Fate/Grand Order 【幕間の物語】聖女と天才物理学者   作:banjo-da

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狂戦士(バーサーカー)のクラス特性は『狂化』で『強化』!
───はい!アルトじゃーーー……ないと!


叛逆の騎士モードレッド

 

自身の周囲を舞う泡を鬱陶しそうに払いながら、片手で剣を振り下ろすモードレッド。それをサイドステップで躱しつつ、ビルドは更に泡を発生させる。

宙に浮かぶ泡が弾けたと同時。ビルドは爆発的な加速で相手の背後へ回り込んだ。

 

「───もらった!」

 

泡の破裂により、ビルドに更なる加速を与える『ラピッドバブル』。その特性をフルに発揮したビルドが、モードレッドの背中目掛けてドリルクラッシャーで斬り掛かり───。

 

「─────!」

 

「何ッ!?」

 

狙いもタイミングも完璧なその一撃は、然しモードレッドには届かない。

叛逆の騎士は自らの直感を頼りに、紙一重でそれを避けてみせた。

 

「───。」

 

「舐めんな!」

 

振り向き様に振るったモードレッドの(クラレント)と、即座に体勢を戻したビルドの(ドリルクラッシャー)がぶつかり合い火花を散らす。

互いに譲らず両者はそのまま鍔迫り合いへ。兎の脚力と戦車のパワーで押し込もうとするビルドに、対してモードレッドは膨大な魔力放出で応戦。

 

「──────ッ!!」

 

「───させません!」

 

言葉にならない咆哮と共に、ビルドの背後から襲い掛かるスパルタクス。だが彼の刃はビルドまで届く事無く、その手前でジャンヌの旗に防がれた。

筋骨隆々なこの大男は、見た目に違わぬそのパワーを規格外の狂化で強化されている。普通に考えて無謀なこの打ち合いを、ジャンヌは流れる様な旗捌きで敵の力を逃がす事で制してみせた。

 

「ジャンヌ、サンキュー!」

 

『Ready Go!』

 

鍔迫り合いの拮抗状態を打ち破るべく、ビルドはゴリラフルボトルをドリルクラッシャーへ装填。待機音声を待たずしてトリガーを引いた。

 

『ボルテック・ブレイク!』

 

クラレントとぶつかり合ったまま、強引に回転を始めるドリルの刃。その刃を覆う様にして、ゴリラボトルのエネルギーが巨大な拳を形成した。

一気に跳ね上がる剣の重み。突然の変化に対応が遅れ、モードレッドの体勢が崩れ始める。

このまま押し切る───そう考えた矢先。

 

「……!?──────!」

 

雷の如く迸る魔力の奔流。

力を増した敵を前に、モードレッドもその魔力を全開で放出し、崩れ掛けた体勢を強引に持ち直した。

 

「嘘だろ!?」

 

一度は優位に立った筈が、一瞬の内に押し切られる。

逆に体勢を崩されそのまま押し込まれたビルドは、咄嗟の機転で後方へ跳ぶ。振り抜かれたクラレントの刃がアーマーの端を掠めたものの、何とか直撃は免れた。

 

「引くくらい強いな…っとぉ!」

 

着地したビルドへ襲い掛かったゴーレムを避け、彼はカウンターで泡を纏った蹴りを叩き込む。ラビットタンクでは苦戦したゴーレムも、足元へ纏わせた『インパクトバブル』の破裂により生じた衝撃波で容易く打ち砕いてみせた。

彼の隣では、ジャンヌがスパルタクスを相手取っている。嵐の如く繰り出される反逆者の刃は、一撃一撃の重さが途轍も無い。だがジャンヌはそれらを全て掻い潜り、穂先の槍で確実に彼の肉体へ傷を負わせていく。状況だけ見れば、敵の攻撃を見切っているジャンヌがやや優位。

にも関わらず、寧ろ彼女の表情は一段と険しいものとなっていった。

 

「ジャンヌ!そいつ何でずっと笑ってんの!?」

 

反撃に転じたゴーレムと、追って来たモードレッドを一度に相手しながらビルドが叫ぶ。

現状、ビルドは既に手一杯。だが、どうにもスパルタクスから感じる不気味さは無視出来ない。

 

「彼が…絶望的戦況からの叛逆を信条とする英霊だからです!このままでは、辺り一帯が吹き飛びます!」

 

「どういう事ですか!?」

 

