ありふれた(平均)値で世界最強って言ったよね!   作:simasima

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38 ショッピング

前回。好き勝手なネタ回を書いてしまいました。

今回は原作沿いの話です。

では本編です。

 

 

 

 

                          

 

 

男爵邸からルリファを解放した。海里と雫はルリファが、どうして攫われたのかを

聞き出した。彼女のたどたどしい話からわかった事はルリファの猫耳族の里は

樹海の外れ近くにあり。母親が目を離したすきに里の結界から出てしまい。

そこを奴隷狩りに見つかり攫われたと言う事だった。

なので海里と雫はとにかくルリファを猫耳族の里に送り届ける事にした。

 

そしてブルックの街に夕刻までに着く所で野営した朝。

 

シュコッ シュコッ

 

と海里に魔法で水を出してもらい。ルリファをイーさせて雫が

ルリファの歯を磨いている。そんな様子を海里はうらやまし気に

 

「雫さん。ルリファちゃんの世話しまくりです。私もしたいのに」

 

海里の恨み事(?)を聞きながら、ルリファに口をすすがせると

 

「私、一人っ子で可愛い妹の世話とかしたかったから。妹のいる海里さんならわかるでしょう」

 

と雫は言い訳がましく海里に答えたのだが

 

「妹…世話?」

 

海里は呟くと「お姉ちゃん。髪をとかさないと」「お姉ちゃん。ハンカチ、ティシュは持った?」「知らない人に付いて行ったらダメだよ」と

妹を世話するどころか毎朝、経緯子に世話されまくってた。故に「ダメ姉・・」と地面に両手をつくのだった。

 

とにかく海里が茶番劇をしている中、これまでの旅で雫はそんな海里にすっかり慣れてしまい。

今も何事もなかったかのように朝食の準備をするのだった。

 

 

 

 

__________________________________

 

 

 

「んっ~”パン”って美味しいですねぇ」

 

マサカの宿の食堂でシアが幸せそうに朝食のパンを食べてた。

そんなシアを見て香織が

 

「シアはブルックの街で初めてパンを食べたんだよね」

 

「はいです。樹海には小麦畑はなかったですから。柔らかく美味しいです」

 

シアの言葉から分かる様に霧に包まれた樹海で大規模な農業は無理であり

地球のような焼き畑農業を亜人達の守り神である樹海で行われる訳は無く

精々家庭菜園規模の畑が限界で小麦粉は貴重品だった。

亜人達の食事は狩猟と栽培し易いタロイモの類に季節の木の実が主であった。

なのでシアは街に入るまでパンを食べた事が無かったのだ。

ハジメ達は幸せそうにパンを食べるシアにほっこりしながら

朝食を食べ。今日の予定を話し合う。

 

「僕は作りたい物があるからチェックアウトまで宿に居るつもりだけど」

 

「私たちは食料の買い出ししとくし」

 

「替えの下着とかシアの服も買わないとだね」

 

「地図におすすめ書いてあった…」

 

「もぎゅもぎゅ」

 

 

 

朝食をすました後、彼女たちの四人は買い出しに出たのだが

この時間帯は道具屋や食料品店は混雑しているので

先にキャサリンさんの地図に書いてあった。

お勧めの冒険者向きの店にシアの服を買いに行く事にした。

 

その店はお勧めの名に恥じない。品揃え、品質共に満足出来る店だったのだが

 

 

「あら~ん、いらっしゃい♥可愛い子達ねぇん。来てくれて、おねぇさん嬉しいぃわぁ~、た~ぷりサービスしちゃうわよぉ~ん♥」

 

 

 

 化け物がいた。身長二メートル強、全身に筋肉という天然の鎧を纏い、劇画かと思うほど濃ゆい顔、禿頭の天辺にはチョコンと一房の長い髪が生えており三つ編みに結われて先端をピンクのリボンで纏めている。動く度に全身の筋肉がピクピクと動きギシミシと音を立て、両手を頬の隣で組み、くねくねと動いている。服装は……いや、言うべきではないだろう。少なくとも、ゴン太の腕と足、そして腹筋が丸見えの服装とだけ言っておこう。

 

 

ユエとシアは硬直し、経緯子も逃げ腰になるが

 

 

「こんにちは。店長さんですか?

