ここ最近は特別試合やら何やらで戦闘続きだったので、久しぶりに普通の学校行事回になります
……普通の学校行事になるはずです
多分
それではどうぞ!
数日後
ドン、と朝から何度目かの花火が空に響いた
「今年は降りそうだな」
空を見上げる
朝から一面の曇り空で、天気予報じゃ夕方から雨らしい
球技大会が終わるまでは持ってほしいところだ
『次の競技に参加する生徒は、集合場所へ――』
校庭に設置されたスピーカーから放送が流れ、歓声や笛の音があちこちから重なってくる
一年ぶりのこの騒がしさも、二度目となればそれほど珍しくはない
まずはクラス対抗戦
俺達のクラスは野球で、その次が男女別の種目、昼を挟んで最後に部活対抗戦
今はそれぞれの出番まで、校庭の端に敷いたシートの周りで休憩しているところだ
「疲れた……」
イッセーがシートへ寝転がる
「まだ午前中だぞ」
「朝から動きっぱなしなんだよ」
「球技大会なんだから動くだろ」
「正論で返すなよ!」
少し離れたところでは、朱乃がアーシアの身体を伸ばすのを手伝っている
まだ学校行事に慣れていないアーシアは、朝から随分楽しそうだ
「次は私の競技です!」
「無理だけはしないようにね、アーシア」
「はい!」
「ルールは覚えましたか?」
「大丈夫です!」
「なら問題ありません」
「元気だにゃー」
その横では
「お前もそろそろ動いた方がいいんじゃないか?」
「まだ出番じゃないにゃ」
「そういう問題か?」
「体力温存も大事にゃ」
都合のいい言葉を覚えたな
「戻ったよ」
声の方を見ると、クオンと
「お疲れ」
「ただいま、ハク」
「お疲れさまです」
「どうだった?」
「楽しかったよ、思ったよりちゃんと身体動かすね」
「球技大会だからな」
「それ今日何回目?」
「知らん」
クオンが笑いながらシートへ腰を下ろす
「木場は?」
「あそこ」
少し離れた場所で木場が空を見上げていた
「木場、雨気になる?」
「ああ、少しね」
俺が声を掛けると、木場がこちらを振り返る
「夕方から降るみたいだから、大会が終わるまで持てばいいんだけど」
「朝も同じこと考えてた」
「皆考えることは同じだね」
「みんな揃ってるわね」
今度はリアス先輩が戻ってきた
「お疲れさまです」
「ええ」
「リアス先輩、次テニスでしたよね?」
「そうよ」
リアス先輩が僅かに笑う
「しかも相手は蒼那」
「やっぱり直接当たったんですね」
「ええ」
球技大会そのものは二度目だ
けど、去年の支取先輩はまだ生徒会長じゃなかったし、リアス先輩と競技で直接当たることもなかった
二人が普段から張り合っていたのかもしれないけど、少なくとも俺達の前でここまで分かりやすく火花を散らすことはなかった
それが今年は支取先輩が生徒会長になり、その上リアス先輩と同じテニスで真正面から対決
「今年、ちょっと面倒なことになってないか?」
隣のイッセーへ小声で言ったつもりだった
「面倒とは何よ」
「聞こえてたんですか」
「すぐ近くで言えば聞こえるわよ」
「ですよね」
「ちょうどいいじゃない」
リアス先輩は本気でそう思っているらしい
「せっかく直接当たったんだもの、今年こそはっきりさせられるわ」
「何をです?」
「どちらが上かよ」
やっぱり面倒だ
「そろそろ始まるみたいだよ」
クオンがテニスコートの方を見る
「見に行く?」
「行こうぜ!」
真っ先に立ち上がったのはイッセーだった
「
「私はこの後、次の競技の集合がありますので」
「そっか」
「皆さん、頑張ってください」
「ああ」
コートへ着くと、既に支取先輩が待っていた
いつも掛けている眼鏡を外し、ラケットを持っている
「蒼那」
「リアス」
二人がネット越しに向かい合う
「負けないわよ、蒼那」
「こちらこそ、リアス」
握手
笑っている
どっちも笑っているんだけど
「……怖くない?」
クオンが小声で聞いてくる
「笑ってるのにな」
「うん」
試合が始まった
当然ながら悪魔の力なんて使わない
