今回はイリナとゼノヴィアのお財布事情から始まります
そして夜のランニング中、まさかの人物と遭遇
果たして三本目の聖剣はまともに仕事をしてくれるのか
……たぶん、嫌な予感しかしませんw
模擬戦を終えて道場を出る
結局のところ、今日分かったことは多いようで少ない
俺の近くでは聖剣が大人しくなり、ミミックは鳥になって肩へ乗ってきた
デストラクションに至っては、ゼノヴィアが俺へ一撃を入れた瞬間だけ綺麗に力を抜いている
そして──
ぽこっ
「…………」
思い出すな
あれは忘れろ
「……何だ」
「何も言ってないだろ」
隣を歩いていたゼノヴィアが、まだ少し赤い目元のまま睨んでくる
「今、思い出しただろう」
「何をだよ」
「ぽ──」
「自分で言うな!!」
「まだ何も言っていない!」
だったら途中で止めろ!
「二人とも仲良くなったねー」
「「なってない!!」」
イリナへ声を揃えて返してしまった
何で今日だけこんなに息が合うんだよ
黒歌は口元を押さえ、白音はそっと視線を逸らしている
お前らも見てたからな、笑いたいのを我慢してるだけなの知ってるぞ
クオンに至っては隠す気すらなかった
「ふふっ」
「クオン」
「何かな?」
「笑うな」
「笑ってないかな?」
「その顔で言うな!」
そんなやり取りをしている間にリアス先輩達も帰る準備を終え、今日のところは解散となった
リアス先輩、朱乃、イッセー、アーシア、祐斗とは敷地内で別れ、黒歌と白音も一足先に母屋へ戻っていく
俺とクオンもそのまま家の方へ歩き始めたところで、ゼノヴィアが聖剣のケースを背負い直した
「それで、私達はそろそろ戻る」
「明日から本格的に捜索を再開する予定だ」
「そっか、それじゃハク、また明日ね!」
「ああ」
イリナとゼノヴィアが門の方へ向かい、俺とクオンも母屋へ戻ろうとする
そこで、ふと引っかかった
「待て」
「ん?」
「どうした?」
門を出る寸前だった二人が振り返る
「お前ら、今日どこ泊まるんだ?」
「え?」
イリナが瞬きをした
「教会側で用意した宿泊先があるのか?」
「…………」
「…………」
何で黙る
「あるんだよな?」
「もちろん!」
元気よく答えたイリナとは対照的に、ゼノヴィアが僅かに視線を逸らした
「イリナ」
「な、何?」
「俺の目を見ろ」
「…………」
「見ろ」
「細かいことはいいの!」
「良くねぇよ!」
嫌な予感しかしない
というか俺は知っている
原作通りなら、こいつらはこの辺りで金を使い過ぎて──
「残金は?」
「…………」
「イリナ」
「だ、大丈夫だよ!」
「具体的に」
「…………」
イリナがゼノヴィアを見て、ゼノヴィアもイリナを見る
やめろ
無言で相談するな
「まだ食事に困ってはいない」
「帰ってこい」
「何故だ」
「今の『まだ』で十分だ!!」
やっぱりか!
危ねぇ
このまま放っておいたら、本当に原作みたいなことになるところだった!
「任務中だろ!? 何で活動資金をそんな勢いで減らしてんだよ!」
「必要な出費だ」
「何に使った!」
「それは──」
「イリナ」
「…………お土産とか?」
「任務中だっつってんだろ!!」
「だって久しぶりの日本だったんだもん!」
こいつ!
