はい、それでは前回その筋の方達とお話したところから始めていきます!
場所は人気の少ない道路から更にわき道に入った狭い路地。元の場所にあった店はそのままだと邪魔なので撤収して、迷惑がかからない様にしたので大丈夫です。現在、メアリさんにボコられた彼らは冷たい道路に伸びてます。
その中から意識を残しおいたリーダーの人だけ元の場所に連れてきて交渉開始です。
いやー、怖かったで大勢で囲まれて?
これは精神的苦痛を受けた私たちに詫びてもらわんとなぁ?
うん? 黙っててもええことないで?
人が優しくし――ツンツン――え、何ですかメアリさん? 今から交渉するんですが。えっアタシもこの人で遊びたい? ちょっと待っててくださいねー? この交渉が終わったらコイツ好きにしていいから。
えーゴホン、ねぇお兄さん、今からお兄さんの所属しているグループで一番偉い人の所まで連れて行ってくれない? あー目的? 私たちの力を売り込みたいだけですよ? ホントホント、何も難しいことを頼んでるわけじゃないんですよー?
「………………。」
ふむ、こちらの提案にどう返答するか難しい顔で悩んでますねー。長くなりそうだし、返事を待つ間にメアリの様子でも見ておきますか。待つのに飽きて人を怪我さしたら面倒ですからね。
チラリ――そこには暇つぶしに意識が無い男たちの懐をゴソゴソ漁っているカラミティ・メアリの姿が! まぁ……(窃盗ぐらいなら)いいか……。こちらの視線に気づいたのか立ち上がり、戦利品を持って笑顔を浮かべながらこっちに近寄ってきました。
そして男の悩んだ顔を見て交渉が長くなりそうな空気を察したのか、奪ったカバンの中に手を入れ、時計を取り出すメアリさん。取り出した戦利品である時計を右手に持ち、男によく見えるよう移動します。そしてそのまま粘土細工の様に簡単に握りつぶし、見惚れる笑顔で一言「あまりアタシを待たせるんじゃないよ」――いい笑顔です。
恐怖で固まった男の顔を見て満足したのか、そのまま私の後ろにゆっくり移動してくれました。
これはナイスアシストです! やっぱりメアリさんを連れてきて良かったですね! この状況を利用して交渉を進めましょう!
大丈夫? 凄い汗かいているけどハンカチいる? いらない?
……それじゃあそろそろ答えを聞かせてくれません? こちらの言う通り案内してくれるだけでいいんですよ? そうしたら後ろのガンマンの彼女から助かるように説得してあげるからさぁ?
――さぁ返答は?
やっぱり暴力はいいですねぇ!
いやーあの交渉の後、魔法少女の力を理解した男のサポートもあって、鉄輪会の事務所に行って偉い人と再び交渉し、無事鉄輪会との協力の取り付けは上手くいきました。
これ以降、この組織に入ることでとれる選択肢が増えましたね。
それでは今回の組織に入る条件とメリット、デメリットを教えましょう!
