ハイスクールDxD 〜うたわれるもの〜   作:フォートナー

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お待たせしました
特別試合、ついに決着です
十日間で覚えたことも、ここまで一緒に戦ってきたことも
全部持って最後の一戦へ
それではLife . 19、どうぞ


Life . 19 友達です!雷光です!前だけ見ろ!

「ようやく来たか、リアス」

 ライザーがゆっくりと立ち上がる

 その背後にはユーベルーナ、イザベラ、ミラ、ニー、リィ

 残った眷属は五人

 対するこちらはリアス先輩、朱乃、木場、アーシア、イッセー

 そして俺

 六対六

 数だけなら同じになった

「随分減ったな」

「誰のせいだと思っている」

「俺ですかね」

「他に誰がいる」

 ライザーの視線が思い切りこっちへ向く

 まあ四人纏めて落としたからな

 とはいえ、ここから先は今までとは違う

 俺はライザー本人へ直接攻撃出来ない

 そしてライザーも俺へ直接攻撃出来ない

 あくまで双方同条件

 こいつを倒すのはリアス先輩達の役目だ

「イッセー」

「はい!」

 リアス先輩の声と同時に、イッセーの全身を赤い光が包む

『Welsh(ウェルシュ) Dragon(ドラゴン) Balance(バランス) Breaker!! (ブレイカー!!)』

 真紅の鎧

 赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)

