ハイスクールDxD 〜うたわれるもの〜   作:フォートナー

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どうもフォートナーです!

前回、聖剣を巡る事件へ本格的に関わり始めたハク達

そして今回は――

検証します!

戦います!

聖剣もあります!

……うん

ここまでは普通ですね?

普通のはずなんです

聖剣を調べて、教会側の二人の実力を確認して、これからの事件に備える

それだけのはずだったんです

だったんですが……

ハクがいるので

当然、何かが起きます

しかも今回は本人が何もしてません

本当に何もしてません

なのに何故か周りがおかしくなっていきます

それではLife.25

どうぞ!


Life . 25 検証です!模擬戦です!なんで俺なんです!?

 俺はもう一度、ゼノヴィアの傍らに置かれたケースへ視線を向ける

 

「…………」

 

「どうした、大神(おおがみ)」

 

「いや」

 

「ゼノヴィア」

 

「何だ」

 

「そのケースの中身、聖剣なんだよな?」

 

「ああ」

 

 ゼノヴィアはあっさりと頷く

 

「見せてもらってもいいか?」

 

「構わない」

 

「いいのかよ」

 

「昨夜、お前の家にも置いていたものだ。今更隠す理由もない」

 

「それもそうか」

 

 ゼノヴィアがケースを床へ置き、留め具を外してゆっくりと蓋を開いた

 

「…………」

 

 中に収められていた聖剣を見る

 

「こいつは破壊の聖剣、エクスカリバー・デストラクション」

 

 ゼノヴィアが聖剣へ手を添える

 

「私が扱う聖剣だ」

 

 破壊の聖剣

 

 エクスカリバー・デストラクション

 

 原作通り

 

 やっぱりゼノヴィアが持っていたのはこれか

 

 ただ

 

「…………」

 

 静かだ

 

 聖剣だということは分かるし、神聖な力も感じる

 

 それなのに、妙に大人しい

 

「イッセー」

 

「ん?」

 

「今はどうだ?」

 

「どうって……」

 

 イッセーが聖剣を見る

 

「…………あ」

 

「やっぱりか?」

 

「ああ。空港で最初に感じた時より全然マシだ」

 

 やっぱり

 

「大神(おおがみ)」

 

「ん?」

 

 ゼノヴィアが聖剣から俺へ視線を移す

 

「少し聖剣から離れてくれ」

 

「…………」

 

「比較したい」

 

「俺を実験器具みたいに扱うな」

 

「だが、お前が最も分かりやすい変数だ」

 

「言い方!」

 

「ハク、頑張って」

 

「クオンまで乗るな!」

 

「見るだけだよ?」

 

「お前絶対楽しんでるだろ!」

 

「少しだけかな」

 

「否定しろ!」

 

「ハク、早く離れてみてよ!」

 

「イリナ、お前もか!」

 

「だって気になるじゃん!」

 

「…………」

 

 味方がいねぇ

 

「分かったよ!」

 

 俺はケースから一歩、二歩と距離を取り、そのまま部室の端まで移動する

 

「…………っ」

 

 最初に反応したのはイッセーだった

 

「来た」

 

「どうだ?」

 

「空港と同じだ。さっきより嫌な感じが強い」

 

 胸元を軽く押さえている

 

「神聖な力も強く感じられるわね」

 

 リアス先輩が聖剣を見つめる

 

「強くなった、というより」

 

 朱乃が目を細めた

 

「元に戻った、と考える方が自然でしょうか」

 

「そうだな」

 

 ゼノヴィアも頷く

 

「大神(おおがみ)、戻ってくれ」

 

「はいはい」

 

 再びケースへ近付いていく

 

「……弱くなった」

 

 イッセーがすぐに反応した

 

「やはりか」

 

 ゼノヴィアが俺を見る

 

「空港でもそうだった」

 

「気付いてたのか?」

 

「ケース越しだったから、あの時点では確証がなかった」

 

 なるほど

 

「今、何かしているのか?」

 

「何も」

 

「本当に何もしていないのか?」

 

「してない。俺はただここに立ってるだけだ」

 

「…………」

 

 ゼノヴィアが俺と聖剣を見比べる

 

「なら、お前が意図的に抑えているわけではないのか」

 

「少なくとも俺にそんな感覚はない」

 

「…………」

 

 少し考え込んだ後、ゼノヴィアが口を開く

 

「聖剣側が反応している可能性は?」

 

「聖剣側?」

 

「聖剣には使い手を選び、持ち主へ応える性質がある」

 

「…………」

 

 聖剣側

 

 そういう可能性もあるのか

 

 でも

 

 だとしたら何で俺に?

 

「あ!」

 

 イリナが声を上げる

 

「じゃあ私のも試してみる?」

 

「お前の?」

 

「うん!」

 

 イリナが腕へ手を伸ばす

 

 そこに巻かれていた紐

 

 空港で俺に抱きついた時、確かに動いたもの

 

「これも聖剣なんだよな?」

 

「そうだよ!」

 

 イリナが笑う

 

「擬態の聖剣、エクスカリバー・ミミック!」

 

 原作通りなら――

 

 やっぱりこれか

 

「じゃあ、さっきと同じように」

 

「うん!」

 

 イリナがミミックを解く

 

 紐だったものが形を変え、聖剣へと姿を変える

 

「…………」

 

「どう?」

 

「俺に聞かれてもな」

 

「イッセー!」

 

「俺!?」

 

「一番分かりやすいでしょ?」

 

「俺を測定器にするな!」

 

「さっきハクもやってたじゃん!」

 