普通の学校行事
普通のテニス
のはずなんだが
「速くない?」
「速いな」
支取先輩の打ったボールがコートへ鋭く落ちる
リアス先輩が追い付き、そのまま強く打ち返した
今度は支取先輩がラケットを振る
ボールに強い回転が掛かり、着地した瞬間に軌道が変わる
「うわ」
「凄いですね!」
アーシアが素直に感心している
リアス先輩も負けていない
左右へ振られても追い付き、空いた場所へ打ち返す
点を取れば取り返される
取り返せば、また奪われる
その繰り返し
「どっちも譲らないな」
「リアス、頑張って」
朱乃も楽しそうに見ている
最後は長いラリーになった
リアス先輩が打つ
支取先輩が返す
また返す
さらに返す
そして
バキッ
「…………」
「…………」
ほぼ同時だった
二人のラケットが壊れた
「ラケットってあんな壊れ方するんだな」
「普通はしないと思うよ」
木場が苦笑している
結局、審判達が話し合った結果、二人とも優勝という扱いになったらしい
「次は勝つわ」
「それはこちらの台詞よ」
最後までそれか
「……仲良いんじゃない?」
クオンが呟く
「俺もそんな気がしてきた」
その後、俺達もそれぞれの種目へ戻り、昼休憩を挟んで――
午後
「さて」
リアス先輩がこちらへ戻ってくる
「次は私達の番よ」
「部活対抗戦か」
「そうよ」
リアス先輩が笑う
「オカルト研究部、出場メンバーは集合よ」
ハク
イッセー
木場
アーシア
朱乃
クオン
そしてリアス先輩
今年のオカルト研究部は、去年より随分人数が増えた
「ドッジボールか」
イッセーが拳を鳴らす
「なんか楽しそうだな!」
「学校行事だからな」
「ハク」
「ん?」
「その台詞、嫌な予感するぞ」
「何でだよ」
普通の学校行事だろ
多分
「イッセーさん!」
「ん?」
アーシアがこちらへ走ってくる
その格好を見た瞬間、イッセーが固まった
「…………」
「どうですか?」
青いブルマ姿だった
「桐生さんが、これを着たらイッセーさんが元気になるって教えてくださいました!」
「桐生ぅぅぅぅぅ!!」
「えっ!?」
アーシアが驚いている
「違う違う、アーシアに怒ったんじゃないからな!」
「そ、そうなんですか?」
「ああ!」
「なら良かったです」
アーシアが安心したように笑う
「あらあら、イッセーったら」
「朱乃、笑うなよ!」
「笑ってないわよ」
「絶対笑ってるだろ!」
「でもイッセーさん、元気になりましたね」
「アーシアまで!?」
「良かったですね」
「
散々だな
「そうだ!」
イッセーが何か思い出したように鞄へ手を入れる
「これ!」
「何だ?」
取り出したのは何本もの鉢巻だった
「昨日作ったんだよ」
「お前が?」
「おう」
一本受け取る
ちゃんとオカルト研究部の名前まで刺繍されている
「これ全部手作りか?」
「そうだぜ」
「器用だな」
「へへっ」
イッセーが一人ずつ配っていく
「
「ありがとうございます、イッセー先輩」
「
「ありがとにゃー」
「木場」
「ありがとう、イッセー君」
「アーシア」
「ありがとうございます!」
「朱乃」
「あら、私の分もあるのね」
「当然だろ」
そして
「
「ん?」
「ほら」
クオンが受け取り、少し嬉しそうに鉢巻を見る
「
「部員なんだから当たり前だろ」
「ありがとう」
最後に俺にも渡された
「ハク」
「ありがとな」
「全員分あるからな」
イッセーが自分の鉢巻を締める
「せっかく部活で出るんだし、形から入ろうぜ!」
「悪くないわね」
リアス先輩も鉢巻を受け取った
「なら、勝ちに行くわよ」
「おう!」
最初の相手は野球部だった
コートへ入った瞬間から
「兵藤ぉぉぉぉ!!」
「お前だけはぁぁぁ!!」
何故かイッセーへ殺気が集中していた
「なんでだよ!?」
「心当たりないのか?」
「ありすぎてどれだか分かんねぇよ!」
「それはそれでどうなんだ」
「イッセー、避けなさい!」
「はい、部長!」
試合開始
案の定
飛んでくる