予想の斜め上を行く返答。

思わず敬語になりつつ、ゴーレムの突き出した拳を躱す。

 

「彼の宝具は、簡単に言えば"ダメージを負えば負う程に強くなる"というもの…絶望的な状況に追い込まれた時、彼は蓄積した痛みを大きな力に変換して解放するんです!」

 

「最悪だ!なんつー爆弾抱えてんだそいつ!」

 

スパルタクス───彼の逸話は戦兎も何と無くだが知っている。

自らも剣闘士であった彼は、多くの剣闘士や奴隷を率いてローマに大規模な叛逆を起こした。最終的に鎮圧されてしまうのだが…その過程で圧倒的不利を何度も覆しての逆転勝利を収めた、紛れも無い英雄だ。

故に彼は、不利な状況にも笑顔を絶やさず。現状実践している通り、相手の攻撃を絶対に避けない(・・・・・・・)。ジャンヌの語る能力は、彼という英霊にこの上無く相応しい物と言える。

 

「だからって…無茶苦茶にも程があんだろ!?」

 

彼女の言葉が正しければ、寧ろ追い込まれているのはジャンヌの方だ。今はまだ優位に立ち回っているが、決定打を持たない彼女に相性が悪い敵なのは明白。

 

「この…どけぇ!」

 

『Ready Go!スパークリング・フィニッシュ!』

 

モードレッドの斬撃をドリルクラッシャーで受け流し、ドライバーのハンドルを回す。

跳躍しながら無数の泡を発生させ、そのまま空中で一回転。

 

「───!」

 

危険を察知したモードレッドが、初めて動揺を見せる。即座に回避行動へ移ろうとするも───。

 

「遅ぇよ!!」

 

ラピッドバブルと、空間を歪める『ディメンションバブル』の効力で桁外れの加速を得たビルドは、そのまま滑り落ちる様にモードレッドへ飛び蹴りを叩き込んだ。

 

「やったか…!?」

 

爆発を背に着地したビルド。すぐに立ち上がり背後へ振り向くと。

 

「グ…オォ……!?」

 

「──────。」

 

そこには大破し魔力へ還り始めたゴーレムの残骸と、クラレントを杖代わりに立ち続ける騎士の姿。

 

「ゴーレムを盾にしやがったのか…!?」

 

その鎧の表面は所々が焼け焦げ、肩で息をする様に揺れる体を見るに、無傷とはいかなかったらしい。だが、それでもモードレッドは耐えていた。

 

「クソ…ッ!ならもう一度……ッ!?」

 

────それは、これまで歴戦を潜り抜けてきた彼の直感。第六感とでもいうべき感覚が、彼の全身に大音量で警鐘を鳴らしていた。

気付いたのはビルドだけでは無い。剣を振り上げたスパルタクスは即座に攻撃を中止し、ジャンヌとビルドを飛び越えモードレッドの傍らへ。ジャンヌもまた、旗を掲げながらビルドの隣へ駆け寄る。

 

「何か…ヤバイぞ!?」

 

「私の後ろへ!───宝具(・・)が来ます!」

 

剣を振りかぶったモードレッド。その全身に纏う鎧が解除され、覆われていた姿が顕になる。

現れたのは、赤く露出の多い服装に身を包んだ、まだ二十歳にも満たぬであろう少女の姿。屈強な男と思い込んでいたビルドは、目の当たりにした現実に驚きつつも、今はそれどころでは無い。

 

彼女を取り巻く魔力の奔流。それが空気中に奔る電流として現れ、所々で火花を散らした。

 

「……。」

 

無言で掲げる白銀の聖剣は、赤き稲妻を纏った邪剣へと姿を変える。そして───。

 

「──────ッ!!!」

 

彼女はそれを、勢い良く振り下ろした。

 

「やっべ…!」

 

「────下がって!」

 

咄嗟にドライバーへ手を伸ばすビルド。

ジャンヌはそれを制し彼の前に出た。

 

「我が旗よ…我が同胞を守りたまえ!