「ゼノヴィア、お前は止めろよ!」
「私にも興味深いものがいくつかあった」
「お前もか!!」
頭が痛い
聖剣以前の問題じゃねぇか
横を見ると、クオンまで肩を震わせている
「笑い事じゃないぞクオン」
「二人とも楽しんだみたいで何よりかな」
「任務資金でな!!」
「それは良くないね」
「急に正論に戻るな!」
まったく
「とにかく、任務が終わるまでうちの空いてる部屋を使え」
「飯もうちで食え」
「待て、そこまで世話になるわけには」
「ここで無駄に宿泊費と食費を使って、任務の途中で金が尽きる方が困る、部屋なら余ってるし、飯だって二人分増えたところで大して変わらない」
「…………」
ゼノヴィアが言葉に詰まった
その横で、イリナが何かを思い出したように鞄を探り始める
「あ」
「今度は何だ」
「私、ハクの家の鍵持ってた」
「昨日渡したからな」
取り出した合鍵を両手で大切そうに握るイリナに、ゼノヴィアがゆっくり顔を向けた
「……既にそこまで世話になっていたのか」
「昨日泊まったから!」
「何故それを先に言わない」
「驚かせたかったの!」
「何をだ」
「細かいことはいいの!」
「良くないだろ」
さっき俺が言ったぞそれ
「決まりな、帰るぞ」
「だが──」
「ゼノヴィア」
「何だ」
「残ってる金はこれからの任務に取っとけ、飯と寝床くらい気にすんな」
しばらく黙っていたゼノヴィアは、やがて小さく息を吐いた
「……分かった」
「よし」
「世話になる」
「ああ」
「やった! 今日もお泊まり!」
「お前は少し遠慮を覚えろ」
「幼馴染なんだからいいでしょ!」
「それを免罪符にするな!」
「話はまとまったかな?」
隣でクオンが笑う
「ああ、帰るぞ」
結局、門を出る寸前だった二人をクオンと一緒に連れ戻すことになった
─────────────────────────
「ただいま」
「おかえりなさい、お兄ちゃん」
玄関を開けると、
そのまま俺の後ろにいる二人を見て、少しだけ首を傾げる
「……今日も泊まるの?」
「ああ」
「お邪魔しまーす!」
「世話になる」
「また増えたにゃ?」
今度は奥から
「任務中に金欠になりそうな奴らを放っておけるか」
「金欠!?」
「まだ金欠ではない!」
「『まだ』らしい」
「なるほどにゃ」
「納得するな!」
その声を聞いて、
「おかえりなさい、兄さま」
「おかえりなさい、ハクさん」
「ただいま」
クオンもいつものように靴を脱いで上がってくる
「二人とも夕飯まだだろ?」
「あ」
イリナが止まり、ゼノヴィアも同じように黙った
「食ってけ」
「……助かる」
「ありがとう、ハク!」
「夕飯は俺が作るから少し待ってろ」
「お兄ちゃんが?」
「ああ、ちょうど思いついた」
今日はいろいろあったからな
せっかくだし、ちょっと遊ぶか
─────────────────────────
「お待たせ」
最後の皿を食卓へ並べる
「今日のメインはハンバーグな」
「わあ……!」
普通に全員同じものを作ってもよかったんだけど、せっかくこれだけ揃っている
途中で、それぞれ違う形にしたら面白そうだと思いついた
「……全部形が違います」
「せっかくだから、それぞれ変えてみた」
まず俺の前には仮面を模したハンバーグ
「兄さま、これ……」
「
「……可愛いです」
「私のは黒猫にゃ!」
「そのまんまだろ」
「可愛いから問題ないにゃ!」
「私のは鈴なんだ」
「
「うん、可愛い」
そして
「これ……ココですか?」
「ああ」
「わぁ……!」
羽根と丸みのある身体を意識して形を整えてみた
「ココに見せたいです!」
「食われるぞ」
「そ、それは困ります……」
「ハク、
「クオンはこれ」
クオンの前へ皿を置く
葉を模した形を何枚か並べ、その周りに香草を添えた
「ハーブ?」
「料理好きだし、香草も好きだろ」
「うん」
クオンが嬉しそうに笑う
「ちゃんと覚えてたんだね」
「そりゃ覚えてるよ」
「ふふ、ありがとう」
さて
問題はここからだ
「イリナ」
「はーい!」
「お前はこれ」
「…………鳥?」
「ああ」
イリナの皿には、小さな鳥を模したハンバーグを置いた
翼まで付けた自信作だ
「可愛い!」
「だろ」
「なんか今日見た鳥に似てる気がする!」
「気のせいだ」
「ハク」
「気のせいだ」
何で二回言った俺
「それで──ゼノヴィア」
「…………」
「お前はこれ」
皿を置く
細長く形を整え、持ち手まで付けた剣型ハンバーグ
「…………剣だな」
「剣だ」
「何故私だけ武器なんだ」
「お前といえば剣だろ、形も作りやすいし」
「そういうものか」
「そういうものだ」
別に他意はない
本当にない
決して『ぽこっ』を思い出して作ったわけじゃない
……いや、ちょっとは思い出したけど
「すごいですね、ハクさん」
事情を知らない
「ちゃんと剣の形になっています」
「……そうだな」
少しだけゼノヴィアの表情が戻った
よし、
「綺麗に出来ている」
「だろ?」
「ああ、よく出来ていると思う」
良かった
今度こそ平和に──
「ちゃんと切れるといいね」
クオン
「…………」
「…………」
食卓が止まった
ゼノヴィアの動きも止まり、俺も止まる
「?」
「ハンバーグですから、ちゃんと切れると思いますけど……」
「そういう意味じゃ──」
「クオン」
「何かな?」
「余計なこと言うな」
「何のこと?」
絶対分かってるだろ!