 ただし出力は低い

 仙術による身体強化も必要最低限

 最初から全部を最大にしない

 十日間、身体へ叩き込んだ使い方だ

「朱乃、祐斗」

「ええ」

「はい、部長」

「アーシアは後ろ、周囲を見ることを忘れないで」

「はい、部長さん!」

「イッセー」

「分かってます!」

 言いながらイッセーの視線が一度、左右へ走る

 朱乃、木場、アーシア、リアス先輩、そして敵

 以前ならライザーしか見ていなかっただろう

 今は違う

「行くぞ」

 最初に動いたのはイザベラだった

 大柄な身体が床を蹴り、正面からイッセーへ迫る

 その横をミラ

 さらにニーとリィが左右へ散る

 上ではユーベルーナの魔法陣が幾つも展開された

「散開!」

 リアス先輩の声

 爆発が起こり、床が抉れ、炎と煙が広がる

 そこをイッセーが低い姿勢で抜けた

「木場!」

「はい!」

 木場がニーとリィの進路へ回り込む

 二人の攻撃を一度に受けず、片方だけを牽制しながら距離を取る

 追わない

 深入りもしない

 こっちを見ながら戦っている

 いい

「はぁぁぁっ!」

 ミラの棍がリアス先輩へ振り下ろされる

「リアス!」

 朱乃が声を上げたが、リアス先輩は動かなかった

 いや、動く必要がなかった

 左腕を上げる

 肘から先へ紅い魔力が集まった

「──は?」

「……は?」

 俺とライザーの声が綺麗に重なった

 棍と腕がぶつかる

 だが音が違う

 ミラの棍を覆っていた魔力が、触れたところから削ぎ落とされていく

「なっ!?」

 ミラが目を見開く

 滅びの魔力

 それを全身に広げているわけじゃない

 必要な場所だけ

 必要な瞬間だけ

 今度は左腕から魔力が消え、同時に右脚、膝から下へ紅い魔力が集中した

「はっ!」

「くっ!」

 ミラが棍を横へ戻して受ける

 だが接触した部分から再び魔力が削れる

 そのままミラの身体が横へ吹き飛んだ

「ちょっと待ってください」

「何よ!」

 リアス先輩が振り返る

「いつの間にそんなこと出来るようになったんですか!?」

「今よ!」

「今!?」

「正確には今ようやく形になったの!」

「それもっと早く言ってくださいよ!」

「だから今出来たって言ってるでしょう!」

 いや聞いてない

 というか俺が教えた覚えもない

 俺がリアス先輩と知り合ってから何年も魔力制御を続けてきたのは知っている

 それがここへ来て、こんな形になったらしい

「全身ではありませんわ」

 ユーベルーナが上空から口を挟む

 その目はリアス先輩の腕と脚へ向いていた

「必要な部位へ、必要な瞬間だけ滅びの魔力を収束させている」

「そういうこと」

「……なるほど」

 思わず頷く

 どこかで聞いた話だな

「それ、俺がイッセーに散々やらせたやつじゃないですか」

「参考にはしたわ」

「したんですか!」

「戦闘中よ!」

「それはそうですね!」

 言った瞬間だった

 足元に巨大な魔法陣が広がる

「ん?」

 光が立ち上がり、咄嗟に飛び退こうとしたが、その前に壁が閉じた

 前、後ろ、左右、そして上

 完全に囲まれる

「んー?」

 壁へ触れる

「何だこれ、結界か?」

「正解ですわ」

 ユーベルーナが笑う

「あなたと真正面から戦う必要などございませんもの」

「なるほど」

 確かに正しい

 俺を倒す必要はない

 ここへ閉じ込めておけばいい

 俺が眷属を削ることも、誰かを助けることも出来ない

 こちらは五人

 向こうはライザーを含めて六人

 その上、俺の援護まで止まる

 戦術としては真っ当だ

「ハク!」

 リアス先輩がこちらを見る

「大丈夫です、そっち続けてください」

「でも──」

「いいですから」

 ライザーが鼻で笑う

「無駄だ、リアス」

「何?」

「その結界は内側から力任せに壊すことを想定して──」

「ふんっ!」

 拳を叩き込む

 バキッ

「…………」

 結界に大きな亀裂が走った

 ライザーの口が止まる

 ユーベルーナも止まる

「ふんっ!」

 もう一発

 ガシャァァァンッ!!

 光の壁が砕け散った

「……は?」

「……は?」

 また二人の声が重なる

「いやいやいやいや!」

 今度はイッセーだ

「人が説明してる途中で結界ぶっ壊す奴があるか!」

「長そうだったから」

「そういう問題じゃねぇ!」

「結界を……素手で……?」

 ユーベルーナが信じられないものを見るような顔をしている

「一応仙術は使ってるぞ」

「そこではありませんわ!」

「ハク!」

「はい」

「戦闘中!」

「すみません」

 怒られた

 ただ、俺が結界に閉じ込められている間も隊列は崩れていなかった

 イッセーはアーシアを守りながらイザベラを見ている

 木場はニーとリィを引き付けている

 朱乃はユーベルーナ

 リアス先輩は全体

 俺がいなくても動けている

 なら

「リアス先輩」

「何?」

「任せます」

 一歩下がる

 リアス先輩が一瞬だけ俺を見る

 それから笑った

「最初からそのつもりよ」

「祐斗!」

「はい!」

 木場が大きく踏み込む

 ニーが右

 リィが左

 二人同時

 以前ならそのまま一人を追っただろう

 だが木場は踏み込んだ直後に速度を落とした

「今!」

 リアス先輩の滅びの魔力がニーの進路へ飛ぶ

「っ!」

 ニーが避ける

 逃げた先には木場

「はぁっ!」

「きゃっ!」

 魔剣が防御を弾き飛ばす

 同時に反対側からリィが飛び込む

「祐斗、右!」

「はい!」

 無理に攻め切らず一度下がる

 リィの爪が空を切った

 その瞬間、木場の魔剣が形を変える

「そこ!」

「えっ──」

 足元から伸びた魔剣がリィの動きを止める

 ニーが助けに向かう

 それも読んでいた

「朱乃!」

「ええ!」

 雷が落ちる

「きゃあああっ!」

 ニーの身体が止まり、木場が一気に距離を詰めた

『ライザー・フェニックス様の兵士(ポーン)二名、リタイア』

 グレイフィアの声が響く

「ミラ!」

「はい!」

 ライザーの声にミラが棍を構え直す

 狙いはリアス先輩

 今度はさっきみたいに単純には来ない

 腕へ滅びの魔力が集まれば脚

 脚なら上

 ミラも切り替えている

 だが

「朱乃」

「分かってるわ」

 横から雷

「っ!」

 ミラが退く

「祐斗」

「はい!」

 反対側には木場

 さらに進路を塞ぐようにリアス先輩

「くっ!」

 ミラの棍が振り抜かれる

 リアス先輩の右腕へ紅い魔力

 接触した瞬間に魔力が削れ、棍が僅かに逸れた

「今よ!」

「はぁぁぁっ!」

 木場の一撃

『ライザー・フェニックス様の兵士(ポーン)一名、リタイア』

 残る眷属はユーベルーナとイザベラ

「イッセー!」

「はい!」

 イザベラの拳が飛ぶ

「ぐっ!」

 受けたイッセーの身体が大きく後ろへ滑る

 やっぱり単純な力ならイザベラの方が上だ

 ライザーの戦車(ルーク)