「そういう問題じゃねぇ!」

 

「で?」

 

「…………さっきのゼノヴィアのと似てる」

 

 イッセーが顔を顰める

 

「でもハクが近くにいるから、やっぱりそこまでキツくねぇ」

 

「なら」

 

 少し離れてみる

 

「……強くなった」

 

「戻るぞ」

 

 近付く

 

「弱くなった」

 

「…………」

 

 同じか

 

「やっぱりハクじゃん!」

 

「俺に言うな」

 

「でも二本とも同じ反応だよ?」

 

「そうだな」

 

 偶然で片付けるには、少し厳しくなってきた

 

「…………」

 

「ん?」

 

 イリナの声に全員の視線が集まる

 

「ミミック?」

 

 イリナが持っている聖剣が僅かに震えていた

 

「どうした?」

 

「分かんない」

 

「お前の聖剣だろ」

 

「こんなの初めてだもん!」

 

 震えが強くなる

 

「おい」

 

「ちょ、ミミック?」

 

 その瞬間だった

 

 ミミックの形が崩れる

 

「え?」

 

「おい?」

 

 剣だったものが細く伸び、縮み、瞬く間に別の形へ変わっていく

 

 そして――

 

「…………鳥?」

 

 一羽の小さな鳥が、イリナの手の上にいた

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「何で?」

 

「私が聞きたいよ!」

 

 小鳥が首を傾げる

 

 イリナを見て、ゼノヴィアを見て

 

 そして俺を見る

 

「…………」

 

「何だよ」

 

「ピィ」

 

「鳴かれても分からん」

 

 小鳥が羽を広げる

 

「え?」

 

 ぱたぱたと飛び上がり

 

「おい?」

 

 真っ直ぐこっちへ来る

 

「ちょ、待――」

 

 ぽすっ

 

「…………」

 

 俺の肩に乗った

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「ミミック!?」

 

 イリナの叫びが響く

 

「何で!?」

 

「俺に聞くな!」

 

「ハク」

 

「何だ、クオン」

 

「懐かれたね」

 

「聖剣に!?」

 

「そうみたい」

 

「嬉しくねぇよ!」

 

 小鳥になったミミックは俺の肩から動こうとしない

 

 それどころか、ちょこちょこと足を動かして首元へ寄ってくる

 

「おい」

 

 頬に頭を擦りつけてきた

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「待て」

 

 何だこれ

 

「その子、そんなことしたことないんだけど!?」

 

「知らねぇよ!」

 

「返して!」

 

「俺に言うな!」

 

「ミミック!」

 

 イリナが両手を伸ばす

 

「戻っておいで!」

 

「…………」

 

 小鳥がイリナを見る

 

 そして

 

 ぷいっ

 

 反対側を向いた

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「ミミックぅぅぅぅぅぅ!?」

 

「俺のせいじゃねぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 その時だった

 

 ブワッ!

 

「っ!?」

 

 部室の空気が一変し、強い神聖な気配が一気に膨れ上がる

 

「な、何だ!?」

 

 イッセーが反射的に身構える

 

「これは……!」

 

 リアス先輩達の表情も変わった

 

 俺とゼノヴィアは、ほぼ同時に同じ場所を見る

 

「…………」

 

「…………」

 

 開いたケース

 

 その中に収められている聖剣

 

「おい」

 

 さっきまで静かだったはずのそれから、今は明らかに強い神聖な力が溢れている

 

「ゼノヴィア」

 

「ああ」

 

「お前、何かした?」

 

「何もしていない」

 

「じゃあ何で急に」

 

「ハク」

 

「ん?」

 

 クオンが俺の肩を見る

 

「もしかして、この子が原因じゃない?」

 

「…………」

 

 全員の視線が俺の肩へ集まる

 

 ミミックが首を傾げ、次にケースの中の聖剣を見る

 

「…………」

 

 ピィ

 

 小さく鳴いた

 

 ブワッ!

 

「強くなった!?」

 

 イッセーが叫ぶ

 

「……まさか」

 

 ゼノヴィアが目を細める

 

「対抗しているのか?」

 

「何に!?」

 

「ミミックに」

 

「何で!?」

 

「私に聞くな」

 

「お前の聖剣だろ!」

 

「私もこんな反応は初めてだ!」

 

「ゼノヴィアまで困惑してんじゃねぇか!」

 

「…………」

 

 肩のミミックは動かない

 

 次にケースを見るが、そっちも神聖な力が収まる気配はない

 

 いや

 

 まさか

 

「俺もってこと?」

 

 ブワッ!

 

「強くなった!?」

 

「反応したぞ!?」

 

「お前、聞こえてんのか!?」

 

 当然、返事はない

 

 ただケースの中から溢れる神聖な力だけが、さっきより明らかに強くなっている

 

「…………」

 

 俺の肩では、ミミックが満足そうに羽を畳んでいた

 

 何だこれ

 

「ハク」

 

「何だ、クオン」

 

「人気者だね」

 

「聖剣にモテても嬉しくねぇよ!!」

 

「いや、ハク……!」

 

 イッセーの声が飛んでくる

 

「今度は何だよ!」

 

「笑ってる場合じゃねぇ!」

 

「笑ってねぇよ!」

 

「これ、マジでキツい!」

 

「え?」

 

 振り返ると、イッセーが胸元を押さえて明らかに顔を顰めていた

 

「これは……さすがに強すぎるわね」

 

 リアス先輩も眉を寄せている

 

「ええ……」

 

 朱乃も普段の笑みを消していた

 

「だ、大丈夫です……」

 

