Fate/Grand Order 【幕間の物語】聖女と天才物理学者   作:banjo-da

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ご感想で頂いた所持ボトルに関してですが、戦兎が今持ってるのは
・ラビットタンク
・ゴリラモンド
・ホークガトリング
・スマホ・ライオン
・他各種強化アイテム(クローズビルド除く)
です。
作中で理由含めて語るシーンは有りますが、まだ先になりますので。持ってるボトルだけ伝えても特に内容に変動は無いですし。
ちなみにヒロインがクリスマス鯖だったら、幸運判定の結果次第でキャラデコ食べてサンタクロースフルボトル入手する展開もあったかも!(適当)


アポクリファの記録

 

─────えっと、これを読めば良いのですね?

 

仮面ライダービルドであり、天才物理学者の桐生戦兎は、ある日白いパンドラパネルの力で特異点へと飛ばされてしまう。そこで出会ったのは、人理焼却を目論む魔術王と戦う組織"カルデア"に所属するサーヴァントの一人、ジャンヌ・ダルク。

共に特異点を攻略し、彼女をカルデアへと送り届けると誓った戦兎だったが、何と知らぬ間に彼女のマスターとして契約を交わしていて───。

 

「おい戦兎!何だこの可愛い子は!」

 

「うぉ、一海!?何って、彼女が今説明したジャンヌだよジャンヌ。ほらジャンヌ、この気持ち悪いドルオタにご挨拶して。」

 

───初めまして。サーヴァント・ルーラー。真名をジャンヌ・ダルク。貴方とお会い出来た幸運に感謝を!

 

「何どぅぇすかぁー?この天使みたいな子は!お前この子のマスターとか言ってたな…さてはお前、この子にあ~んな格好やこ~んな格好させて、あ~んな事やこ~んな事、更にはお子ちゃまには見せられないちょっとムフフな事までしてもらうつもりだなテメェ!このムッツリ野郎!」

 

「いやお前本格的に気持ち悪いんですけど。

────さて、こんな拗らせたドルオタはほっといて!本編をどうぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……。」

 

重苦しい沈黙の時間が流れる。

ちゃぶ台を挟み、正面で新聞を読んでいるのはジャンヌの父───つまり、義理のお父さんになってもらうべき人だ。

問題は、そのお義父さんがジャンヌとの結婚を認めていない事。今日はそれを認めてもらうべく、こうして挨拶に赴いたのだ。

 

「戦兎くん…。」

 

隣に座ったジャンヌが、不安そうにこちらを見詰めてくる。

戦兎は安心させる様に無言で頷くと、彼女の目を真っ直ぐに見詰めて微笑んだ。───大丈夫だ。お尋ね者として過ごした日々…北都や西都との戦争…エボルトとの激闘。これまで沢山の壁を乗り越えて来た───こんな所で諦めたりはしない!

 

「お義父さん!娘さんを…ジャンヌさんを、俺に下さい!必ず幸せにします!」

 

ピクリ、開かれた新聞が揺れる。

 

「娘を…くれだと?」

 

誰かに似た声で、威圧的に問い掛ける父親。

けれど戦兎は怯む事無く、真っ直ぐそれに応えた。

 

「はい!俺が…必ずや、娘さんの幸せな未来をビルドしてみせます!」

 

「ふざけるな!!そんな生意気な口を利くなら…」

 

戦兎目掛けて怒号を飛ばしつつ、ジャンヌの父はゆっくりと新聞を閉じる。そうして露になった彼の素顔は……。

 

「せめてハザードレベルをもっと上げて来い!それに手土産にあんな洒落たお茶菓子は要らねぇよ!プロテインとカップ麺持って来いやぁ!!!」

 

「ば、万丈!?」

 

「プロテインの貴公子、万丈龍我だ!!」

 

突如出現した見知った顔。混乱している間に、戦兎の顔目掛けてマグマナックルが飛んできた。

 

『ボルケニックナックル!アチャー!!』

 

「───へぶっ!?」

 

咄嗟の出来事に避け切れず、正面からそれを食らう戦兎。

薄れゆく意識の中で彼が最後に見たものは、ふんぞり返って高笑いする万丈の姿だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………最悪だ。」

 

無論、夢である。

 

「寝る前にアイツの事考えたせいか…?いや、この際筋肉バカは良い…それよりだ。」

 

万丈の登場は最後の最後。問題はその前、夢の内容そのものである。

 

「……昨日会ったばかりの子に…何考えてんだ俺。」

 

本格的に不調なのだろうか。

どうにも昨日の出来事が頭から離れない。

 

「……一度精密検査でも受けてみるか。」

 

「戦兎くん、病気なんですか…?」

 

「どわぁぁぁぁ!?」

 

心臓が飛び出すかと思った。

そんな彼を心配そうに覗き込むジャンヌ。

 

「本当に大丈夫ですか…?」

 