 当然だ

「もう一発!」

「させるか!」

 イッセーが木場を見る

「木場!」

「分かってるよ!」

 木場の魔剣が変わる

 土

 イッセーの籠手が一瞬だけ刃へ触れ、魔力へ重い性質が加わる

 仙術も切れていない

 イザベラが踏み込み、イッセーも前へ出る

 拳と拳

「おおおおおっ!」

『Boost!! (ブースト!!)』

 使うのは今だけ

 衝突

「なっ──!」

 今度はイザベラが押し負けた

 重さ、仙術、鎧、そして瞬間的な倍加

 全部をずっと重ねるんじゃない

 必要な瞬間だけ

「もう一発ぅぅぅっ!」

 イッセーの拳がイザベラの腹へ入る

『ライザー・フェニックス様の戦車(ルーク)一名、リタイア』

 残り一人

 ユーベルーナ

「イザベラまで……!」

 上空

 ユーベルーナの周囲へ魔法陣が幾つも浮かぶ

「朱乃!」

「ええ」

 爆発

 一発、二発、三発

 だが当たらない

 十日間どころじゃない

 朱乃はさっきからずっとユーベルーナの爆発を見続けている

「そこね」

 雷が魔法陣の一つへ落ちた

「っ!?」

 爆発の連鎖が一瞬だけ途切れる

 その隙間へ朱乃が入る

「バインド!」

「なっ──」

 僅か一瞬

 それで十分だった

「雷光!」

 眩い雷が走る

「きゃあああああああっ!!」

 光が消え、ユーベルーナの身体が落ちる

『ライザー・フェニックス様の女王(クイーン)一名、リタイア』

「……朱乃」

「何?」

 イッセーが自分の籠手を見る

「いや」

 一度だけ朱乃を見る

「後でいい」

「?」

 そして残ったのは一人

 ライザー・フェニックス

「……全員、か」

「ええ」

 リアス先輩が前へ出る

「残るのはあなただけよ、ライザー」

「来い、リアス」

 ライザーの身体から炎が溢れる

「お前の滅びの魔力と、俺の炎」

 さらに炎が広がる

「どちらが上か試してみるか?」

「望むところよ」

「部長!」

「イッセー、まだよ」

 リアス先輩が一人で前へ出る

 俺も動かない

 ライザーへは直接攻撃出来ない

 ここは二人の戦いだ

「はぁぁぁっ!」

 ライザーの拳

 リアス先輩は左腕を上げる

 紅い魔力

 接触した炎が削ぎ落とされる

「なっ!」

「まだよ!」

 右脚

 蹴り

「ぐっ!」

 ライザーが後ろへ下がる

 その隙に両手へ一気に魔力が集まった

「消し飛びなさい!」

 紅い滅びの魔力がライザーを呑み込む

「ぐああああああああっ!!」

 轟音

 炎と煙

 ライザーの身体が大きく欠ける

「やった……?」

 アーシアの声

 だが

「……いや」

 俺は目を細める

 炎が上がった

 消えたはずの身体を包み、欠けた肉体が少しずつ戻っていく

「……っ」

 リアス先輩が拳を握る

「言っただろう、リアス」

 炎の中からライザーが笑う

「俺はフェニックスだ」

 再生した

 滅びの魔力が効かなかったわけじゃない

 確実に消し飛ばしている

 それでも戻る

「部長」

 イッセーが前へ出た

「何?」

「お願いがあります」

 リアス先輩が振り返る

「言ってみなさい」

「こいつとは──」

 イッセーがライザーを見る

「俺一人で戦わせてください」

「……イッセー」

「お願いします」

 少しの沈黙

「祐斗や朱乃の力も借りずに?」

「いや、それは借ります」

「借りるのね」

「そこは借ります!」

「イッセー君……」

 木場が苦笑する

「だって俺一人じゃ足りねぇの、もう分かってるから」

 イッセーが拳を握る

「木場の力も、朱乃の力も、アーシアの助けも借ります」

「…………」

「でも」

 視線はライザーから外さない

「最後にあいつと正面から戦うのは、俺にやらせてください」

「理由を聞いても?」

「……上手く言えないですけど」

 少し考え

「こいつだけは、俺がぶん殴りたいんです」

「ふふっ」

 リアス先輩が小さく笑う

「分かったわ」

「部長!」

「ただし」

 笑みが消える

「負けることは許さないわよ」

「はい!」

「それと部長」

「まだ何かあるの?」