シア、連れのうさ耳の女の子の服を買いにきたのですが、

動き易くて可愛い服はありますか」

 

と香織が天然娘の本領を発揮し普通に対応する。

そして化け物改めクリスタベル店長と和やかに会話する香織に

経緯子、ユエとシアは

 

(香織さん。ハジメちゃんが絡まないと相変わらず懐が深いなぁ)

 

(香織…少し尊敬する…?)

 

(カオリさん。スゲーです)

 

と香織に感心するやら畏怖やらする三人だった。

 

その後、香織と話を終えたクリスタベル店長は「任せてぇ~ん」と言うやいなやシアを担いで店の奥へと入っていってしまった。その時シアはニコニコ顔で見送る香織と

愛想笑いの経緯子とユエをまるで食肉用に売られていく豚さんのような目でみつめていた。

 

暫くしてシアは元のハウリアの民族衣装を参考に、髪に合わせた水色系統でまとめられた

衣装に着替え奥の更衣室から出てきた。左耳に付けた水色のリボンも可愛いアクセントになっている。

そんなわけでクリスタベルさんの見立ては見事の一言だった。

 

四人は、クリスタベル店長にお礼を言い店を出た。その頃には、店長の笑顔も愛嬌があると思えるようになっていたのは、彼女? の人徳ゆえだろう。

 

 

「いや~、最初はどうなることかと思いましたけど、意外にいい人でしたね。店長さん。」

 

「ん……人は見た目によらない」

 

「ユエ。シア。店長さんに失礼じゃないかな。かな」

 

「オネェな人はトータスでもオシャレな人なんだ」

 

「クリスタベルさんにオシャレなランジェリーショップを教えてもらったんだ。

今から買いに行かないかな?」

 

「セクシー…ハジメを悩殺」

 

「欲しいけど。時間が無いからね今日はダメ」

 

「食料と道具。手分けして買いに行きませんか」

 

 そんな風に雑談しながら、手分けして買い出しに行く事にした四人。

しかし、唯でさえ目立つ四人だ。

すんなりとは行かず、気がつけば数十人の男達に囲まれていた。

冒険者風の男が大半だが、中にはどこかの店のエプロンをしている男もいる。

 

その内の一人が前に進み出た。ユエは覚えていないが、この男、実はハジメ達がキャサリンと話しているとき冒険者ギルドにいた男だ。

 

「ユエちゃんとシアちゃんとカオリちゃんとケイコちゃんで名前あってるよな?」

 

「? ……合ってる」

 

何のようだと訝しそうに目を細めるユエ。シアは、亜人族であるにもかかわらず〝ちゃん〟付けで呼ばれたことに驚いた表情をする。

香織は何かな?と思い。経緯子はなんとなく察した顔をした。

 

ユエの返答を聞くとその男は、後ろを振り返り他の男連中に頷くと覚悟を決めた目でユエを見つめた。他の男連中も前に進み出て、彼女達四人それぞれの前に出る。

 

「「「「ユエちゃん、俺と付き合ってください!!」」」

 

「「「「シアちゃん! 俺の奴隷になれ!!」」」

 

「「「カオリちゃん。彼女になって下さい」」」

 

「「「ケイコちゃん。お嫁さんになって下さい」」」

 

とまぁ経緯子が察した通りのナンパだった。

 

(昨日の今日でコレとは香織さん。ユエさん。シアさんは凄いわね)

 

と経緯子は自分の事を棚に上げし三人のモテ具合に感心していた。

 

 

「「「「「「返事は?」」」」」

 

「「「「断る(ですぅ)(りだよ)(ます)」」」」

 

男達を一蹴する経緯子達。その答えに大多数の男たちは崩れ落ち四つ這いになるが、諦めの悪い男もいる。ユエ、シア、香織の華やかな美貌は他から隔絶したレベルで、

経緯子はやや地味なればこその押し切れる感があり。故に多少の暴走も仕方なしである。

 

「なら、なら力づくでも俺のものにしてやるぅ!」

 

 暴走男の雄叫びに、他の連中の目もギンッと光を宿す。二人を逃さないように取り囲み、ジリジリと迫っていく。

そして最初に声を掛けてきた男が行動に移そうとした時

 

ズッウウウンン

 

周辺の空気が重く息苦しくなる。

 

「力ずくでなにかな?かな?」

 

「誰のものにするのおぅ…」

 

香織と経緯子が放つ威圧だった。男の言葉が二人の地雷を踏んだ

濃厚な死の臭いを含む空気に男たちは震えが止まらない。気絶している者もいる。

シアもその殺気に当てられ足が震えている。

 

ザッ!

