ムルタ・アズラエル滅殺RTA ブーステッドマンチャート 作:ちゅーに菌
今回はほぼ丸々イザークくん回なので短めの初投稿です(死の宣告)
>ここがアラスカ――で、ずうっと下ってここが、現在地。
――やんほぬ(挨拶)。アフリカ大陸の北端に落ちたアークエンジェルからはっじまるよー!
現在はローンちゃんとムウさんとラミアス艦長で現状の確認をしているところですね。そう言えば一応、大尉でしたねローンちゃん(半笑い)。まあ、アニメの視聴者への説明部分とも言えますが、そう言うのは言わないお約束です(戒め)
>やなトコに降りちまったねえ。見事に敵の勢力圏だ。
>仕方ありません。あのまま、ストライクと離れる訳にはいかなかったのですから。
>モビルスーツに乗ったまま、大気圏で意識を失うだなんて、キラくんはある意味大物ですねぇ。
>ははっ、違いねぇな。
お
>しかし、まさか嬢ちゃんがデュエルを奪ってくるとはな……。いや、元々こっちのもんなんだから取り返したってのが正しいか。整備班の連中また喜んでたぜ?
>うふふ……! それならよかったですよぉ。ところでどっちがデュエルに乗るんですか?
>どっちって……まさか――。
>もちろん、強襲偵察型ジンとデュエルに、ムウさんとフロさんのどちらが乗るのかというお話ですよぉ?
>オーブ国防軍のキリシマ一尉をパイロットとして乗せるというの!?
>"G"はただのコレクションでもデータディスクでもなく、強力な兵器なんですよ? ましてや、こんな状態なんですから、ある兵器も手段も全て使わなければアラスカまで行けもしません。そもそも何のために今まで、高いお金を掛けてモルゲンレーテと造り、既に少なくない犠牲を払って来たというのですか? 躊躇う理由は何処にもない筈ですが?
>…………それは私も頭ではわかっているわ。けれど彼女の意思も尊重しなくてはなりませんし、それに彼女は今――。
最前線で最も壮烈に戦い続けている戦争狂なローンちゃんには相変わらず言うことがド直球過ぎますね。というか、言っていることがほぼあずにゃんなのはやっぱり他人の空似ではないですよねぇ……。
核は持ってりゃ嬉しいただのコレクションじゃない。強力な兵器なんですよ。兵器は使わなきゃ…。高い金をかけて造ったのは使うためでしょう。さ……さっさと撃って、さっさと終わらせて下さい、こんな戦争は(あずにゃん語録)
>はいはい二人とも熱くならない。特にクローセルはもう少し言葉に手心を加えろっての! あー……でもそれには俺もどっちかと言えば賛成だぜ。幾ら嬢ちゃんと坊主と俺が居るって言っても、敵さんの勢力圏のど真ん中にいて、限度があるからな。恥を忍んで頼んでみてもバチは当たらないだろ。まあ……言い難すぎるってのは間違いないがな。
その言葉にラミアス艦長もローンちゃんも言葉を返しませんでした。へリオポリスのシャトルをイザークくんに墜とされたキリシマ姉貴がぶちギレていない訳がないですからね。当たり前だよなぁ……?
◇◆◇◆◇◆
「――――――♪」
クローセルは口笛を吹きながらアークエンジェルにある独房の区画に移動していた。その手には綺麗に折られたアヤメの折り紙と、やや汚い折り方の同じアヤメの折り紙の二つが握られており、周りから見ればいつも以上に不思議に見える事であろう。加えて珍しく士官の帽子を被っており、その頭頂部には大きくラクス・クラインというサインが入っている。
そして、彼女は独房の扉の前に立つと、鍵部分に手を伸ばす途中で、ロックが開いていることを目にし、更に中で男女の話し声が聴こえるため、手を引っ込めて成り行きを静観した。
『歯ァ喰いしばれ!! クソ野郎がァァァ!!!』
『――――――!?』
すると少しした後、ドスの効いた女性の叫び声が響き渡り、ドスンとおよそ拳と人体から出たとは思えないような重い音が続けて響く。その上、壁に人体が命中する音も聞こえ、とんでもない威力だったことは想像に難しくない。
その後、男性の怒鳴り声と共に扉が開き、中から鬼のような形相をした青髪の女性――フローレンス・キリシマが出て来ると、そのままクローセルに目を向けることもなく、足早に去っていった。
ちなみに独房の扉の両サイドには看守代わりの軍人が立っているが、これまで一切我関せずを貫いている辺り、キリシマの意志と行動が彼女一個人だけのものではないことがわかるであろう。