 アーシアも苦しそうに胸元へ手を添えている

 

「いや、大丈夫じゃないだろ」

 

「……兄さま」

 

 白音が低い声で俺を呼ぶ

 

「はい」

 

「何とかしてください」

 

「俺!?」

 

「ハク君……」

 

「祐斗まで!?」

 

 祐斗も苦笑どころではない顔をしている

 

「いや待て、何で俺!?」

 

「ハクが原因だからじゃない?」

 

「クオン!?」

 

「正確にはハク君が原因というより、ハク君に反応している聖剣が原因だと思うけどね」

 

「冷静に分析するな祐斗!」

 

「ハ、ハク!」

 

 イッセーが顔を顰めたまま俺を指差す

 

「何でもいいから何とかしてくれ!」

 

「俺にどうしろってんだよ!」

 

「知らねぇよ! でもそいつらお前に反応してんだろ!」

 

「無茶言うな!」

 

 とはいえ、確かにこのままには出来ない

 

 ケースの中では破壊の聖剣から相変わらず強い神聖な力が溢れ、肩のミミックは我関せずとばかりに羽を畳んでいる

 

「…………」

 

 効くのか?

 

 いや

 

 他に思いつかん

 

「分かったから!」

 

 ケースと肩のミミックを見る

 

「お前ら、一旦大人しくしろ!」

 

 その瞬間

 

 すっ――

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 部室を満たしていた神聖な圧力が消えた

 

「……は?」

 

 イッセーが固まる

 

 リアス先輩も目を見開いていた

 

「治った……」

 

 アーシアが胸元から手を離す

 

「……楽になりました」

 

「私もです」

 

 白音も小さく息を吐く

 

「…………」

 

 ケースを見る

 

 静かだ

 

 さっきまでの自己主張は何だったんだと言いたくなるくらい静かになっている

 

 肩のミミックも大人しくしていた

 

「…………」

 

 いや

 

 待て

 

「…………え?」

 

 俺が言ったから?

 

 いや

 

 本当に?

 

「大神(おおがみ)」

 

「何だ」

 

「今、何をした?」

 

「何もしてない」

 

「だが止まった」

 

「俺も見てたから分かる!」

 

「では何故だ」

 

「俺が聞きてぇよ!」

 

「ハク」

 

「今度は何だ、クオン」

 

「言うこと聞いたね」

 

「…………」

 

「二本とも」

 

「言うな」

 

「でも」

 

「言うな!」

 

 嫌な予感しかしない!

 

「…………」

 

 とりあえず肩を見る

 

 ミミックはまだいる

 

「お前も」

 

「ピィ?」

 

「イリナのところに戻ってくれ」

 

「…………」

 

 ミミックが俺を見る

 

「頼むから」

 

「…………」

 

 イリナを見る

 

「ミミック!」

 

 イリナが両手を広げる

 

「おいで!」

 

「…………」

 

 俺を見る

 

 イリナを見る

 

 また俺を見る

 

「何でそんな嫌そうなんだよ!」

 

「ハク!」

 

「俺に怒るな!」

 

「だって!」

 

「俺だって困ってんだよ!」

 

「…………ピィ」

 

 ものすごく渋々と

 

 本当にものすごく渋々と

 

 ミミックが俺の肩から飛び立った

 

 ぱたぱたと部室を横切り

 

「ミミック!」

 

 イリナの差し出した腕へ着地する

 

「よかったぁ!」

 

 イリナが嬉しそうに小鳥を抱き寄せる

 

 ミミックはされるがままになっている

 

 ただ

 

 こっち見てる

 

「何でまだ俺見てんだよ」

 

「ピィ」

 

「返事するな!」

 

「ハク」

 

「何だよ!」

 

 クオンがケースとミミック、それから俺を順番に見る

 

「やっぱり人気者だね」

 

「だから聖剣にモテても嬉しくねぇって!!」

 

「……とにかく」

 

 リアス先輩が小さく息を吐く

 

「これ以上の検証はやめておきましょう」

 

「賛成ですわ」

 

 朱乃も頷く

 

「近くにいるだけでこれですもの。直接触れた時に何が起きるか分かりませんわ」

 

「俺も触りたくない」

 

「大神(おおがみ)」

 

「何だよ」

 

「直接持てば、よりはっきりするかもしれない」

 

「ゼノヴィア?」

 

「後で試せばいい」

 

「試さねぇよ!」

 

「何故だ」

 

「今ので十分嫌な予感しかしないからだよ!」

 

「残念だ」

 

「何でお前が残念そうなんだよ!」

 

「話を戻しましょう」

 

 リアス先輩の声で、少しだけ空気が引き締まる

 

 盗まれたエクスカリバー

 

 教会から来たイリナとゼノヴィア

 

 そして

 

 先に来ていた教会の人間は、既に襲われている

 

「改めて言っておく」

 

 ゼノヴィアが俺たちを見る

 

「盗まれた聖剣の回収は、私たち教会側の問題だ」

 

「…………」

 

「悪魔であるお前たちに協力を求めるつもりはない」

 

 まあ

 

 そうなるよな

 

 今の教会と悪魔

 

 それに堕天使の関係を考えれば、当然と言えば当然だ

 

「けどさ」

 

 俺はゼノヴィアを見る

 

「先に来てた教会の人間は襲われてるんだろ?」

 

「ああ」

 

「それで相手は盗まれたエクスカリバーを持ってる」

 

「ああ」

 

「二人だけで大丈夫なのか?」

 

「問題ない」

 

「即答かよ」

 

「私もイリナも、聖剣を扱うための訓練を受けている」

 

