ハイスクールDxD 〜うたわれるもの〜   作:フォートナー

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お待たせしました
今回は新しい同居人と、大きな大きなホロロ鳥のお話です
それではLife .21、どうぞ!


第三章 月光校庭のエクスカリバー
Life . 21 ホロロ鳥です!転校生です!顔合わせです!


 数日後

 

「お久しぶりです、大神(おおがみ)さん」

 

「久しぶり」

 

 玄関先で頭を下げる久住瑠璃(くじゅう るり)に返事をして、その隣を見る

 

「…………」

 

 でかい

 

 電話で聞いてはいた

 

 普通のホロロ鳥より遥かに大きくて、瑠璃(るり)が背中に乗れるくらいだと

 

 けど、実物を見るのと聞くだけじゃ全然違う

 

 現代のホロロ鳥が、俺の知っているホロロン鳥に繋がるものらしいってところまでは、この前散々調べた

 

 それでもこいつは明らかに普通じゃない

 

 俺の記憶にある普通のホロロン鳥とは比べものにならない大きさだ

 

 この大きさで思い出すのは──一羽しかいない

 

「こいつがココ?」

 

「はい、この子がココです」

 

 瑠璃(るり)が巨大なホロロ鳥の首元を撫でる

 

「ココ、今日からここでお世話になるんだから、ちゃんとご挨拶しようね」

 

「ホロロ……ホロロロ……」

 

 低く大きな鳴き声が辺りに響く

 

「…………」

 

 電話越しでもでかい声だと思ったけど、近くで聞くと余計でかいな

 

 ココがゆっくり首を動かし、俺を見る

 

「…………」

 

「…………」

 

 じっと見られる

 

「何だ?」

 

「ホロロ……」

 

 一歩、ココが近づいてきた

 

「ん?」

 

 横へ一歩ずれる

 

 ココも横へ一歩

 

「…………」

 

 もう一歩

 

 またついてくる

 

「ココ?」

 

 瑠璃(るり)が不思議そうに首を傾げる

 

 今度は反対側へ動いてみる

 

 ココも向きを変えた

 

「お前、俺に何か用?」

 

「ホロロロ、ホロロロ~♪」

 

「何で嬉しそうなんだよ」

 

 少し距離を取る

 

 ココが追ってくる

 

 さらに離れる

 

 また追ってくる

 

「待て待て」

 

「ホロロロ~♪」

 

「絶対俺についてきてるだろ、これ」

 

「あ、あれ……?」

 

 瑠璃(るり)も戸惑ったようにココを見る

 

「普段からこうなの?」

 

「いえ……人懐っこい子ではあるんですけど、初めて会った方をこんなに追いかけることは……」

 

「じゃあ何で俺なんだよ」

 

 言っている間にも距離が縮まる

 

「ホロロロ、ホロロロ~♪」

 

 ついに目の前まで来たココが、その大きな身体を擦りつけてきた

 

「うおっ」

 

「ココ!?」

 

 重い

 

 ただ擦り寄ってるだけなのに普通に重い

 

「お前な、もうちょっと加減を──」

 

 少し押して離そうとする

 

 離れない

 

 むしろさらに身体を寄せてきた

 

「ちょっ」

 

「ホロロロ~♪」

 

「コ、ココ駄目っ、止まって……お願い……!」

 

 瑠璃(るり)が慌てて呼びかける

 

 けどココは止まらない

 

 俺が後ろへ下がれば、その分だけ前へ出てくる

 

「待てって」

 

 一歩

 

「ホロロ~♪」

 

「おい」

 

 もう一歩

 

 さらに一歩

 

「ちょっ、待っ──」

 

 ドサッ

 

「…………」

 

「大神(おおがみ)さん!?」

 

 完全に押し切られた

 

 倒れた俺の上へ、そのままココの巨体がのしかかってくる

 

「ホロロロ、ホロロロ~♪」

 

「お前は楽しそうだな!」

 

 こっちは全然楽しくない

 

 というか重い

 

「ココ、退いて! 大神(おおがみ)さんが困ってるから!」

 

「ホロロ~♪」

 

「ココ!」

 