「ここって、もう敵陣のど真ん中ですよね?」

「そうね」

 イッセーが笑う

「なら」

 胸を張った

「俺を女王(クイーン)にプロモーションしてください!」

「──いいわ」

 リアス先輩の魔力がイッセーへ届く

「リアス・グレモリーの兵士(ポーン)兵藤一誠」

 真紅の鎧が僅かに輝きを増す

「女王(クイーン)へ昇格!」

「よっしゃぁぁぁぁぁっ!!」

 ライザーが鼻で笑う

「兵士(ポーン)が女王(クイーン)になったところで何が変わる」

「やってみりゃ分かる!」

「神器に頼るだけの下級悪魔が」

 ライザーの炎が膨れ上がる

「怖いか!」

「何がだよ!」

「俺が怖いか!」

 拳が飛ぶ

 イッセーが受ける

「ぐっ!」

「その鎧も既に限界が近い!」

 炎

「仙術だろうが、仲間から借りた力だろうが!」

「俺の再生を上回れなければ意味はない!」

「うるせぇ!」

 イッセーが押し返す

『Boost!! (ブースト!!)』

 一撃

 ライザーの顔が横へ跳ねる

 だが炎が上がり、すぐ戻る

「木場!」

「はい!」

 魔剣へ触れる

 土

 次は風

 イッセーが踏み込む

「俺は木場みたいに剣なんて使えねぇ!」

 拳

「朱乃みたいな魔法だって使えねぇ!」

 蹴り

「アーシアみたいに傷も治せねぇ!」

「なら何だ!」

「だから!」

 イッセーが笑う

「使えるもん全部使うんだよ!」

『Boost!! (ブースト!!)』

 衝突

「一人で足りねぇなら仲間に借りる!」

 ライザーが一歩下がる

「それが俺の戦い方だ!」

「くだらん!」

 炎が広がった

「お前は何も分かっていない!」

「何がだよ!」

「この婚姻を、ただ男と女の話だと思っているのか!」

 ライザーの声が響く

「純血の悪魔は減っている、過去の戦争で幾つもの家が消えた!」

「…………」

「古い家を残すために血を繋ぐ必要がある!」

 炎が拳へ集まる

「グレモリーとフェニックス、この婚姻にはそれだけの意味がある!」

「知ってるよ!」

「何?」

「部長から聞いた!」

 イッセーが拳を受ける

「ぐっ!」

 それでも立つ

「俺には全部理解出来ねぇ!」

「なら黙っていろ!」

「でも!」

 拳を握る

「それとこれとは別だろうが!」

「何だと?」

「家が大事なら大事にすりゃいい!」

 踏み込む

「血が大事なのも、昔からの家を残したいのも、俺には全部分かんねぇよ!」

 もう一歩

「でもそれと!」

 拳がライザーの頬へ入る

「本人が嫌がってる相手と無理矢理結婚させるのは別だろ!」

「貴様──!」

「俺は難しいこと分かんねぇよ!」

 ライザーの拳を受ける

 鎧に亀裂

「だから一個だけ分かってることで戦う!」

「何だ!」

「部長は!」

 イッセーが叫ぶ

「あんたと結婚したくない!」

「それで十分だ!」

「貴様は何様のつもりだ!」

「俺は部長の兵士(ポーン)だ!」

 イッセーが胸を張る

「リアス・グレモリーの眷属だ!」

 一度だけ拳を握り直し

「だけど、その前に──」

 リアス先輩を見る

「俺はリアスの友達だ!」

「──っ」

 リアス先輩の目が大きく見開かれた

 その言葉を聞いた瞬間、一つの光景を思い出した

 ──────────────────────

 十日間の合宿、その途中の夜

 もう日付も変わっていた頃だった

 眠っていた俺が目を覚ましたのは、物音がしたからじゃない

 仙術で何となく周囲の気配を拾った時、近くにあった一つの気配が動いたのを感じただけだ

 イッセー

 こんな時間に何してんだと思って身体を起こし、少し遅れて部屋を出た

 トイレかと思ったが向かっている方向が違う

 それに、もう一つ起きている気配があった

「……リアス先輩?」

 廊下を進み、角を曲がる手前で足を止める

 少し先から二人の声が聞こえてきた

「眠れないんですか、部長」

「あなたこそ」

「俺は何か目が覚めちゃって」

「そう」

 昼間に聞くものとは少し違う、静かな声

「……ねえ、イッセー」

「はい?」

「あなたは、今回の婚約のことをどう思ってる?」

