ハイスクールDxD 〜うたわれるもの〜   作:フォートナー

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久しぶりの再会って、だいたい何か起きますよね

何も起きない再会もたまには欲しい

たまには


Life . 23 幼馴染です!再会です!何かがおかしい!?

 

「そうだ」

 

 しばらくして、イッセーのお母さんが何か思い出したように立ち上がった

 

「イッセー達が小さい頃のアルバム、見る?」

 

「えっ」

 

「あるんですか?」

 

 真っ先に反応したのはアーシアだった

 

「もちろんよ、ちょっと待っててね」

 

「母さん!?」

 

「いいじゃない、皆で見るくらい」

 

「いや、絶対変な写真あるだろ!」

 

「いっぱいあるわよ?」

 

「やっぱりかよ!」

 

 イッセーの制止も聞かず、お母さんは奥へ引っ込んでいく

 

 数分もしないうちに分厚いアルバムを抱えて戻ってきた

 

「はい、これ」

 

「うわぁ……」

 

 アーシアが目を輝かせる

 

 リアス先輩も興味があるらしく、その隣へ座り、朱乃やクオン、瑠璃(るり)も自然と集まってくる

 

 黒歌(くろか)と白音(しろね)も後ろから覗き込み、気付けばアルバム一冊を囲むような形になっていた

 

「この頃のイッセー、小さいですね」

 

「そりゃ子供だからな!」

 

「これは?」

 

「幼稚園の運動会ね」

 

「母さん、それ以上説明しなくていいから!」

 

「あらあら」

 

 ページが捲られるたび、イッセーが騒ぐ

 

 懐かしい写真ばかりだ

 

 幼稚園の行事や公園、夏祭り

 

 俺も何枚か写っている

 

「ハク、昔からあんまり変わらないね」

 

「そうか?」

 

 クオンが写真と俺を交互に見る

 

「うん、子供なのに妙に落ち着いてる」

 

「昔からこんな感じだったぞ」

 

「イッセーに言われたくないんだけど」

 

「何でだよ!」

 

 さらに数枚捲ったところで、イッセーの手が止まった

 

「ん?」

 

 一枚の写真

 

 そこには俺とイッセー、それともう一人、幼い頃のイリナが写っている

 

「あー、懐かしいな」

 

「この子は?」

 

 アーシアが写真を覗き込む

 

「幼馴染だよ」

 

「へぇ」

 

 イッセーが写真を持ち上げる

 

「この男の子って――」

 

「いや、イリナは女だろ」

 

「え?」

 

「え?」

 

「…………」

 

 何でお前まで驚くんだよ

 

「女?」

 

「女」

 

「マジで?」

 

「マジだよ」

 

「俺ずっと男だと思ってたんだけど!?」

 

「お前、何年幼馴染やってたんだよ!」

 

「だってあいつ昔こんなんだったじゃん!」

 

「こんなん言うな!」

 

「イリナさん、というんですか?」

 

「ああ」

 

 アーシアが楽しそうに写真を見る

 

「今もお友達なんですか?」

 

「一応な、引っ越してからもメールはしてる」

 

 イリナが駒王町を離れたのは、小学校へ上がる前だった

 

 それでも連絡自体は今までずっと続いている

 

「ハクとイッセーの幼馴染なのね」

 

「そうですね」

 

 リアス先輩も写真へ視線を落とす

 

「今は海外にいるの?」

 

「そうです、詳しい場所までは――」

 

「…………」

 

 そこで、それまで黙って写真を見ていた木場の手が止まった

 

「木場?」

 

「…………」

 

 木場の視線はイリナじゃない

 

 写真の端

 

 イリナの近くに立っている外国人の男

 

 その男が持っている古い西洋剣へ向いている

 

「どうした?」

 

「ハク君」

 

 木場が写真を指差す

 

「この剣」

 

「剣?」

 

 イッセーも覗き込む

 

「なんか変なのか?」

 

「…………」

 

 木場の顔から、さっきまでの柔らかい表情が消えた

 

「これは聖剣だよ」

 

「聖剣?」

 

「伝説とかに出てくる、あの聖剣ですか?」

 

 瑠璃(るり)が不思議そうに聞く

 

「えっと……」

 

 木場が僅かに言葉を詰まらせる

 

 まずいな

 

「本物なのか?」

 

 イッセーも写真を見ながら聞く

 

「少なくとも、僕にはそう見える」

 

「へぇ……」

 

 イッセーも、木場の過去や聖剣に関する詳しい事情までは知らない

 

 瑠璃(るり)に至っては、裏側のこと自体知らない

 

 ここで話を広げるわけにはいかない

 

「あ、ごめんなさい」

 

 ちょうどその時、瑠璃(るり)が立ち上がった

 

「お手洗いをお借りしてもいいですか?」

 

「ああ、案内する」

 

「ありがとうございます」

 

 俺も立ち上がる

 

 廊下へ出て、瑠璃(るり)へ場所を教える

 

「そこ」

 

「ありがとうございます」

 

「おう」

 

 瑠璃(るり)が扉の向こうへ消えるのを確認して、リビングへ戻る

 