 瑠璃(るり)がココの身体を押す

 

 動かない

 

 もう一度押す

 

 やっぱり動かない

 

「す、すみません、大神(おおがみ)さん!」

 

「いや、大丈夫……ではないけど、まだ大丈夫」

 

 その気になれば、退かすことくらいは出来る

 

 でも、こいつに敵意があるわけじゃない

 

 むしろ嫌になるくらい懐かれてる

 

 それを力任せにどかすのも違うだろ

 

「あの、手を!」

 

「ん?」

 

「わたしが引っ張ります!」

 

 瑠璃(るり)が俺の右手を両手で掴む

 

「いきます!」

 

「お、おう」

 

「よ、よいしょ……!」

 

 ぐいっ

 

「いだだだだだ!」

 

「あっ!?」

 

「瑠璃(るり)、俺だけ! 俺だけ引っ張られてる!」

 

「す、すみません!」

 

 そりゃそうだ

 

 上に乗ってるココが一ミリも動いてないのに、俺だけ引っ張ったらこうなる

 

「もう一度──」

 

「待て待て待て! 次やったら肩が外れる!」

 

「す、すみません……!」

 

「ホロロロ~♪」

 

「お前はちょっと黙ってろ!」

 

 何なんだこいつ

 

 いや

 

 この光景

 

 ものすごく嫌な既視感がある

 

 大きな鳥に追いかけられて

 

 じゃれつかれて

 

 止めようとする女の子の言うことは全然聞かなくて

 

 最後には押し倒される

 

「…………まさかな」

 

「ホロロ?」

 

 ココが首を傾げる

 

「その顔やめろ、余計似て見える」

 

「……何、この大きなホロロ鳥」

 

 聞き慣れた声がして、顔だけそちらへ向ける

 

 戸倉久遠(とくら くおん)が少し離れたところに立っていた

 

 久遠(くおん)はココを見上げる

 

 その視線がゆっくり下へ動き、ココの下敷きになっている俺で止まった

 

「……あれ、ハク潰されてる」

 

「見れば分かるだろ!」

 

「どうしてそうなったの?」

 

「俺が聞きたい」

 

「ホロロロ、ホロロロ~♪」

 

 久遠(くおん)がココを見る

 

「楽しそうだね、この子」

 

「こっちは全然楽しくない」

 

「あ、あの……ココっていうんです」

 

 瑠璃(るり)が申し訳なさそうに答える

 

「ココ?」

 

「はい……わたしが言っても全然退いてくれなくて……」

 

「そっか」

 

 久遠(くおん)がココの傍へしゃがみ込む

 

「仕方のない子、あまり、おいたは駄目だよ」

 

 そう言いながら、ココの首元を優しく撫でる

 

「ホロロロ……」

 

 さっきまでご機嫌で俺を押さえ込んでいたココが、気持ち良さそうに目を細める

 

「ほら」

 

「ホロロ……」

 

 すると、何を言っても動かなかったココが何事もなかったように身体を起こした

 

「…………」

 

「退いた」

 

「退きました……」

 

 俺と瑠璃(るり)の声が重なる

 

 ようやく身体を起こし、肩を軽く回す

 

「だ、大丈夫ですか、大神(おおがみ)さん!?」

 

「ああ……肩も無事」

 

「本当にすみません……」

 

「いや、瑠璃(るり)が悪いわけじゃないって」

 

「あ……」

 

 そこで瑠璃(るり)が久遠(くおん)を見る

 

「助けていただいて、ありがとうございました」

 

「ううん、気にしなくていいよ」

 

 久遠(くおん)も立ち上がり、瑠璃(るり)へ向き直った

 

「そういえば、まだ挨拶してなかったね」

 

 柔らかく笑う

 

「初めまして、戸倉久遠(とくら くおん)です、ハクと同じ学校に通ってるの、よろしくね」

 

「あ……はい」

 

 瑠璃(るり)も慌てて頭を下げる

 

「久住瑠璃(くじゅう るり)です、今日から大神(おおがみ)さんのお宅でお世話になります、よろしくお願いします」

 

「うん、よろしく、瑠璃(るり)ちゃん」

 