「うおっ!」
イッセーが身体を捻って避ける
次も
「また俺かよ!」
避ける
また来る
「しつけぇ!」
「人気者だな」
「嬉しくねぇよ!」
転がってきた球を拾う
「投げないの?」
クオンが聞いてくる
「今はお前に任せる」
「そう?」
「俺が前に出なくても回るだろ」
クオンへ渡す
全力でやれば普通の生徒相手じゃ勝負にならない
今日は学校行事だ
それに
前へ出る奴は他にもいる
「イッセー先輩!」
イッセーが避けた球を、
そのまま素早く投げ返す
「うわっ!」
「アウト!」
「おお!」
イッセーが
それから相手側を見る
「……そういうことか」
また自分へ向かって構える野球部員を見て、イッセーが小さく呟いた
「ハク、俺に来る球は無理に取らなくていい」
「何する気だ?」
「向こうが勝手に俺を狙ってくるんだから、利用する」
イッセーが少し下がり、周りを見る
「俺が避ける、後ろに抜けた球は取った奴から返せ!」
「なるほど」
「いい判断ね」
リアス先輩もすぐに意図を理解したらしい
「そのまま行くわよ」
「おう!」
「兵藤ぉぉぉぉ!」
「来い!」
投げ込まれた球をイッセーが横へ避ける
その後ろには
「取りました」
球が床へ落ちるより先に両手で受け止め、そのままほとんど間を置かず投げ返す
「うわっ!」
「アウト!」
「よっしゃ!」
次もイッセー
今度は少し高い
「木場!」
「任せて」
イッセーの頭上を抜けた球を木場が受け止める
そのまま一度相手の位置を見て、空いているところへ正確に投げ返した
「っ!」
「アウト!」
「いいぞ!」
前なら、狙われていることに腹を立てていたところだ
今は、その視線まで利用している
「また来るぞ!」
「分かってる!」
イッセーが避ける
今度はクオンが取った
「こっちだね」
クオンが大きく振りかぶり、狙いを定めて投げ返す
「うおっ!?」
球が相手の肩へ当たり、そのまま地面へ落ちる
「アウト!」
「やった!」
相手側から返された次の球を、今度は
「次はこっちにゃ」
「ちょ、待っ――」
「アウト!」
「
「普通に投げてるにゃ」
「本当か?」
「本当にゃ」
怪しい
でもまあ、妖術も仙術も使ってないなら問題ないだろ
その間にも球は動く
朱乃が空いている相手へ返し、リアス先輩が全体を見ながら位置を指示し、アーシアも自分で投げ切れない球は無理せず近くの仲間へ渡している
俺も飛んできた球を受け止めては、近くの仲間へ回していく
また一球
「木場」
「ありがとう、ハク君」
木場の返球を相手がどうにか受け止める
「くそっ!」
野球部員の一人が苛立ったように声を上げた
「兵藤ばっか狙うな! このままじゃこっちが削られるだけだ!」
「じゃあ誰狙うんだよ!」
「あいつだ!」
何人かの視線が一斉に俺へ向く
「……俺?」
「さっきから球回してんのあいつだ!」
「なるほど、ちゃんと見てたのか」
「感心してる場合かよ、ハク!」
イッセーの声と同時に、野球部員が大きく振りかぶった
「
「名字で呼ばれると妙に怖いな」
「避けろって!」
投げられた球を見る
速い
けど、避けられないほどじゃない
身体をずらそうとした、その瞬間
「っ!」
ボールが途中で沈んだ
「フォーク!?」
野球部員が投げた球が、目の前で急に軌道を変える
それでも対応は出来る
そう思った時
「ハク!」
「イッセー?」
横からイッセーが飛び込んできた
「お前――」
ゴッ
「…………」
「…………」
落ちてきたボールが
綺麗に
イッセーの股間へ直撃した
「…………たま」
「イッセー?」
「たまがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
イッセーが股間を押さえ、その場へ崩れ落ちる
見ていた俺まで反射的に股間を押さえてしまった
「イッセー、大丈夫か!?」
「ハク……無事か……」
「俺より自分の心配しろ!」
「なら……よかった……」
「いや、良くないからな」