 途中、イッセーの横を通りながら声を掛けた

 

「イッセー」

 

「ん?」

 

「部屋借りるぞ」

 

「……おう」

 

 俺の声色で何か察したのか、イッセーはそれ以上聞いてこない

 

「リアス先輩」

 

「ええ」

 

「木場も」

 

「うん」

 

 三人で二階へ上がり、イッセーの部屋へ入る

 

 扉を閉める

 

「…………」

 

 木場が俺を見る

 

「木場」

 

「うん」

 

「……いや」

 

「?」

 

「祐斗」

 

「……え?」

 

「これからはそう呼ぶ」

 

 祐斗が目を瞬かせた

 

「急だね」

 

「前はまだそこまで親しくなかったからな」

 

「…………」

 

 一瞬だけ驚いた顔をした後、祐斗が小さく笑う

 

「そっか」

 

「ああ」

 

「なら、改めてよろしくね、ハク君」

 

「おう」

 

 さて

 

 本題だ

 

「前に、お前の過去を視たって話したの覚えてるな」

 

「うん」

 

「聖剣計画のことも?」

 

「覚えてるよ」

 

「あの時、実験に関わってた奴の一人を確認してる」

 

 祐斗の表情が変わる

 

「……その人は誰なんだい?」

 

「名前までは分からん」

 

「そう」

 

「ただ、顔は覚えてる」

 

 祐斗の拳が僅かに握られる

 

 でも、それだけだ

 

 昔みたいに周りが見えなくなってるわけじゃない

 

「それと」

 

「まだあるの?」

 

「ああ」

 

 俺は一度リアス先輩を見る

 

「写真を見てから、少し先の未来が視えた」

 

「…………」

 

「…………」

 

 祐斗より先に、リアス先輩が眉を寄せた

 

「ハク」

 

「はい」

 

「前に、未来のことは話さないと言っていなかった?」

 

「言いました」

 

「なら、どうして今回は話すの?」

 

「本来なら話さない方がいいと思ってます」

 

 未来を伝えれば、その時点で人の行動は変わる

 

 行動が変われば、その先も変わる

 

「でも今回は、黙ってる方が危ないと判断しました」

 

「…………」

 

「それでも、これから話すことがそのまま起きるとは思わないでください」

 

「分かったわ」

 

 リアス先輩が頷く

 

「続けて」

 

「祐斗」

 

「うん」

 

「前に視た、実験に関わってた男と同じ顔をした奴が、この街へ来る」

 

「…………!」

 

「場所までは?」

 

「はっきりとは分かりません、ただ駒王学園の近くまで来る可能性はあります」

 

「それと」

 

 少し間を置く

 

「黒い羽根も見えました」

 

「黒い羽根?」

 

 リアス先輩の表情がさらに険しくなる

 

「堕天使?」

 

「誰のものなのかまでは分かりませんでした」

 

 ここから先は言えない

 

 本当に未来を視たわけじゃない

 

 俺が知っているのは、原作の流れだ

 

 バルパー・ガリレイ

 

 原作通りなら、奴がこの街へ来るはずだ

 

 それと、前にアザゼルから聞いたコカビエル

 

 あいつも原作じゃ、この一件に絡んでいた

 

 だから黒い羽根の話も混ぜた

 

 俺が知っている原作の流れと、今持っている情報を合わせただけだ

 

 けど、この世界はもう原作通りじゃない

 

 バルパーが原作通りに来るのか

 

 コカビエルが同じように動くのか

 

 それすら今は断言出来ない

 

「祐斗」

 

「うん」

 

「一人で動くなとは言わない」

 

「…………」

 

「けど、何か見つけたら俺達にも話せ」

 

「うん」

 

「前にも言っただろ、復讐を止めろとは言わない」

 

 祐斗が静かに俺を見る

 

「でも、それで周りが見えなくなるな」

 

「……忘れてないよ」

 

「そうか」

 

「僕は、あの時のことを忘れたわけじゃない」

 

 祐斗がゆっくりと言葉を続ける

 

「仲間達のことも、実験のことも、聖剣のことも」

 

「…………」

 

「だからって、今ここにいる皆まで見えなくするつもりはないよ」

 

 リアス先輩の表情が少しだけ柔らかくなる

 

「無理はしないでね、祐斗」

 

「分かっています」

 

「ならいいわ」

 

 今の祐斗なら、昔みたいに復讐だけを見て走ることはないだろう

 

 バルパー・ガリレイ

 

 コカビエル

 

 そして聖剣

 

 原作通りなら、この三つはこれから一つに繋がる

 

 けど、今の世界でもそうなる保証はない

 

「……これ、思ってるより厄介なことになってるぞ」

 

「今更でしょう?」

 

「リアス先輩、それ言います?」

 

「あなたがいる時点で大抵今更よ」

 

「酷い」

 

「否定出来る?」

 

「…………」

 

「出来ないのね」

 

 仕方ないだろ

 

 ──────────────────────

 

 リビングへ戻ると、瑠璃(るり)も既に戻っていた

 