「よろしくお願いします、久遠(くおん)さん」

 

 挨拶を終えた久遠(くおん)が、今度は瑠璃(るり)の横にいるココを見る

 

 少し考えるように首を傾げた

 

「仲が良すぎるんじゃないかな」

 

「え?」

 

「ココは、瑠璃(るり)ちゃんのことを主人っていうより、友達みたいに思ってるんじゃない?」

 

「友達……ですか?」

 

「うん、だから止められても、遊んでもらってるくらいに思ってるのかも」

 

 瑠璃(るり)がココを見る

 

「……そうなの、ココ?」

 

「ホロロロ?」

 

「…………」

 

 今の絶対返事しただろ

 

「否定はしてないかな」

 

 久遠(くおん)が小さく笑う

 

「そ、そうなんでしょうか……」

 

 瑠璃(るり)が困ったように笑いながらココの首元を撫でる

 

「ホロロロ~♪」

 

 嬉しそうに鳴いたあと、ココは──

 

 また俺のところへ来た

 

「…………」

 

「ホロロ?」

 

「何でまたこっち来るんだよ」

 

 大きな頭を俺の肩へ擦りつけてくる

 

「今度は倒すなよ」

 

「ホロロロ~♪」

 

「分かってないだろ」

 

 改めて目の前の二人と一羽を見る

 

 ルルティエを思い出さずにはいられない瑠璃(るり)

 

 ココポを思い出さずにはいられないココ

 

 そして、このやり取り

 

 おばちゃん曰く、少し混ぜたらしいけど──

 

「…………」

 

 少しって何だよ

 

 ……お前ら本当に何なんだよ

 

「ハク?」

 

「いや、何でもない」

 

 考えたところで答えが出るわけでもない

 

「とりあえず荷物入れるか」

 

「あ、はい!」

 

「私(わたくし)も手伝うよ」

 

「ありがとう、クオン」

 

 まずは瑠璃(るり)の新生活を始める方が先だ

 

 俺達は荷物を持ち、家の中へ入っていった

 

─────────────────────────

 

「ここが瑠璃(るり)の部屋な」

 

「わぁ……」

 

 荷物を運び終え、空いていた部屋へ案内する

 

「本当に使わせていただいていいんでしょうか」

 

「そのために空けたんだから使ってくれ、それに成人するまで、そのたび実家から東京まで往復する方が大変なんだろ?」

 

「はい……ありがとうございます、大神(おおがみ)さん」

 

 瑠璃(るり)が改めて部屋を見回す

 

 まだ荷物が置かれただけで殺風景だけど、これから本人が使いやすいようにしていけばいい

 

「ココの方も見に行くか?」

 

「はい!」

 

 さっきまでより明らかに返事が早い

 

 やっぱりココのことになると分かりやすいな

 

 家の裏手へ回る

 

 山側にはココが休めるだけの広さを取ってある

 

 普通のホロロ鳥ならここまで必要ないんだろうけど、あの大きさだと下手な小屋じゃ窮屈だ

 

「こんなに広く……」

 

「狭いよりいいだろ」

 

「はい……ココ、よかったね」

 

「ホロロロ~♪」

 

 瑠璃(るり)が嬉しそうにココを撫でる

 

 ココも気に入ったらしく、その場を歩き回る

 

 しばらく周囲を見ていたと思ったら──

 

 また俺のところへ来た

 

「…………また来た」

 

「ホロロ?」

 

 頭を擦りつけてくる

 

「お前、今度は乗るなよ」

 

「ホロロロ~♪」

 

「分かってる?」

 

 当然返事はない

 

「随分気に入られたね、ハク」

 

 久遠(くおん)が笑う

 

「嬉しいけど複雑なんだよ」

 

「どうして?」

 

「なんとなく」

 

「変なの」

 

 説明出来るわけがない

 

 前世で遊んだゲームの鳥に、動きまでそっくりなんです、なんて

 

─────────────────────────

 

 その日の夕食は、いつもより賑やかな食卓になった

 

 最初こそ瑠璃(るり)も少し緊張していたが、黒歌(くろか)や白音(しろね)、猫音(ねこね)に話しかけられているうちに少しずつ表情も柔らかくなっていく

 