「……切れる」
ゼノヴィアが低い声で呟く
「これは切れる」
「ハンバーグだからな」
「違う!」
「何が!?」
「私の剣は切れる!」
「分かったから!」
「本当だ!」
「俺に言うな!」
「ゼノヴィアさん、剣を使うんですか?」
「……ああ」
「そうなんですね」
素直に納得した
危ねぇ、そこで止まってくれ
「でも今日──」
「イリナ」
「むぐっ」
ゼノヴィアがイリナの口を塞ぐ
「何も言うな」
「むぐむぐ!」
「絶対に言うな」
「……?」
黒歌は事情を知っているだけに口元を押さえ、白音も無言で視線を逸らしていた
クオンだけが楽しそうだ
頼む、これ以上広げるな
「でもハク」
「何だよ」
「今日の夕飯、再現度高いね」
「何の再現だよ!」
「鳥と剣」
「ただの鳥と剣だ!」
「うん、そういうことにしておくかな」
「クオン!!」
「この鳥、本当に可愛いよ!」
イリナが自分の皿を眺める
「翼まであるし、なんかピィって鳴きそう!」
「…………」
「ね、ゼノヴィア!」
「私に振るな」
「ゼノヴィアのも可愛いよ?」
「剣に可愛いという感想は必要ない」
「でも丸っこいよ?」
「ハンバーグだからな」
「なんか叩いても痛くなさそう!」
「イリナ」
「はい」
「それ以上言ったら怒るぞ」
「もう怒ってない?」
「怒っていない」
「怒ってるよね?」
「怒っていない!」
ああ、これ完全に引きずってる
「ハクさん」
「ん?」
「皆さん、仲がいいんですね」
「…………」
食卓を見る
イリナは鳥型ハンバーグを嬉しそうに眺め、ゼノヴィアは剣型ハンバーグを必要以上に真剣な顔で切っている
黒歌は笑いを堪え、白音は呆れ、
「……まあ、そう見えるならそれでいい」
「何故そこで諦めたような顔をする」
「お前が言うな」
ナイフがハンバーグへ入る
すっ
綺麗に切れた
「…………」
ゼノヴィアが止まり、俺も止まる
クオンがゼノヴィアの皿を見た
「今度はちゃんと切れたね」
「クオン!!」
「
俺とゼノヴィアの声が綺麗に重なった
─────────────────────────
夕食からしばらく経った頃
時計を見ると、腹もすっかり落ち着いていた
「さて、ちょっと走ってくる」
「今から?」
リビングにいたイリナが振り返る
「ああ、日課」
「ハク、まだ走ってるんだ」
「まだって何だよ」
「昔もよく身体動かしてたでしょ?」
「まあな」
靴を履くため玄関へ向かう
今日は模擬戦もしたし、一日くらい休んでもいいんだけど、こういうのは一度サボるとそのままズルズルいきそうで嫌なんだよな
「じゃあ私も行く!」
「は?」
「ちょっと待って、着替えてくる!」
「いや、お前今日動いただろ」
「ハクもでしょ!」
「俺はいいんだよ」
「何で!?」
「日課だから」
「だったら私も走る!」
「意味分からん」
「いいから待ってて!」
返事をする前に、イリナは奥へ走っていった
「元気だな」
「昔からああなのか?」
声に振り返ると、ゼノヴィアが立っていた
「ああ」
「そうか」
「お前は来ないのか?」
「私は今日の状況を整理しておく、それに装備の確認もしたい」
「そっか」
まあ、そっちの方が普通だ
模擬戦までやったあとに夜走ろうとしている俺達がおかしい
「お待たせ!」
早いな!?
動きやすい服装に着替えたイリナが戻ってくる
「行こ、ハク!」
「はいはい」
「気をつけてね、お兄ちゃん」
「ああ」
「行ってきまーす!」
─────────────────────────
「ハク、遅い!」
「お前が飛ばしすぎなんだよ!」
夜の駒王町を二人で走る
最初は本当に軽く流すつもりだったのに、イリナが隣に来た瞬間、何故かペースが上がった
「だって久しぶりなんだから、競争しようよ!」
「いつ競争になった!?」
「今!」
「勝手に決めんな!」
イリナが笑いながら前へ出るので、俺も少しだけ速度を上げる
「ほらほら!」
「煽るな!」
まったく、昔から変わらない
こいつは昔から、こういう時だけ妙に張り合ってくる
しばらく走ったところで、イリナが俺の隣まで戻ってきた
「懐かしいね」
「何が?」
「こうやって一緒に走るの」
「ああ」
「昔もよく競争したよね」
「お前が勝手に始めてただけだろ」
「ハクもちゃんと追いかけてきてたじゃん!」
「置いてったら後でうるさかったからな」
「何それ!」
頬を膨らませる
こういうところも変わらないな
「でも、なんか嬉しい」
「ん?」
イリナは前を向いたまま、少しだけ声を柔らかくした
「日本に戻ってきて、またハクとこういうこと出来るなんて思ってなかったから」
「メールはしてただろ」
「メールと会うのは違うでしょ?」
「まあ、それはそうだけど」
「それに──」
イリナがこちらを見る
「ハク、昔よりずっと強くなってるし」
「お前もな」
「でしょ?」
嬉しそうに笑う
「私だって教会の戦士なんだから、明日からの任務だって──」