まず条件は関係者の情報を入手する事です。通常の魔法少女プレイでは、無法者を装ってファブから教えてもらうか、偶然取引の現場を目撃するかしか、関係者の情報を知る手段はありません。
そして、正統派魔法少女プレイでは、そんな危険な事に関わら無いし、近寄らない、そもそも知ったら敵対するから利用も出来ないので必要無いです。
ですから、アウトローを装って多少目立つような事をすることで、向こうから来てもらい接点を作ることができる様に、縄張りで向こうが発見出来るように活動する必要があったんですね。
次はメリットの方を説明します。
まず一つ目はキャンディーだけではなくお金も稼げるという事です。
まず、大前提として魔法少女の活動ではお金を稼げません。なので、学生や実家住みでは無い場合、生活費を稼ぎながら魔法少女として人助けなどの活動もしなくてはなりません。となると、仕事が終わってから活動する事になります。
変身すれば肉体的疲労とは程遠い魔法少女とはいえ、なったばかりでは段々ストレスが蓄積します。ストレスが溜まりきった状態で放置してしまうと対人関係で悪いイベントが起きたり、一定時間勝手に行動するなどプレイヤーにとって好ましくない事が頻発するようになります。
自分の生活か魔法少女としての活動か。上手くバランスを取ってストレスが溜まらないように注意しなければいけません。と、ここまで説明しましたが要するに魔法少女活動に専念したいなら私生活の不自由のない程度に、お金を稼いで時間を作っておきたいと言うことです。大事なのは金。金で時間は買えます。
そこで思い出して欲しいのは、最初に選んだ職業です。そう、フリーター。学生や会社員と違って時間に縛られないフリーターは対人関係でストレスが溜まりにくく、時間も作りやすいので魔法少女として活動がしやすく都合がいい職業といえます。
しかし、フリーターも良いことだらけではありません。何故ならフリーターは学生と違って親の庇護は基本的に無いので、生活していくお金に余裕はありません。そして、会社員の様に働いて定期的に給料を稼ぐことも出来ません。何処かに就職したら職業が変わりますからね。一応、アルバイトなら大丈夫ですが。でもその場合、最大限フリーターのメリットは生かせなくなります。
なので、フリーターは基本的に自分からアクションを起こさない限り無収入です。後、あんまり関係ないのですが世間の目が冷たいです……。
ですから、フリーターはよっぽど良いお金稼ぎが出来ないと貧乏になりやすいです。そしてお金が無いと心が荒むのかストレスが溜まりやすくなります。お金が無い→ストレス→ミスが増える→ストレス……と、悪循環に陥りやすい職業です。
ですが、鉄輪会に入ることが出来ればそんな心配もしなくて大丈夫です! 鉄輪会の方からお願いされた仕事を少しこなせばキャンディーは勿論、お金だって沢山稼げます! 仕事も月に多くても十回程度なので、時間が作りやすく、どちらも損しないwinwinな関係を築けます。
やっぱ鉄輪会は最高やな!
二つ目のメリットは組織に入ることで、人を使えるようになります。ここなら付き人を付けてくれます。これを利用すると魔法少女の目撃情報や噂などを集めてくれたり、拠点になる建物や暴れても都合のいい場所の情報を提供してくれたり大変便利です。
三つ目! 日本で手に入りにくい物をある程度融通してくれます。例えば銃や刀などの武器だったり麻薬だったり、何でもとはいきませんが手に入りにくいものを融通してくれます!
これを利用してカラミティ・メアリに強化をしてもらえば、魔法少女に有効で強力なマジカル☆ウェポンが量産出来ます。これをしたいからメアリを仲間にしたんです。やっぱりメアリさんはサポーターとして最高だわ。
……えーではデメリットを説明します。
一つ目。N市所属の魔法少女から初見での信頼度にマイナス補正がかかります。ですが、此方から敵対しようとしなければ問題ないのでメアリの動向にだけ注意しておきましょう。勝手に喧嘩を売って交戦状態になることも稀によくあるので。
二つ目。外部の魔法少女の関係者に、ヤクザとつるんでいる事をバレない様に注意する必要がある。これはですね、稀にですが試験会場であるN市に外部の魔法少女が来ることがあります。
確定イベントもありますが、ランダムで遭遇した時に注意しておけば問題ありません。もし、バレてしまうと魔法の国から試験官に不合格にしろと指示がでて魔法少女を辞めさせられることになります。この場合、もちろんゲームオーバーとなります。
三つ目。回された仕事をキチンとやらないといけない、です。サボってやらないでおくと追い出されたり敵対するようになります。
気をつけましょう。
さて、予定通りメアリとの協力関係、鉄輪会との交渉は成功させました。次にやることは経験値稼ぎです。
魔法少女は経験を重ねると魔法や身体能力が上昇します。鍛えて損は無いので頑張って稼ぎましょう。丁度、この時期に都合のいいイベントが起きるので、逃さないようにクラムベリーを監視しておきましょう!