「え?あー、いや…もっちろん!このとーり、ピンピンしてますよ!ラブ&ピースの為、日々身を粉にして働く仮面ライダーなんだから!そう簡単には体調崩したりなんてしませんっての!」

 

「身を粉にして働いてるからこそ、体調を崩してしまいそうな気が……。」

 

「気のせい気のせい!ってか、ジャンヌそれ…。」

 

元気アピールとばかりに、大きく胸を張って見せた戦兎は。ジャンヌの手にした盆とそこに並べられた料理に気付き、彼女へ疑問を込めた視線を向ける。

 

「あ、これはですね!ここの宿は朝食は出していないそうなのですが…厨房を好きに使って良いとの事でしたので、御厚意に甘えてきました!」

 

戦兎の意を察した彼女は、少々照れながら手にした盆を机に置いて。

 

「朝食にしましょう。腹が減っては戦は出来ぬ───ですよ!」

 

満開の花の様な、輝く笑顔で応えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広く、広く、ただ只管に広い、何処までも続く花の園。悲しい程美しい星空の下に広がるそれは、神代の神秘が息づく秘境。

世界の表側から姿を消した幻想達の住まう世界。

 

彼はそこで来訪者の存在を感じ取った。

 

 

 

「よっ!元気してたか?」

 

───やあ。それはついこの前会った時にも聞かれた気がするが……。

 

「そうか?結構前だと思ったけど。」

 

───そうなのか?どうにも…ここでは時間の感覚が酷く曖昧で…。

 

「あー…まあ、無理もねぇよな。────っとぉ、つい脱線する所だった。悪い癖だな…。」

 

───貴方らしくて良いと思う。そんな貴方の、何処か人を惹き付ける明るさ…誰一人見捨てない優しさ。どんなに困難な逆境でも諦めずに前へ進む強さ…そして、人が人で在る為に失くしてはいけない弱さと向き合う姿。どれを取っても、俺は好ましいと思うのだが。

 

「きゅ、急に褒めちぎんなよ!?ったく…アンタは変わらないな。初めて会った時からそうだった。」

 

───そうだな…突然空にファスナーが現れた時は、流石に何事かと……。

 

───済まない、俺も話が脱線しがちだな。貴方が来たという事は…。

 

「ああ…奴等が動き出した。悪いが、一緒に戦ってくれるか?」

 

 

 

彼は大きく咆哮し、同意を示した。彼の反応に来訪者もまた頷き、その身に纏ったマントを翻す。

向かうべき先は分かっている。

彼が世界を知った国───全ての始まりの地だ。

 

「───行ってくる。」

 

彼は小さく、けれど力強く告げると。

来訪者の作り出した道へ、彼と共に歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや旨ッ!」

 

戦兎は絶句した。女の子の家庭的な手作り料理がこれ程美味な物だとは知らず、これまで生きてきた己が人生を呪う程に。

 

「良かった!生憎、田舎娘の質素な料理ではありますが…お口に合ったのなら幸いです!」

 

「滅茶苦茶旨いから!クソッ…こんなの前にしたら、万丈や美空とカップ麺啜ってた朝食はもう朝食じゃねぇ…!」

 

「それは大袈裟な気が……。」

 

手放しで大絶賛する彼に、彼女の頬が僅かに赤く染まる。

あっという間に料理を全て平らげた戦兎は、満ち足りた顔で手を合わせた。

 

「ご馳走さまでした。ありがとな?」

 

「いえ、喜んで貰えたなら何よりです。それで…今日はどうされますか?」

 

食器を片付けながら問うジャンヌ。

そんな彼女に、取り出したビルドフォンを見せつつ変わらぬ方針を告げる。

 

「とにかく手掛かりを探すしかない。昨日の晩、俺がぶっ倒れる前に魔獣の発生区域を見せただろ?実はあの時、集めたデータをコイツに解析させてたんだが……ものの数分で終わる筈が、俺が寝ちまったから未だ確認出来てない。」

 

「解析…ですか?」

 

「ああ。魔獣の発生頻度が高い区域だ。……っと、来た来た!さっすが俺の発・明・品!」

 

言いながらビルドフォンを操作し、表示された画面を彼女へ差し出す。

 

「どうも、町の反対側に城…というか城塞があるらしい。この城塞周辺での魔獣の発生率が異常に高い事を見ると、ここに何か有るのかもしれねぇな。」

 

「城塞…。」

 

何かを思い出したかの様に彼女は黙り込む。暫しの思案の末、ジャンヌはゆっくりと口を開いた。

 

「……一つ、心当たりが有るのです。いえ、ここがルーマニアと知ってから、何と無く予感はしていたのですが…。」

 

「心当たり?」

 

「私の霊基に刻まれた記録。英霊の座の本体に残された、"私"では無いジャンヌ・ダルクが経験した聖杯戦争の事です。」

 

 

 