「それは分かるけど」

 

 俺は少し考える

 

「最低でも祐斗くらい動けるなら、そう簡単にはやられないと思うんだけどな」

 

「僕?」

 

 祐斗が自分を指差す

 

「目安だよ」

 

「なるほど」

 

「…………」

 

 ゼノヴィアが祐斗を見る

 

「木場が強いことは分かる」

 

「ありがとう」

 

「だが、実際に剣を交えたことはない」

 

「まあ、そうだな」

 

「故に基準には出来ない」

 

「じゃあ」

 

 俺は二人を見る

 

「やってみるか?」

 

「何をだ?」

 

「模擬戦」

 

「…………」

 

「祐斗とイリナ」

 

「私!?」

 

「それと」

 

 ゼノヴィアを見る

 

「俺とお前」

 

「ほう」

 

「お互いどれくらい動けるか分かれば、少なくとも話は早いだろ」

 

「私は構わない」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

 イリナが祐斗を見る

 

「私、木場くんと!?」

 

「僕は構わないよ」

 

「即答!?」

 

「模擬戦だからね」

 

「そうだけど!」

 

「決まりだな」

 

「ハク!?」

 

「学校じゃ出来ないし」

 

 俺は鞄を持つ

 

「うちの道場使うぞ」

 

     ◇ ◇ ◇

 

 放課後

 

 場所はうちの道場

 

「広いねぇ」

 

 イリナが辺りを見回している

 

「ハクの家、こんなのまであるんだ」

 

「昔から使ってるからな」

 

「いい道場だ」

 

 ゼノヴィアは床や壁を見ながら頷く

 

「手入れもされている」

 

「そりゃどうも」

 

 道場の端にはリアス先輩たちも集まっている

 

 イッセー

 

 アーシア

 

 朱乃

 

 祐斗

 

 黒歌

 

 白音

 

 それにクオン

 

 結局、全員ついてきた

 

「じゃあ最初は」

 

 俺は祐斗とイリナを見る

 

「イリナと祐斗だな」

 

「よーし!」

 

 イリナが腕を回す

 

「こうなったらやってやるんだから!」

 

「よろしく、イリナさん」

 

「こっちこそ!」

 

 イリナが腕へ手を伸ばす

 

「ミミック!」

 

「…………」

 

「ミミック?」

 

「…………」

 

 紐状に戻っていたミミックは動かない

 

 ただ

 

 先端だけが

 

 俺の方を向いている

 

「…………」

 

「…………」

 

「ミミック?」

 

 ぴくっ

 

「私が持ち主なんだけど!?」

 

 ぷいっ

 

「また!?」

 

「まだ拗ねてるんじゃないか?」

 

「誰のせいだと思ってるの!?」

 

「俺じゃない!」

 

「ハクのせいだよ!」

 

「何で!?」

 

「ミミックがハクから離れたくなかったからでしょ!」

 

「それ俺のせい!?」

 

「もう!」

 

 イリナがミミックを掴む

 

「ミミック、仕事!」

 

 瞬間

 

 紐が光る

 

 形が変わり、一本の聖剣へ

 

「仕事はするんだな」

 

「当然でしょ!」

 

「随分と切り替えが早い聖剣だな」

 

「うるさい!」

 

 祐斗も魔力を集中させる

 

 その手に生み出されたのは、いつもの魔剣

 

 聖魔剣じゃない

 

 普通の魔剣だ

 

「準備は?」

 

「いつでも!」

 

「僕も大丈夫だよ」

 

「じゃあ――」

 

 二人を見る

 

「始め!」

 

 先に動いたのはイリナだった

 

「はぁっ!」

 

 踏み込みが速い

 

 ミミックが横薙ぎに振るわれる

 

 祐斗は半歩下がって躱した

 

「まだ!」

 

 イリナがそのまま回転する

 

 二撃目

 

 祐斗の魔剣とミミックがぶつかる

 

 甲高い音が道場へ響いた

 

「っ!」

 

「……!」

 

 祐斗が僅かに目を細める

 

 イリナは止まらない

 

 弾かれた勢いを利用して一歩踏み込み、そのまま斜め下から斬り上げる

 

「へぇ」

 

 思ったより

 

 いや

 

 普通に強いな

 

「やるね」

 

「まだまだ!」

 

 祐斗が笑う

 

 次の瞬間

 

 姿がぶれた

 

「っ!?」

 

 イリナが反応する

 

 右

 

 左

 

 背後

 

「そこ!」

 

 振り向きざまにミミックを振るう

 

「惜しい」

 

「なっ!?」

 

 祐斗が一歩だけ外へずれている

 

 そこから魔剣が伸びる

 

「くっ!」

 

 イリナが受ける

 

 一撃

 

 二撃

 

 三撃

 

 今度は祐斗が押す

 

「まだぁ!」

 

 イリナも食らいつく

 

 ミミックを振り上げ、祐斗の魔剣を弾く

 

 そのまま踏み込む

 

「もらった!」

 

「うん」

 

 祐斗が微笑む

 

「途中までは良かったよ」

 

「え?」

 

 ミミックが僅かに逸れた

 

「っ!?」

 

 祐斗の魔剣が、ミミックの腹を滑らせるように軌道を変えた

 

 イリナの体勢が崩れる

 

 その懐へ祐斗が入る

 

「…………」

 

 魔剣の切っ先が

 

 イリナの首元で止まった

 

「そこまで」

 

 俺は手を上げる

 

「勝者、祐斗」

 

「うぅぅぅぅ!」

 

 イリナが悔しそうに声を上げる

 