ちなみに、イベントが始まる前にクラムベリーに気付かれると、イベントが起きない場合があります。気付かれないように細心の注意を払い監視しましょう。まぁ、ハッピーチェイサーの魔法を使えば、気付かれること無く遠くから監視できるので、イベントを逃す事はほぼ無いですけどね。
という訳で、イベントが始まるまで時間がかかるので、長い待ち時間はカットします。
はい、今回やって来たのはN市の隣市であるM市の山中。事前にクラムベリーと離れた場所に位置取りしてます。周囲は木、木、木でTHE森です。一般人だと遭難する危険がありますが、魔法少女なら山をまっすぐ突っ切って人工物がある場所まで移動できるので、そんな心配は無用です。ちなみに今回のイベントにはメアリは連れてきていません。理由は彼女が強くなっても今回のルートにはメリットがあんまりないからです。こっちより強くなって襲われても困るからね。
さて、今回のイベントの内容は逃げた魔法生物の掃討です。なんでこんな場所に魔法生物が居るのかというと、隣県のT市で開催された魔法少女試験で魔法少女が生み出した生物の一体が逃げてしまったからです。
そしてクラムベリーは偶々近くに居た優秀な魔法少女なので、頼まれてその試験の尻拭いにM市まで来た、というシナリオです。
今回の目的であるターゲットは、一体のはずがコウノトリが仕事して沢山増えて一杯いますが、全て魔法少女より弱いので初期レベルでも油断しなければ大丈夫です。大丈夫ですが、攻撃を喰らうと普通にダメージが入るので突然のアンブッシュに気を付けましょう。
さて、その魔法生物ですが、姿は熊に似ています。性格は非常に好戦的で、痛みを無視して相手を攻撃してくるので一撃で殺しましょう。弱点は頭か心臓なので対処は普通の生物と一緒ですね。
……と、丁度説明し終わったタイミングで発見しました、最初の獲物です。立ち上がって此方を鳴き声で威嚇する姿は熊とよく似てますねー。
それじゃあ始めますか!
―魔法少女戦闘中―
フハハッ、隠れても無駄無駄無駄ァ! 魔法で居場所がバレバレなので奇襲もきかぬぅ! 後方、死角からの引き裂き攻撃を見ないで避ける。そしてお返しに喰らえ、昇、龍、拳――!
空高く打ち上げられ全身から血を吹き出す熊(仮)さん。
へっ! きたねぇ花火だ。
うん、今で三十体目なので順調に稼げてますね。この調子でガンガン行きましょう! さあ次に私の拳の錆になりたい奴はどいつだー!
魔法を使用し、周囲に居る魔力のある物を探す。おっ早速獲物を見付けました、そこの岩陰に反応あり! 勢いを付けて岩ごと渾身の岩砕き! 岩ごと体を粉砕してくれるわ! 岩を貫いた勢いでそのまま標的にヒット! 手ごたえ有! このまま貫いて……貫いて……ん? ビクともしない?
疑問に思い、土煙の向こうに目を凝らす。粉砕した勢いで空気中に舞った土や岩の破片の向こう、拳を突き出した向こうで目が合う。
「随分と……楽しそうですね」
ふあッ!?
なんでそんな所に居るんだクラムベリーさん!?
ヤバい、非常にヤバいです。現時点で勝てない相手にちょっかいを掛けるいい口実を与えてしまいました。しかも今回は味方であるメアリさんも連れてきて居ないので勝算は無いです。
「私の後を付けてきたのですか? ……まぁいいです。丁度いい機会です、少し付き合ってください」
暗い森の中~、音楽家に~出会った~、一人きりで~音楽家に出会った~
……現実逃避に変な歌考えている場合じゃないですね……。
現状、二人っきりの状態です。殺人鬼と二人きりなんてやだーー!!
――いや、落ち着け私。ここは冷静に相手の情報を思い出すんだ! そうすれば光明があるはず。……多分。
まず、クラムベリーは格闘戦が強い。そして魔法も応用が利き強い。統括するとスゴイ戦闘力が高い。正面からは勝つことが難しいので戦闘は出来るだけ避けたいですね。
性格の方は、見た目が大人で中身が子供を地で行く性格です。
理由は、幼いころに起きた事故のせいですね。原因はファブがやらかしてミスをしたからです。……アイツほんと碌なことしないな。
そして事故があった魔法少女試験ただ一人の生存者兼魔法少女になり、それ以来滅多に変身を解除してないので人間としての肉体年齢は試験の当時とそこまで変わってないです。
ここで性格の話に戻りますが、普通、精神は経験を積んで変化します。しかし、事件があった事でクラムベリーの精神は歪みました。その結果、殺し合い生き残る事で生を実感してるようですが、ファブ曰く、性格は出会った頃と変わってない、子供の精神ままらしいです。
つまり、あまり我慢が出来ない、怒らせると大変危険な事になります。
ここまで思い出し現状把握する。
私は今、間違って攻撃を当ててしまいました。……ここでもし、クラムベリーがカッとなって襲い掛かってきたら死にますね……。
となると会話で何とかするしかないんですが、ちょっと付き合えよ? (殺そ)と言われたので話を聞いてくれるかも不安です……。会話の最中に突然切れて襲い掛かってくるかもしれません。
そうなればもう、赤子の手を捻るぐらい簡単に殺されます。殺されたらまた最初からになるので今回の苦労も水の泡です。
結論。――全力で許される事を願う――
お願いしますクラムベリーさん! 許してください! 悪気は無かった事故だったんです!
