Fate/Grand Order 【幕間の物語】聖女と天才物理学者   作:banjo-da

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投稿に時間が掛かってしまい申し訳ありません。
この大変な時期、国民一丸となって自粛している中…私は愚かにも外出を繰り返してました。

トゥリファスに始まり、アトランティス、オリュンポス、越後から日本一周、なんか海に面してる秋葉原…幸い感染症には全く罹りませんでしたが、Apocryphaコラボイベント復刻という絶好のタイミングに投稿を逃し、本当に申し訳ありませんでした。
元々次の話と連投するつもりでストックしてた部分ですが、あまりに間が空いたので先に投稿します。




嗤うゲームメーカー

 

 

 

火星で発見されたパンドラ以下略─────!

おい戦兎助けてくれ!!

 

「雑だなぁ!?どうしたんだよ一海。」

 

この前のあらすじ紹介…実はな、あれがみーたんにバレちまってよ…。

 

「あー、あの気持ち悪いやつ。」

 

必死に謝って許して貰ったは良いが…。

デート中に、"私達、どっちの方が美人?"なんて聞いてくる女共に遭遇してよ。今度はその反省を活かし、"どっちもみーたん程じゃねぇ!"って男らしく言ってやったワケだ。

 

「いや何してんだお前。───で?」

 

そしたらその女共、機嫌悪くなっちまって…"コノートの女王"だの"美の女神"だの言うソイツらに追われてんだ!

 

「あーらら。乙女心は難しいってワケですね。

───さて!そんな相手が悪かった一海はさておき、本編をどうぞ!」

 

あ、オイ!戦兎テメェ何纏めて……げっ、見付かった!?あ、止めて!金星はダメ!戦車もダメ!!

ひっ……ア"ァーーー!!??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"解体聖母(マリア・ザ・リッパー)"!!」

 

『エレキスチーム!』

 

互いの刃が交差する。

呪いを纏ったジャックのナイフと、電流を放つスタークのブレード。その衝突は凄まじい衝撃を生じさせるも、膂力で勝るスタークは容易くジャックを弾き飛ばした。

 

「きゃっ…!」

 

戦場に見合わぬ可愛いらしい悲鳴をあげながら、ジャックは後方へ追いやられる。

その隙を逃す事無く、スタークは手持ちの武器をトランスチームガンへと切り替え、ジャック目掛けて躊躇無く引き金を引いた。

射出される光弾はサーヴァントに致命傷を与える程の物では無かったが、流石に相手が悪い。

両手両足、そして顔面───スタークは単純に胴体を狙うより、彼女の自由を奪う事に繋がる箇所ばかりを執拗に狙撃していた。

紙一重で躱し続けるジャックだが、そもそも彼女は戦士ではない。

尤も、正確には、『ジャック・ザ・リッパー』とは正体不明の殺人鬼。仮に"狂戦士"のクラスで召喚でもされていればその限りでは無いのだが…。彼女はジャックの正体として挙げられる中の一つ"悪霊"、その側面に焦点を当てられ、棄てられた子供達の怨念が集合体と成った存在。故に、戦士としての高い技量など持ち合わせてはいなかった。

 

加えて、今の状況は致命的なまでにジャックに相性が悪かった。

 

「…なん、で…?私達の宝具が全然効かないなんて…?」

 

『全然、でもねぇぜ?…成程、これが呪いってヤツか…なんかムカムカするな。地球に来て10年、病気一つしなかった健康体に何してくれやがる?』

 

不快そうに吐き捨てるスターク。だが、そもそもサーヴァントの宝具と正面からやり合い、その程度で済んでいる事が異常なのだが。

 

『───ま、相手が悪かったと諦めろ。なぁに、気持ちは分からんでもねぇぜ?そりゃ美味しい話を前に、焦る気持ちは誰だって有るだろうさ。俺ですら…エボルドライバーを手にしようと焦るあまり、政治家の坊っちゃん相手に遅れ取っちまったりしたからな…お前が恥じる事じゃあない。』

 

「…何の話?」

 

『───お前は、ご馳走を前に油断した。それが運の尽き…って話だよォ!』

 

『ライフルモード!』

 