聖杯戦争。

それは万能の願望機たる聖杯を求め、七人のマスターと七騎のサーヴァントによって行われる儀式。

元々日本の小さな地方都市『冬木』の地で確立されたこの儀式は、それを成立させる『大聖杯』が冬木から盗まれた事で思わぬ転換を遂げる。

大聖杯を盗み出した下手人の名は『ダーニック・プレストーン・ユグドミレニア』。彼は奪った大聖杯を、自らが管理するルーマニア内の城塞都市"トゥリファス"にて秘匿。

本来重大機密であった聖杯戦争の仕組みを魔術師達に広め、結果粗悪品の劣化聖杯を用いた"亜種聖杯戦争"を引き起こさせる等の策略を用いて、彼は半世紀以上もの間力を蓄えていた。

そして西暦2000年頃。機が熟したと判断したダーニックは自らを頂点とするユグドミレニアの一族を率い、魔術師達の総本山である"魔術協会"から離叛。これを良しとしない魔術協会は、彼等を討伐するべく刺客を送り込むが、ユグドミレニアの召喚したサーヴァントにより返り討ちに遭う。

だが、刺客の一人が聖杯の予備システムの起動に成功。

このシステムにより、魔術協会側も七騎のサーヴァントを召喚。本来実現し得る筈の無い、"七騎VS七騎"による異色の聖杯戦争が勃発した。

 

─────それが『聖杯大戦』。

嘗てトゥリファスで行われた、大規模な魔術儀式。

 

 

 

「───その時の私は聖杯に召喚された"調停者(ルーラー)"として、この儀式の監督役を任されていました。……結果的に、紆余曲折の末"七騎VS七騎"という構図は瓦解しましたが…。」

 

「同じ国で起きた聖杯戦争の記録か…年代も通信で言ってた範囲と合致するな。確かに偶然にしちゃ出来過ぎてる。何でそれをもっと早く言わなかったんだ?」

 

神妙な面持ちで腕を組む戦兎に、ジャンヌは申し訳無さそうに俯く。

 

「……確証が持てなかったからです。パラケルススさんは、私が服用した薬で飛ばされる特異点がランダムだと仰有っていました。それに、この町は確かに私の記録に残るトゥリファスと瓜二つですが…その一方で、明らかに新し過ぎる街並みも多かった。ですが、城塞が有るというのなら話はまた変わってきます…ですから、戦兎くんにも伝えるべきだと思ったのです。」

 

「成程な…。」

 

確かに彼女の言い分にも一理有る。

加えて戦兎自身にも気掛かりな点があった。

 

「確かに、俺もそれは気になってた。なんていうか…町の印象がどうにもチグハグ過ぎる。」

 

昨日は分からない事だらけでスルーしていたが…後になって考えてみると、ここの町並みは少し異質だ。

石造りの古い町並みの中に散見される、現代的な店舗の数々。町の風景に合わせた外観に仕上げるワケでも、或いは町が近代化を図って再開発しているワケでも無い。

ただただ、お互いの主張をぶつけ合うみたいに存在する"新しい風景"と"古い風景"。

異様なのは、そんな絶対に交ざり合わない筈の風景が、恐ろしいまでに馴染んでいた事。

まるで"異なる二つの町"が、"最初から一つの町だった"かの如く違和感を感じさせない風景。事実戦兎自身、注意深く観察しなければその異質さに気付かなかっただろう。

 

一つ二つ建物が変わっていた程度なら、ジャンヌも"聖杯大戦から数年後のトゥリファス"という可能性に行き当たったかもしれない。

だが、この異質な調和が彼女に"似ているが違う町ではないか"という疑念を抱かせた。

 

「それともう一つ。俺は俺の天才的な発明品と、ボトルの力を信じてるが…城塞、ってのは昨日町を回っても見当たらなかったんだよな。だからこそ今日直接行って確かめようかとも思ったけど。」

 

城というからには、その規模はそれなりに大きな物の筈。如何に現在地と反対側でも、影も形も見えないというのは少し不自然だ。

 

「……もしかしたら。何らかの結界が張られているのかもしれません。ユグドミレニアの魔術師が居るかはわかりませんが、元々魔術師の本拠地…そういう仕掛けが施されていたとしても不思議ではないです。」

 

「臭うな。まだ推測の域を出ないが…人払いして魔獣を作り、それを野に放ってるとしたら辻褄が合う。何かの実験か?」

 

そうと決まれば。

戦兎は勢い良く立ち上がり、支度を始める。

 

「急ごう。空振りならそれはそれで仕方無い。それより今の推測が正しければ、町の中に魔獣が現れるのは時間の問題だ。」

 

事態を重く見た彼の言葉に、ジャンヌもまた力強く頷いてみせた。





割と重要な話した回の割に、やった事自体は寝て起きてご飯食べてスマホ弄っただけじゃないですか。途中で意味深に出てきた二人の出番もまだまだ先だし。
やっぱり氷川さんは不器用だなぁ。

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