 久遠(くおん)もそのまま夕食に混ざっている

 

「どう? 少しは落ち着いたかな」

 

「はい、久遠(くおん)さん、皆さん優しいので……」

 

「そんなに畏まらなくていいにゃ」

 

 黒歌(くろか)が笑う

 

「姉様が一番遠慮しませんから」

 

「白音(しろね)、それどういう意味にゃ!?」

 

「そのままの意味です」

 

「ご主人、白音(しろね)が酷いにゃ!」

 

「俺に振るな」

 

 いつものやり取りに、瑠璃(るり)が小さく笑った

 

 まあ

 

 これなら生活の方は大丈夫そうだな

 ────────────────────────────────────────────

 

 翌朝

 

「緊張してる?」

 

 駒王学園へ向かいながら聞くと、隣を歩いていた瑠璃(るり)が少し困ったように笑った

 

「少しだけ……転校自体、慣れていませんので」

 

「普通は慣れるほどしないからな」

 

「それもそうですね」

 

「大丈夫だよ、瑠璃(るり)ちゃん」

 

 反対側を歩いていた久遠(くおん)が笑う

 

「ハクもいるし、私(わたくし)もいるから、すぐ慣れるかな」

 

「ありがとうございます、久遠(くおん)さん」

 

 昨日よりは自然に話せている

 

 この二人は問題なさそうだな

 

─────────────────────────

 

「それじゃあ今日は転校生を紹介する」

 

 担任の言葉で教室がざわつく

 

 扉が開き、瑠璃(るり)が少し緊張した様子で教室へ入ってきた

 

「久住瑠璃(くじゅう るり)と申します、本日からこちらの学校でお世話になります、よろしくお願いします」

 

 軽く頭を下げる

 

 その瞬間、今度は男子の方からざわめきが起きた

 

 まあ、そうなるよな

 

 瑠璃(るり)は普通に美人だ

 

 本人は視線が集まって余計緊張してるみたいだけど

 

 簡単な紹介が終わり、席も決まる

 

 そして最初の休み時間になった瞬間──

 

「久住(くじゅう)さん、前はどこに住んでたの?」

 

「趣味とかある?」

 

「駒王町来たことある?」

 

 あっという間に女子達に囲まれた

 

 良かった

 

 こういうのは最初が肝心だからな

 

「そういえば、久住(くじゅう)さんって大神(おおがみ)と知り合いなの?」

 

「え?」

 

 嫌な予感がする

 

 瑠璃(るり)がこっちを見る

 

「あ、はい……以前一度お会いしたことがありまして、それと──」

 

 待て

 

「昨日から、大神(おおがみ)さんのお宅にお世話になっています……」

 

 教室が静まり返った

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 あれ?

 

「今、なんて?」

 

「え?」

 

「大神(おおがみ)の家に?」

 

「は、はい……昨日から、大神(おおがみ)さんのお宅にお世話になっています……」

 

 男子達の視線が一斉に俺へ向いた

 

「おい大神(おおがみ)」

 

「何だよ」

 

「お前……」

 

「白音(しろね)ちゃんがいる!」

 

「白音(しろね)は家族だ!」

 

「三大お姉さまの黒歌(くろか)さんもいるだろ!?」

 

「…………いるけど」

 

「そこに久住(くじゅう)さんまで追加だとぉぉぉぉ!!」

 

「うるせぇ!」

 

 何なんだよ三大お姉さまって

 

 というか何で俺が責められてるんだ

 

「許せねぇ……」

 

「人生の格差を感じる……」

 

「こんなの間違ってる……」

 

 …………あれ?