「イリナ」
足を止めた
「え?」
数歩先へ進んだイリナも、俺の様子を見て立ち止まる
「どうしたの?」
「…………」
今、何か──
「ハク?」
「静かに」
意識を周囲へ広げる
人通りの少ない夜の住宅街には、遠くを走る車の音しか聞こえない
その中に、微かに別の臭いが混じっていた
「……血?」
イリナの声が低くなる
気づいたか
「ああ、微かだけど間違いない」
血の臭い
それと、何か嫌な気配
「向こうだ」
「うん」
さっきまでの笑顔が消え、イリナの目が教会の戦士のものへ変わる
「行くぞ」
「うん!」
今度は競争じゃない
気配のする方へ向かって一気に速度を上げ、住宅街を抜けて人気の少ない道へ入る
さらに奥へ進んだところで──見つけた
「…………」
街灯の明かりが届きにくい場所に、一人の男が立っている
白い髪に神父服
見覚えがある
ありすぎる
「……マジかよ」
思わず声が漏れた
「あぁ?」
男がこちらを向いた瞬間、確信する
フリード・セルゼン
原作でも散々出てきた、はぐれ神父
「ハク」
「ああ」
イリナも男ではなく、その手元を見ていた
握られているのは普通の剣じゃない
今日一日、嫌というほど近くで感じたものと同種の聖なる気配がある
「……エクスカリバー」
「やっぱりそうか」
「うん、あれは盗まれた聖剣の一つだよ」
「どれか分かるか?」
「まだ分からない、でも──」
イリナが腕へ手を伸ばし、巻き付いていた紐状のミミックを掴む
「ミミック、仕事!」
一瞬だけ紐が震え、次の瞬間には聖剣へ姿を変えた
ちゃんと働くんだな
俺のところへ鳥になって飛んでくるだけじゃなかったらしい
「へぇ」
フリードが笑う
「なぁんだぁ? こんな夜中に仲良くジョギングですかぁ?」
軽い声だが、その目は笑っていない
「しかもそっちの嬢ちゃん、教会関係者?」
「その聖剣」
イリナがミミックを構える
「どこで手に入れたの?」
「あぁ?」
「答えて、それは教会から盗まれたもの」
「だったら?」
「返してもらう」
「はっ」
フリードが笑った
「嫌でぇーす!」
直後、地面を蹴る
「イリナ!」
「分かってる!」
イリナも動いた
フリードの剣が横薙ぎに振られ、ミミックがそれを受け止める
金属音が夜道へ響き、一撃を流した直後にはもう二撃目が来ていた
「っ!」
イリナが身を沈めて躱す
街灯の下で刃が光る
速い
それも妙なくらいに
「……この速さ」
イリナの表情が変わった
「天閃の聖剣──エクスカリバー・ラピッドリィ!」
「あぁ?」
フリードが口元を吊り上げる
「よく知ってんじゃねぇですかぁ!」
やっぱりか
速度に特化した聖剣、ラピッドリィ
それを今、フリードが持っている
「ほらほらほらぁ!」
「くっ!」
連続で振るわれるラピッドリィの斬撃をミミックが受け、弾く
イリナはそのまま距離を取り、追ってくるフリードを正面から見据えた
ミミックはちゃんとイリナの動きに応えている
俺の方ばかり気にしていたくせに、戦闘になれば話は別らしい
そこは聖剣として真面目なんだな
「イリナ!」
フリードがさらに踏み込んだのを見て、二人の間へ入る
「あぁ?」
フリードの顔が歪んだ
「邪魔すんなよ!」
剣が俺へ向く
速い
けど──見える
一撃目を身体を僅かにずらして避け、続く二撃目も躱す
「ちょこまかとぉ!」
「お前が速いだけだろ!」
「だったらこれはどうですかぁ!」
踏み込みが変わった
今までより速い斬撃が、俺の首へ真横から走る
「ハク!」
イリナの声が聞こえる
避けられる
そう判断した瞬間だった
「…………ん?」
俺へ迫っていた刀身が、途中から妙な動きをした
硬かったはずの刃が、ぐにゃりと──
いや
へにゃっ
「…………」
「…………」
「…………」
ぺちっ
頬に当たった
痛くない
というか、柔らかい
「…………は?」
フリードの口から声が漏れる
俺も同じことを言いたい
「何だこれ」
さっきまでミミックと普通に打ち合っていた聖剣が、俺の頬に当たった状態でへにゃっと曲がっている
今日、鳥になって俺の肩へ飛んできた聖剣がいた
俺へ当たる瞬間だけ、威力を綺麗に抜いた聖剣もいた
そして今、三本目
「……お前もか」
「あぁ!?」
フリードが慌てて聖剣を引く
すると──
ぴんっ
「戻った!?」
イリナが声を上げた
普通の硬い刀身に戻っている
「何なんだよテメェ!」
「俺が聞きてぇよ!」
「ふざけんな!」
「ふざけてねぇ!」
フリードがもう一度踏み込んできた
今度は俺の胴を狙った斬撃だ
そして俺へ近づいた瞬間──
へにゃっ
ぺちっ
「…………」
腹を叩かれた
「何でぇ!?」
フリードの絶叫が夜道に響く
「何で柔らかくなるんですかぁぁぁぁ!?」
「知らねぇよ!!」
「さっきまであんなに硬かったでしょうがぁぁぁ!!」
「その言い方やめろぉぉぉ!!」
「ハク!?」
「違うからな!?」
「何が!?」
「何でもない!」
くそ!