「あ、戻ってきましたね」

 

「悪い、ちょっと話してた」

 

「いえ、大丈夫です」

 

 黒歌(くろか)と白音(しろね)はまだアルバムを見ていて、イッセーもその横から写真を覗いている

 

「なあハク」

 

「ん?」

 

「イリナって今何してんだ?」

 

「そういや」

 

 今朝、イリナからメールが来ていた

 

『ハク、久しぶり!』

 

『久しぶり、どうした?』

 

『急なんだけど、二日後にそっちへ一旦戻ることになったよ!』

 

『一旦ってことは、またすぐ離れるのか?』

 

『うん、ちょっと用事があってね、長くはいられないと思う』

 

『そうか』

 

『あ、それと同僚も一緒だから、その時紹介するね!』

 

『同僚?』

 

『うん!』

 

『で、どこ行くんだ?』

 

『それは秘密!』

 

『秘密かよ』

 

『ふふん、聞いて驚きなさい!』

 

『分かった、着く時間決まったら教えてくれ』

 

『了解! 決まったらまたメールするね!』

 

「メール来てたぞ、あいつ二日後にこっちに一旦戻ってくるんだとさ、同僚と一緒に」

 

「マジで!?」

 

「おう」

 

「同僚って誰?」

 

「知らん」

 

「知らねぇのかよ」

 

「本人に聞けよ、二日後に来るんだから」

 

「そうだけどよ」

 

 イッセーがもう一度写真を見る

 

「…………女だったのか」

 

「まだ言ってんのか」

 

「いや、だって十年以上男だと思ってたんだぞ?」

 

「本人に絶対言うなよ」

 

「分かってるって」

 

 信用出来ない

 

「着く時間が分かったら、一緒に空港まで迎えに行くか?」

 

「いいな! 行こうぜ!」

 

「じゃあ連絡来たら教える」

 

「おう!」

 

 ──────────────────────

 

 その後もしばらく騒いでいたが、雨が弱くなった頃には解散することになった

 

 黒歌(くろか)と白音(しろね)も俺達と一緒に帰る準備を始め、クオンと瑠璃(るり)も玄関へ向かう

 

「じゃあまたな」

 

「おう!」

 

「皆さん、気を付けて帰ってくださいね」

 

「アーシアもな」

 

「はい!」

 

 祐斗も傘を開く

 

「じゃあ僕も帰るよ」

 

「祐斗」

 

「うん?」

 

「さっきの話」

 

「大丈夫だよ」

 

「そうか」

 

「また明日、ハク君」

 

「ああ」

 

 祐斗は小さく手を振り、そのまま雨の中へ歩いていった

 

 side out ハク

 

 ──────────────────────

 

 side in 祐斗

 イッセー君の家を出てから、しばらく一人で歩いていた

 

 雨はまだ止んでいない

 

 強くはないけど、傘を叩く音が一定の間隔で耳に入る

 

「…………」

 

 頭に浮かぶのは、さっき見た写真

 

 聖剣

 

 忘れられるはずがない

 

 あの実験も、仲間達の顔も、最後に聞いた声も

 

『復讐を止めろとは言わない』

 

『でも、それで周りが見えなくなるな』

 

「……分かってるよ」

 

 僕だって昔のままじゃない

 

 部長がいる

 

 朱乃先輩がいる

 

 イッセー君がいる

 

 アーシアさんがいる

 

 黒歌さんがいる

 

 白音ちゃんがいる

 

 久遠さんがいる

 

 ハク君もいる

 

 今の僕には帰る場所がある

 

 だからといって、あの日のことを忘れたわけじゃない

 

 復讐したい気持ちが消えたわけでもない

 

 ただ、それだけを見るつもりはない

 

「……ん?」

 

 少し先

 

 路地の入口で誰かが壁へ手をついている

 

 神父服

 

「大丈夫ですか?」

 

「……っ」

 

 近付いた瞬間、その男の身体が崩れた

 

「危ない!」

 

 すぐに腕を伸ばして支える

 

「ひどい傷だ」

 

「に……げ……」

 

「え?」

 

「逃げ……ろ……」

 

 次の瞬間

 

 気配

 

「っ!」

 

 神父を抱えたまま身体を横へずらす

 

 さっきまで僕の頭があった場所を、光の刃が通り過ぎた

 

「へぇ」

 

 聞き覚えのある声

 

「今の避けるんだ?」

 

「…………君か」

 

 路地の奥から、一人の男が姿を現す

 

 白い髪

 

 狂ったような笑顔

 

「どっかで見たイケメン野郎だと思ったら、あん時の剣士君じゃねぇか!」

 

「久しぶりだね」

 

「覚えててくれたぁ? 嬉しいねぇ!」

 

「忘れるには騒がしすぎたからね」

 

「あっはははは! 言うじゃん!」

 

 フリード・セルゼン

 

 アーシアさんを助けに教会へ行った時に戦った相手

 

 あの時は逃がした

 

「前みたいに逃がすつもりはないよ」

 

「怖い怖い!」

 

 口ではそう言いながら、全く怖がっていない

 