思わず口元を押さえる
「……っ、ふ」
「お前……今笑っただろ……」
「笑ってない」
「絶対笑った!」
「いや、だってお前……」
駄目だ
笑うところじゃない
本気で痛そうだし、場所が場所だ
分かってる
分かってるんだけど
「……下手したら、不能になるかもしれんぞ」
「笑い堪えながら言うことじゃねぇだろぉぉぉぉぉぉ!!」
「悪い……っ、でも……」
「笑うなぁぁぁぁぁ!!」
「ハク」
リアス先輩の低い声が飛んできた
「はい、すみません」
「謝る相手が違うわ」
「イッセー、すまん」
「全然反省してねぇぇぇぇぇ!!」
「イッセーさん!」
アーシアが慌てて駆け寄ってくる
「すぐ治療します!」
「た、頼む……アーシア……」
「イッセー君、本当に大丈夫?」
木場も心配そうに覗き込む
「木場……」
「うん」
「俺の代わりに……勝ってくれ……」
「そんな遺言みたいに言わないでよ!?」
「イッセー」
リアス先輩が呆れたように息を吐く
「あなたは一旦外れなさい、アーシア、イッセーを連れていってあげて」
「はい!」
「部長……まだ俺……」
「その状態で何をするつもり?」
「…………何も出来ません」
「でしょうね」
反論出来なかった
「イッセー先輩」
「後は任せてください」
「……おう、頼んだ」
それは
残っている全員が、もう同じ流れを分かっている
イッセーが作った流れを、そのまま皆で繋げればいい
アーシアに肩を借りながら、イッセーがコートの外へ向かう
「……死ぬなよ、イッセー」
「だから死なねぇよ!」
「イッセーさんは死んでません!」
アーシアまで振り返って否定してきた
「兄さま」
「ん?」
「試合中です」
「ああ、そうだった」
さて
イッセーが身体を張って作った流れだ
こっちはこっちで、ちゃんと勝ち切るとしよう
side out ハク
──────────────────────
side in イッセー
「イッセーさん、こちらへ」
「お、おう……」
アーシアに肩を貸してもらいながら、人気のない体育館裏まで移動する
痛い
まだ普通に痛い
というか、あそこにボールが直撃したんだから当然なんだけど
「イッセーさん、治療します」
「頼む……」
「では、怪我をしたところを見せてください」
「…………」
「イッセーさん?」
「いや、それは無理だ」
「でも、患部を見せてもらわないと、ちゃんと治療出来ません!」
「アーシア」
「はい!」
「気持ちは滅茶苦茶ありがたい」
「はい!」
「でも無理なものは無理なんだ!」
「ど、どうしてですか!?」
「場所が場所だからだよ!」
何をどう説明しろってんだ
確かに治してほしい
滅茶苦茶治してほしい
でもだからって、はいどうぞと見せられる場所じゃない
「でもイッセーさん、とても痛そうです……」
「うっ……」
そんな顔されると弱い
「分かった、じゃあ……腰の辺りでいい」
「腰、ですか?」
「ああ、服の上からでいいから、その辺りに《聖母の微笑》をかけてくれれば多分届く」
「本当にそれで大丈夫ですか?」
「頼む、それでお願いします」
「……分かりました」
アーシアが少し心配そうに頷き、俺の腰の辺りへ両手をかざす
淡い緑色の光が広がった
腰から下腹部へ温かさが染み込んでいき、それと一緒にさっきまで残っていた痛みが少しずつ消えていく
「おぉ……」
「どうですか?」
「効いてる……すげぇ、ちゃんと効いてる……」
あの直撃の痛みまでちゃんと引いていく
……相変わらず、アーシアの神器はすげぇ
「良かったです」
「助かった……マジでありがとう、アーシア」
「いえ、治せて良かったです」
力が抜け、そのまま後ろへ倒れそうになる
「イッセーさん」
「ん?」
「少し休んでください」
アーシアが俺の頭を支える
そのまま
「…………え」
柔らかい感触が後頭部へ触れた
「アーシア?」
「はい」
「これ……膝枕?」
「はい」
しかも
今のアーシアは
ブルマだ
「…………」
「どうしました?」