「どうって……」

 少し間が空いた

「部長が嫌なら、嫌でいいと思いますけど」

「簡単に言うのね」

「だって部長、嫌なんですよね?」

「ええ」

 迷いのない返事

 けれど続いた声は少しだけ弱かった

「でも、私が嫌だと言えば全部済むような話でもないわ」

「…………」

「グレモリーにはグレモリーの事情がある、フェニックスにはフェニックスの事情がある、古い悪魔の家を残すことが大切なのも分かってる」

 以前にも聞いていた通り、リアス先輩だって家の事情を理解していないわけじゃない

「私は自分の家が嫌いなわけじゃないわ」

「お父様もお母様も、兄さまも大切よ、グレモリーに生まれたことを嫌だと思ったことだってない」

「なら……」

「でもね」

 イッセーの言葉を遮る

「時々、分からなくなるの」

「何がですか?」

「皆が見ているのが、私なのかどうか」

「名門グレモリー家の娘、魔王ルシファーの妹、次期グレモリー家当主、純血の上級悪魔」

 一つずつ言葉が続く

「今回だってそう、最初に見られているのはリアスじゃなくて、グレモリーの娘としての私よ」

「部長……」

「仕方がないことだとは分かってるわ、私にはその立場があるんだから」

 それでも

 そう続けるまでに少し時間があった

「自分の人生くらい、自分で選びたい」

 静かな声だった

「誰と一緒にいるのかも、誰を好きになるのかも、誰と結婚するのかも」

「私は──私として決めたいの」

「…………」

 イッセーから返事がない

「何よ、黙って」

「いや……何て言えばいいのかなって」

「そこは何か言いなさいよ」

「難しいんですよ!」

 リアス先輩が少しだけ笑う

「あなたらしいわね」

「でも」

 イッセーの声が変わった

「俺、そんなこと考えたことなかったです」

「え?」

「部長がグレモリーだからとか、魔王の妹だからとか」

「…………」

「俺にとって部長は、昔から部長なんで」

 少しの沈黙

「……それ、答えになってるのかしら」

「えっ、駄目ですか!?」

「ふふっ」

 小さな笑い声

 そこでようやく思い出した

 ああ

 これか

 原作でもあった、リアスがイッセーへ本音を零す夜

 場所も状況も随分変わったが、結局ここへ辿り着いたらしい

 なら俺が入っていくところじゃない

 というか、これ以上聞いてると普通に覗きだ

 帰ろ

 音を立てないように身体を反転させ、そのまま自分の部屋へ戻った

 ──────────────────────

「友達が嫌だって言ってる!」

 イッセーの声で意識が現在へ戻る

「自分の人生を自分で決めたいって言ってる!」

 リアス先輩がイッセーを見ている

 あの夜と同じだ

 グレモリーでも、魔王の妹でも、次期当主でもなく、ただのリアスとしてこいつに見てほしかった

「助けてほしいって言ってる!」

「だったら──!」

 イッセーが拳を握り締める

「助けねぇ訳にはいかねぇだろうが!!」

 声が部屋中へ響いた

 リアス先輩は何も言わない

 ただ少しだけ俯いて

「……馬鹿」

 小さく呟く

 その口元には笑みが浮かんでいた

 なるほどな

 あの夜、答えになっているのか分からなかった言葉

 その答えを今になって返したわけか

「友達、か」

 ライザーが低く呟く

「なら、その友達ごと叩き潰してやる!」

 炎

 イッセーが突っ込む

 拳、蹴り、Boost

 何度当ててもライザーは戻る

「朱乃!」

「ええ!」

 雷が籠手へ流れる

 今まで使ってきた雷

「おおおおっ!」

『Boost!!』

 一撃

「ぐっ!」

 ライザーの身体が焼ける

 そして炎が上がり、また再生する

 ただ

「……遅くなってる」

 木場が気付いた

「ああ」

 俺も頷く

 僅かだが確実に遅い

 雷が効いている上に、何度も再生を繰り返している

 少なくともさっきより明らかに遅く、再生するたびに確実に速度が落ちていた

「まだだ!」

 イッセーが殴る

「何度でも戻る!」

 ライザーが殴り返す

「ぐあっ!」

 鎧へ亀裂

「イッセーさん!」

「まだ!」

 イッセーが手を上げる

