Fate/Grand Order 【幕間の物語】聖女と天才物理学者   作:banjo-da

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例の如く衝動的に書き始めました。
最初の方はストックあるので定期的に、その後はオーズと同時進行でゆっくり書いていこうと思います。




ベストマッチなやつら?

 

「マスター、少し宜しいでしょうか。」

 

始まりは、何時もと変わらぬ昼下がりでした。

各特異点に残った不安定な箇所───所謂微小特異点の原因を特定し、それを解消する為のレイシフト。

前日を種火集めの周回に励み。

そして本来オフの筈だった今日の午前中。急遽特定されたそれを解決するべく、マスターはレイシフトに赴かれていました。

 

元々私はそんな彼女を労うべく、戻られたマスターをお茶に誘っただけだったのです。

 

─────それがまさか…あんな事態を引き起こしてしまうなんて。その時の私は夢にも思っていませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お茶会?」

 

「はい。キャットさんから"良い茶葉が手に入ったのでお裾分け"…と譲って頂きまして。」

 

ある日の午後。レイシフト続きでぐったりしていた『人理継続保障機関フィニス・カルデア』所属の新人マスター『藤丸立香』は、一人の少女に声を掛けられていた。

その相手は、『ジャンヌ・ダルク』。

人類史に生じた七つの特異点。それらを巡る旅の中で出会い、後にサーヴァントとしてカルデアに召喚された彼女は、立香の大切な仲間である。

彼女の絹の様に滑らかな金髪は、同じ女性である立香から見ても魅力的だ。性格は穏やかで物腰柔らかながらも、凛とした芯の強さを兼ね備えた少女。本人は決して認めはしないが、"聖女"という評価にこの上無く相応しい…と、立香は思っていた。

 

「────マスター?どうされました?」

 

 

「ううん、何でもない。御新規様向けに、脳内で人物紹介してただけだよ。」

 

「は、はぁ……?仰有っている意味はよく分かりませんが、きっと何か大切な事なのですね。」

 

キョトンと首を傾げてみせるジャンヌ。それはそれとして、話を戻すとお茶会の誘いだった筈。

 

「勿論喜んで!でも、お茶の葉なんてよく手に入ったね?最近のレイシフトで、そんな機会無かったと思うけど…。」

 

「キャットさんが言うには、カルデアで作ったそうですよ?レイシフト先で資源を回収するにも限度は有るので、せめて嗜好品位は自家栽培出来ないかと…前々から有志の方々で取り組んでいたらしいのです。」

 

「有志?」

 

「農作業に覚えのある方々です。」

 

立香の脳裏に"とある夏の思い出(YARIOの姿)"が蘇った。

 

「それと、普通に栽培していたのでは時間が掛かり過ぎるので…キャスタークラスの方々で特殊な成長促進剤を開発し────ご安心下さいマスター。今回はパラケルススさんもメフィストフェレスも開発から外しています。メディアさんとキャットさんが監修して、エミヤさんが加工と毒味まで済ませて下さってますので。」

 

立香の表情から何かを悟ったジャンヌが慌ててフォローを入れる。

トラブルメーカーを徹底的に排除し、信頼出来るメンツのみで構成された万全の生産ライン。ならば問題は無いだろう。

 

「それなら安心…じゃあ、お邪魔させて貰おうかな。」

 

「はい!では、食堂に参りましょう。既にマリーやマシュさんにも声は掛けてあります!」

 

目を輝かせ、花開く様な笑顔を浮かべ。ジャンヌは立香を伴い歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ戦兎。」

 

「なんだ万丈。」

 

「俺達、何で野郎二人でパーティーしてんだ?」

 

「こっちが聞きたいよ。」

 

最低限の照明のみを灯した、倉庫兼研究室兼住居。

日頃の収入が芳しく無い彼等にしては、珍しく豪勢な食事をテーブルに並べ。

そんな食卓に向かい合うのは男性二人。明らかにスペースが余ってる。

 

「ダウンフォール鎮圧のお疲れ様パーティーしようって準備してたのに…美空と一海はデート。幻さんと紗羽さんもデート。残ったのは俺らだけってワケ。」

 

やれやれ、と嘆かわしそうに首を振る彼の名前は"桐生戦兎"。

嘗ては旧世界で戦争に繋がる兵器を幾つも開発した張本人『葛城巧』と呼ばれる科学者だったものの、全ての黒幕である地球外生命『エボルト』によってその顔と記憶をリセットされる。だが、記憶を取り戻した後も、その罪から逃げないと決断し───険しい道程の末、仲間達と共にエボルトを撃破。エボルトによる全ての悲劇が起こらなかった世界、即ち『新世界』を創造した英雄だ。

 

「お前が勿体ぶってサプライズにしようとしたからだろうが!呼ぶならせめて出前取る前にしろよ!!」

 

呆れ顔で戦兎に向かい合う青年"万丈龍我"。

彼もまたエボルトの引き起こした惨劇の被害者にして、その正体はエボルトの半身とも呼べる存在。その正体のせいでエボルトから脱獄犯に仕立て上げられ、その後も徹底的に追い詰められ続けてしまった。初めは自身の冤罪を晴らすべく身勝手な言動が多かったものの…軈て彼は、行動を共にした戦兎の姿に影響され、精神的に大きく成長を遂げた。