 

暴走男の前に香織の黒いタイツに包まれた足がある。

当の香織の表情は瞳の光が消え見下ろしていた。

 

経緯子は正に睨むだけで人が殺せる目つきをしており。

男はそんな二人に囲まれ口をパクパクさせるだけだった。

 

 

「〝凍柩〟」

 

ユエの魔法で例の男は首から下が氷漬けになった。

 

「経緯子・・・香織。これ以上はダメ」

 

「ユエさん」

 

「ユエ」

 

氷の冷気で少し経緯子と香織の頭が冷えたようだ。

 

「んっ・・・気持ちはわかる・・でも敵の見極めは大事

それに良い女はお断りもエレガントにすべき」

 

ユエが年上の余裕をみせ経緯子と香織を諫める。

 

「ハジメちゃんの事だと抑え効かないなぁ。ユエさんありがとう」

 

「ハジメくん悲しむもんね。奈落の感覚を修正しないとだね。

ユエのおかげで頭が冷えたよありがとう」

 

経緯子と香織がユエに制止してくれた礼を口にする。

それを聞きユエは満足げに微笑むと氷漬けにした男を見る。

 

「お前の求愛は…エレガントでない」

 

ユエは経緯子と香織による惨劇を止めたが

何もしないと、この男の様な不埒者がまた出て来るだろう

なので、ユエはこの男を見せしめにすることにした。

 

 ユエが手をかざすと男を包む氷が少しずつ溶けていく。

それに解放してもらえるのかと表情を緩める男。だがすぐ表情が強張る

なぜなら、溶かされていく氷がごく一部だけだと気がついたからだ。それは……

 

「あ、あの、ユエちゃん? どうして、その、そんな……股間の部分だけ?」

 

 そう、ユエが溶かしたのは男の股間部分の氷だけだ。他は完全に男を拘束している。嫌な予感が全身を襲い、男が冷や汗を浮かべながら「まさか、ウソだよね? そうだよね? ね?」という表情でユエを見つめる。

 

「トータスに…下品な男は要らない。…狙い撃つ」

 

 そして、風の礫が連続で男の股間に叩き込まれた。

 

 

 

―――― アッーーー!! 

 

―――― もうやめてぇー 

 

―――― おかぁちゃーん! 

 

 

 

 男の悲鳴が昼前の街路に響き渡る。マ○オがコインを取得した時のような効果音を響かせながら(本当の音は生々しいので、懐かしき○リオをご想像ください)執拗に狙い撃ちされる男の股間。きっと中身は、デン○シーロールを受けたボクサーのように翻弄されていることだろう。

 

 周囲の男は、囲んでいた連中も、関係ない野次馬も、近くの露店の店主も関係なく崩れ落ちて自分の股間を両手で隠した。ユエ様。ヤメテあげてと皆思うが、ユエは無慈悲な女王様だった。

 

そして一人の下品な男が死に、とある人物の指導で、近い未来にエレガントな漢女(おとめ)になる者が生まれた。

 

___________________________

 

 

買い出しを終えた四人が宿に戻ると、ハジメもちょうど作業を終えたところのようだった。

 

「お疲れ様。何か、町中が騒がしそうだったけど、何かあった?」

 

どうやら、先の騒動を感知していたようである。

 

「……問題ない」

 

「あ~、うん、そうですね。問題ないですよ」

 

「なにも無かったよぉ」

 

「そうそう。問題無しだよ」

 

服飾店の店長が化け物じみていたり、一人の男が天に召されたりしたが、概ね何もなかったと流す四人。そんな四人に、ハジメは、少し訝しそうな表情をするも、まぁいいかと肩を竦めた。