何でこんな状況でこんな会話してんだ俺達!
「おい! 戻れ! 硬くなれ!」
「だから言い方!!」
「うるせぇ!!」
半狂乱になったフリードがラピッドリィを振り上げる
だが、今度の狙いは俺じゃない
「イリナ!」
「分かってる!」
へにゃっとしていた刀身が、振り下ろされる途中で元へ戻った
鋭さも、聖なる力も戻っている
「ミミック!」
ガキィンッ!
二本の聖剣が正面からぶつかった
「くっ……!」
イリナが押し流しながら横へ抜ける
ラピッドリィは硬いまま
これで間違いない
「……やっぱりだ」
「ハク?」
「壊れてるわけじゃない、俺へ向けた時だけだ」
イリナとミミックを相手にしている間は普通に斬れる
それなのに、俺へ当たる直前だけラピッドリィ自身が形を変えている
デストラクションの時と結果は同じだ
方法は違う
けど、俺を傷つける直前に聖剣側が何かをしている
「なんなんですかねぇ、これぇ!」
「俺が知るか!」
「俺の聖剣でしょうが!」
「盗品だろうが!!」
「細けぇこと言うな!」
「細かくねぇよ!」
「なるほど」
その時、少し離れた場所から声がした
「っ!」
俺とイリナが同時に振り返る
街灯の光が届かない場所から、一人の老人がゆっくり歩いてくる
「興味深い」
その姿を見た瞬間、背筋が冷えた
知っている
忘れるはずがない
ヴァルパー・ガリレイ
聖剣計画の中心にいた男
祐斗達を──
「……ヴァルパー」
「ほう?」
老人が俺を見る
「私を知っているのかね?」
「……名前だけな」
ヴァルパーが僅かに目を細めた
俺が昔から裏の世界に関わってきた以上、名前と顔を知っていてもおかしくはない
だからといって、それ以上をこいつに説明してやる必要もない
「爺さん!」
フリードがラピッドリィを持ち上げる
「何なんですかねぇ、このクソ剣! こいつ斬ろうとすると急にへにゃへにゃになるんですけどぉ!」
「見ていた」
「あぁ?」
ヴァルパーの視線がラピッドリィへ向き、それから俺へ移る
「もう一度だ」
「は?」
「その少年を斬れ」
「言われなくてもやってますよぉ!」
フリードが踏み込んだ
ラピッドリィが俺へ迫る
そして──
へにゃっ
ぺちっ
「…………」
肩を叩かれた
「何でだよぉぉぉぉ!!」
フリードが絶叫する
だが、ヴァルパーは動じない
「フリード」
「あぁ!?」
「お前に渡した因子をもっと有効に使え、可能な限り刀身へ集中させろ」
「因子……?」
イリナが小さく呟いた
俺もヴァルパーを見る
「…………」
フリードの顔から、ふざけた色が僅かに消える
「なるほどねぇ」
ラピッドリィを構え直した途端、空気が変わった
フリードの身体から何かが刀身へ流れ込み、ラピッドリィから感じる聖なる気配が目に見えて濃くなっていく
「……おい」
さっきまでとは違う
圧が一段上がっている
「ハク」
「分かってる」
イリナもミミックを握り直した
「これだけ込めりゃあ……今度こそ真っ二つでしょうがぁぁぁ!!」
フリードが踏み込む
速い
今までよりさらに鋭く、聖なる力も明らかに強い
避ける
そう判断した瞬間、ラピッドリィが俺へ迫り──
へにゃっ
「…………」
「…………」
「…………」
ぺちっ
額を叩かれた
「…………」
痛くない
あれだけ力を込めたのに、やっぱりへにゃってる
「な」
フリードの口が開いたまま止まる
「何でぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「俺に聞くなぁぁぁぁ!!」
「因子まで込めたでしょうがぁぁぁ!!」
「知らねぇよ!!」
そこで初めて、ヴァルパーの表情が僅かに変わった
「…………出力不足ではない」
「は?」
「因子は確実に刀身へ流れている、聖剣としての出力も正常だ」
そう言うと、そのままフリードへ次の指示を出す
「そちらの少女を狙え」
「っ!」
「イリナ!」
「分かってる!」
フリードが方向を変え、ラピッドリィがイリナへ走る
「ミミック!」
ガキィンッ!!
二本の聖剣が激突した
「くっ……!」
イリナが僅かに押される
硬い
速い
聖なる力も消えていない
少なくとも、イリナを狙った時は正常だ
「なるほど」
ヴァルパーが静かに呟く
「聖剣そのものに異常はない、因子の流れにも問題はない」
そこで初めて、ヴァルパーの視線がラピッドリィから俺へ移った
「……原因は対象側か」
「……やっぱりそうなるか」
「その少年へ攻撃する時だけ、聖剣が自ら性質を変えている」
「聖剣が……自分で?」
イリナが目を見開く
ヴァルパーはそれには答えず、今度は完全に俺を見ていた
聖剣を見る目じゃない
研究対象を見る目だ
「少年」
「何だ」
「お前は何者だ?」
「ただの高校生」
「ただの高校生に、聖剣がこのような反応を示すものか」
「俺だって今日知ったんだよ!」
「今日?」
しまった
「他にもあるのか?」
「…………」
余計なこと言った!