「あとちょっとだったのに!」

 

「危なかったよ」

 

「本当!?」

 

「うん。途中までは」

 

「途中までは!?」

 

「あ」

 

「木場くぅぅぅん!?」

 

「ご、ごめん!」

 

「すごいですね……!」

 

 アーシアがぱちぱちと手を叩く

 

「二人とも、とても速かったです!」

 

「うぅ……ありがとう、アーシアちゃん」

 

「…………」

 

 ゼノヴィアが祐斗を見る

 

「確かに強いな、木場」

 

「ありがとう」

 

「それに」

 

 ゼノヴィアの視線が祐斗の魔剣へ向く

 

「聖剣を前にしても動きが鈍らない」

 

「まあね」

 

「お前は聖剣を憎んでいるのだろう?」

 

「うん」

 

「それでも戦えるのか?」

 

「戦えるよ」

 

 祐斗は迷わず答える

 

「今、僕の前にいるのはイリナさんだからね」

 

「…………」

 

「……そうか」

 

 ゼノヴィアはそれ以上何も言わなかった

 

「もう一回!」

 

「イリナ」

 

「だって!」

 

「次があるから」

 

「うぅ……」

 

 イリナが渋々ミミックを戻す

 

「ミミックも!」

 

「…………」

 

「何で負けたのにそっち向いてるの!?」

 

 紐の先端が

 

 また俺を向いている

 

「知らん!」

 

「ハクぅぅぅぅぅ!」

 

「だから俺に怒るな!」

 

     ◇ ◇ ◇

 

「次だ」

 

 ゼノヴィアがケースを開く

 

 破壊の聖剣へ手を伸ばす

 

 握った瞬間

 

 ふわっ

 

 神聖な力が僅かに膨らんだ

 

「…………」

 

「どうした?」

 

「いや」

 

 ゼノヴィアが聖剣を見る

 

「随分と機嫌がいいな」

 

「分かるのか?」

 

「長く使っているからな」

 

「そういうもんなのか」

 

「ああ」

 

「ハク」

 

 リアス先輩が俺を見る

 

「本当に大丈夫?」

 

「多分」

 

「多分なの?」

 

「さっきの感じなら、俺が近くにいるとむしろ大人しくなるみたいだし」

 

「それが逆に気になるのだけれど」

 

「俺もです」

 

「ならやめてもいいのよ?」

 

「いや」

 

 ゼノヴィアを見る

 

「ここまで来たらやります」

 

「そう」

 

「危ないと思ったら止めてください」

 

「分かったわ」

 

「僕が審判をするよ」

 

 祐斗が前へ出る

 

「頼む」

 

「大神(おおがみ)」

 

「何だ」

 

「手加減は不要だ」

 

「模擬戦だからする」

 

「…………」

 

「何だよ」

 

「いや」

 

「絶対何か言いたかっただろ」

 

「二人とも」

 

 祐斗が苦笑する

 

「準備は?」

 

「いつでも」

 

「私もだ」

 

「それじゃあ――」

 

 祐斗が手を上げる

 

「始め!」

 

「…………」

 

「…………」

 

 すぐには動かない

 

 ゼノヴィアもこっちを見ている

 

 俺も見る

 

「ハク」

 

「ん?」

 

「負けないでね」

 

「誰に言ってんだ」

 

「ゼノヴィアちゃんに」

 

「そっち!?」

 

「聖剣にはもう負けてるけど」

 

「クオン!?」

 

「っ!」

 

 ゼノヴィアが踏み込んだ

 

「おわっ!?」

 

 聖剣が横薙ぎに迫る

 

 咄嗟に後ろへ跳ぶ

 

「危なっ!」

 

「戦闘中に余所見をする方が悪い」

 

「正論だけど!」

 

「来るぞ、ハク君!」

 

「分かってる!」

 

 再び迫る破壊の聖剣を見ながら、俺は余計なことを考えるのをやめた

 

「っ!」

 

 踏み込む

 

 ゼノヴィアが振り下ろした聖剣を半身になって躱し、そのまま懐へ入る

 

「甘い!」

 

 即座に柄が返ってくる

 

「っと」

 

 顔面を狙った一撃を首を傾けて避け、そのままゼノヴィアの手首を取った

 

「っ!」

 

「遅い」

 

 軽く引く

 

 体勢を崩したゼノヴィアが踏ん張ろうとするが、その足を払う

 

「なっ!?」

 

 倒れる寸前で腕を離すと、ゼノヴィアは床へ手をついて体勢を立て直した

 

「…………」

 

「一本でいいだろ、今の」

 

「まだ倒れていない」

 

「模擬戦だぞ!?」

 

「立っている」

 

「お前さっきから判定厳しくない!?」

 

「私はまだ負けを認めていない」

 

「そういう問題!?」

 

 言い終わるより早く、ゼノヴィアが再び踏み込んでくる

 

「はっ!」

 

 横薙ぎを避け、返しも躱す

 

 続く突きを半歩ずれてやり過ごす

 

 速いし、一撃も重い

 

 剣筋も素直に綺麗だ

 

 ただ――もう見える

 

「っ!」

 

 振り下ろされた聖剣の横を抜け、そのまま背後へ回る

 

「なっ!?」

 

 ゼノヴィアが振り返るより先に、指先を首筋へ当てた

 

「二本目」

 

「…………」

 

「これは文句ないだろ」

 

「…………」

 

「おい」

 

「もう一度だ」

 

「聞けよ!」

 

「もう一度だ!」

 

「何でちょっとムキになってんだよ!」

 