─────"我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)"!」

 

彼女の手にした旗から展開される結界。

眩い輝きを放つそれは、あらゆる敵意から味方を守り抜く天使の祝福。

 

ぶつかり合う宝具と宝具。

永劫に続いたとすら錯覚する数秒間の果てに。

圧倒的な力を有する叛逆の雷からも、聖女の加護は戦兎を守り切った。

 

「……すっげ…。」

 

見れば、モードレッドの一撃で城の一部が吹き飛んでいた。

ジャンヌの宝具で大半を防いでこの威力。規格外の攻防を前に、ビルドは声を失う。

 

「これが…サーヴァント…。」

 

「戦兎くん、御無事ですか!?」

 

「お陰様でな…助かった。」

 

こちらの身を案じるジャンヌに、軽く手を振って応える。そんな彼に、ジャンヌは安堵の息を漏らし───。

 

「───やり過ぎですよ、セイバー。全く…強力な手駒は扱いが難しい。難儀なものです…。」

 

反射的に声の方へと振り向けば、上へと続く階段から降りてくる男の姿。

神父の祭服(キャソック)に身を包み、戦場のど真ん中だというのに穏やかな笑みを湛えた青年が、ゆっくりとした足取りで歩いていた。

 

「ようこそ…ジャンヌ・ダルク、そして桐生戦兎。生憎大したおもてなしは出来ませんが…。まあ、お茶を飲みながら、聖書の読み聞かせ程度は出来ますよ。」

 

「天草…四郎ッ!」

 

物腰柔らかな青年に険しい視線を向けるジャンヌ。

だがそれを受けても、彼は平然とした様子で溜め息を吐いた。

 

「やれやれ…どうやら、お気に召さなかったらしい。この場で主の下へ召される貴女達に、せめて死ぬ前の安らかな一時を…と思ったのですが。」

 

「……あんたが、ここのボスか?」

 

青年の言葉を無視し、疑問を投げ掛けるビルド。

そんな不躾な物言いにも、青年はあくまで穏やかに言葉を返す。

 

「申し遅れました。私はシロウ・コトミネ。貴方の言う通り、この城で彼等サーヴァントを従える者です。」

 

「…彼は、聖杯大戦に"赤のアサシン"のマスターとして参戦していました。ですが…その正体は、それより前に行われた聖杯戦争へ召喚されたサーヴァントです。」

 

「ご紹介どうも。彼女の言う通り…我がクラスはルーラー、真名は天草四郎時貞。」

 

玄関ホールまで降りて来た彼は、微笑みながら小さく御辞儀する。あくまで礼節を以て接するその姿は、絶対的な自信の表れ。

 

「シロウ・コトミネは、色々あって受肉した私の仮の名前。まあ、長い間この名前で通してきたので偽名という感じでも無いのですが…呼びやすい方で呼んで頂いて構いません。」

 

「───そんな事はどうでも良い。魔獣を増やして、サーヴァントを引き連れて…お前は何を企んでいる。」

 

見れば、彼のサーヴァント達は動きを止めている。

その気になれば、シロウの指示一つでビルドとジャンヌへ再び襲い掛かるだろう。

それでも尚、ビルドは強い口調で彼へ問い掛けた。

 

「貴方に話す理由は有りません。どうせこの場で消えるのですから。」

 

「良いから答えろッ!!!何の為に魔獣を作った!?サーヴァント達に何をした!?お前は、何の為にこの特異点を作ったんだ!?」

 

苛立ちを隠さず叫ぶビルドを、シロウはまるで分からず屋の子供でも見たかの様に鼻で笑った。

 

「答えないと言っているのに困った人だ。

ですがまぁ、一つだけ教えて差し上げますか。冥土の土産…というやつです。」

 

そうして彼が指を鳴らすと、微動だにしなかったサーヴァント達が再び動き出す。

 

「彼等が普通のサーヴァントでは無い…正解です。彼等が大聖杯へと還る前に、私はその残滓を掻き集めた。このトゥリファス───ええ、ここが聖杯大戦の行われた地だという貴殿方の予想は正解だ。そこに残る彼等の魔力の欠片や残留思念…そういった物を基に、足りない霊基を私の持つ技術で補強しつつ、私の意のままに動く様に加工して生まれた存在です。言わばサーヴァントの紛い物───尤も、流石に十四騎全員の再現は不可能でしたが。」

 

「…お前がこの特異点を作ったのなら、聖杯ってモンも持ってる筈だ。普通にサーヴァントを召喚せず、そんな回りくどい真似をしたのは何故だ。」

 

「決まっているでしょう?英霊なんてものは、誰も彼も我が強くていけない。召喚した所で素直に言う事を聞く者ばかりとも限らず…好き勝手に動かれても迷惑です。例え令呪が有ったとしても、そんな子供の躾みたいな事に割くのは非効率極まり無い───なので…多少()が落ちようとも、完全なサーヴァントの召喚時に細工するより遥かに楽な手段を選んだワケです。」