 

 この光景

 

 何処かで見たことあるぞ

 

 隣を見る

 

 イッセーが腕を組んで、物凄く穏やかな顔で俺を見ていた

 

「…………」

 

「…………」

 

 何も言ってない

 

 何も言ってないのに分かる

 

「今まで笑って悪かった」

 

「やっと分かったか」

 

「……ああ、身に染みた」

 

 こいつ

 

 ずっとこんな目に遭ってたのか

 

「でも、うちは事情があって瑠璃(るり)を預かってるだけだからな」

 

「俺だってそうだよ!!」

 

「お前の場合アーシアと部長だろ」

 

「事情があるのは一緒だろうが!」

 

 確かに

 

 今まで笑って見てた側だったから分からなかったけど、当事者になると理不尽だなこれ

 

「聞いたか! 兵藤まで認めたぞ!」

 

「二人とも敵だ!」

 

「何でだよ!」

 

「ハク、聞こえてるにゃ」

 

 教室の入り口から声が聞こえた

 

「……黒歌(くろか)」

 

「三大お姉さまって呼ばれてるにゃ、私」

 

 何故ちょっと嬉しそうなんだよ

 

「本物だ!」

 

「黒歌(くろか)さんだ!」

 

「お前ら余計うるさくなるな!」

 

 瑠璃(るり)は状況についていけず、女子達の真ん中で困ったように笑っている

 

 久遠(くおん)はというと、少し離れたところで口元を押さえていた

 

「笑ってるだろ」

 

「笑ってないかな」

 

「目を見て言え」

 

「無理かな」

 

「おい」

 

 結局その後も休み時間になるたびに似たようなことを聞かれ続けた

 

 ……イッセー

 

 今まで本当にすまなかった

 

 そう思ったところで──

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 昼休みを告げるチャイムが鳴った

 ─────────────────────────

 

「久住(くじゅう)さん、一緒にお昼食べない?」

 

「あ……はい、ぜひ」

 

 さっそく女子数人から声を掛けられ、瑠璃(るり)は少し驚きながらも嬉しそうに頷いた

 

 朝に比べれば随分表情も柔らかくなっている

 

「久遠(くおん)も一緒にどう?」

 

「いいの? それじゃ、お邪魔しようかな」

 

 久遠(くおん)も自然にその輪へ加わる

 

 うん

 

 これなら本当に大丈夫そうだな

 

 そう思いながら俺も昼飯を取り出そうとしたところで──

 

「ハク」

 

「ん?」

 

 イッセーが俺の机までやってくる

 

「とりあえず飯食おうぜ、あとで部室行くだろ?」

 

「ああ」

 

 昼休みにはオカ研で集まるらしい

 

 俺はイッセーと一緒に昼飯を広げた

 

 少し離れたところでは、アーシアが女子数人に囲まれて楽しそうに昼食を取っている

 

「アーシアも随分馴染んだな」

 

「ああ」

 

 イッセーが嬉しそうに笑う

 

 転校してきたばかりの頃はどうなることかと思ったけど、最近じゃ普通に女子の輪へ混ざっている姿を見るようになった

 

 その中にいた眼鏡の女子が、こちらへ一瞬視線を向ける

 

 確か桐生だったか

 

 何やら楽しそうな顔をすると、アーシアへ顔を寄せた

 

「あのさ、アーシア」

 

「はい?」

 

「兵藤君とはどこまでいってるの?」

 

「ぶっ!」

 

 隣でイッセーが盛大にむせた

 

 アーシアも一瞬きょとんとしたあと、みるみる顔を赤くしていく

 

「ど、どこまで……ですか?」

 

「だって一緒に暮らしてるんでしょ?」

 

「は、はい……」

 

「じゃあ彼氏みたいなものじゃない」

 

「か、彼氏……!」

 

 アーシアの顔が一気に真っ赤になった

 

「ち、違います! イッセーさんとは、その……!」

 

 両手を振りながら必死に否定している

 

「ハク、助けてくれ」

 

「自分で行け、話題の中心お前だろ」

 

「くそっ!」

 

 イッセーが立ち上がり、アーシア達の方へ向かっていく

 

 からかわれてはいるけど、アーシアも本気で嫌がっているわけじゃない

 

 それなら俺が入ることでもないか

 

 少し前まで友達を作ることすら不安そうだったことを思えば、こういうやり取りが出来るようになっただけでも随分変わったものだ

 

─────────────────────────

 

 昼食を終えたあと

 

「そろそろ部室行くか」

 

「はい!」

 

 ようやく桐生から解放されたアーシアが、イッセーの隣へ並ぶ

 