 僕は負傷した神父を壁際へ寝かせる

 

「少し待っていてください」

 

「……すま……ない……」

 

「謝らなくて大丈夫です」

 

 立ち上がる

 

 手元へ魔力を集める

 

「来い」

 

 魔剣が形を取る

 

「おっ、出た出た!」

 

 フリードが嬉しそうに笑い、光の剣を構えた

 

「んじゃ、始めようぜぇ!」

 

「そうだね」

 

 踏み込む

 

 剣同士がぶつかり、光と魔力が弾けて雨粒が吹き飛ぶ

 

「はっ!」

 

「おっと!」

 

 横薙ぎを避けたフリードが楽しそうに後ろへ跳ぶ

 

 追える

 

 でも追わない

 

「ん?」

 

「…………」

 

「来ねぇの?」

 

「君が僕をあの人から離したいだけなら、追う必要はないからね」

 

「…………へぇ」

 

 フリードの笑みが少し変わった

 

「前よりつまんねぇ奴になったなぁ!」

 

「それはどうも」

 

「褒めてねぇよ!」

 

 今度は向こうから来る

 

 光の剣を受けて逸らし、横から来た蹴りを一歩下がって避け、もう一本魔剣を作る

 

「二刀流ぅ!」

 

「悪い?」

 

「いいねぇ!」

 

 何度か刃がぶつかる

 

 フリードの動きは速い

 

 でも見える

 

 剣だけじゃない

 

 肩

 

 腰

 

 足

 

 視線

 

 そして背後で倒れている神父

 

 全部見る

 

「ならぁ!」

 

 フリードが大きく後ろへ飛ぶ

 

「これはどうよ!」

 

「…………!」

 

 取り出された剣を見た瞬間、胸の奥が熱くなる

 

 聖剣

 

「…………」

 

「あれぇ?」

 

 フリードが笑う

 

「その顔」

 

「…………」

 

「知ってんのかぁ?」

 

 手に力が入る

 

 頭の奥で、昔の光景が蘇る

 

 実験室

 

 仲間達

 

 苦しそうな声

 

 全部

 

「そうそう!」

 

 フリードが笑う

 

「もっと怒れよ!」

 

「…………」

 

「そんな綺麗な顔してねぇでさぁ!」

 

 聖剣

 

 壊したい

 

 今すぐ

 

 あれを

 

『でも、それで周りが見えなくなるな』

 

「…………」

 

 背後

 

 倒れている神父が視界に入る

 

「……ふぅ」

 

「あ?」

 

 息を吐く

 

「その聖剣を見たら、今でも腹が立つ」

 

「そりゃ良かった」

 

「壊したいとも思うよ」

 

「なら来いよ!」

 

「でも」

 

 魔剣を握り直す

 

「それしか見えなくなるほど、僕はもう子供じゃない」

 

「…………」

 

 フリードの顔から、一瞬だけ笑みが消える

 

「マジでつまんねぇ!」

 

 左手が動いた

 

「っ!」

 

 僕じゃない

 

 放たれた光の刃は、そのまま背後で倒れている神父へ向かう

 

「させない!」

 

 魔剣を投げる

 

 光の刃とぶつかり、雨の中で弾けた

 

「へぇ」

 

 フリードが笑う

 

「ちゃんと周り見えてんじゃん」

 

「ずっと言われてきたからね」

 

「誰によ?」

 

「しつこいくらいに言ってくる人がいるんだ」

 

「随分と賑やかであるな」

 

「――!」

 

 フリードが振り向く

 

 僕もそちらを見る

 

 雨の向こう

 

 一人の男が歩いてくる

 

 仮面

 

「オシュトル」

 

 仮面の男が僅かに頷く

 

 その瞬間だった

 

「……あ?」

 

 フリードが手にした聖剣を見る

 

 さっきまで周囲へ刺すように放たれていた力が、僅かに弱まった

 

「なんだぁ?」

 

 フリードが何度か剣を振る

 

「急に大人しくなりやがった」

 

「…………」

 

 僕も違和感に気付く

 

 それだけじゃない

 

 さっきより身体が軽い

 

 魔力の流れも、ほんの少しだけ滑らかになったような気がする

 

 オシュトルは倒れている神父へ一度視線を向け、それからフリードへ顔を向けた

 

「祐斗」

 

「うん」

 

「某がその者を預かろう」

 

「……お願い」

 

 オシュトルが負傷した神父の傍へ移動する

 

 これなら僕は前へ集中出来る

 

「手を出すつもりは?」

 

「今はない」

 

「そっか」

 

「これはそなたの戦いであろう」

 

「……ありがとう」

 

「ただし」

 

 オシュトルの声が少し低くなる

 

「怒るなとは言わん」

 

「…………」

 

「されど、怒りに使われるな」

 

 思わず笑った

 

「それ、今日二度目だよ」

 

「奇遇であるな」

 

「本当にね」

 

 絶対分かって言ってる

 

「おいおいおい」

 

 フリードが不満そうに声を上げる

 

「何勝手に話進めてんだよ」

 

 オシュトルがそちらへ仮面を向ける

 