 

当然の様に言うシロウへ、ビルドは吠える。

 

「ふざけんな!俺はまだサーヴァントの事は殆んど知らねぇけどな…それは彼等の生き様を、想いを踏み躙る行為に他ならない!」

 

ビルドの怒りを滲ませた声も、シロウは小さく肩を竦めるだけで流し。彼は興味を失った様に、呆れ顔で片手を挙げた。

それが合図となり、サーヴァント達は武器を構えてビルドとジャンヌを取り囲む。

 

「くっ…!テメェ…!」

 

「お喋りはもう良いでしょう。───さようなら、良い余興でした。」

 

ビルドとジャンヌもまた、応戦すべく構える。

多数に無勢…圧倒的不利な状況に変わりは無い。だからといって、戦意を喪失する二人では無かった。

 

「戦兎くん…貴方のサーヴァントとして、必ず守ります!」

 

「言ってくれるねぇ…なら俺は仮面ライダーとして、必ず守ってやるよ!」

 

互いを鼓舞する言葉を交わす二人に、じりじりと近付いて来る三騎のサーヴァント。その内の一人、モードレッドが剣を振り上げ────。

 

 

 

 

 

「─────オラァ!!!」

 

直後。身構えた二人を他所に、彼女は隣のアヴィケブロンへと(・・・・・・・・・・・)剣を振り下ろした(・・・・・・・)

 

「────え?」

 

「何…が…?」

 

呆気に取られる二人の前で、アヴィケブロンはその霊基を保て無くなり消滅する。

そうして彼女は深く息を吐くと。先程までの人形みたいな姿が嘘の様に、ひどく楽しげで凶悪な笑みを浮かべて見せた。

 

「あー…色々ムカついてるが、ちっとはスッキリした。───ったく。木偶人形作るしか能がねぇ奴が、俺の隣に立ってるからこうなんだ。恨むなら、態々前線に出向かせた能無しのクソ采配恨め。」

 

「セイバー…何のつもりだ?───いや。そもそも私に従っているなら、自我すら無い筈…。聞くまでも無く、私に従ったフリをしていた…というワケですか。」

 

一貫して余裕を絶やさなかったシロウが、初めて不快感に顔を顰める。

だがモードレッドからしてみれば、その表示は痛快だったらしい。体の調子を試す様に軽く剣を振り、その切っ先をシロウへと向ける。

 

「ったりめーだバーカ!……と、言いたい所だが。正直、半分は意識失ってテメェの言いなりだったのも事実だ。

───だがまぁ、そこの床屋のサインポールみたいな奴のお陰で目ェ覚めたけどな。良い蹴りしてやがるじゃねぇか。」

 

「サインポ……俺の事!?えぇー……。」

 

呆気に取られながらも、一拍遅れでその不名誉な称号の意味に気付いたビルド。そのあまりにも酷い呼び名に若干肩を落とし、隣のジャンヌは慰める様に彼の頭を撫でた。

 

「イチャついてんじゃねぇよ。ったく…ま、今日の所は礼を言っとく。───ほら、構えろ。」

 

「は、はい…!」

 

「分かった…手を貸してくれる、って事で良いのか…?」

 

慌てて旗を構え直すジャンヌと、恐る恐る尋ねるビルドに対し。

 

 

 

「馬鹿か?テメェらが俺に手ェ貸すんだよ!」

 

モードレッドは声高に宣言すると、シロウ目掛けて意気揚々と襲い掛かった。





バレンタインがどういう物か知らず、"忘れてたけど取り敢えず何もあげないのも悪いからこれで良いや"と食いかけのチョコ菓子くれた翌年のバレンタイン。水着で赤面しながらポッキーゲーム提案してくるヒロイン力の塊と化した騎士──見参。

天草くんの鯖に関して補足入れると、「『オルレアンのバーサーク・サーヴァント』や『下総国の英霊剣豪』みたいに完全なサーヴァントへ手を加えるのは召喚時・召喚後共に手間な上に結局細かい部分で各々好き勝手やりかねない」から、
ならいっそ「どうせ元が強い鯖多いし数も多いので多少弱体化してでも『素直に言う事を聞いて余計な事しないシャドウ・サーヴァント』的なものを作ろう」って作戦です(成功したとは言ってない)。
アッセイさんとか普通なら令呪二画使わないと命令の無理強い出来ないし。

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