ジャックを嘲笑いながら、スタークはトランスチームガンにスチームブレードを連結させる。流れる様な手捌きでタイムラグをほぼゼロに抑えた彼は、即座に狙撃を再開。二丁の武器が一つとなったライフルは、先程までより苛烈な銃撃を可能とした。

 

そもそも逃げた筈のジャックがまんまと姿を現した理由は、スタークの立てた作戦に有る。

ジャンヌの話から彼女達に強烈な"母親への帰胎願望"が有る事を知った彼は、肉体を女性のそれへと偽装。

女性はファウストとして活動していた頃に、何かの保険に使えるかと思い解析した被害者の一人だ。結局戦兎達相手に使う事は無かったが…遺伝子レベルで自在に偽装可能な彼は、その時の情報を完璧に再現してみせた。

 

「やっ…何なの、もう…!」

 

『お前は用心深いって聞いてたからなぁ…聖杯大戦じゃ、基本昼は出て来ねぇって聞いてたから焦ったよ。───だから俺は、"絶対にお前に勝てなそうな女"を演じる必要が有った。……ま、霧に幻覚効果が付いてた所までは知らなかったが。』

 

戦兎の中で傍観していた際、エボルトもまた町のルートを完璧に記憶していた。故に、その記憶通りに逃げるフリをしていたら、行き止まりにぶつかり少し動揺したのは事実。───結果的には彼女を誘き出せたので良かったが。

 

『お前の宝具はナイフそのものじゃねぇ…要は強烈な呪いだ。その効果は、"ジャック・ザ・リッパーの犯行現場"を再現する事で最大の効果を発揮する。───だから俺は、お前をその条件が当て嵌まらない状況に引き摺り出す事にしたのさ。…流石に、地球の神秘だの呪いだのは俺も専門外なもんでね。』

 

一つ。夜である事。

二つ。霧の中である事。

そして三つ。対象が女性(・・)である事。

彼女達の宝具は、それらを全て満たした時こそ真価を発揮する。

霧を取り除くのは不可能だ。ジャック自身の宝具で発生させられる以上、それらを吹き飛ばせるボトルを持たないエボルトや戦兎には避けようが無いのだから。

だが、他の条件を取り除くのは容易い。なにせエボルトは地球外生命。まあ、ブラッド族にも性別は有るが…そちらの場合で判定されても彼は男性だ。女性の体で誘き寄せ、ジャックが餌に掛かれば男性に戻る…なんて芸当が可能なのだ。

そしてもう一つ。今のジャックは、言わば主を持たないはぐれサーヴァント。如何に狡猾と言えど、その本性は無邪気さと残酷さを兼ね備えた子供そのもの。指揮する知将も、魔力の供給源たる魔術師も居なければ、彼女は外部から魂喰いで魔力を得る他無い。

 

『お前らは前の大戦の記憶とやらを保持してるらしいな?聞いたぜ…そこでお前は随分派手に食い荒らしたらしいじゃねぇか?』

 

「だったら何なの!?悪い!?」

 

『いーや、悪かねぇさ。俺は戦兎達と違って、正義感で動くようなセンチメンタル持ち合わせちゃいねぇからな。……ただ、無作為にやっちまったのはマズかったなぁ?今のお前は自分の食欲を抑えられない。何処まで記憶が残ってるかは知らねぇが、半端に成功体験を覚えてるせいで油断した───"この女なら大丈夫"…そんな風に思ったろ?だから昼なのにノコノコ出て来ちまった!』

 

『コブラ!スチームショット!コブラ!』

 

狙撃の手を止めず、嘲る様な声音でジャックを煽るスターク。それに彼女が苛立った一瞬の隙を見計らい、ライフルへとコブラロストフルボトルを装填。

耳を劈く程の大音量で電子音声が発せられると共に、彼女目掛けて強烈なエネルギー弾が撃ち込まれた。

 

「きゃあぁぁぁ!?」

 

回避を試みたジャックだが、その一撃はコブラの如く宙をうねり彼女の回避の先を行った。爆風と共にジャックの小さな体は吹き飛ばされ、受身を取る事も出来ずに地を転がる。

 