「アーシア、頼む!」

「はい!」

 治癒の光

 身体の傷は戻る

 だが鎧は戻らない

「……さて」

 ライザーが息を整える

「そろそろ眠ってもらおうかな」

「嫌だね」

「十分戦っただろう」

「まだ終わってねぇ」

「何?」

「部長の気持ちは変わってねぇ!」

 イッセーが構える

「だったら俺も終われねぇ!」

 ライザーの炎が強くなる

「愚かだな!」

 衝突

 イッセーが大きく吹き飛ぶ

「ぐっ!」

 床を転がり、鎧の亀裂がさらに増える

「イッセー!」

「……朱乃」

「何?」

 イッセーが立ち上がる

「今までの雷じゃ足りねぇ」

「まさか」

「俺に──」

 朱乃を見る

「さっきユーベルーナを倒したやつをくれ!」

「雷光を!?」

「頼む!」

「駄目よ!」

 即答だった

「あれは今まで渡していた雷とは違うわ!」

「でも!」

「今のあなたの鎧で受け止められる保証なんてない!」

「受け止める!」

「根拠は!?」

「ねぇ!」

「だったら駄目でしょう!」

「でも必要なんだ!」

「イッセー!」

 リアス先輩の声

「本当に出来るの?」

「やります!」

「出来るかって聞いてるの」

 一瞬、イッセーが黙る

「……出来ます!」

 リアス先輩はじっとイッセーを見る

 それから朱乃へ

「お願い」

「リアス!」

「朱乃」

「…………」

 朱乃が大きく息を吐いた

「壊しても知らないわよ」

「壊れる前に殴る!」

「それ、何の解決にもなってないからね!」

 それでも朱乃は前へ出る

「右腕を出して」

「おう!」

 雷光が集まり、空気が震える

「いくわよ!」

「来い!」

 眩い雷

「ぐああああああああっ!!」

 真紅の鎧全体へ雷が走る

 火花が散り、亀裂が増える中、イッセーは歯を食い縛った

「ぐっ……!」

 呼吸を整え、仙術と鎧を維持したまま暴れる雷を右腕へ集めていく

 少しずつ収束していった雷光が、やがて右拳へ集まった

「……出来た」

 朱乃が目を見開く

「イッセー」

 リアス先輩が前へ出る

「その拳を出しなさい」

「部長?」

「一人で足りないなら、皆の力を借りるんでしょう?」

「……はい」

 イッセーが右腕を差し出す

 リアス先輩が手を重ねた

 紅い魔力

「なら」

 拳から前腕へ、滅びの魔力が外側から纏わり付いていく

「私の力も持っていきなさい」

「……!」

 属性としてイッセー自身の魔力へ取り込ませているわけじゃない

 リアス先輩が形を整えた滅びの魔力を、拳から前腕の外側へ纏わせている

 さっき自分の腕や脚へ纏わせていたものの応用か

「……それ、人にも出来るんですか!?」

 俺も思わず声が出た

「今出来たわ!」

「また今!?」

「集中しなさい!」

「はい!」

 ライザーの顔から笑みが消える

「……イカれているな」

 炎が揺れる

「何?」

「怖いな」

 ライザーが低く笑った

「初めて俺は、おまえに心底恐怖した」

 炎が一気に膨れ上がる

「だから──」

 両翼が広がる

「俺は全力でおまえを倒すッ!」

「来い!」

 イッセーが構える

「イッセー!」

「はい!」

 リアス先輩が叫ぶ

「今だけは──前だけ見なさい!」

「──はい、部長!」

 イッセーが踏み込む

 周りを見ること、仲間を見ること、敵を見ること、自分一人で全部やろうとしないこと

 ずっと教えてきたその全部を覚えたからこそ、今だけは前だけ見ていい

 周りは俺達が見る

 雷光を宿した右拳を滅びの魔力が覆い、仙術と女王(クイーン)へのプロモーション、残った鎧の力まで今使える全てが一つへ集まっていく

『相棒』

「分かってる」

『解放すれば十秒だ』

「一発でいい!」

 一瞬だけ間が空く

『……ならば、全てを叩き込め!』

 イッセーが右拳を握り締める

「全部──持ってけぇぇぇぇぇぇっ!!」

『Explosion!! (エクスプロージョン!!)』

 次の瞬間、真紅の鎧から今までとは比較にならない魔力が噴き出した

「なっ──!」

 ライザーの目が見開く

 雷光が弾け、滅びの魔力が拳を覆う