「なっていない!」

 

「なってるよね?」

 

 クオンが楽しそうに笑っている

 

「クオン、煽るな」

 

「事実を言っただけだよ?」

 

「それを煽ってるって言うんだよ!」

 

「余所見をするな!」

 

「お前もそれ気に入ったの!?」

 

 聖剣が迫る

 

 一撃、二撃と続く斬撃を躱し、三撃目を半歩下がってやり過ごす

 

 やっぱり強い

 

 踏み込みも速く、迷いもない

 

 何より一撃が重い

 

 まともに受ければ、模擬戦でも洒落にならん

 

 ただ、何度か打ち合ったことでタイミングも分かってきた

 

「そこ」

 

「っ!?」

 

 振り下ろされた聖剣の内側へ入り、肘を軽く押して剣筋を逸らす

 

 空いた肩を押せば、ゼノヴィアの体が半回転した

 

 その背中へ掌を当てる

 

「三本目」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「ゼノヴィア?」

 

「分かっている!」

 

「何で怒られた!?」

 

「ハク」

 

「何だよ」

 

「楽しそうだね」

 

「どこが!?」

 

「ゼノヴィアちゃん」

 

「何だ」

 

「顔、怖いよ?」

 

「元からだ」

 

「ゼノヴィア!?」

 

「イリナは黙っていろ!」

 

「私まで!?」

 

 ゼノヴィアが聖剣を握り直す

 

「…………」

 

 さっきより力が入ってないか?

 

「大神(おおがみ)」

 

「何だ」

 

「もう一度だ」

 

「まだやるの?」

 

「当然だ」

 

「いや、実力はもう十分――」

 

「もう一度だ」

 

「…………」

 

「もう一度だ」

 

「二回言った」

 

「ハク」

 

「何だクオン」

 

「やってあげたら?」

 

「何でちょっと可哀想な子を見る目になってんだよ!」

 

「なってないよ?」

 

「絶対なってる!」

 

「早くしろ」

 

「はいはい!」

 

 仕切り直す

 

 今度は俺から踏み込んだ

 

「っ!」

 

「来い!」

 

 横薙ぎを体を沈めて躱す

 

 頭上を通過した聖剣が即座に返ってくるが、それも右へ避け、そのまま間合いを詰める

 

「くっ!」

 

 ゼノヴィアが下がる

 

 追う

 

 もう一度返ってきた聖剣を外へ流し、そのまま手首へ触れた

 

「四本――」

 

「まだだ!」

 

「おわっ!?」

 

 言い切るより早く、ゼノヴィアが腕を強引に振り抜いた

 

 技も何もない

 

 完全に力任せだ

 

 そのまま俺の手まで振りほどかれる

 

「お前!」

 

「まだ当たっていない!」

 

「触っただろ!」

 

「触っただけだ!」

 

「さっきまでの判定どこ行った!?」

 

「知らん!」

 

「知らん!?」

 

「ふふっ」

 

「笑うなクオン!」

 

 ったく

 

 それでも、もう大体は分かった

 

 何度か打ち合えば、次にどう動くかも見えてくる

 

 次も――

 

「はぁぁぁっ!」

 

 来た

 

 上段

 

「…………」

 

 これも見た

 

 振り下ろしから、避けた方向へ返す

 

 なら最初から外へ――

 

「っ!」

 

 半歩ずれる

 

 聖剣が振り下ろされる

 

 ここから返しが――

 

「おおおおっ!」

 

「…………は?」

 

 剣が来ない

 

 代わりに

 

 ゼノヴィア本人が来た

 

「ちょっ!?」

 

 聖剣を振り切った勢いのまま、体ごと突っ込んでくる

 

「何して――」

 

 がしっ!

 

「は!?」

 

 左手で制服の胸元を掴まれた

 

「捕まえた!」

 

「お前何してんの!?」

 

「これなら避けられん!」

 

「お前それ剣術じゃねぇだろ!?」

 

「当てればいい!」

 

「開き直った!?」

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 そのまま力任せに引き寄せられる

 

「うおっ!?」

 

 待て

 

 強っ!

 

 こいつ普通に力強ぇ!

 

「離せ!」

 

「断る!」

 

「模擬戦だぞ!」

 

「知っている!」

 

「だったら剣で勝負しろ!」

 

「剣を当てるために捕まえた!」

 

「そういう意味じゃねぇ!!」

 

「ゼノヴィア!?」

 

 イリナの声が飛んでくる

 

「それありなの!?」

 

「禁止されていない!」

 

「確かに!」

 

「納得するなイリナ!」

 

 まずい

 

 この距離じゃ、振られた瞬間に入る

 

「…………」

 

 いや

 

 外せる

 

 だが、ここから強引に崩せばゼノヴィアを投げる形になる

 

 模擬戦でそこまで――

 

「取った!」

 

「っ!」

 

 判断した一瞬を、ゼノヴィアは逃さなかった

 

 右腕が動く

 

 近すぎる

 

 この体勢じゃ避けられない

 

 今度こそ、本当に入る――

 

 その瞬間

 

 聖剣から神聖な力が

 

 すっ

 

 と消えた

 

「…………え?」

 

 それだけじゃない

 

 刃に乗っていた力まで、俺へ触れる寸前に抜け落ちる

 

 ゼノヴィアの目が僅かに見開かれた

 

 それでも剣は止まらない

 

 軌道も完璧

 

 俺の肩へ

 

 正真正銘

 

 一撃が入った

 

 ぽこっ

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 道場から

 

 音が消えた

 

「…………え?」

 

 俺は自分の肩を見る

 

 痛くない

 

 いや

 

 それどころか

 

「…………」

 

 今

 

 ぽこって言った?