「待たせたな」

 

「…………なんだよ、その変な仮面」

 

「貴殿が気にすることではない」

 

「ムカつくねぇ」

 

「否定はせぬ」

 

「余計ムカつくんだけどぉ!?」

 

 フリードが聖剣を握り直す

 

「つーか、なんかさっきからやりづれぇな」

 

「祐斗」

 

「うん?」

 

「前を見よ」

 

「……了解」

 

 今はフリードだ

 

 聖剣を見ても、もう視界は狭くならない

 

 仲間達のことも、守るべき人も、全部見たまま戦う

 

 僕は二本の魔剣を構え、フリードへ向き直った

 

「行くよ」

 

「来いやぁ!」

 

 同時に踏み込む

 

 聖剣と魔剣がぶつかる

 

 一度、二度、三度

 

 さっきより身体が動く

 

 ほんの僅かな違い

 

 でも剣を振る僕には分かる

 

 フリードの聖剣が右から来る

 

 受ける

 

 左手の光剣が伸びる

 

 身体を沈めて避け、そのまま一歩踏み込む

 

「ちっ!」

 

「そこ!」

 

 魔剣を振る

 

「危ねぇ!」

 

 フリードが大きく後ろへ跳ぶ

 

 逃がさない

 

 一歩追う

 

「――っと!」

 

 さらに後ろへ下がる

 

 追える

 

 でも視界の端

 

 オシュトルの傍にいる神父の呼吸が浅い

 

「…………」

 

「あばよ!」

 

 フリードが路地の奥へ飛び退く

 

「また遊ぼうぜぇ、剣士君!」

 

 追えば届く

 

 今ならまだ

 

「…………」

 

 魔剣を消す

 

「追わぬのか?」

 

 オシュトルの声

 

「……追いたいよ」

 

 僕は神父の傍へ膝をつく

 

「でも、今はこの人が先だ」

 

「左様か」

 

「すみません、大丈夫ですか?」

 

「…………」

 

 返事が弱い

 

「早く治療出来る場所へ連れていこう」

 

「うむ、参ろう」

 

 オシュトルが静かに頷く

 

「祐斗」

 

「何?」

 

「よく見えていた」

 

「…………」

 

 少しだけ笑う

 

「だから、ずっと言われてきたからね」

 

 雨はまだ降っていた

 

 でも、さっきまでより少しだけ音が遠く感じた

 

 side out 祐斗

 

 ──────────────────────

 

 side in ハク

 

 祐斗と別れた後、なんとなく嫌な予感がして途中から気配だけ追っていた

 

 あれだけ聖剣の話をした直後だ

 

 何かあってからじゃ遅い

 

 ただ、俺の姿で教会関係の奴と接触するのも面倒だったから、途中で仮面を出した

 

 結果として来て正解だったな

 

 祐斗は負傷した神父を背負い、俺達は雨の中を歩き始めた

 

 復讐心が消えたわけじゃない

 

 聖剣を見れば怒る

 

 壊したいとも思う

 

 それでも、目の前の怪我人を捨ててまで追わなかった

 

 成長したな

 

 それより

 

「…………」

 

 フリードの聖剣

 

 俺が近付いた途端、明らかに力の出方が変わった

 

 祐斗の動きも、僅かに良くなっていた気がする

 

 仮面を出した後だったし、今のところはこいつの影響だと思っておくか

 

 俺自身、この仮面について全部分かってるわけじゃない

 

 まあ、使えて困らないなら今はいい

 

 問題はフリードが持っていた聖剣

 

 そして、これから来るはずの二人

 

「……原作通りなら、次だな」

 

 ──────────────────────

 

 二日後

 

 空港

 

「……まだか?」

 

「さっきから何回目だ、それ」

 

 到着ロビーで、隣に立つイッセーがまた到着口を見る

 

「いや、分かってるけどさ、何年ぶりだと思ってんだよ」

 

「俺に聞くな」

 

「お前だって久しぶりだろ!」

 

「まあな」

 

 イリナから届いたメールでは、乗っている便はもう到着している

 

 後は手続きや荷物の受け取りを済ませて出てくるのを待つだけだ

 

「なあハク」

 

「今度は何だ」

 

「……本当に女なんだよな?」

 

「二日前から何回確認するんだよ」

 

「だって俺、ずっと男だと思ってたんだぞ!?」

 

「本人の前で言ったら俺は知らんからな」

 

「分かってるって!」

 

 信用出来ない

 

 それと

 

「…………」

 

「どうした?」

 

「いや、何でもない」

 

 視線は前へ向けたまま、意識だけを後ろへ回す

 

 一つ

 

 二つ

 

 三つ

 

 四つ

 

 家を出てしばらくした辺りから気付いていた

 

 朱乃

 

 クオン

 

 リアス先輩

 

 アーシア

 

 ……お前ら四人で何してんだよ

 

 朱乃とリアス先輩は出来るだけ気配を抑えている

 

 クオンも静かについてきてる

 

 アーシアは――

 

「…………」

 

 隠れてるつもりなんだろう

 

 多分

 

