Fate/Grand Order 【幕間の物語】聖女と天才物理学者 作:banjo-da
─────滅亡円卓.netに接続。
「消し飛べコラァ!!」
「───バーサーカー!」
シロウへ勢い良く剣を振り抜くモードレッド。だがそれを、割って入ったスパルタクスが受け止める。
舌打ちしつつも彼からの反撃を躱し、敵の屈強な肉体目掛けて彼女は再び剣を振るう。
「がら空きだ!」
その間を突いてドリルクラッシャーをガンモードへ変形させ、ビルドはシロウを狙撃する。
だがシロウもそう易々と撃たれはしない。人間離れした動きで腰に下げていた日本刀を抜刀、飛んで来た弾丸を打ち落としてみせた。
「うそーん…!?」
「腐っても元サーヴァントだ、本気でやれ!」
「やってるっての!」
上から言ってくるモードレッドへ反論しつつ、スパークリングを取り外すビルド。
「こいつが黒幕なら、ここで全部終わらせる───こっちも全力だ!」
取り出したのは、スパークリングと似た形の大型ボトル。スイッチを押して半透明なブルーのキャップを開き、その力を解放する。
『グレイト!』『オールイエイ!』
『ジーニアス!』
ボトルをビルドドライバーへとセット。
そのままハンドルを回し、相変わらずハイテンションな電子音声が流れ始めた。
『イエイ!』『イエイ!』
『イエイ!』『イエイ!』
『イエイ!』『イエイ!』
ハンドルを回す度、二人の男性の声が交互に響き。その掛け声に合わせてスナップライドビルダー…ではなく、特殊加工設備『プラントライドビルダーGN』がビルドの足元から形成される。彼の周囲を取り囲む様に出現したベルトコンベア上へ60本もの
『Are you ready?』
「─────ビルドアップ!」
掛け声と共に、黄金のクレストが出現。
歯車を模したその紋章がビルドの体へと重なり合えば、スパークリングフォームの姿を塗り潰す様に白いボディが形成される。
同時にエンプティボトルへ各ボトルの成分が注入され、プラントライドビルダーGNから射出されたそれらはビルドの全身に装着されていく。
最後の二本が左右から同時に差し込まれ、ビルドの最強フォームは完成した。
『完全無欠のボトルヤロー!』
『ビルドジーニアス!!』
『スゲーイ!』『モノスゲーイ!』
曇りの無い白きボディに、全てのボトルの力を備えた完全無欠の天才。
───その名も仮面ライダービルド・ジーニアスフォーム。
「勝利の法則は決まった!」
構えを取り────直後、その姿が一瞬にして消え失せる。
「───ッ!」
次の瞬間には、間のモードレッドもスパルタクスも飛び越え、彼はシロウの背後へ回り込んでいた。
咄嗟に刀を振り抜こうとしたシロウ。だがビルドはそれを許さず、目にも止まらぬ早さで蹴り飛ばす。
「ぐっ…!?何だ…この力は…!」
「お前の目的は知らねぇがな!この力は、皆の明日を守る為の力だ!」
弾き飛ばされ、勢い良く宙を舞うシロウ。しかしビルドは一瞬で距離を詰め、それにすら追い付いてみせる。
「────舐めるな!」
空中で強引に身を捩り、手にした刀で一閃。
その刃が、接近していたビルドを────。
「な……!」
手応えは無く、眼前のビルドの姿が揺らめいて消える。まるで
彼の肉体は巻き付いた鎖の重みで急速に落下。地に落ちた彼が目にしたのは、剣を両手で振り下ろすビルドの姿。
シロウは咄嗟に転がりそれを回避すると、強引に力ずくで鎖を引きちぎる。
「くそっ…こんな、事が…!」
体勢を整えるべく立ち上がろうとするシロウ。だが、彼目掛けて飛翔してきた巨大な何かを前に、彼は再び回避行動を余儀無くされた。
「ぐっ!?……バーサーカー…!?」
再度身を起こしたシロウの隣で、相変わらず笑顔を浮かべながらも地に伏すスパルタクス。慌てて視線を向けた先には、したり顔で剣を振りかぶったモードレッドの姿。
「舐めてんのはお前の方だ!人の想いを…その力を思い知れ!」
『フルフルマッチデース!』
「へっ!散々ムカつく事言われたしなぁ…オマケにさっきは真名解放出来ずに撃たされて、挙げ句そこのルーラーに防がれたときた!溜まった鬱憤…晴らさせて貰うぜ!」
銃形態へと変形させたビルドの剣───フルボトルバスターに。そしてモードレッドの手にしたクラレントに、それぞれエネルギーが収束していく。
「───不味い!ラン……」
「「─────遅ぇ!!」」
二人の声が重なり合う。
ビルドが引き金を引くと同時に。モードレッドもまた、その手にした剣を全力で振り下ろした。
『フルフルマッチブレイク!』
「"
銃口から放たれた色鮮やかなエネルギー砲と、邪剣が放出する赤雷とが、城内を蹂躙する。