『お前は強いぜ?だが、そりゃ"サーヴァント"って枠組みの中に居る連中は皆そうだろう。その枠の中で言えば、暗殺特化のお前が戦闘に引き込まれた時点で大した脅威じゃあない。───仮に俺が前情報無しの状態で挑んでたなら話は違っただろうし、或いは最初の奇襲が成功してりゃアドバンテージも取れただろうさ。……だが、お前は失敗した。毎回自分の能力隠すスキルは厄介だが、それを対処した俺に敵うワケ無いだろうが?』

 

呆れた声音で言って聞かせるスターク。

既に対処の施しようが無い程、ジャックは完全にスタークの術中に嵌まっていた。

実のところ彼女自体、知能が低いかと聞かれれば決してそうではない。ただ大戦時の彼女の活躍には、その能力をフルに引き出していたマスターの存在も大きかった。それを失った今のジャックが、彼のペースに引き込まれたまま戦闘を行った時点で、勝ち目はほぼ無いに等しい。

 

「……お前、今度は必ず殺すから…!」

 

敵わない。その結論に達した彼女の行動は早かった。

指向性を持たせた霧を用いて、自身とスタークを覆い隠す。濃霧により、完全に視界を奪われたスタークは彼女を追う事は不可能。その隙に、ジャックは素早く身を翻して─────

 

『次なんてねぇよ。』

 

瞬間、霧の中でもハッキリ見える程、スタークの全身が赤く輝きを放つ。その正体は、彼の放出した破壊のエネルギー。

燃え盛る炎の如きそれは、一瞬で辺りの霧を吹き飛ばした。

 

「────え…?」

 

『流石に町全体の霧を晴らすのは不可能だが、この程度なら今の俺でも可能だ。エボルがありゃ、もっと強烈なのお見舞い出来たがな…無い物ねだりは不毛ってモンだ。』

 

完全に虚を突かれ、振り向きながら固まるジャック。その隙は、時間にすればほんの数秒にも満たなかっただろう。

───だが、彼にはそれで充分だった。

 

『アイススチーム!』

 

『あらよっとォ!!』

 

ライフルを分解し、再びブレードへと戻したそれをスタークが振るう。瞬時に飛び退こうとしたジャックだが、一手遅かった。

僅かに回避が間に合わず、スチームブレードの刃が手足に掠る。空中でバランスを崩しながらも、致命傷を避け距離を取った彼女は、再び逃走を図るべくスタークへと背を向ける。

 

「……!?なに、これ…!」

 

───が。自らの手足を見て驚きに目を見開きつつ、同時に苦悶に顔を歪めるジャック。刃の掠めた箇所は完全に凍結し動かない。サーヴァントである以上、冷気に体温を奪われる…という事は無いだろうが、この状況で肉体の自由を奪われたというのは致命的だ。

 

「───何で!?お前、何で私達に攻撃が効くの!?私達は、神秘の無い攻撃じゃ死なないのに…何で私達は死にそう(・・・・)なの!?嫌だよ!助けてお母さん!!」

 

最早この状態では、目の前の怪人から逃げる事すら敵わない───絶望的な状況を前に、ジャックは声を震わせる。

 

もしこれが、相手が戦兎なら躊躇したかもしれない。───だが、運命とは残酷なものだ。

罪の無い子供をスマッシュにする事すら容易くやってのける(スターク)に、この程度で迷いが生じる筈も無く。寧ろ彼はつまらなそうに鼻を鳴らすと、彼女の眉間へトランスチームガンの銃口を押し当てた。

 

『…騒ぐなよ。お前だって、何の罪もねぇ命を平気で喰らって来たんだろうが?今更死が怖くなったか?』

 

まるで興味を失ったかの様に、酷く冷たい声音で吐き捨てると、スタークはトランスチームガンへコブラボトルをセットする。

 

『…一つ教えてやるよ。お前らサーヴァントに、俺達の攻撃が効く理由なんざ知る筈もねぇ…。───だが、推測は可能だ。大方、"地球の外からもたらされた技術"であるフルボトル…俺達の扱う武器は科学だが、その根底は神秘に近い存在だ。だからお前らにも攻撃が効く。

───事実、そっちにUFOを呼んで攻撃するキャスターも居るんだろ?なら俺らの力も似た様なモン…って判定されても可笑しくは無い。』

 

「…ゆー…ふぉー…?何の話…?」

 

『───おっとぉ!こりゃ聖女に聞いた、カルデアとやらの話だ!悪かったな、知らない話を例えに持ち出して。』

 