「ハク」
「分かってる」
イリナがミミックを手に俺の隣へ並ぶ
もうこれ以上、相手の実験に付き合う理由はない
「フリード」
ヴァルパーが言う
「退くぞ」
「あぁ!? まだこいつぶっ殺してませんけどぉ!?」
「十分だ、予定外の情報を得た」
ヴァルパーは俺から視線を外さない
「その少年については、改めて調べる必要がある」
「させると思うか?」
俺が踏み出し、イリナもミミックを構える
だが──
「ハク!」
フリードが懐から小さな球体を取り出し、そのまま地面へ叩きつけた
直後、強烈な光が炸裂する
「っ……!」
視界が一瞬で真っ白に染まった
「眩しっ……!」
「じゃあなぁぁぁ! へにゃへにゃ野郎ぉぉぉ!!」
「誰がへにゃへにゃ野郎だぁぁぁ!!」
声だけが遠ざかっていく
視界が戻った頃には、二人の姿はもうなかった
「追う!」
イリナが駆け出しかける
「待て!」
「でも!」
「ヴァルパーまでいるんだ、逃走経路を用意してる可能性が高いし、二人だけで追うのは危険だ」
「……っ」
イリナは悔しそうにしながらも足を止めた
「……分かった」
「一旦戻ろう、ゼノヴィアにも話した方がいい」
「そうだね」
ミミックが剣から元の紐状へ戻り、イリナの腕へ巻き付く
そして
「…………」
「何だよ」
「いやぁ」
「何だ」
「ミミックでしょ?」
「…………」
「デストラクションでしょ?」
「…………」
「今度はラピッドリィ」
「…………」
やめろ
一つずつ数えるな
「しかも今回は」
「やめろ」
「因子までいっぱい込めたのに」
「やめろ」
「へにゃっ」
「言うな!」
「ぺちっ」
「やめろぉぉぉ!!」
イリナが満面の笑みを浮かべた
「ハク、やっぱり聖剣にモテてるよ!」
「嬉しくねぇぇぇぇぇ!!」
─────────────────────────
家へ戻る頃には、
これなら話しても問題ない
俺達は居間に残っていたゼノヴィア達へ、さっき起きたことを説明することになった
「……ラピッドリィが?」
「ああ」
「ハクに斬りかかった瞬間だけね」
イリナが身振りを交えながら説明する
「こう、へにゃって、それで、ぺちって」
「…………」
「しかもヴァルパーがフリードに因子を集中させたあとも!」
「イリナ」
「何?」
「もういい」
「まだ一番へにゃったところまで──」
「もういい」
話を聞くほど、ゼノヴィアの顔から覇気が消えていく
「……そうか」
しおしおだ
分かりやすいくらい、しおしおになってる
「ゼノヴィア?」
「つまり、私のデストラクションだけではなかったのか」
「まあ……そうなるな」
「ラピッドリィもハクを斬らなかった」
「ああ」
「…………」
何だその顔
「何でそんなに落ち込んでるんだ?」
「落ち込んでいない」
「いや」
「落ち込んでいない」
「でも──」
「落ち込んでいない」
三回言った
「ゼノヴィア」
「何だ」
「もしかしてちょっと安心した?」
「していない」
「今日、自分の聖剣だけがおかしくなったと思ってたから──」
「していない!」
「元気になったじゃん!」
「なっていない!!」
イリナ、お前わざとやってるだろ
「でもラピッドリィもだったんだよ?」
「聞いた!」
「へにゃって」
「聞いた!!」
「ぺちって」
「聞いたと言っている!!」
あ、またしおしおになった
忙しいなこいつ
「……私のデストラクションは」
「ん?」
「形までは保っていた」
「そうだな」
「ラピッドリィは形すら保てなかった」
「そうだな」
「…………」
少しだけ戻った
何でそこで勝ち誇るんだよ
「ゼノヴィア」
「何だ」
「そこで張り合う必要ある?」
「張り合っていない」
「でもちょっと嬉しそう」
「嬉しくない」
「デストラクションの方が頑張ったって顔してる」
「していない!」
聖剣同士だけじゃなくて、使い手まで張り合い始めてないか?
