が生えていた。
それは魚ではなく”ギョッ”と呼ぶべきもので、断じて妖精さんではない。
その後も
「抉って~叩き潰して~飛び散っちゃぇ~♪」
『ニギョォゲェエエエッ』
「頭を取って、わしゃわしゃしてぇ~♪
すりおろして~びくんびくん~♪素敵な悲鳴!
それは素敵な調味料~」
『ルギィイイッギョバッたすけゴゲゲゲエエエッ』
とハジメ達の目の前で、SAN値直葬の料理風景が
繰り広げらえたのだ。
その事を思い出すと、ハウリア族がああなったのは
必然だと思うハジメ達だった。ちなみに妖精さん料理は普通に美味かった。
ハジメ達がシアを慰めてる間にハウリア達が「こんにちは。熊人族」と
ハウリア流環境利用闘法を駆使して完全武装の熊人達をあっさりと無力化し、
ハジメ達と共にポーリン縛りでフェアベルゲルンに連れて来た。
そしてカムは長老達にこう言った。
「今回は、ボスの顔をたて殺さずにおいたが、
以降、我らに手をだせば、慈悲はないぞ」
と首を搔ききる仕草をし、長老達に彼らを恫喝をと共に引渡した。
ちなみにポーリン縛りとは両腕を後ろに回させて、親指同士をマイル発明の釣り糸で縛る。
無理に引き千切ろうとすると、親指がぽろりと落ちて、二度と武器も農具も握れなくなる。
……ポロリもあるよ、である。
そして、腕や身体ではなく、首にかけたロープを馬車の後部に繋ぐ。
馬車の速度に合わせて歩かないと、首がきゅっ、と……。
どちらも、ポーリンがマイル達に教えた縛り方である。
それを海里が経緯子に教え、ハウリア達に伝え。
大樹に行くついでに熊人をドナドナして、連れて来たのだ。
そしてハジメ達は、カム達に案内され大樹の前に立っていた。
ハジメたちの第一声はというと。
「・・・なんだこりゃ」
「大きいけど・・」
「予想外だよ」
「・・・枯れてる」
大きさに関しては想像通り途轍もない。
直径は目算では測りづらいほど大きいが
直径五十メートルはあるのではないだろうか。
明らかに周囲の木々とは異なる異様だ。
周りの木々が青々とした葉を盛大に広げているのにもかかわらず、
大樹だけが枯れ木となっているのである。
「大樹は、フェアベルゲン建国前から枯れているそうです。
しかし、朽ちることはない。枯れたまま変化なく、
ずっとあるそうです。周囲の霧の性質と大樹の枯れながらも
朽ちないという点からいつしか神聖視されるようになりました。
まぁ、それだけなので、言ってみれば観光名所みたいなものですが……」
ハジメ達四人の疑問顔にカムが解説を入れる。
それを聞きながらハジメ達は大樹の根元まで歩み寄った。
そこには、アルフレリックが言っていた通り石板が建てられていた。
ハジメ達はオルクスの扉と同じ文様が刻まれている。
石板を色々と観察していると
「ハジメ・・・これ見て」
とユエが石板の裏側に何かを見つける。
そこには表の文様に対応するように
小さな窪みが開いていた。
「これは・・・」
ハジメが、手に持っているオルクスの指輪を
表のオルクスの文様に対応している窪みに嵌めてみる。
すると……石板が淡く輝きだした。
何事かと、周囲を見張っていたハウリア族も集まってきた。
しばらく、輝く石板を見ていると、次第に光が収まり、
代わりに何やら文字が浮き出始める。そこにはこう書かれていた。
〝四つの証〟
〝再生の力〟
〝紡がれた絆の道標〟
〝全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう〟
「どういう意味だ?」
「四つの証は?多分、他の迷宮の証?」
「う~ん、紡がれた絆の道標は、あれじゃないですか?
亜人の案内人を得られるかどうか。
亜人は基本的に樹海から出ませんし、ハジメさん達みたいに、
亜人に樹海を案内して貰える事なんて例外中の例外ですし」
「……あとは再生……私?」
ユエが自分の固有魔法〝自動再生〟を連想し自分を指差す。
試しにと、薄く指を切って〝自動再生〟を
発動しながら石板や大樹に触ってみるが……特に変化はない
「むぅ……違うみたい」
「再生の力は、再生に関する神代魔法のことかな?」
どうやら他の最低三つの大迷宮を攻略しないと駄目なようだ。
ハジメは直ぐ大樹を攻略できないことに、歯嚙みする。
「面倒だけど。他の迷宮を当たるしかないか・・・」
「がっかりしたけど、ここが大迷宮だとわかったんだし」
「経緯子ちゃんの言う通り。前向きに行こうハジメくん!」
「んっ・・」
と気持ちを切り替えて、他の迷宮を攻略するために樹海を出て再び旅立つハジメ達。
ハウリア達がついて来るとごねる場面もあったが、迷宮を守れとハジメが命令したことでなんとか納得させた。
次の目的地はライセン峡谷だが、その前に車で数時間の所にあるブルックの町に食料や調味料などの補給を兼ね行く事にしたハジメ達だった。
ハウリアの数が108人になったので、水滸伝。
次回はブルックとフューレンの二つの町の様子をです。