その凄まじい熱量は一瞬で城の玄関ホールを焦土へと変え、城壁を突き破って行った。
「……終わったか。」
塵一つ残らぬ破壊痕を見下ろし、彼は構えていたフルボトルバスターを下ろす。
唯一残った物といえば、満足そうな笑顔で魔力へ還りつつあるスパルタクスのみ。如何に桁外れのタフネスを持つ彼といえど、流石に二人の切り札を前には耐え切れ無かったようだ。
「……悪かったな。」
ゆっくりと彼の傍へと歩み寄り、ビルドは声を絞り出す。
けれど、スパルタクスは穏やかに首を横へ振った。
「…我が魂は囚われ、あの圧政者に利用されていた。耐え難き苦痛、許せぬ屈辱から、お前は私を解放した。私には分かる…お前は圧政者では無い、民の味方。然らば、お前が圧政者を討った事は喜ばしき事。……嗚呼、名も知らぬ民衆の守人よ。願わくば次に出会う戦場では、共に圧政者への叛逆を…───。」
微笑み、満ち足りた声で言い残すと、彼は完全に消滅した。
「……悪いが、そんな状況に巻き込まれるのはお断りだ。叛逆するより、叛逆する必要の無い平和な世界を望んでるもんでね。」
戦兎はマスクの下で苦笑しつつ、消えて行った英雄に敬意を込めて呟く。
経緯はどうあれ、黒幕は滅びた。
だが、一息吐いている暇は無さそうだ。見れば、先の攻撃の余波で城全体が崩壊を始めていた。
「一度脱出しよう。早く外に─────」
刹那───ビルドへ振り下ろされる巨大な槍。
完全に虚を突かれたビルドだったが、割り込んだジャンヌの旗でそれは防がれ事なきを得る。
「何だと……ッ!?」
「戦兎くん、下がって!」
防いだ槍を押し返し、切羽詰まった声で叫ぶジャンヌ。然し敵は深追いするつもりも無いのか、特段抵抗も反撃も見せずに二人から距離を取った。
「馬鹿が!気ィ抜いてんじゃ───」
怒号を飛ばしつつも援護へ向かおうとしたモードレッドだったが、直感に従いその場で反転。彼女が盾の様に構えた剣が、敵からの斬撃を弾いた。
「気を抜いていたのは、貴女も同じでしたね…!」
「テメェ……クソ神父ッ!」
すぐさま反撃に転じ、クラレントを橫薙ぎに振り抜く。
シロウはそれを紙一重で躱すと、後方へ退避しながら黒鍵を投擲。難無く弾くモードレッドだが、その隙にシロウは新手のサーヴァントと合流を果たした。
「コトミネ…生きてたのか……!それに、そのサーヴァントは…!?」
「───赤のランサー、施しの英雄カルナ…!」
ビルドの溢した呟きに、シロウに代わってジャンヌが答える。
病的なまでに白い肌の男───カルナは、射抜く様な鋭い眼差しをビルドへと向けた。
だが彼の瞳もまた先のモードレッドやスパルタクス同様光を灯しておらず、シロウの傀儡と化してるのは明らかだ。
思わず歯軋りするビルドや、強い警戒心を露にしたジャンヌを嘲笑うかの如く、シロウは息を荒げながらも口角の端をつり上げた。
「残念だったな…とは言え、流石に今のは死ぬかと思ったぞ?───だが、私はこうして生きている!」
「ハッ!テメェこそ口調ブレブレじゃねぇか?大戦の時はもっとムカつく程に余裕ぶってやがったクセして…死にかけてビビりやがったか?」
挑発的な言葉に対し、橫からモードレッドが煽り返す。
彼女を一瞥し、シロウは小さく舌打ちする。
「……成程、対魔力スキル。充分縛り付けたつもりでしたが…見落としていたな。令呪すらはね除けるバーサーカーにばかり気を取られていた、私の落ち度は素直に認めよう…戻り次第、残るサーヴァントの
「逃げられると思っているのですか?」
彼女が反旗を翻した理由を悟り、同じスキルを持つ
無論、彼とカルナを取り囲む三人は武器を構え、逃がすまいと彼等を睨み付けている。
数では劣る状況。だが彼は嘲笑を浮かべつつ鼻を鳴らすと、懐から何かを取り出す。
取り出したそれは─────。
「─────ネビュラスチームガン…だと!?」
紫の塗装が施されたそれは、歯車の付いた奇妙な形状の銃。
本来この地に存在する筈の無い"ビルドの世界"の武器。
「手負いの貴様ら程度、このランサーなら纏めて返り討ちにする事は容易い。……だが、私も少々貴様らを舐め過ぎていた。この場は退き、計画を最終段階に進める事にしよう…。」
「───待て…!」
駆け出したビルドの手が届くより早く。
醜悪な笑い声と共に、黒煙に巻かれシロウとカルナは姿を消した。
「クソッ!!」
「オイ、何時までも悔しがってる場合じゃねーぞ!とっとと逃げろ!」
悔しさに歯噛みしていたビルドは、モードレッドの声で我に返る。
城のあちこちで崩落が起こり、何時完全に崩れてもおかしくは無い。
「くっ…そうだったな。ジャンヌ、逃げるぞ!」