「いや……なんでもない」
これは駄目だ
別の意味で死ぬ
「イッセーさん?」
「ん?」
「顔が赤いです」
「気のせいだ」
「そうですか?」
「そうなんだ」
頼むから今は追及しないでくれ
「でも、本当にもう痛くありませんか?」
「ああ、もう大丈夫」
「良かったです」
アーシアがほっとしたように笑う
そのまま俺の頭を膝へ乗せたまま、少しだけ姿勢を直した
「……アーシア」
「はい?」
「その、ありがとうな」
「治療のことですか?」
「それもだけど……色々」
「ふふっ」
「何だよ」
「今日はイッセーさんに、たくさんお礼を言ってもらっています」
「そうだっけ?」
「はい」
言われてみれば、そうかもしれない
「じゃあもう一回言っとく、ありがとう」
「どういたしまして」
アーシアが嬉しそうに笑う
……まあ
たまにはこういうのもいいよな
『部活対抗戦、第一試合――』
遠くから校内放送が聞こえてきた
俺とアーシアが同時に耳を澄ませる
『勝者、オカルト研究部!』
「おっ!」
「勝ちました!」
アーシアがぱっと顔を輝かせる
「よっしゃ!」
思わず身体を起こしかけて
「イッセーさん!」
「っと」
慌てて止まった
「もう少し休んでいてください」
「もう治ったって」
「駄目です」
「はい」
即答してしまった
アーシアにこういう顔をされると弱い
「でも、そっか」
空を見上げる
「勝ったか」
「はい!」
「
途中で抜けちまったけど、あいつらなら大丈夫だと思ってた
それに
俺を狙ってくる球を利用して、少しでも流れは作れた
「戻ったら礼言わないとな」
「はい、一緒に行きましょう」
「おう」
もう一度身体から力を抜く
後頭部には、相変わらず柔らかい感触
…………うん
やっぱりこれ
落ち着けるわけねぇな
side out イッセー
──────────────────────
side in ハク
野球部との第一試合が終わってしばらくして、アーシアに付き添われたイッセーが戻ってきた
「もういいのか?」
「おう、もう痛くねぇ」
「そうか」
一応、歩き方も普通だ
「不能にはならずに済んだか?」
「戻ってきた奴への第一声がそれかよ!」
「大丈夫です!」
何故かアーシアが俺へ力強く答えた
「ちゃんと治療しました!」
「なら安心だな」
「お前ら真面目な顔で確認すんな!」
「イッセー先輩」
「ありがとうございました」
「ん?」
「イッセー先輩が相手を引き付けてくれたので、その後も動きやすかったです」
「ああ……そっか」
イッセーが少し照れたように鼻の下を擦る
「途中で抜けちまったけどな」
「途中まででも十分よ」
リアス先輩がこちらへ歩いてくる
「あなたが相手の狙いを利用したから、こっちが流れを取れたんだもの」
「部長……」
「最後まで残れなかったのは残念だけど、ちゃんと役目は果たしたわ」
「……はい!」
「まあ、一番身体張ったのもイッセーだけどにゃー」
「違う意味でな」
「ハクぅぅぅ!!」
「あらあら」
朱乃まで口元を押さえている
「朱乃! お前まで笑うな!」
「笑ってないわよ、イッセー」
「絶対笑ってる!」
これだけ騒げるなら本当に大丈夫そうだな
「皆さん」
声の方を見ると、
「
「はい、少し前に終わりました」
「こっちは一試合終わったところだよ」
クオンがそう言うと、
「間に合わなかったんですね」
「勝ったから大丈夫だ」
「そういう問題でしょうか……」
「大丈夫、まだ午後の競技は残ってるよ」
「それなら、今度は応援します」
その後、しばらく休んだイッセーも復帰し、部活対抗戦は続いた
今度は急所へ飛んでくる球もなく、午後の競技も無事に進んでいく
そうして何度目かの歓声が校庭へ響いた頃には、朝から空を覆っていた雲がさらに厚くなっていた
『以上をもちまして、本年度の球技大会を終了します、各クラス、各部活動は使用場所の片付けを――』
「終わったぁ!」
イッセーが大きく両腕を伸ばす
「結局一日中動いてたな」
