まほいく実況プレイー全員生存ルートー   作:独資耶

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生きてます。


五話

 魔法少女育成計画全員生存ルート、始まるよー!

はい、前回は突然のクラムベリーとの遭遇で終わったので、その続きから始めたいと思います。ドナドナと有無を言わさずに連れてこられたのはさっきの場所から少し歩いた、森の中にある見晴らしの良いポッカリ開いた空間。

 

 これから何が起こるのか、ワクワクしねえー!

道中会話をしようと努力しましたが、全て無視されているのでもうコレは覚悟決めるしかないですね……。

 

「さて、いろいろ聞きたいこともあるでしょうが、まずは構えて下さい」

 

 あー、ハイ。終わりました。この一連の流れから経験上、操作する暇もなく急に画面が暗くなってゲームオーバーです。

 本当に、残念ですけど魔法少女「ハッピーチェイサー」の物語はこの動画で終了ですね……。それじゃ、また何処かでお会いしましょう、皆さんさよn―― 

 

「先ほどの戦い、少し見学させて頂きましたが、……まだまだ粗削りですね。先輩魔法少女として、私が少し手ほどきをしてあげます」

 

ん?

 

「どうしましたか? 構えてください」

 

「アッハイ」

 

 あれ? おっかしいなー? なんで指導イベントの流れになってるんですかね? ここは問答無用の殺害イベントでしょう?

 

 ハイ、なんでここで驚いているか疑問に思う視聴者様もいると思うので簡単に説明します。実はこの動画を撮る前に遊んだ時の事なんですけど、わざと序盤でクラムベリーに不意打ちを仕掛けた事がありました。その時は、惜しくも不意打ちは防がれて、ガードの向こうから何か声を掛けられ返事をしようとした瞬間、首をねじねじされてゲームオーバーだったので怒らせる=確定死亡フラグだと思っていたのですが……。まぁ良いか! 検証は後で誰か他のプレイヤーがしてくれるでしょう。

 

 取り合えず降って湧いてきたレベリングチャンスなので有効活用していきます!

 

「――注意してくださいね? 少し厳しくいきますので」

 

「ヒェッ」

 

 

☆音楽家と組手中☆

 

 

 はい、クラムベリーさんとの組手をしている間に組手について説明します。

組手又は特訓と呼ばれるイベントは、組んだ相手とのレベルが離れているほど経験がおいしいイベントです。勿論離れてなくても親愛と経験値は両方に入るので、普通の攻略でもよくお世話になるイベントです。

 ちなみにクラムベリーさんと組手をする条件は弟子になるのが一番手っ取り早いです。まぁ実際にやろうとすると、まず最初に試験で勝ち残らなければいけません。それをすると全員生存ルートに入れないので今回の動画シリーズでは最初から考慮していませんでした。

 

 さて、こうして説明している間にもうハピチェの体力がスッカラカンになりました。地面がひんやりして冷たくて気持ちが良いですね。

 

「根を上げるのが少し早い気もしますが……」

 

「だってー。ヒヤヒヤする攻撃が何度あったと思っているんですかー? 凄い精神的に疲れました。」

 

「これに懲りたら後を付けたりしないことですね。うん? 何ですかファブ」

 

「ちょっとハッピーチェイサーに仕事をお願いしたいぽん」

 

「そうですね……どうですかハッピーチェイサー」

 

 うーん。内容次第ですね。まずは話を聞きましょう。

 

「えっと……その前にいいですか?」

 

「どうぞ」

 

「背中から足をどけて下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆シスターナナ

 

 私が最初に魔法少女に変身した時に感じたのは歓喜だ。全身から溢れ出す全能感、重い身体が羽の様に軽くなり、鏡に映る姿は誰もが羨む絶世の美女。これならば、あの雫にだって負けるはずがない。突然私に近づいてきて、サークルでVIP待遇だった私の立場をとった気に入らない女。必ず元のチヤホヤされた生活に戻るのだ。そう、ここから、ここから私の反撃が始まるのだと、そう思っていたのに……。

 

「アポイントは?」

 

「…………これですか?」

 

「――! 失礼しました、どうぞこちらへ」

 

 場所は夜の繁華街。客引きの声や、陽気なサラリーマンが歩いている通りから一つ離れた通りで。周囲からの視線に気分を良くしながら待ち合わせ場所に行く。姿は勿論魔法少女に変身済みだ。夜の繁華街にシスター服という恰好だが、服のデザインとそれを着こなす少女の組み合わせは何処か神秘的で声を掛けられる事は無い。

 

 指定されたビルは周囲に溶け込んだ地味なビルだ。一応周りに人がいないか気を付けつつに玄関から入る。入口の直ぐ傍でやけに怖い顔が居た。此方を見る目は鋭く、警戒している。本当にここでいいのか心配になりながらも恐る恐る声をかけ、送られたカードを見せる。すると、男は態度を一変させてやけに恐縮しながら案内の男を呼んだ。