 

共にエボルトと戦い続けた彼等は、互いに互いを認め合う相棒(ベストマッチ)となったのだ。

 

「うるさいよ!大体それ言うなら、お前だって出前頼み過ぎなんだよ!どんだけ食うつもりだったんだよ!」

 

「来る人数考えたら普通の量だろうが!三羽ガラスとか内海さんとかも入れた人数だ!」

 

「三羽ガラスは一海のデートを追っかけるってさ…。」

 

溜め息を漏らしながら、戦兎は三羽ガラスと最後に交わした言葉を思い出す。

 

 

 

『カシラがちゃんとみーたんをエスコート出来るか不安だしな…。』

 

『ていうか、多分無理。』

 

『カシラ、前にみーたんとの買い物に何着て行ったと思う?───タキシードだよ。

カシラはやっぱ、俺達が付いてないと何も出来ないからな……。』

 

 

 

話を聞く限り、間違い無く一海(あのドルオタ)何かやらかしかねない。

これに関しては戦兎も彼等に100%賛成だった。

 

「……そんなワケで、今頃あいつら二人の後ろから見守ってるだろうさ。」

 

「ほーん…で、内海さんは?」

 

「内海さんは………忘れてた。」

 

哀れなり、内海成彰。

そんな戦兎にジト目を向けつつ、龍我は携帯を取り出す。

 

「…今からでも呼ぶか?」

 

「……いや。ここに内海さん一人加わっても大差無いだろ。もう料理冷めちまうし、居ない奴等はほっといて食べよう。」

 

「……だな。いただきます。」

 

切ない結論に至った二人は、自分の皿に料理を取り分け始めた。

黙々と食事を進める男二人。何とも言えない絵面の中で、戦兎は愚痴をこぼす。

 

「大体、俺達は愛と平和の為に戦う仮面ライダーだぞ?揃いも揃ってデートデートデート…ったく、色恋にうつつ抜かしてる暇なんて無いっての。」

 

「愚痴が完全に部活一筋でモテない高校生じゃねぇか…ま、偶にはこういうのも良いんじゃねぇか?」

 

「俺はお前と二人きりのパーティーより、可愛いレディと飯食いたいけどな。」

 

「人がフォローしてやってんのにそれかよ!?」

 

「大声出すな。行儀悪いぞ。」

 

他愛の無い会話が続く。

まあ戦兎としても、本音はこういう時間も悪くは無い。

二人は一年以上苦楽を共にしてきた。互いに支え合い…心折れかけた時も、相手の姿に助けられてきた大切な仲間同士だ。だが、お互い何となくそれを口に出したら負けだと思ってる。

 

「にしても、あの幻さんと紗羽さんがね…仮面ライダーもリア充だらけになっちまって。はー、やだやだ。」

 

「そういう事言ってるからモテないんじゃねぇのか?」

 

自棄食いの様に料理を頬張る戦兎へ、龍我の悪意無き言葉が刺さる。戦兎は噎せた。

 

「ゴホッ、ゲッホ…んん!べ、べべべ別にそんな事ねぇし!俺だってその気になればリア充くらい余裕だし!何たって俺は、イケメン天ッ才物理学者だしな!ただ、今の生活じゃ出会いが無いだけだし!」

 

「モテない高校生の次はモテないサラリーマンみたいになってんぞお前。」

 

「うるっさいよ!大体お前人の事モテないモテない言ってるけど、お前だって今は一緒だからな!?香澄さんが今付き合ってるのは、こっちの万丈なんだから。」

 

明らかに動揺した様子で早口になる戦兎。

 

「んだと…!……あん?」

 

反論しかけた龍我の携帯が鳴る。

箸を置き、龍我は席を外しながら電話に出た。

 

 

 

「お、これ旨いな。唐揚げ、タルタルソース…ベストマーッチ…。」

 

「っと、悪いな。───ってお前、俺の取ってた寿司食ったな!?折角のトロが…!」

 

数分後。一人で舌鼓を打っていた戦兎の元へ、電話を終えた龍我が戻って来る。

 

「細かい事気にしてんじゃないよ。ハゲるぞ?

───で、誰だった?」

 

「ハゲねぇよ!!……なんか、由衣が買い物に付き合って欲しいってよ。悪い、ちょっと行ってくるわ。」

 

神は無情だった。

龍我自身は、未だに旧世界での小倉香澄との思い出を大切にしている。故に、新世界で紆余曲折の末に龍我へとアタックをかけ始めた馬渕由衣に対して、どこまでの想いを抱いているのかは分からないが……。

 

「完全に俺だけ残り物じゃねぇか…。」

 

「あ?何言ってんだ?俺と由衣はそんなんじゃ……。」

 

「あーはいはい、もう分かった。ほら、良いから早く行け!あんまり女性を待たせるモンじゃないよ…筋肉バカのお前にも、そのくらいは分かるだろ?」

 

「誰が筋肉バカだ!俺はプロテインの貴公子

─────万丈龍我だ!」

 