頼むからやめてくれ
俺を中心に聖剣の謎の競争を始めるな
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翌日
学校では特に大きな騒ぎもなく時間が過ぎ、そのまま放課後になった
部室にはリアス先輩、朱乃、祐斗、黒歌、白音も集まり、そこへイリナとゼノヴィアも加わった
「──それで?」
リアス先輩が机の向こうから俺を見る
「昨日の夜、フリード・セルゼンと遭遇したのね?」
「ああ、正確にはランニング中に俺とイリナが遭遇した」
「盗まれた聖剣も確認しました」
イリナが続ける
「天閃の聖剣、エクスカリバー・ラピッドリィです」
「昨日話していた三本のうち一本ということね」
「ああ」
ゼノヴィアが頷いた
「フリード・セルゼンが所持していた」
「それだけじゃない」
俺が続ける
「ヴァルパー・ガリレイもいた」
「……ヴァルパー?」
僅かに、それでもはっきりと祐斗の声が変わった
表情から笑みが消える
当然だ
その名前を聞いて、何も思わないはずがない
「ヴァルパー・ガリレイ……」
リアス先輩がその名前を繰り返す
「ゼノヴィア」
「ああ」
ゼノヴィアが頷き、リアス先輩を真っ直ぐ見た
「本来なら、教会内部の事情を悪魔側へ詳しく話すべきではない」
部室の空気が僅かに変わる
三勢力の戦争は既に終わっている
だが教会と悪魔、それに堕天使が、何でも気軽に情報を渡し合えるほど近い関係になったわけでもない
「だが今は盗まれた聖剣を追っている上、ヴァルパーまでこの街にいる、必要な情報は共有すべきだと判断する」
「ええ、こちらとしても助かるわ」
「ヴァルパー・ガリレイは、かつて教会に所属していた聖剣研究者だ」
その言葉に、部室の空気が少し重くなった
「聖剣に適性を持つ者は多くない、ヴァルパーはその適性を人工的に生み出すための研究を行っていた」
「人工的に……?」
アーシアが小さく呟く
「そうだ、その研究の過程で行われたのが聖剣計画だ」
「っ……」
祐斗の拳が握られた
「多くの子供達を集め、聖剣への適性を人工的に付与しようとした」
「だが、計画は失敗した」
ゼノヴィアが一度言葉を切る
「そして研究対象となった子供達は──処分されたとされている」
部室が静まり返った
「処分って……」
イッセーの声が低くなる
「文字通りの意味だ、教会は後に計画を異端と判断し、ヴァルパー・ガリレイを破門した」
「……そういうことか」
イッセーが祐斗を見る
「祐斗……」
「…………」
祐斗は何も答えない
ただ、握った拳に力が入っている
俺はその横顔を見る
ゼノヴィアが話した内容を、俺は知っている
聖剣計画
祐斗が生き残った、あの実験
そしてヴァルパーは──
「ハク君」
「ああ」
祐斗が俺を見る
「間違いないの?」
「俺が見た限りでは間違いない」
「……そう」
祐斗は目を閉じ、一度ゆっくり息を吐いた
「祐斗」
リアス先輩が静かに名前を呼ぶ
「……大丈夫です、部長」
「驚いただけです」
再び目を開いた祐斗の声は落ち着いている
でも平気なわけじゃない
それくらいは分かる
「それで、ハク」
朱乃が俺を見る
「ヴァルパーは何かしていたの?」
「ああ、フリードに『渡した因子をもっと使え』って指示してた」
「因子?」
イッセーが眉を寄せた
「俺も詳しくは分からない、ヴァルパーはフリードに渡した因子をラピッドリィの刀身へ集中させろって言ってた」
「…………」
祐斗の視線が僅かに揺れ、ゼノヴィアも表情を険しくする
「ヴァルパーが、フリードに因子を与えたと言ったのか」
「ああ、それで実際、ラピッドリィの聖なる力は明らかに上がった」
「でも」
イリナが続ける
「ハクに当たる瞬間だけ──」
「イリナ」
「へにゃって」
「言うと思った!!」
緊張していた部室の空気が一瞬で崩れた
「いや、そこ重要だから!」
「擬音じゃなく説明しろ!」
「本当にへにゃってなったんだもん!」
「分かったから!」
「因子を集中させても?」
リアス先輩が確認する
「ああ、俺以外を狙った時は普通だった」
「私とミミックには、そのままの威力で来ました」
イリナが補足する
「ヴァルパー自身も、出力不足じゃないって判断してた」
「つまり、因子を集中させて出力を上げても結果は変わらなかったのね」
「ああ」
「ミミックは自分から寄ってきた」
ゼノヴィアが静かに口を開く
「デストラクションはハクへの攻撃時に威力を落とした」
「おい」
「そしてラピッドリィは、因子を集中させてもハクへ接触する直前に軟化した」
「ゼノヴィア」
「何だ」
「言い方!」
「事実だろう」
くそ!
完全に味を占めてやがる!
「……なるほど」
リアス先輩は笑わずに考え込んでいる
「これで三本目、しかもそれぞれ方法が違うのね」
「そうなる」
朱乃も指折り確認するように続けた
「ミミックはハクへ近づこうとする、デストラクションはハクを傷つける直前に力を抑える、そしてラピッドリィは──」
「へにゃる」
「朱乃まで言うな!」
「一番分かりやすいでしょう?」
「もっとあるだろ!」
くすくす笑ってるじゃねぇか!