 

「必要な物は全部揃った?」

 

「……ん、大丈夫」

 

「食料は大量に買ったから、最低でも一月は大丈夫だよ。ハジメちゃん」

 

「以外と高くて、散財しちゃったけど、調味料を色々と買い揃えたから

ハジメくんに色々な料理を作ってあげるね」

 

「ユエさんの宝物庫も便利ですけど、ケイコさんとカオリさんのアイテムボックスの技能は便利すぎます」

 

シアが羨ましそうに言った。ハジメは苦笑いする。今のハジメの技量では、未だ〝宝物庫〟は作成出来なかった。便利であることは確かなので、作れるようになったらシアにも作ってやるつもりだ。

 

「シア。これを君に」

 

 

 

 そう言ってハジメはシアに直径四十センチ長さ五十センチ程の円柱状の物体を渡した。銀色をした円柱には側面に取っ手のようなものが取り付けられている。

 

ハジメが差し出すそれを反射的に受け取ったシアは、あまりの重さに思わずたたらを踏みそうになり慌てて身体強化の出力を上げた。

 

「な、なんですか、これ? 物凄く重いんですけど……」

 

「だって、シア用の新しい大槌だから。重いほうがいいだろう」

 

「へっ、これが……ですか?」

 

 シアの疑問はもっともだ。円柱部分は、槌に見えなくもないが、それにしては取っ手が短すぎる。何ともアンバランスだ。

 

 

 

「えー、その状態は待機状態で。取り敢えず魔力を流してみて」

 

「えっと、こうですか? ッ!?」

 

言われた通り、槌モドキに魔力を流すと、カシュン! カシュン! という機械音を響かせながら取っ手が伸長し、槌として振るうのに丁度いい長さになった。

 

 この大槌型アーティファクト:ドリュッケン(ハジメ命名)は、幾つかのギミックを搭載したシア用の武器だ。魔力を特定の場所に流すことで変形したり内蔵の武器が作動したりする。

 

 ハジメの済ませておきたいこととは、この武器の作成だったのだ。午前中、ユエ達が買い物に行っている間に、改めてシア用の武器を作っていたのである。

 

「今の僕にはこれくらいが限界だけど。腕が上がれば随時改良していくから…

シアの力を最大限に生かせるように考えて作ったんだ。使いこなしてよ? 仲間になった以上は勝手に死んだらダメだよ?」

 

「ハジメさん……ふふ、大丈夫です。まだまだ、強くなって、どこまでも付いて行きますからね!」

 

 シアは嬉しそうにドリュッケンを胸に抱く。ハジメは苦笑いだ。自分がした事とは言え、大槌のプレゼントに大喜びする美少女という図は中々にシュールだったからだ。

香織は武器を抱え喜ぶシアを見てデジャヴを覚える。

 

「んっ~そうだ雫ちゃんだ」

 

「香織さん。雫さんがどうかしたの?」

 

「あのね。雫ちゃんが、ハジメくんに刀を貰った時、同じ様な顔してたよ」

 

「へぇ~雫さんが…」

 

「雫…香織達の親友‥?」

 

そしてハジメをジトーとみる四人。

ハジメは何も後ろめたい事は無いのに誤魔化すように

 

「チェックアウト時間だ。出発するよ」

 

と慌てて言うのだった。

 

 

その後ハジメ達はハルツィナ樹海方面の門をから旅たち

同じ頃、反対のフューレン方面の門では

 

 

「海里さん。盗まれた奴隷の被害届とか出てたら不味くないかしら」

 

「なので、ルリファちゃんは光学迷彩で隠して街に入ります」

 

「こうがくめいさい?」

 

「では消えますよ~消えますよ~」

 

とブルックの街にたどり着いた海里と雫がやり取りしていた。

 

 

 

 

 

                          

 

 

始めはユエを〝股間スマッシャー〟にしないつもりで書いてたのになってしまいました。

 

今日でちょうど、投稿開始から一年です。最初の予定だと既に魔人族襲来編は終わってるはずなのに・・まだライセンの大迷宮にも行ってないです。

仕方ないので気長に進めます。

 

 


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