 十秒を使い切る必要なんてない

 限界寸前の鎧ごと、この一撃で全部叩き込む

 イッセーとライザーが真正面からぶつかった

「これで──!」

 拳が炎を突き破る

「終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 直撃

 光、雷、炎、紅い魔力が一度に炸裂する

「ぐあああああああああああっ!!」

 ライザーの身体が吹き飛び、壁へ叩き付けられた

「はぁ……はぁ……」

 イッセーが膝をつく

 真紅の鎧へ亀裂が走り、そのまま赤い光となって砕け散った

「イッセー!」

「大丈夫……です……」

 そう言いながら全然大丈夫そうじゃない

 だが

「……まだだ」

 ライザー

 炎が上がる

「再生してます!」

 アーシアが声を上げる

 確かに始まっている

 炎が揺らぎ、肉体が戻ろうとしている

 でも

「遅い」

「え?」

 木場が俺を見る

「再生が消えたわけじゃない」

 炎はある

 力も残っている

「追いついてないんだ」

 何度も再生し、雷を浴び、その最後に雷光と滅びの魔力、さらに爆発的な一撃まで叩き込まれた

 身体はまだ戻ろうとしている

 それでも戻り切れない

「ぐ……っ」

 ライザーが膝をつく

「俺は……フェニックスだ……」

「知ってるよ……」

 イッセーも立ち上がる

 もう鎧はない

 雷光も滅びの魔力も消え、仙術による身体強化だってほとんど維持できていない

 残っているのは拳だけ

「だから何度でも立つんだろ……」

 一歩

「俺も立つ」

 もう一歩

「イッセー……!」

 リアス先輩が名前を呼ぶ

 ライザーも立とうとする

 イッセーが拳を握る

「リアスは!」

 一歩

「てめぇなんかと!」

 ライザーの前へ

「結婚したくねぇって──!」

 拳を振りかぶる

「言ってんだよぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 拳がライザーの顔面へ叩き込まれた

 鈍い音

 ライザーの身体が倒れる

 今度は起き上がらない

 静寂

 数秒

『ライザー・フェニックス様、戦闘不能』

 グレイフィアの声が響く

 誰も動かない

『よって、この特別試合──』

 イッセーが顔を上げる

『勝者、リアス・グレモリー様』

「…………」

「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 イッセーの叫びが響いた

「勝ったぁぁぁぁぁぁっ!!」

「イッセー!」

「やりましたよ部長!」

「ええ!」

「アーシア!」

「はい!」

「木場!」

「うん!」

「朱乃!」

「ええ」

「ハク!」

「はいはい、おめでとう」

「もっと喜べよ!」

「十分喜んでる」

「俺達勝ったんだぞ!」

「知ってる」

「部長!」

「イッセー」

「はい!」

「その前に」

「え?」

「倒れなさい」

「はい?」

 イッセーの膝が折れた

「イッセーさん!?」

「うおっ!?」

 アーシアが慌てて駆け寄る

「だから言ったでしょう!」

 朱乃が怒って言う

「勝ったからいいだろ……」

「よくありません!」

「痛い痛い!」

「治してるんです!」

「治療って痛くないんじゃねぇの!?」

「怒ってます!」

「そっち!?」

 騒がしい

 木場が笑う

 朱乃も笑っている

 リアス先輩はそんな全員を見て、最後にライザーへ目を向けた

「勝ったわ」

 小さな声

「私達が」

 俺はその横顔を見て、少しだけ笑う

 ここまでの道は作った

 最後にそこを走り切ったのは

 ちゃんと

 こいつらだった




特別試合、決着です
一人で戦うことと、一人の力だけで戦うことは別
Life . 16から続いていた「周りを見ろ」の答えを、最後は「前だけ見ろ」で締めました
ハクが作ったのはここまでの道
最後に走り切ったのは、ちゃんとイッセーとリアス達です
次回は試合後のお話へ
次回もよろしくお願いします
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