 普段ならイッセーも途中で気付くだろうけど、今日は到着口へ意識が向きっぱなしだ

 

 何より本人がイリナのことで頭いっぱいだからな

 

 少し離れた柱の方へ一瞬だけ視線を向ける

 

 アーシアが半分くらい身体を出していて、リアス先輩に慌てて引っ込められていた

 

 クオンはこっちを見ながら何とも言えない顔をしてるし、朱乃に至っては普通に楽しそうだ

 

 尾行向いてないだろ、お前ら

 

「ハク!」

 

「ん?」

 

「出てきたぞ!」

 

 イッセーの声に到着口を見る

 

 人の流れの中から二人の少女が歩いてくる

 

 一人は長い髪を二つに結んだ、見覚えのある少女

 

 昔より背も伸びてるし、顔立ちも大人びている

 

 それでも見間違えるはずがない

 

 その隣には青い髪の少女

 

 シンプルな私服姿で、片手にはスーツケース

 

 もう片方には、どう見てもゴルフバッグにしか見えない細長いケースを持っている

 

 あれがゼノヴィアか

 

「…………」

 

 イリナと目が合う

 

「…………」

 

 何故か止まった

 

「?」

 

 イリナが俺の顔をじっと見る

 

 次に頭から足元まで視線が動く

 

「……イリナ?」

 

「えっ」

 

 我に返ったらしい

 

「あ、いや、その……」

 

 少しだけ頬が赤い

 

「どうした?」

 

「な、何でもない!」

 

「?」

 

「ハク!」

 

 一気に表情が明るくなる

 

「ハクー! 久しぶりー!」

 

「おい、イリナ、荷物――」

 

 隣の少女が何か言うより先に走ってくる

 

「久しぶりー!」

 

「うおっ!?」

 

 そのまま勢いよく抱きつかれ、反射的に身体を支える

 

「…………っ」

 

 近い

 

 いや、近い近い

 

 昔なら何とも思わなかった

 

 小さい頃はこうして抱きつかれることだって普通にあったし、俺だって気にしたことはなかった

 

 でも、今は違う

 

 俺も高校二年生で

 

 イリナも、昔とは全然違う

 

 というか、待て

 

 落ち着け俺

 

 中身まで高校生になったわけじゃないだろ

 

 こういう時こそ冷静に――

 

「ハク! 本当に久しぶり!」

 

「お、おう! 分かった、分かったから少し落ち着け!」

 

「いいじゃん、久しぶりなんだから!」

 

「空港だぞ!」

 

「昔は普通にやってたでしょ?」

 

「それ何年前の話だよ!」

 

 駄目だ

 

 思ったより心臓がうるさい

 

 身体の方が先に反応して、頭が後から追いついてくる

 

 こういうの、転生してからたまにあるんだよな

 

 精神的には落ち着いてるつもりでも、身体までそうとは限らない

 

「…………」

 

 とにかく落ち着け

 

 いつも通りだ

 

 いつも通り

 

「…………ハク」

 

「何だよ」

 

 横から小声でイッセーが話しかけてくる

 

「分かるぞ」

 

「何が」

 

「その気持ち」

 

「だから何の話だよ」

 

「俺も毎朝、部長とかアーシアに動揺させられてるからな……」

 

「一緒にするな」

 

「いや絶対今動揺しただろ」

 

「してない」

 

「したって」

 

「してない」

 

「顔ちょっと赤――」

 

「黙れ」

 

「はい」

 

 何でこういう時だけ察しがいいんだよ

 

 少し離れた柱の方へ一瞬だけ目を向ける

 

「…………」

 

 朱乃が口元を隠しながら、明らかに楽しそうに笑っている

 

 クオンも目を少し細めて、俺をじっと見ていた

 

 ……何だよ、その顔

 

 まるで

 

『へぇ、こういうのは効くんだ』

 

 とでも言いたげなんだけど

 

 絶対後で何か言われる

 

 そんな確信だけはあった

 

「…………」

 

 ん?

 

 イリナの腕に巻かれている細い紐が、僅かに動いたような気がした

 

「……あれ?」

 

 イリナも腕を見る

 

「どうした?」

 

「今これ、ちょっと動かなかった?」

 

「紐が?」

 

「うん」

 

 イリナが首を傾げる

 

「気のせいかな?」

 

「じゃないか?」

 

「そうだよね」

 

「…………」

 

 今、確かに動いたように見えたぞ

 

 原作通りなら、あれは――

 

「…………」

 

「ハク?」

 

「何でもない」

 

「そっか」

 

 イリナがまた俺を見る

 

 今度は俺と目が合った瞬間、何故かさっと視線を逸らした

 

 それどころか、さっきまで抱きついていたのに半歩ほど離れる

 

「……?」

 

「な、何?」

 

「いや」

 

「何でもないなら見ないでよ!」

 

「お前が先に見てたんだろ」

 

「見てない!」

 

「どっちだよ」

 

 何なんだ

 

 少し離れた柱の方を見る

 

 朱乃とクオンが揃ってこっちを見ている

 

 朱乃は笑ってる

 