ぺちん、とおどけた仕草で自らの額を軽く叩いて見せるスターク。

一瞬の内に緩んだ彼の雰囲気に、ジャックもほんの僅かばかり気を緩ませ───────

 

『スチームブレイク!コブラ!』

 

「────ッ!!……あ…や、やだ…!」

 

『安心しろ。もう知らない話はしねぇよ。

───というか、お前と話すのもここまでだ。』

 

先程までとは打って変わって、彼は実にフレンドリーな声音で言う。その手に握ったスチームガンは、返り血を浴び所々が赤く染まっていた。

 

「おか……さ…。」

 

『会えるさ…安心しろ。地獄でたっぷり可愛がって貰えば良い。───Ciao(チャオ)。』

 

魔力の粒子に還りつつあるジャックからジーニアスボトルを無理矢理奪い取り。

スタークは軽く片手を挙げ、陽気な仕草で彼女を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死者の影に隠れてたが…モードレッドの言う通り、行方不明者も相当なものだ。ただ、大半は魔獣にやられたと考えられてる。そして行方不明者が多発するのは、決まって霧が出た時みたいだな…。」

 

「魔獣による住民の惨殺はそれ自体が目的であると同時に、アサシンの襲撃をカムフラージュしていた…という事ですね。」

 

ホークガトリングフォームに変身したビルドは、町の上空を飛翔しながら抱えたジャンヌと言葉を交わす。

 

「恐らく天草四郎は、ジャックの殺人に合わせて魔獣を放っていたんだろうな。だから人々は町の中で起きている異変に気付けなかった…正確に言えば、町の外の魔獣に意識を誘導されていた。

───多分、今日のジャックの暴走は奴にとっても予想外だった筈だ。」

 

調べて分かった事だが、戦兎達がやって来るまでの間にこれ程の霧が町を覆い尽くした記録は無かった。ただその間、夜の殆んど人が出歩く事が無い時間帯には霧が発生していた記録が残っている。

推測だが、彼の元を逃げ出したジャックは、その目を盗んで細々と人々を襲っていたのだろう。そしてその後処理を、ジャックも知らぬ間に彼が担っていたという事だ。

だが、今日のそれは今までとは状況が違い過ぎる…恐らく空腹に耐えかねた彼女の暴走だろう。人々が外を出歩いて居なかったのは、これまでからの経験では無く、単純に霧の毒性に気付き皆一斉に避難したに過ぎない…と彼は見ていた。

天草四郎にとって唯一の誤算。とはいえ対処する様子も見られない辺り、最早彼にとってこの状況は問題では無いのかもしれない。

 

「計画を最終段階に移行するつってたからな…多分、俺達の襲撃で早まった事を差し引いても、元々今日明日にでも動くつもりだったんじゃないだろうか。」

 

「それはつまり、隠れて魔獣を作る必要が無くなった…セイバーの言葉から察するに、必要なだけの魔力を得たという事ですね…!」

 

表情を曇らせる彼女を抱えながら、ビルドは町の端に位置する裏通りへ着陸すると、変身を解いた。

 

「そういう事だろうな。だが、お陰で奴等の拠点らしき場所を突き止められた。」

 

彼等の目の前に立つのは、古びた一軒の家。一目見ただけでは普通に通り過ぎてしまうだろうが…。

 

「やっぱりな…古びてる(・・・・)。」

 

「……?それが、何か…?」

 

「前にも二人で話をした通り、この町には古い建物と新しい建物が混在している。…けど、この建物は他の古い町並みとは違う。新しい方の町の建物が(・・・・・・・・・・)経年劣化した古さ(・・・・・・・・)だ。…つまりこの建物だけ、他の新しい町並みより先に、ここに現れた物と推測出来る。」

 

無論仮定の一つに過ぎない。だがこの仮定を前提として推測すれば、この特異点の謎の多くが解明される。

 

「仮説を立てたら、後は実証するだけだ。───行こう、ジャンヌ。」

 

足を止めている時間は無い。

ジャンヌは力強く頷き、ゆっくりと扉を開いた。





謝罪から始まった回でこんなこと言うのもなんなんですけど、水着沖田さんも水着メルトも水着獅子王もえっちですね。
水着アナスタシアと水着ポルクス待ってます。

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