「なんだアイツは!? 条約違反の捕虜の扱い――」
「お邪魔しまーす。傷の具合どうですかぁ? 痛んだならごめんなさいねぇ」
「――――!? "世界樹の悪魔"!?」
独房に手を物々しい手錠で拘束されて収監されている銀髪の青年――イザーク・ジュールは驚愕に目を見開いて、クローセルの顔を見つめながらそう言った。彼の頬にはついさっき、キリシマに殴られたと思われる打撲痕が出来ており、少し口内を切ったのか、唇に血が滲んでいるのが見えた。
イザークは身を固め、ベッドから立ち上がると、威嚇するようにクローセルを睨むが、当の本人は何処吹く風である。
「声ではなく、私の顔を知っている……ということはラクス様が私と撮った写真を見せたんですね?」
クローセルは帽子を一度外して、イザークに見えるように少し振ってから再び帽子を深く被る。その様子から明らかにマトモではないことは明白であろう。
イザークは怨敵かつ、自身を捕らえた者に苦虫を噛み潰したような顔をしつつも、それが地球連合軍の高官であるということに目を向け、少しでも自身の立場を安全にするために口を開く。
「…………それよりさっきの奴はなんだ!? 突然、入ってきたかと思えば怒鳴り散らして殴ってきたぞ!? 捕虜への不当な――」
「ああ、彼女はコーディネーターですよ。パンチも重かったでしょう? ソキウス程ではないにせよ、戦闘用寄りの調整で生まれたコーディネーターなんでしょうねぇ」
「コーディネーターだと……まだこの艦にはナチュラルに味方をするコーディネーターがいるのか!?」
「ええ、今はキラくん含めて二人ですが、正確にはもう少しだけ沢山乗っていましたよ?」
独房に入ってからクローセルはずっといつも通りの笑みを崩さず、ニコニコと人当たりの良い笑みを浮かべたまま話す。それが却ってイザークには不気味でしかなかった。
「それより忘れていませんよね? 私はブルーコスモスです。コーディネーターの捕虜の扱いを……気にする確率の方が低いと思いません? バラバラにされて海に撒かれないだけマシだと思ってくださいよ」
「くっ……!?」
その言葉にイザークは閉口する。紛れもなくイザークの知るクローセルの言動はブルーコスモス過激派か、それ以上の何かである。それを行ったところで何も可笑しくはなかった。
「すみませんでした……捕虜にも成れず、ビームライフルでまとめてシャトルごと撃ち抜かれる方がお望みでしたかぁ?」
「あの脱走兵共の仇か……!」
「それならあなたを武装解除したスカイグラスパーに乗せて逃がして、それをハイドラちゃんで追って殺すのも楽しそうですねぇ……!」
「――――ッ!?」
イザークは明確な死の恐怖を覚え始める。明らかにイカれた存在に大義名分まで与えてしまっている。この狂人の匙加減ひとつで生死が決まり、その上、言動と様子からクローセルは明らかに殺す事しか考えていない。その悪い意味で筋の通った得体の知れなさが何より青年を焦らせた。
「うふふ……! ジョークですよ、ジョーク。ほんの軽い冗談じゃないですか。無抵抗な方に私はそんな酷いことしませんって!」
すると突然、クローセルは自身の手を小さく叩いてそんな事を言う。そして、可愛らしく笑ってから、イザークに付けられた頬の傷を見て"痛そうですね"と声を漏すと不憫げに眉を潜める。
唐突過ぎる歳相応の少女らしいギャップにイザークが戸惑っていると、クローセルは指を立てて口を開き、ふと見ればその手には相変わらずアヤメの折り紙が握られていた。
「ああ、怪我についてはなるべく早く医師を寄越すので少し待っていてくださいね。へリオポリスの民間人のお医者様が乗ったシャトルは、先ほどあなたが大気圏で撃ち落としてしまったので、怪我人に対して、今のアークエンジェルにお医者様は多くなくて手が回らないんですよ」
「――――なんだと……?」
そして、何気なく告げられた中にあった"へリオポリスの民間人が乗ったシャトル"という言葉にイザークは目を見開いた。
彼は今まであのシャトルをメネラオスから逃げ出した軍人が乗っていたとばかりに考えていたためだ。もっとも完全に戦意のない状態で、それを一方的に破壊した事は褒められた事ではないが、それで優越感に浸れる程度の感性をイザークは持っている。