 クオンは何故か額を押さえてる

 

 リアス先輩はこっちよりイッセーを見ていて、アーシアだけが素直に目を丸くしていた

 

 本当に何しに来たんだよ

 

「で」

 

 イリナがようやく俺から完全に離れる

 

「イッセーも久しぶり!」

 

「お、おう」

 

 イッセーが固まっている

 

「久しぶり」

 

「何その反応?」

 

「…………」

 

「イッセー?」

 

「…………女だ」

 

「は?」

 

「イッセー!」

 

「いやだって、本当に女だったんだなって!」

 

「どういう意味!?」

 

「俺ずっと男だと思って――」

 

「言うなって言っただろ!」

 

「イッセーぇぇぇぇ!」

 

「待て! 昔の見た目が悪いんだって!」

 

「それ私に言う!?」

 

 だから信用出来なかったんだ

 

 その一方で、少し離れたところにいるリアス先輩の眉がぴくっと動いた

 

 アーシアも何故か少し頬を膨らませている

 

 ……なるほど

 

 そっちか

 

 朱乃は俺

 

 リアス先輩とアーシアはイッセー

 

 クオンは――

 

「…………」

 

 なんでクオンまでこっち見てるんだよ

 

「イリナ」

 

 落ち着いた声が聞こえた

 

「あ」

 

 イリナの表情が固まる

 

 青い髪の少女が、イリナの荷物まで一緒に持ってこちらへ歩いてきていた

 

「荷物を置いていくな」

 

「ご、ごめんゼノヴィア!」

 

「まったく」

 

 少女――ゼノヴィアが小さく息を吐く

 

「その二人が話していた幼馴染か?」

 

「うん!」

 

 イリナが俺達の間へ入る

 

「紹介するね、私の同僚のゼノヴィア!」

 

「ゼノヴィアだ、よろしく頼む」

 

「大神白(おおがみ はく)だ、よろしく」

 

「兵藤一誠だ、よろしく」

 

「ああ」

 

 ゼノヴィアは俺を見る

 

 次にイッセーを見る

 

「…………」

 

「何だ?」

 

「いや」

 

 僅かに目を細める

 

「妙に強い気を感じてな」

 

「俺が?」

 

「ああ」

 

 ゼノヴィアがもう一度イッセーを見る

 

「それに、少し変わった感じがする」

 

「昔から鍛えてるからな!」

 

 イッセーが少し得意げに胸を張る

 

「ハクん家の道場でずっと鍛えてんだ」

 

「そうそう!」

 

 イリナも頷く

 

「二人とも昔からやってたもんね!」

 

「まあな」

 

 気付いてないか

 

 今のイッセーから一番強く感じるのは、悪魔としての魔力じゃない

 

 何年も鍛えてきた気

 

 その奥にいる赤龍帝

 

 ドラゴンの気配だ

 

 今のこいつはそっちの主張が強すぎる

 

 その下に混ざった悪魔の気配だけを拾うのは、逆に難しいのかもしれない

 

「そういやイリナ」

 

「ん?」

 

「で、結局どこ行くんだ?」

 

「あ、それね!」

 

「メールじゃ秘密って言われてたからなぁ」

 

「ふふん」

 

 イリナが得意げに胸を張る

 

「聞いて驚きなさい!」

 

「おう」

 

「なんと!」

 

 一拍置いて

 

「駒王町よ!」

 

「…………」

 

「…………」

 

「どう!?」

 

 イッセーと顔を見合わせる

 

「駒王町かぁ」

 

「何その反応!」

 

「いや、驚いてるぞ」

 

「棒読み!」

 

「メールじゃ秘密って言われてたからなぁ」

 

「もっと驚いてよ!」

 

「無茶言うな」

 

「お前、昔住んでたところに戻ってくるだけじゃねぇか」

 

「だけって何よ!」

 

「俺達なんかずっと駒王町だぞ」

 

「知ってるよ!」

 

「じゃあ何で秘密にしたんだよ!」

 

「驚かせたかったの!」

 

「全然驚けねぇよ!」

 

「細かいことはいいの!」

 

「細かくねぇ!」

 

「つまり」

 

 ゼノヴィアが口を挟む

 

「イリナは、昔住んでいた町へ戻ることを幼馴染二人に秘密にして、驚かせようとしていたわけか」

 

「そう!」

 

「そして、あまり驚いてもらえなかった」

 

「そこまで言わなくていいよ!」

 

「事実だろう」

 

「ゼノヴィアまで!」

 

 相変わらずだな

 

「じゃあ俺達も駒王町に帰るところだし、一緒に帰ればいいじゃん」

 

 イッセーが言う

 

「本当!?」

 

「おう」

 

「やった!」

 

 イリナが笑う

 

「久しぶりに三人で話せるね!」

 

「ゼノヴィアもいるけどな」

 

「あ」

 

「私は気にしない」

 

「ごめん!」

 

「もう慣れた」

 

 扱いに慣れてるな

 

「じゃあ荷物一つ持つか?」

 

 俺がイリナの荷物へ手を伸ばす

 

「えっ!?」

 