「でも」
アーシアが小さく手を上げる
「ハクさんを傷つけたくない、というところは同じなんでしょうか?」
その言葉で、部室が静かになった
「俺もそれは考えた、ふざけて見えるけど結果だけならそうなる」
三本ともやり方が違うだけで、俺へ害を与えようとしていない
「ヴァルパーもそこまでは気づいた」
「何て?」
「ラピッドリィ自体は正常で、因子もちゃんと流れてる、だから俺を狙った時だけ聖剣自体が性質を変えてるんじゃないかって」
「そしてハク君に興味を持った」
祐斗が静かに言う
「ああ」
名前を聞いた直後よりは落ち着いている
でも当然、平気じゃない
「祐斗」
「大丈夫だよ、ハク君」
「今すぐ一人で飛び出したりはしない」
「…………」
「前の僕なら、そうしていたかもしれないけどね」
小さく笑う祐斗を見て、少しだけ肩の力が抜けた
「ただ、ヴァルパーがここにいるなら、僕も無関係ではいられない」
「ああ、それは止めるつもりはない」
止めるべきでもない
俺が止めたいのは、復讐そのものじゃない
それだけで祐斗の人生全部を潰すことだ
「情報は共有する」
「ありがとう」
「その代わり──」
「分かってる、一人では動かないよ」
「ならいい」
「それじゃ」
リアス先輩が全員を見る
「状況を整理しましょう」
盗まれた三本のエクスカリバー
そのうち一本、ラピッドリィをフリード・セルゼンが所持している
ヴァルパー・ガリレイもその場にいた
そして、その背後にいるコカビエル
「今後は単独行動を避けましょう、それと敵を見つけても無理に追跡したり接触したりしないこと」
リアス先輩の声が少し低くなる
「相手がコカビエルなら、誰か一人で対処できる相手ではないわ」
「了解」
イッセーも頷いた
俺は横目でこいつを見る
原作のこの頃とは違う
今のイッセーは既に禁手へ到達し、ライザー戦ではその状態を維持したまま実戦を続けている
戦闘経験も基礎体力も、俺が知っている原作のこの時期よりずっと上だ
祐斗だって違う
俺もいる
クオンも、黒歌も、白音もいる
だからといって、コカビエルを甘く見ていい理由にはならない
聖書に名を残す堕天使の幹部
俺が知っている原作では、リアス先輩達をまとめて相手にしてもなお余裕を残していた相手だ
「異変を感じたら、すぐ全員に連絡を、勝手に先行しないこと」
リアス先輩の視線が祐斗へ向く
「はい」
祐斗は迷わず頷いた
そして何故か、その視線が俺にも向いてくる
「……何で俺も見るんですか」
「あなたは後半の方よ、ハク」
「無理な追跡と接触!?」
「昨日は随分と敵の検証に付き合ったそうじゃない」
「俺が頼んだんじゃないですよ!」
「因子まで集中させた一撃まで受けていたのよね?」
「俺が頼んだんじゃないですって!」
「へにゃったけどね!」
「イリナぁ!」
イッセーが吹き出した
「笑うな!」
「無理だろ!」
「とにかく」
リアス先輩が溜息を吐く
「ハクも深入りしすぎないこと」
「分かりましたよ」
まあ、そこは反論できない
原作通りなら、ここから先に何が起こるのか、その大筋は覚えている
コカビエル
ヴァルパー
フリード
聖剣
そして、その先で起きることも
けど──
「…………」
ミミック、デストラクション、ラピッドリィ
既に三本の聖剣が、俺の知る原作にはなかった反応を示している
祐斗も違う
イッセーも違う
この場にいる人数も、戦力も、人間関係も、俺が知っている原作とはかなり変わっている
何より、俺自身がいる
原作知識はある
この先、コカビエルが大きく動くことも覚えている
だけど、何日の何時に、どこから始まって、誰が先に動いたのか、そこまで完璧に覚えているわけじゃない
まして、もう流れそのものが変わり始めている
原作なら次はこうだ
そう決めつけて動けば、逆に今起きている変化を見落とす
「……気をつけないとな」
「ハク?」
「いや、何でもない」
リアス先輩へそう返しながら、頭の中でもう一度考える
警戒はする
でも、原作の順番を前提にはしない
見るべきなのは知っている未来じゃない
今、この世界で実際に起きていることだ
何かが動いた時、その時にある情報で判断する
そうしないと──
たぶん、足元を掬われる
はい
ラピッドリィ、お前もかwww
ミミックは寄ってくる
デストラクションは威力を抜く
ラピッドリィはへにゃる
同じ「ハクを傷つけない」でも、聖剣ごとに対応が違います
そしてついにヴァルパーが表舞台へ
原作を知っているハクも、ここからは「知っているから大丈夫」では動けなくなってきました
次回、聖剣編はいよいよ本格的に動きます
……とりあえずゼノヴィア
デストラクションはラピッドリィより頑張ったから、そんなにしおしおになるなw