しかし、自身らが破壊したへリオポリスの民間人が乗っていたシャトルとなれば話は別であろう。知る知らない関わらず、彼がしたことは結果的に民間人の虐殺である。それも中立コロニーに住んでいただけで戦火に巻き込まれた無辜の民以外の何者でもない。
ここで彼が仮に、戦時中に中立コロニーに住まうような人でなし共に生きる価値はない、ナチュラルならば誰であれ殺してそれに多少コーディネーターが巻き込まれようと中立コロニーなぞに居た方が悪い等と、言い切れてしまうような外道ならば鼻で嗤えた事だろう。
「嘘じゃないですよ? あれに軍人なんてただの一人も乗っていませんでしたもの。全員、へリオポリスの民間人でした」
「……そ、そんなの知らな――」
しかし、イザークはそうではなかった。思想はナチュラル憎しの過激派寄りではあるが、人道に外れたこと自体を許容できる人間ではなかったのだ。
それが彼の最も柔らかな弱点。故にクローセルが抉じ開けようとする傷口は、まずそこからであった。実に人道から外れたブルーコスモスらしいやり方とも言えよう。
「うふふ……! どうでしたかぁ? ビームライフルでシャトルを切り裂いて…木っ端微塵に壊す感触……。あぁ……きっとたまらないのでしょうねぇ……」
クローセルは何が面白いのか相変わらずの笑みをより一層強くし、恍惚と言えてしまえる程蕩けた表情を浮かべ、熱を持ったような――"尊敬"するような視線をイザークへと向ける。
その様子にイザークは果てしない嫌悪感を抱くと同時に冷や汗を流す。
「や、止めろ……! そんな目で見るな……! 俺は――」
「ええ……ええ! だってそうでしょう? たかが中立コロニーの民間人のナチュラルや、反戦主義なコーディネーターも乗っていたかもしれないシャトルひとつ叩き落としたところで――私と同じように良心ひとつ痛みませんものねぇ……!!」
「あっ……お、お前と同じにするなァァ!?」
クローセルは非常にゆっくりと、しかし確実に一歩ずつ踏み締めてイザークに近づく。
それに追い詰められるようにイザークは徐々に後退していくが、直ぐに壁に阻まれて下がれなくなり、壁の冷たい感触を背に感じた頃には、後数十cmというところにクローセルは立っており、相変わらず笑みを浮かべ続けている。
そして、クローセルは目を細く見開き、口の端を三日月のように歪めると、楽しげに噴き出したような笑い声を漏らしてから口を開いた。
「いいえ、違わない!! 何せ私は誰よりもそれをよく知っていますから! だったら何故撃ったのですか? 射線上に入ったから、邪魔だと思って撃ったのでしょう? 避難民が乗っていようと、軍人が乗っていようと抵抗ひとつ出来ない彼らを撃つ優越感が得難いものだったからでしょう? 感触は心地良かったのでしょう? 戦争が楽しかったのでしょう? 戦艦やモビルスーツを墜としたときの感覚と何が違うと言うのですか?」
「や、止めろ……止めろォォォォ!?」
イザークは真っ白になり、弾けた思考のまま避けたい一心でクローセルの頭部を殴打した。それも両腕に装着された無骨な手枷で行ったため、重い打撃音が響き、彼女の身体が少し傾く。
そのまま一心不乱にイザークはクローセルを殴り付けた。頭、顔、肩、腕、胴、兎に角当たるならば何でもよく、ただひたすらに殴打を続け、立ったまま口を開かなくなった彼女を殴打する度に鮮血が飛び散った。
「――――――ぁ……」
ふとした瞬間に我に返ったイザークは呆けたように動きが止まり、手を震わせながら腰が抜けたように床に座り込む。
気付けば一切抵抗を見せなかったクローセルの艶やかな金髪と白い士官服は、彼女自身の血で湿るほど濡れており、床や天井や壁には彼女から出た血飛沫が帯のような血痕を残している。
丁度それは――彼が民間人を乗せたシャトルを墜とした行為に酷く似た光景だった。
するとピクリと血濡れのクローセルの身体が跳ね、ケタケタと調子外れに笑い始める。あれだけ殴られて尚、本当に楽しそうに、そして嬉しそうに笑う彼女は、さぞイザークにとって"悪魔"に見えた事だろう。
そして――クローセルは大きく動き出す。
「――あなたと私は同じです……!! そこに違いなんてありはしませんよ……!!!」
床に座り込むイザークを少し屈んで見下ろしながらそう言い放った。その表情には一切の嫌悪どころか悲壮ささえもまるで見られず、相変わらず熱に犯されたような視線と笑顔を見せるばかりである。