 

 薄暗い廊下を先導する男の案内に従い部屋に向かう。

本当にこんな場所に魔法少女なんているのかしら? と疑問を浮かべつつ、なぜシスターナナこと羽二重奈々は怪しいビルに来る事になった発端を思い返した。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「先輩魔法少女によるレクチャー?」

 

「そうぽん」

 

 魔法少女になったあの日。突然変身させられ、ファブによる魔法少女とは何かと説明されている時にその話題は出た。

 

 レクチャ――つまり指導みたいなものかと納得する。私の他にも魔法少女はいるのか。いや居てもおかしくないなと考えファブに話の続きを促す。

 

「レクチャーは向こうが指定した場所でやるらしいぽん。詳細は魔法の端末に送っておくから後で確認するといいぽん」

 

「質問してもいいですか?」

 

「なにぽん?」

 

「指導してくれる方の名前を教えて下さい」

 

「そんなことかぽん。名前は――」 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 カラミティ・メアリ。それが教導役の名前だ。名前を聞いた後、ファブは仕事があるといそいそと端末の中に消えてしまったのでそれ以上のことは聞けず、忙しいならしょうがないと自分を納得させた。

 翌朝、ポストから郵便物を取り出すと、宛先も差出人の名前も書かれてない簡素な封筒が入っていた。正直、気味が悪いと思いつつ、恐る恐る封を開けて中身の確認をすると、中には一枚のカードだけが入っている。一応他にも入ってないか確認してからカードを摘み、まじまじと観察する。普通の紙で出来たカードだ。誰かのイタズラ? 

 

「おはようぽん!」

 

「!」

 

「あれ? 驚かせたぽん?」

 

「お、おはようございます、ファブ」

 

 び、びっくりした……。急に端末から出てきたファブに驚いてしまったが、気を落ち着けて何の用か聞く。

 

「あー、昨日伝え忘れたことがあったからそれを言いに来たぽん。ほら、丁度今手に持っているそのカードの事ぽん」

 

「コレ?」

 

「なくさないように今夜のレクチャーに持ってくるように、だってぽん。それじゃあファブは忙しいからこれで帰るぽん」

 

「あっファブ」

 

  呼び止める間もなくファブが端末に消える。ファブも魔法の国の仕事で忙しいのだろうか?

ともかく気を取り直して財布の中にしまってバックに入れて持ち歩くことにした。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 ここに来るまでの事を思い返していると目の前に扉が見えた。やっとここまで来た。途中まで男が案内していたが、上に行くエレベーターに乗ってからは一人だ。ここまでの道程を思い返し、反社との関係性も匂うし、魔法少女ってあんまりキラキラしたものじゃ無いのかなーと自分の中の魔法少女感を修正する。

 

「失礼します」

 

 ノックをして静かに入室する。部屋の中には正面に向かい合うように黒皮張りのソファーが置いてあり、その奥には多種多様なお酒が壁に整列している。床には複雑な模様の絨毯や黒檀の小机など、部屋の調度品一つとっても高いことが分かった。正面のソファーに西部劇に出て来そうな派手な服装の女性が一人酒盛りをしている。少し怖い。高校の時の入室マナーを憶えていて良かったと自分で自画自賛する。

 

「初めまして、シスターナナと申します。本日はレクチャー受けに伺いました……」

 

 一礼。頭を下げたまま、上目遣いで反応を伺う。目の前の女性――おそらく彼女がカラミティ・メアリだと思うのだが、彼女は此方に視線を向けることなく無視し、そのまま酒盛りを続けている。この後はどうしたらいいだろうか? 勝手に座るのも失礼かもしれないし、相手からの反応が無いと無視されているようで居心地が悪い。そうやって暫くの間、二人の間に沈黙が流れる。お互い初対面とはいえ、この気まずい空気を何とかしたいと考えていると、此方に向かう足音を耳が拾う。足音の主はそのまま一直線でこの部屋に到着すると、適当なノックが扉を震わした。

 

コンコン――ガチャ

 

「戻りました~。お? その子が新人ですかメアリさん」

 

 後ろを振り向き入室してきた人物を見る。よし、雰囲気は怖くない、話やすそうだ。……そういえばこの占い師みたいな服装、何処かで見かけた気が……。記憶の片隅に少し引っかかるものの、とにかくこの気まずい空気を打破してくれた存在にシスターナナは感謝する。

 

「初めまして、シスターナナと申します。えっと」

 

「私はハッピーチェイサー。そこに座っているメアリの相棒よ~。よろしくねシスターナナ。もうメアリとは話しました~?」

 

 返事を返そうとするより早く、メアリと呼ばれた女性が口を開く。

 

「遅いんだよ。アレは買ってきたかい?」

 

「むふふ、ばっちり確保しておきました~。もう開けちゃってもいいですか?」

 

 そう返すと新たに入室してきた魔法少女は手提げ袋からなにやら液体が詰まった瓶とコップを取り出し注ぐ。これは……オレンジジュース?