 俺も二人について教室を出ようとすると、久遠(くおん)から声を掛けられた

 

「ハクも行くの?」

 

「ああ、昼休みにちょっと集まりがあるらしい」

 

「そっか、じゃあ瑠璃(るり)ちゃんは私(わたくし)と一緒にいるかな」

 

「よろしくお願いします、久遠(くおん)さん」

 

「うん、任せて」

 

「じゃあ頼んだ」

 

 二人と別れ、俺達はオカ研部室へ向かった

 

 ─────────────────────────

 

 部室には、リアス先輩に朱乃、黒歌、白音(しろね)、木場がいた

 

 そしてソファには、オカ研の部員ではない女子生徒が一人座っている

 

 駒王学園の生徒会長、支取蒼那

 

 悪魔なのは、入学して間もない頃から気付いていた

 

 原作通りなら、その正体も知っている

 

 ソーナ・シトリー

 

 シトリー家の次期当主

 

 ただ、今の世界が俺の知っている通りに進む保証はない

 

 この世界でも同じなのかは、本人から正式に聞けばいい

 

 その後ろには男子生徒が一人立っている

 

 あの顔にも見覚えはある

 

 匙元士郎

 

 こちらも原作通りなら蒼那の眷属だ

 

 まあ、今は黙っておこう

 

「来たわね、イッセー、アーシア、ハク」

 

 リアス先輩がこちらを見る

 

「部長、生徒会長までいるんですね」

 

 イッセーが少し意外そうに蒼那を見る

 

「ええ、今日はあなた達に紹介しておきたいことがあってね」

 

「紹介?」

 

「まずは彼女、支取蒼那、この学園の生徒会長よ」

 

「それは知ってますけど……」

 

 イッセーが蒼那へ視線を向ける

 

「この人も悪魔なんですよね?」

 

「ええ、そうよ」

 

 リアス先輩がそのまま蒼那へ視線を移した

 

「そして正式に紹介しておくわ、彼女の本当の名は、ソーナ・シトリー」

 

「シトリー?」

 

 イッセーの表情が変わる

 

「ええ、シトリー家の次期当主で、私と同じ上級悪魔よ」

 

「次期当主!?」

 

 アーシアも驚いたように目を丸くしている

 

 俺は改めて支取先輩──ソーナ・シトリーを見る

 

 やっぱりか

 

「改めまして、ソーナ・シトリーです」

 

 蒼那は静かに頭を下げる

 

「学園では生徒会長として接することになりますが、こちらでもよろしくお願いします」

 

「兵藤一誠です、よろしくお願いします」

 

「アーシア・アルジェントです、よろしくお願いします」

 

 二人も頭を下げる

 

 蒼那の視線が俺へ向いた

 

「大神(おおがみ)君も、よろしくお願いします」

 

「こちらこそ」

 

 こうして直接話すのは初めてだ

 

 学校では何度も姿を見ているけど、向こうも俺のことは知っていたらしい

 

 まあ、生徒会長なら不思議でもないか

 

「そして──」

 

 蒼那が自分の後ろへ視線を向ける

 

「こちらが匙元士郎です」

 

「匙元士郎です、よろしく」

 

 男子生徒が軽く頭を下げる

 

 やっぱり匙だったか

 

「彼は私の眷属で、兵士(ポーン)です」

 

「お前も悪魔なんだな」

 

 イッセーが匙を見る

 

「ああ、そういうお前もだろ?」

 

「まあな」

 

 短く言葉を交わしたあと、イッセーが匙へ手を差し出した

 

「よろしくな、匙」

 

「ああ、よろしく」

 

 二人が握手する

 

 今のところは普通だ

 

 続いて匙がアーシアを見る

 

「アーシアさんも、よろしくお願いします」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 アーシアが微笑みながら手を差し出す

 

 その瞬間、イッセーの眉がぴくっと動いた

 

 おい

 

 まさか

 

「イッセー」

 

「なんだよ」

 

「ただの挨拶だぞ」

 

「分かってるよ!」

 

 分かってる顔じゃねぇ

 

 匙も呆れたようにイッセーを見る

 

「なんなんだよ、お前……」

 

「アーシアに変なことすんなよ」

 