 

「…………」

 

 ゼノヴィアが聖剣を見る

 

 俺を見る

 

 もう一度、聖剣を見る

 

「…………」

 

 目元が

 

 ほんの少しだけ潤んだ

 

「…………今のは入った」

 

「え?」

 

「完全に入った」

 

「いや」

 

「手応えもあった」

 

「俺に言われても」

 

「入ったんだ」

 

「分かった! 分かったから!」

 

「…………」

 

 ゼノヴィアが聖剣を見る

 

「何故だ」

 

「俺が聞きたい」

 

「今のは私の一撃だった」

 

「うん」

 

「完全に捕まえた」

 

「うん」

 

「逃げ道も潰した」

 

「うん」

 

「なのに」

 

「…………」

 

「何故ぽこっと鳴った」

 

「自分で言った!?」

 

「言うなぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 イリナが耐えきれず叫んだ

 

「だ、だって! ぽこって! 今、ぽこって!」

 

「言うな!!」

 

「でも!」

 

「言うな!!」

 

「ゼノヴィア、ちょっと涙目――」

 

「イッセー!」

 

「はい!」

 

「それ以上言うな!」

 

「はい!!」

 

「…………」

 

 クオンが俺の肩を見る

 

「ハク」

 

「何だ」

 

「痛かった?」

 

「全然」

 

「…………っ!」

 

「ハク!」

 

「何で俺が怒られんの!?」

 

「少しくらい痛がれ!」

 

「無茶言うなよ!?」

 

「完全に入ったんだぞ!」

 

「だから俺に言われても!」

 

 ゼノヴィアが悔しそうに聖剣を見る

 

「…………」

 

 俺も見る

 

「お前」

 

 破壊の聖剣へ指を向ける

 

「今わざとやっただろ」

 

「…………」

 

 返事はない

 

 当然だ

 

 ただ

 

 ふわっ

 

 ほんの僅かに

 

 聖剣から神聖な光が漏れた

 

「…………」

 

「…………」

 

「今反応したよな?」

 

「気のせいだ」

 

「ゼノヴィア?」

 

「気のせいだ」

 

「二回言ったぞ」

 

「私の聖剣だ!!」

 

「分かったから泣くな!」

 

「泣いてない!!」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 しばらく誰も何も言わなかった

 

 いや

 

 言えなかった

 

 ゼノヴィアが破壊の聖剣を見ている

 

 破壊の聖剣も、当然ながら何も言わない

 

「…………」

 

 ただ、さっきまで妙に機嫌が良さそうだった神聖な気配だけは綺麗に大人しくなっている

 

「…………」

 

「ゼノヴィ――」

 

「話を戻す」

 

「はい」

 

 食い気味だった

 

 ゼノヴィアが破壊の聖剣をケースへ戻す

 

 ぱたん

 

 蓋を閉じる

 

「…………」

 

 目元がまだ少し赤い

 

「何だ」

 

「いや」

 

「何でもないなら見るな」

 

「まだ何も言ってないだろ」

 

「目が言っている」

 

「ハク」

 

「何だ、クオン」

 

「まだちょっと赤いよ」

 

「クオン!?」

 

「…………」

 

 ゼノヴィアの視線がクオンへ向く

 

「何かな?」

 

「…………いや」

 

 諦めた

 

「それで」

 

 ゼノヴィアが俺たちを見回す

 

「先程は、今回の任務について必要最低限のことしか話さなかった」

 

「やっぱりまだ何かあったのか」

 

「ああ」

 

「何で今になって?」

 

「…………」

 

「ゼノヴィア?」

 

「必要だと判断した」

 

「模擬戦して?」

 

「必要だと判断した」

 

「二回言った」

 

「黙れ」

 

「はい」

 

 怖い

 

「お前たちの実力は理解した」

 

 ゼノヴィアが続ける

 

「少なくとも、何も知らないまま放置しておく方が危険だと判断した」

 

「なるほど」

 

 そこは真面目な理由らしい

 

「まず」

 

 ゼノヴィアがケースへ手を置く

 

「エクスカリバーについてだ」

 

「…………」

 

「かつて一本だったエクスカリバーは破壊され、その後、七本の聖剣として再生された」

 

 七本

 

 やっぱりそこは同じか

 

「現在、そのうち一本は所在が分からなくなっている」

 

「残りは?」

 

「六本」

 

 ゼノヴィアが答える

 

「カトリック、プロテスタント、正教会」

 

 三つ

 

「それぞれが二本ずつ管理していた」

 

「……いた?」

 

 イッセーが聞き返す

 

「ああ」

 

 ゼノヴィアの表情が僅かに険しくなる

 

「今回、その三教会から一本ずつが奪われた」

 

「一本ずつ……」

 

「つまり」

 

 祐斗が静かに口を開く

 

「盗まれた聖剣は三本」

 

「その通りだ」

 

「…………」

 

 三本

 

 ここも原作通り

 

「イリナ」

 

「うん」

 

 イリナもさっきまでの騒がしさを消していた

 

「私たちは、その三本を取り戻すために日本へ来たの」

 

「回収が第一」

 

 ゼノヴィアが続ける

 

「だが、それが不可能であると判断した場合は――」

 

 一瞬

 

 間が空く

 

「破壊する」

 

「…………」

 

 イッセーが息を呑んだ

 

「聖剣を?」

 

「ああ」

 

「取り戻せないなら壊すってことか?」

 

「敵の手に残すよりはいい」

 