クローセルの血濡れの金髪の毛先からイザークの頬に一滴だけ血が滴り落ちる。既に彼は脅え切り、口を少し開けたまま表情を失うばかりであった。
「知っていますかこれ? 折り紙って言うものでしてね。アヤメっていう折り方のものらしいです。私は知りませんでしたよ」
クローセルは手から二つのアヤメを見せる。片方は自らの血で濡れた折り目が正しくないアヤメ。もう片方は自身よりもコレを庇ったのか一切血がついておらず、折り目の綺麗なアヤメだった。
そして、汚れたアヤメを仕舞うと、懐から写真を取り出してイザークへと見せた。
そこには今ここにある綺麗なアヤメと全く同様のモノを持ち、クローセルの膝の上に笑顔で座る小さな少女の姿があった。また、目の前の机の上には色とりどりの様々な花の折り紙が折られている。
「この可愛らしい子がくれたんですよ? あなたが邪魔だからと殺し……鼻で嗤った私の腰の高さほどの背もないこの少女がね? そう言えば将来の夢はお花屋さんですって! だからアヤメだけじゃなくて色んなお花も折れたんですよ? 可愛らしいですよねー?」
「……ぅ………………ぁ……」
それに言葉にならない呻き声のようなものを上げるイザーク。それを少しだけ眺めてから、クローセルは少女のアヤメと少女の写真を彼の足下にそっと置いた。
「このアヤメと写真……あなたにあげますね。どうぞ、たまに思い出してあげてください。パパとママごと殺されてしまいましたから、覚えている人は一人でも多い方がいいでしょう? まあ、あの世があるのならば私たちの行き先は地獄でしょうから、二度と会えないでしょうけどね」
それだけ言ってクローセルは屈ませていた身体を起こすと、扉へと向かう。その足取りはこれだけ血を流したとは思えないほど平静そのものであり、それどころか少し軽やかな足取りにさえ思える。
「ああ、そうだ。ごめんなさい、私ったら少しだけ見栄を張りました――」
丁度、扉を開けた状態で、クローセルは思い出したように指を一本立てて振り向く。
そして、独房に来てから、最も優しげで無邪気な少女のような屈託のない笑みを浮かべる。
「私、生きてて今まで一度もザフト軍の脱出挺や、プラントの民間船を撃ったことはないので、シャトルを撃った感覚なんて知らないですし、したいと思ったこともないんですよ。だって……
それだけ最後に言ってクローセルは独房から退出した。
驚くべきことに一言たりとも彼女はイザークのことを責めなかった。自身が一方的に殴られた事さえもである。
しかし、その余りにも壮烈な在り方と憎悪しかない言葉が、青年の心を砕くような太く鋭い楔を深くに打ち込んだことは――彼女が退出してから響き始めた、彼の泣き叫ぶような慟哭を聞けば想像に難しくない。
◆◇◆◇◆◇
「えげつねぇなぁ……嬢ちゃん」
クローセルがイザークのいる独房から退出して、扉にロックを掛けると、いつの間にか看守代わりの軍人ではなく、ムウ・ラ・フラガが扉の隣に立っていた。
「うふふ……! そうですかぁ? ちょっと楽しくお話をしていただけですよぉ? それより看守の人たちに"私に何が起きても開けないで下さい"って、言っておいたこと守ってくれてありがとうございますね?」
そう言いながら、彼から少し離れた廊下に目を向ければ、何人ものアークエンジェルの乗組員が呆然としたような、あるいは気まずそうな様子で血塗れのクローセルを見ている。
彼らが何をしに態々仕事でもないにも関わらず、コーディネーターの独房の前まで来ているのかはクローセルにも想像は出来たため、目を三角にして口を開く。
「集まっているクルーの皆さん! 何しに来たんですかぁ! もう! 捕虜への暴行とか、意地悪なんてしたら軍法が適用されちゃいますからダメですよー! …………そんなことしたら許せないですねぇ?」
独房の壁は得てして中の音が外に聞こえるように造るため、恐らくはクローセルがイザークと話していた一部始終のほぼ全てを聞いていたであろう彼らは、バツが悪そうに謝罪の言葉を述べてから去っていく。
最後に残ったのは独房の壁に背を預けているムウ・ラ・フラガだけであった。
「あんなんやられたら殴ってやろうなんて気は起きないわな……」
「そう言うムウさんは彼らを止める為に居たんでしょう? お優しいですね。損な役回りなのに」