 

「オイ……酒は?」

 

「もちろん買って来ましたよ。でも魔法少女は酔わないですし~、こっちの方がよくありません?」

 

「チッ、後で付き合えハピチェ」

 

「わかりました~。それじゃあシスターナナさん、立ちっぱなしも辛いでしょうし、どうぞここに座ってください」

 

 そう言うと彼女もソファーに座り、隣に座るように手招く。

 

「その……失礼します」

 

腰を降ろしびっくりする。ふかふかだ。

 

「嫌いなものがあったら言ってね」

 

「は、はい」

 

 私が座っている間に目の前にコップが並べられ、ジュースが注がれていく。更にはおつまみやお菓子が配膳され、机の上は一杯になった。

 

「はい、それじゃあこの出会いを記念して歓迎会をしたいと思います! いいですか~? かんぱ~い」

 

「か、乾杯」

 

「……乾杯」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「――でねー」

 

「そうなんですね」

 

 歓迎会という名の飲み会? 正直会うことに少し緊張していたシスターナナだが、突然始まった歓迎会のおかげで緊張もとれ、現在はリラックスしながらハピチェの話を聞いていた。内容は最近の面白い出来事について聞かせてもらっている状態で、おつまみである唐揚げを食べながら楽しんでいた。唐揚げ美味しい。チップスバー美味しい。

 

 カラミティ・メアリも時折相槌を打ちながら、静かに話を聞いている。

 

「――という変なおじさんでね~。あ、もうこんな時間。ナナさんは時間大丈夫?」

 

壁にかけてある時計を見ると、時刻は0時を過ぎていた。

 

「大丈夫です。私、一人暮らしなので」

 

 どうせ明日は大学が休みだ。奈々が所属しているスキーサークルもどうせいつも通り麻雀かゲームをして過ごしているだろう。一日ぐらい顔を見せなくても問題ない。―― 一瞬雫の存在が頭によぎったが、無視する。魔法少女になったのだ、もう気にする必要もない。

 

「そっかー。それじゃあ、今から魔法少女のレクチャーをするから聞いてね?」

 

「えっと、説明して下さるのはメアリさんじゃ……?」

 

「あー、それ元々はメアリがする話だったんだけどねー」

 

「いいかいお嬢ちゃん?」

 

 そこで今まで静かに飲んでいたメアリは口を開き、此方を睨みつけ、室内の空気が張り詰める。

 

「私からは一つだけだ。カラミティ・メアリに逆らうな。Оk?」

 

「は、はい!」

 

「それをよく覚えときなよ嬢ちゃん。もし逆らったらコイツで躾けてやるからさ」

 

 いつの間に向けられていたのだろうか。メアリの手にはゴツゴツした拳銃が握られていた。

やっぱりこの人は危ない人だ。メアリに出会った時の第一印象そのままな事を確認する。

 

「あー、ごめんねナナちゃん。メアリは上下関係に厳しくてね~。でもそんなに怯えなくてもきちんと敬意をもって接すれ怖くないから」

 

 向けられた銃口を、ハッピーチェイサーがやんわりと手の甲でナナから逸らす。張り詰めていた空気が和らいだ。

 

「ふん。生意気なら焼き入れてやろうかと思ったんだがね」

 

「それじゃあ、レクチャーじゃないよ」

 

 ハッピーチェイサーはどうだろうか。第一印象からここまで、物腰柔らかい人物なのは分かったが、とてもメアリとつるむようには見えない。それにメアリに言われたばかりだが、

ハッピーチェイサーは対等に話している。

 

「あ、ごめんごめん。メアリが横やり入れるから話が脱線したよ」

 

「おい」

 

 加えてお互いに軽口を交わせるくらいには親しいらしい。まぁそこはコンビを組んでいるせいなのかもしれないが。

 

「最初に怖がらせたら話の内容も入って来ないでしょう? それじゃあ説明するから聞いてね?」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 夜の民家の上をスイスイと飛ぶように移動する。魔法少女になってから、高い場所、怖い場所などに居ても恐怖を感じなくなっていた。

 

 まぁ自覚したのは今日のレクチャーのおかげだが。

 

「マジカルキャンディーのためかぁ……」

 

 今日言われた事が無意識に口から洩れる。ハッピーチェイサーに言われた事だ。マジカルキャンディーを効率よく集める為に協力しないか? と。別に断る理由も無いので了承したが、その為に場を整えるとはどうゆう意味なのだろうか?

と、考えているうちに家に着いた。

 まぁ考えていてもしょうがない。気持ちを入れ替えよう! 奈々はぐっすり寝る為にホットココアを飲んで寝た。

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