「するか!」

 

「二人とも」

 

 蒼那の静かな声が落ちる

 

 それだけで二人が揃って口を閉じた

 

 リアス先輩は額へ手を当て、朱乃は口元を隠して楽しそうに笑っている

 

 木場も苦笑していた

 

 まあ

 

 仲良くなれるかどうかはともかく、少なくとも退屈はしなさそうだな

 

「さて」

 

 二人が静かになったところで、蒼那が眼鏡の位置を軽く直した

 

「今回こうして顔を合わせてもらったのには、理由があります」

 

「理由?」

 

 イッセーが聞き返す

 

「この学園では、リアスと私がそれぞれ悪魔として活動しています」

 

「同じ学園にいる以上、お互いの仲間くらいは知っておいた方がいいわ」

 

 リアス先輩も蒼那の言葉に続く

 

「ああ、なるほど」

 

 イッセーが納得したように頷いた

 

 学校では普通の生徒会とオカ研だけど、裏では二人とも上級悪魔

 

 それぞれ仲間もいるんだから、顔すら知らないよりは知っていた方がいいだろう

 

「そういうことです」

 

 蒼那が頷く

 

「今後、学園内で顔を合わせることもあるでしょうから」

 

「では、私達はそろそろ失礼します」

 

 蒼那が立ち上がる

 

 匙もその後ろへ続いた

 

「生徒会の仕事もありますので」

 

「忙しいんですね」

 

 アーシアが言うと、蒼那は僅かに笑う

 

「これでも生徒会長ですから」

 

 そのまま扉へ向かい──途中で足を止めた

 

「そういえば、リアス」

 

「何?」

 

「もうすぐ球技大会ですね」

 

 ほんの一瞬、二人の間の空気が変わった気がした

 

「ええ、そうね」

 

 リアス先輩が笑う

 

「今年も楽しみにしているわ」

 

「こちらもです」

 

 蒼那も同じように笑う

 

 二人とも笑っている

 

 笑っているんだけど

 

 なんでだろうな

 

 妙に怖い

 

「……ハク」

 

 イッセーが小声で話しかけてくる

 

「なんだ」

 

「あの二人、仲悪いのか?」

 

「俺に聞くな」

 

 むしろ仲が悪かったら、こんな分かりやすく競い合わない気もするけどな

 

「会長、そろそろ」

 

「ええ」

 

 匙に促され、蒼那が扉を開ける

 

「それでは皆さん、また学園で」

 

「失礼します」

 

 二人が部室を出ていく

 

 扉が閉まったところで、イッセーがリアス先輩を見る

 

「部長」

 

「何かしら?」

 

「生徒会長と仲悪いんですか?」

 

 普通に聞いたな、こいつ

 

 リアス先輩は少し目を丸くしたあと、小さく笑った

 

「仲が悪いわけではないわ」

 

「そうなんですか?」

 

「昔から何かと競うことが多いだけよ」

 

「ライバルということですね」

 

 アーシアが納得したように言う

 

「そうね」

 

 リアス先輩が腕を組む

 

「だから今年の球技大会も負けるつもりはないわ」

 

 その目は完全に本気だった

 

「……なんか大変そうだな」

 

「他人事みたいに言ってるけど、イッセーも参加するのよ?」

 

「分かってますよ」

 

 イッセーが苦笑する

 

 俺も同じ学園の生徒なんだから当然参加することになる

 

 まあ

 

 普通の学校行事だ

 

 そこまで変なことにはならないだろ

 

 多分

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った

 

「そろそろ戻るか」

 

「おう」

 

「はい!」

 

 俺達は部室を出て、それぞれ教室へ戻る

 

 瑠璃(るり)の転校初日も、今のところ大きな問題は起きていない

 

 とりあえず午後の授業を乗り切るとしよう




ということで、久住瑠璃(くじゅう るり)とココが本格的に合流しました
ココ、でかい
そしてハクもようやく、イッセーが普段どんな目に遭っていたのか身をもって理解しました
後半では支取蒼那――ソーナ・シトリー、そして匙元士郎とも正式に顔合わせ
次回はいよいよ球技大会です
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