頷いた彼女を伴い、駆け出したビルドは───一度足を止め、その場に立ち尽くすモードレッドへ呼び掛ける。
「オイ、何やってんだ!アンタも早く!」
彼の必死の呼び掛けに、モードレッドは一度目を丸くした後。愉快そうに笑いながら、呆れた様子で首を橫に振って見せた。
「オレは良い。元々俺の戦いはもう終わってんだ。……悪く無いマスターと出逢って、俺自身の望みにケリ付けて、満足して消えたってのによ…これ以上未練たらしく出しゃばるのは御免だね。」
「けど…!───うぉっ!?」
彼女の元へと歩み寄ろうとしたビルドだったが、逆に彼女に突き飛ばされ尻餅を着いた。
「元々オレは、あの野郎が妙な実験で作り出した魔力…そいつがこの城の中でのみ供給される仕組みになってんだ。だからこの城が無くなりゃ、どのみちオレは消滅する。」
「何だと…?それって…」
「───おい、ボトルヤロウ。……お前、名前は?」
言葉を遮り問い掛けられ。
立ち上がったビルドは変身を解き、彼女の目を真っ直ぐに見て答えた。
「……桐生戦兎だ。」
「戦兎か。…良いか戦兎。テメェは俺達英霊を舐めてるワケじゃねぇだろうが……力の差を測りながら戦ってちゃ、あのランサーには勝てねぇぞ。少なくとも、最初のトゲトゲしたヤツじゃ力不足だ。」
酷く真剣な声音で、戦兎を軽く睨みながら言う。
「……バレてたか。」
「ったりめーだマヌケ。全員が全員あれじゃ足りんってワケじゃねぇがよ…何人かは絶対に勝てない。
───つーかな!俺だってあんなハンデだらけじゃなきゃ、一瞬でボコボコにしてやってたっつーの!だから勘違いすんじゃねぇぞ!?次会う時が有ったら、今度はこのモードレッド様がギタギタにしてやるからな!?」
言葉とは裏腹に、彼女は幾分か表情を緩めると。
戦兎の傍へ寄り、彼の胸元へ拳を軽く当てて笑う。
「だから……それまで負けんじゃねーぞ。」
「……ああ。」
彼女の意思を受け継いだ戦兎は、彼女に背を向け歩き出す。
『天空の暴れ者!ホークガトリング!
イエーイ!』
「ジャンヌ。行くぞ。」
「────おい戦兎!」
脱出すべく変身を済ませ、駆け出した彼の背にモードレッドが呼び掛けた。
「あの野郎は俺達と正式に契約したマスターじゃねぇ。マスター不在のはぐれサーヴァント状態のまま、忌々しい小細工で俺達を縛ってただけだ。パスの無いアイツは魔獣をエネルギー源に、妙な機械を通して魔力を供給してる。…その魔獣の材料は、殺されたこの町の住人だ。
───この町の行方不明者を調べろ。この城以外に、必ずどっかにあの野郎のアジトが在る筈だ。」
「……ッ!分かった!────ありがとな。」
振り返る事無く、ビルドはジャンヌを抱えて翼を広げ。
「ちょ、戦兎くん!?わ、私は自分で走りますから!!その、近いですって!」
「うぉい!?ちょ、落ちる!落ちちゃうからー!」
破壊された城壁の穴から、外へと飛び立った。
◆
「……ったく、最後まで緊張感ねぇ連中だったな。」
呆れ顔で二人が去るのを見届け、彼女はその場に座り込む。
胡座をかき、ボーっと虚空を見詰めるモードレッド。既にその身体は、少しずつ魔力へ還り始めていた。
「……あー…考えてみりゃ、クソムカつく事だらけじゃねぇか。百発はあのエセ神父殴らねえと足りねぇ。」
───だったら、あの場で契約交わして付いてきゃ良かったじゃねぇか。
「抜かせ。他所で召喚された俺がどう思うかまでは知らねぇが、この"俺"のマスターはお前だけだ。」
───そりゃどうも。
なあ、アイツら勝てると思うか?
「知らねぇよ。そこまで面倒見てられるか。……だがまぁ、少なくとも円卓の連中よりは見所有るんじゃねぇの?知らないけど。」
───そりゃ、結構な太鼓判だぜ?
アイツらも大変だな…。
───……なぁ、セイバー。
「………何だ?」
────楽しかったか?
「……ああ。お前と共に戦ったあの日々も。その後はクソッタレな毎日だったが…アイツらのお陰でちっとは気が晴れた。」
───後悔は、無いか?
「無いね。あの神父のツラ殴る役目は、アイツらに譲ってやる。オレの戦いは終わりだ───誰より俺自身が納得した。だから…もう良いんだ。」
限界を迎え、城の崩壊が加速する中。彼女の隣で燻り、僅かに煙を漂わせる煙草の吸殻。
「────ありがとな、マスター。あばよ。」
在る筈の無いその吸殻を一つ残して。
───叛逆の騎士は英霊の座へと帰って行った。
───この戦いに、正義は無い。
そこにあるのは、純粋な願いだけである。
今回の話の最後のシーンは個人的に『Go!Now!~Alive A life neo~』を脳内で流してました。