「お前"貴公子"の意味ちゃんと分かって使ってる?」

 

騒々しいやり取りの末。何時からか龍我(バカ)が気に入ってるらしい名乗りに突っ込みを入れつつ、戦兎は出掛けて行く相棒(バカ)を見送る。

 

バタン、と入り口の戸が閉まると、彼は何とも言えない虚無感に襲われた。

 

「……今からでも内海さん呼ぼうかな…。」

 

一人になったことで、どう考えても食べ切れない料理にラップを掛けていく戦兎。切ない。

気晴らしに何か作ろうか…そんな事を考えながら彼が残った料理を平らげていると────。

 

「!?眩し…ったく。ぼっち飯してる天才に、今度はパンドラパネルまで嫌がらせするのかよ…。

─────パンドラパネル?」

 

突如輝き始めた『白いパンドラパネル』。壁に掛けてあったそれに、戦兎は慌てて駆け寄る。

以前このパネルが勝手に輝いた時は、旧世界から新たな侵略者がやって来た。その時の経験を踏まえ、警戒しながら幾つかのボトル(・・・)ドライバー(・・・・・)を手に取る。

 

「何でパンドラパネルが……」

 

訝しげに戦兎が呟く。

直後、パネルが一際大きな輝きを放ち、その光が彼を呑み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いっけねぇ…危うく財布忘れる所だったぜ。………あん?戦兎?おーい!」

 

数分後、戻って来た龍我が目にしたものは。

食べかけの料理が載った食卓はそのままに、無人となったアジトだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…。」

 

「あれ…?」

 

広い草原。澄み渡った青空の下、少女と青年が目を覚ます。

ほぼ同時に起き上がる二人。

二人はまるで示し合わせたかの様に、キョロキョロと辺りを見回した。

 

「私は…確かマスターとお茶をしていて…。サーヴァントなのに急に眠気が襲ってきて…。

─────え?」

 

「俺は…確か白いパネルの光に…。

─────ん?」

 

ここへきて漸く互いの存在に気付いた二人。両者咄嗟に後退り、恐る恐る相手の様子を窺う。

 

「えっと…どちら様?え、ここ何処?てかその服……コスプレ?」

 

「こ、コス…?よく分かりませんが……貴方こそ一体…。それに、ここについては貴方の方がお詳しいのかと…。」

 

青年──戦兎の問いに戸惑う少女。戦兎からすれば、未だ年若い彼女が鎧を身に付け、先端に槍の付いた大きな旗を手にした姿はコスプレ以外の何にも見えないのだが…。

そんな彼の考えは、少女──ジャンヌ・ダルクにはピンと来ない。

 

とはいえ、互いの様子から見えてくるものも有る。

戦兎には、彼女が趣味でこの格好をしているワケでは無い事が。

ジャンヌには、彼の発言から自身の霊基が時代に即した服装では無いという事が。……とはいえ、今の彼女にはどうしようもない事だが。

何より、お互い似た様な立場だという事も理解した。

 

「……確かに。人に名前を尋ねる時は、自分から名乗らないとな。

───桐生戦兎だ。イケメン天才物理学者だが、生憎俺は気付いたらここに飛ばされててね…状況はサッパリ分かってないのが実情だ。」

 

「戦兎さん…ですね。私は……レティシア(・・・・・)。私も先程まで…その、同僚達とお茶会をしていたのですが。急な眠気に襲われて、目が覚めたらここに。」

 

何気に悪気も無く"イケメン天才物理学者"の部分をスルーされた。少し恥ずかしい。

無論口には出さず、ほんの一瞬だけ悲しそうな顔をした後、真剣な表情に戻った戦兎は溜め息を漏らす。

 

「……そっか。つまり、お互い情報は持ってない…って事か。なら、こうしていても仕方無い。こういう時は足で稼ぐに限る…現場百回、ってな?」

 

「現場百回…?」

 

「知り合いのゴースト君が、そのまた知り合いの刑事さんから教わった言葉だってさ。

───さ、行こうか。」

 

ベージュのロングコートを翻しながら、戦兎は歩き出す。

そんな彼を不思議そうに見詰め、ジャンヌもまた戦兎を追って歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

桐生…戦兎さん。不思議な人です。

どこか軽い調子の人にも見えますが、悪い人では無さそう。それに、恐らく頭の回転も早い───この現状において、パニックを起こす事も無く的確に状況を見極めようとしている。

もしかしたら、あの軽い態度も、自分自身を…或いは私を不安にさせない為のものなのかもしれません。

 

とはいえ、私は彼に一つ嘘を吐きました。

───レティシア。嘗て、別の私が参加した聖杯戦争において、私の依代となった少女の名前。

マスターも居ない。カルデアとの通信も繋がらない現状において、私は真名を明かす事を避け、咄嗟に彼女の名前を騙ってしまった。

その事に罪悪感を覚えましたが…未だ彼を見極めるには情報が足りない。もし彼が信頼に足る人物なら、いずれ機会が有れば真名を明かそうと思っていたのですが。

 

─────その機会は、私が想像していたより遥かに早く訪れる事となったのでした。




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