「何だよ」

 

「だ、大丈夫!」

 

「二つあるだろ」

 

「自分で持てるから!」

 

「さっきゼノヴィアに置いてっただろ」

 

「今度は置かない!」

 

「そういう話じゃないんだけど」

 

「平気だから!」

 

「……?」

 

 なんで急に意地張ってんだ

 

「イリナ」

 

「何?」

 

「先程から彼を避けていないか?」

 

「避けてない!」

 

「そうか?」

 

「そう!」

 

「なら何故、彼が近付くたびに離れる?」

 

「…………」

 

「?」

 

「ゼノヴィアは黙ってて!」

 

「分からんな」

 

 俺も分からん

 

 その時

 

「……ん?」

 

 イッセーの表情が変わった

 

「どうした?」

 

「いや……」

 

 眉を寄せる

 

「なんか、さっきからちょっと嫌な感じがする」

 

「嫌な感じ?」

 

 イリナが首を傾げる

 

「具合悪いの?」

 

「そういうんじゃなくて……」

 

 イッセーが自分の胸元を軽く押さえる

 

「なんつーか、身体が近付きたくねぇって言ってるみたいな」

 

「声落とせ」

 

「あ、悪い」

 

 イッセーの視線がイリナへ向き

 

 次にゼノヴィア

 

 最後に、ゴルフバッグにしか見えない細長いケースで止まった

 

「特に、その辺」

 

「…………」

 

 ゼノヴィアが自分の荷物を見る

 

「これが?」

 

「多分」

 

「妙だな」

 

「何が?」

 

「いや」

 

 ゼノヴィアはそれ以上言わない

 

 俺もケースへ視線を向ける

 

 原作通りなら、中にあるのは――

 

 いや

 

 今は決めつけるな

 

「…………」

 

 一歩、ゼノヴィアの方へ近付く

 

「ハク?」

 

「ん?」

 

 イッセーが眉を寄せる

 

「……弱くなった」

 

「何が?」

 

「さっきの嫌な感じ」

 

「…………は?」

 

 さらに少し近付く

 

「やっぱり」

 

 イッセーが不思議そうに周囲を見る

 

「全然違う」

 

「…………」

 

 ゼノヴィアの目が細くなる

 

 ケースへ視線を落とし、次に俺を見る

 

「何だ?」

 

「いや……」

 

 珍しく即答しない

 

 少し離れた柱の方でも、さっきまでとは空気が変わっていた

 

 朱乃とリアス先輩が同時に細長いケースを見る

 

 アーシアも胸元へ手を添え、少し不安そうな顔をしている

 

 クオンだけは何も感じていないらしく、三人を見比べて首を傾げていた

 

 遊び半分でついてきた四人も気付いたか

 

 まあ、今ここで騒ぐことじゃない

 

 ここは空港だ

 

 一般人も多い

 

 ゼノヴィアも何かを確認する気はないらしい

 

「じゃあ行こう!」

 

 何も知らないイリナが明るく声を上げる

 

「久しぶりの駒王町だし!」

 

「用事で来たんだろ?」

 

「それとこれとは別!」

 

「相変わらずだな」

 

「何よ!」

 

 騒ぎながら、俺達は空港の出口へ向かう

 

 その後ろを、四つの知っている気配がまだついてくる

 

「…………」

 

 いつまで尾行するつもりなんだ、あいつら

 

 まあ、それは後でいい

 

 イリナ

 

 ゼノヴィア

 

 そして、二人が持ってきたもの

 

 ここまでは、俺の知っている流れに近い

 

 ただ

 

 さっきの反応だけは違う

 

 フリードの時にも、似たことが起きた

 

 あの時は仮面を出していた

 

 だから、仮面の影響だと思っていた

 

 でも

 

「…………」

 

 今は出してない

 

 それなのに、イッセーが感じていた嫌な気配は、俺が近付いた途端に明らかに弱くなった

 

 それに、イリナの腕にあったあの紐

 

 あれも俺に抱きついた時、確かに動いた

 

 もし、あれまで同じ理由だとしたら

 

「…………」

 

 まさか

 

 いや

 

 まだ決めつけるのは早いか

 

 また一つ

 

 原作にはなかったものが増えたな




祐斗、ちゃんと周りが見えるようになりました

原作では復讐心にかなり引っ張られていた聖剣編ですが、この世界では今までの積み重ねがあるので、同じようにはなりません

そしてハクの周りで何故か大人しくなる聖剣達

仮面を出している時だけなら仮面のせいで済んだんですが……

出してなくても大人しいんですよねぇ

おかしいなぁ(すっとぼけ)

そして久しぶりの幼馴染との再会

聖剣より先にハクへダメージを与えたのはイリナでした

精神的には大人でも、身体は多感な高校二年生

不意打ちは普通に効きます

本人は必死に平静を装っていますが、朱乃と久遠にはしっかりバレました

「あ、こういうの効くんだ」

多分二人ともそんな顔してます

そして何故かそこだけは妙に理解のあるイッセー

毎朝苦労してるからね、仕方ないね

次回、聖剣編本格突入!
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