「球技大会なんだから当たり前でしょ」
リアス先輩が呆れたように言う
「でも楽しかったです!」
アーシアは朝から変わらず嬉しそうだ
「また来年もあるぞ」
「はい!」
その返事を聞いた直後
ぽつ
「ん?」
頬に冷たいものが当たった
空を見上げる
ぽつ、ぽつと雨粒が落ちてきている
「やっぱり降ったか」
「大会が終わるまで持ったね」
クオンも空を見上げる
「朝の予報通りだな」
「先に片付けちゃいましょう」
木場が近くに置かれていた道具へ手を伸ばす
「このままだと本格的に降ってきそうだし」
「そうね、祐斗の言う通りよ」
それから全員で片付けを手伝い、校庭から人が減り始めた頃には雨脚もかなり強くなっていた
校舎へ戻る頃には
ザーッ――
窓を雨粒が叩く音が廊下まで響いている
「結構降ってきたな」
「傘持ってきて良かった……」
イッセーが外を見ながら呟く
「夕方から降るって言ってただろ」
「こういう日に限って忘れる時あるだろ?」
「知らん」
「冷てぇな!」
「さて」
リアス先輩が手を叩く
「片付けも終わったし、このままイッセーの家に集まりましょう」
「今からですか?」
「何よ、嫌なの?」
「いや、別に嫌じゃないですけど」
イッセーが外の雨を見る
「球技大会終わったばっかですよ?」
「だから今日は軽くよ、反省会も兼ねて休憩しましょう」
「部長もアーシアも帰る場所そこじゃないですか」
「細かいことは気にしないの」
「細かいかなぁ……」
まあ
今じゃ放課後にイッセーの家へ集まること自体、珍しくもない
「ハク達も来るだろ?」
「ああ」
「もちろんにゃ」
「兄さまが行くなら私も行きます」
「
クオンが聞くと、リアス先輩は当然のように頷いた
「ええ、
「それじゃあ行こうかな」
「
「私も、ですか?」
「せっかくだしな」
「では、お邪魔します」
「決まりね」
それぞれ傘を開き、雨の中をイッセーの家へ向かう
朝から散々騒いで、試合までやった後だというのに、誰かが話し始めればすぐ別の誰かが乗っかる
いつもと大して変わらない
木場もイッセーと今日の試合について話しながら、普通に笑っている
しばらく歩いて兵藤家へ着くと、イッセーが玄関を開けた
「ただいまー」
「ただいま帰りました!」
「ただいま」
イッセーに続いて、アーシアとリアス先輩も中へ入る
「お邪魔します」
俺達もその後へ続いた
「あら、お帰りなさい、みんなもいらっしゃい」
奥からイッセーのお母さんが顔を出す
「随分降ってきたわね、濡れてない?」
「大丈夫だよ、母さん」
「ならいいけど、タオルは出しておくから使ってね」
「ありがとうございます」
靴を脱ぎ、そのまま全員でリビングへ向かう
「はぁー……やっと座れる」
イッセーがソファへ腰を下ろした瞬間、大きく息を吐いた
「お疲れだな」
「誰のせいで余計に疲れたと思ってんだよ」
「野球部?」
「お前だよ!」
「俺、当ててないぞ」
「その後ずっと笑ってただろ!」
「まだ言ってるのか」
「お前が言うな!」
騒がしい
けどまあ
球技大会の締めとしては、こんなもんだろ
窓の外では雨が降り続いている
その雨音を聞きながら、俺も空いている場所へ腰を下ろした
イッセー、合掌
……まあアーシアに治してもらった上に膝枕までしてもらったので、結果だけ見ればむしろ得してる気がしなくもない
今回は球技大会ということで、リアスと蒼那のライバル対決に加えて、これまで散々言われ続けてきたイッセーの「周りを見る」という部分も少し成長として出してみました
ハクが全部やるのではなく、イッセーが流れを作って、それをみんなで繋いでいく形になっています
そして無事に球技大会も終了
雨の中、いつものメンバーはそのまま兵藤家へ
次回
何気なく出てきた一枚の写真から、少しずつ話が動き始めます
ではまた次回!
……たまがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!