「しなくて済んだけどな。それに今日のお前さんに比べれば誰だって優しくなっちまうよ。コイツ……ザフト軍に戻ったらまたパイロットに戻ると思うか?」
ムウ・ラ・フラガは親指でイザークのいる独房の壁を指差し、その中からは相変わらず彼の悲痛な慟哭が響き渡っていた。
「ふふっ……」
「嬢ちゃん今"良い悲鳴"とか思っただろ?」
「えへへ、バレちゃいました? 私、そういう性癖なので」
それに小さく笑うクローセルは独房の壁越しにいるイザークを見据えるように向き、恍惚な笑みを浮かべながら身を震わせた。
「まあ、彼がどうなるかは私の知るところではありません。けれど、自責の念でぶっ壊れちゃいそうになるような子をエースパイロットに据え置くだなんて……ザフトもヒドイですねぇ。大抵の人間は九割は正しくて時々間違えるか、九割は間違っていて時々正しいかですのにね。彼は前者、私は後者。だから同じ物差しで測れるわけないじゃないですか? まるで違う物差し同士で同じものを測ろうとするから戦争が起こるというのに……そんなこともザフトは教えてあげないで戦場に送り出したんですかねぇ? ホント不憫でなりませんよ……うふふ!」
「悪いとは言わないが……相変わらずだなぁ」
ムウ・ラ・フラガは溜め息を吐きつつ、血濡れにも関わらず、妙に元気がよくいつも以上に機嫌も良さげなクローセルを眺めた。
「というか、血だらけなのに嬢ちゃん随分とピンピンしてるよな……。大丈夫……じゃねぇな。さっさと医者を呼んで――」
「ああ、大丈夫ですよ。これぐらいなら全然。私、殴られ慣れているんで。両親の記憶なんて殴られたり、蹴られたりした記憶しかないんですもの! うふふ……可笑しいでしょう? だから体も頑丈なんです!」
「…………………………そうか、医者は呼んどくぞ?」
「ええ、ありがとうございます。ですが、自分で医務室まで行くので大丈夫ですよぉ」
そう言ってクローセルは鼻歌混じりの様子で、医務室を目指して歩いて行った。明らかに常軌を逸した頑丈さであるが、それをあまり感じさせない辺りは彼女らしさと言えるのかもしれない。
「……………………」
そんなクローセルの背を暫く見送り、見えなくなったところでムウ・ラ・フラガはポツリと呟いた。
「クローセルが言うには詮索したら俺らに被害が及ぶから止めた方がいい。まるで恐怖が抜け落ちたような精神と異様な戦闘時の高揚、異様な肉体の頑強さ。そして、関わっているのは大西洋連邦とブルーコスモス。ついでにDVを受けて育った過去か……」
既に数え役満のようなものであるが、それを言ってしまえば淘汰されるというのが軍というもの。ましてや地球連合軍は地球そのものを母体とする超巨大組織である。
故に軍人ならば黙殺するしかなく、クローセルもこちらに遠回しにそれを働き掛けており、日々の言動で自身の根幹に関わることを言うことは無かった。故に言葉にしてはならぬのだろう。
(上層部の連中……まさか――な。だとしたら本当に腐っているのはどっちなんだか……)
「あの……ムウさん?」
すると思い耽っていたムウ・ラ・フラガは声を掛けられ、驚きと共に我に返りそちらを見る。
「今の話……本当ですか……? クローセルさんがその……。被害が及ぶとか、恐怖が欠落しているとか、DVを受けて育ったとか……」
そこにいたのはよりにもよってストライクのパイロット――キラ・ヤマトであり、思わず口に出していたことを聞かれてしまっていた事に頭を抱えるのであった。
やったねイザーク! 身体は五体満足で帰れそうだよ!
ニコルくんは生きているし、第8艦隊接近前の戦闘がなかったのでイザークくんの顔に傷もないし、ハルバートン提督は生きているので、この作品は間違いなくハートフルストーリーですね!
~QAコーナー~
Q:ローンちゃん硬い……硬くない……?
A:海外ドラマの凶悪犯罪者特有の超耐久(適当)
あっ、そうだ(唐突)。作者約7年間ほどハーメルンで執筆活動をしていて全ての小説を通して初めて支援絵というか、挿絵なるものを頂いたので、貰って暫く絶句していたぐらい嬉しいのでここに貼っておきますね。いやぁ……モチベーションスッゴいあがりますねぇ……。貰えたというだけで嬉しいです(単純)
【挿絵表示】
笑顔付きさんから頂きました。キラくんと寝る(ド直球)前のローンちゃんだそうです。可愛い(語彙力↓)。本当にありがとうございます。