――と、ここで時間が来たので今回はここまで。ご視聴ありがとうございましたー。
◇クラムベリー◇
斃す。斃す、斃す。ただし、作業の様に単調に殺すのではなく、工夫し効率よく相手を屠っていく。それはまるで試行錯誤しながら遊んでいるように周囲に死をまき散らし、荒々しくに舞う。
時には躱し、時には受け止め、時には攻撃し、出来るだけこの闘争を長く味わえるよう工夫する。そうしてしばらくそう長い時間ではないが戦闘音が辺りに響き、最後の相手を倒し、音が消える。
周囲に動くものが居なくり、クラムベリーの動きが止まると、彼女の相棒ファブが周囲を見回しながら少し疲れた声で話しかけた。
「これで全部ポン?」
「どうでしょう? 近辺の音は聞こえて来ませんが」
「面倒だけど射ち漏らしがあると魔法の国が五月蠅いぽん。もう少し見回りしてから死体回収を呼ぶぽん」
そこで会話を一旦打ち切り、ファブと共に周囲を散策する。
しばらく戦闘していた場所から歩いていると、かすかな地面の揺れを感じその場で魔法を使う。
「急に止まってどうしたぽん。射ち漏らしを発見したぽん?」
「いえ、これは……。どうやら誰かが戦っているようです」
「野良の魔法少女ぽん? 面倒だけど確認はしないといけないぽん」
「そうですね、事情の説明は任せましたよファブ」
木を蹴って飛ぶように音の方に近づいて行く。途中、標的であった魔法生物が斃れているのを見付け、手下人を魔法少女だと断定する。何か物凄い力で引き裂かれたり、胸に穴が開いているのだ、そんな事をできるのは魔法少女位だろう。
「見つけたぽん! あれ? アイツは……」
「ハッピーチェイサーですね。……少し離れて様子を伺いますか」
「同意するぽん。アイツはイマイチ何を考えているか分かり辛いし、この機会に観察でもするぽん」
「となると何処に隠れましょう」
「あの岩の後ろでいいんじゃないぽん?」
「そうですね、見つかる前に隠れますか」
……数分後。戦闘を続けるハッピーチェイサーの姿に飽きてきたクラムベリーは岩の陰で寛いでいた。
生来の耳の良さでハッピーチェイサーがまだ戦っているのは分かっている。そしてクラムベリーから見たハッピーチェイサーは凡庸な戦闘の才能しかないツマラナイ魔法少女ということが観察して分かった。
あれでは殺し合いでも長くは生き残れないだろう。臆病であるなら、魔法で隠れて生き残ることも出来るが、さっきの戦闘で見た表情からは戦闘を好む人間特有の笑みが漏れている。
ファブから聞いた話だと、最近カラミティ・メアリとつるんでいるようだし、群れて粋がる魔法少女には興味は無い。
この戦闘が終われば適当にファブに後の雑務を投げて、自分はねぐらに帰るとしよう。そう自分の中で結論するとハッピーチェイサーへの興味は無くなった。近くで戦闘をしているが目を閉じリラックスして暇を潰す。
…………殺気! 条件反射で手下人の拳を受け止め、威力を地面に流す。これぐらいの攻撃は見なくても受け流せる。そして同時に相手と目が合う。やはりハッピーチェイサーか。
少し腹が立ったので適当に理由を付けて遊んでやろう。
もちろん殺しはしない。まだ楽しい本番ではないのだから……。