「…………」

 

 ゼノヴィアらしいと言えば、らしい

 

「そして」

 

 ゼノヴィアの声が一段低くなる

 

「奪った者についても、既に判明している」

 

「…………」

 

 来た

 

 分かっている

 

 原作通りなら

 

 ここで出てくる名前は――

 

「コカビエル」

 

「…………」

 

 道場の空気が変わった

 

「コカビエル……?」

 

 イッセーが眉を寄せる

 

「グリゴリの幹部よ」

 

 リアス先輩の表情から、さっきまでの柔らかさが消えていた

 

「…………」

 

 コカビエル

 

 やっぱり

 

 ここも原作通り

 

「ちょっと待てよ」

 

 イッセーがゼノヴィアを見る

 

「そんな奴が相手なのに、お前ら二人だけで行くつもりだったのか?」

 

「ああ」

 

「問題ないって言ってたよな!?」

 

「言った」

 

「相手、幹部なんだろ!?」

 

「だから何だ」

 

「だから何だじゃねぇよ!」

 

「私たちの任務だ」

 

「そういう問題か!?」

 

「そういう問題だ」

 

「…………」

 

 こいつ

 

 本気で言ってる

 

「ゼノヴィア」

 

「何だ、大神(おおがみ)」

 

「さっきの模擬戦やってよかったわ」

 

「…………」

 

「何だよ」

 

「お前に言われると腹が立つな」

 

「何で!?」

 

「何でもだ」

 

「理不尽!」

 

「でも」

 

 クオンが小さく笑う

 

「ハクの言ってることは間違ってないかな」

 

「クオン」

 

「相手がそんなに強いなら、二人だけで行くのは危ないよ」

 

「…………」

 

 ゼノヴィアは答えない

 

 代わりにイリナが少し困ったように笑った

 

「私たちだって、何も考えずに突っ込むつもりじゃないよ?」

 

「ゼノヴィアは?」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「ゼノヴィア?」

 

「状況に応じて判断する」

 

「今ちょっと間があったぞ」

 

「気のせいだ」

 

「お前今日それ多くない?」

 

「気のせいだ」

 

「また二回言った」

 

「黙れ」

 

「はい」

 

 でも

 

 冗談を言っていられるのも、ここまでだ

 

 コカビエル

 

 原作を知っている俺からすれば、この名前が出た時点で無視なんて出来ない

 

「…………」

 

 祐斗を見る

 

 祐斗は何も言わず、ゼノヴィアのケースを見ていた

 

 表情は落ち着いている

 

 少なくとも、昔みたいに聖剣という言葉だけで自分を見失うことはない

 

 でも

 

 だからといって

 

 あの日のことが消えたわけじゃない

 

 原作通りなら

 

 この先で出てくるのは――

 

「…………」

 

 いや

 

 まだだ

 

 俺が知っているからといって、この世界でも同じことが起きると決まったわけじゃない

 

 三本のエクスカリバー

 

 コカビエル

 

 既に襲われた教会側の人間

 

 今ある情報だけでも、警戒するには十分だ

 

 それに

 

「…………」

 

 ゼノヴィアのケースを見る

 

 俺が近くにいるだけで、聖剣の様子まで変わっている

 

 原作にはなかったことも

 

 もう起きている

 

「ハク?」

 

「ん?」

 

 クオンの声で意識を戻す

 

「難しい顔してる」

 

「そりゃするだろ」

 

「そうかな」

 

「するよ!」

 

「でも」

 

 クオンが少しだけ首を傾げる

 

「さっきよりはマシかな」

 

「何が?」

 

「さっきは聖剣にぽこってされてたから」

 

「クオン!?」

 

「…………っ!」

 

「ゼノヴィア!?」

 

「何故蒸し返した!!」

 

「ご、ごめん?」

 

「疑問形!?」

 

「ハク!!」

 

「俺何もしてないだろ!?」

 

「お前がそこにいるからだ!!」

 

「存在!?」

 

「ふふっ」

 

「笑うなクオン!」

 

「ゼノヴィア、落ち着いて!」

 

「イリナも笑っているだろう!」

 

「わ、笑ってないよ!」

 

「顔を背けながら言うな!!」

 

「だ、だって……ぽこっ……」

 

「イリナァァァァァ!!」

 

 道場に声が響く

 

 その横で

 

 ケースの中の破壊の聖剣だけが

 

 さっきの騒ぎなど知らないとでも言いたげに

 

 静かに眠っていた





ということでLife.25でした!

今回分かったこと

ミミック

ハクに懐きました

デストラクション

対抗しました

悪魔組

巻き込まれました

ゼノヴィア

頑張りました

ちゃんと捕まえました

完全に一撃入れました

そして――

ぽこっ

…………はい

ゼノヴィアは悪くないんです

本当に悪くないんです

軌道も完璧でした

ハクも避けられませんでした

正真正銘、ゼノヴィアが実力で取った一撃です

ただし

聖剣が最後の最後で仕事を放棄しました

ゼノヴィア
「私の聖剣だ!!」

デストラクション
「…………」

ハク
「俺に言うな!!」

なお今回の聖剣達の反応については、ハクが命令して操っているわけではありません

あくまで聖剣側が勝手に反応しています

ここ大事です

そして最後にはコカビエルの名前も登場

ここから聖剣を巡る事件も本格的に動いていきます

原作通りの部分もあれば

既に原作とは違っている部分もある

果たしてこの先どうなるのか

そして次にハクと出会う聖剣はまともに仕事をしてくれるのか

……してくれるといいですね!

それではまた次回!
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