ムルタ・アズラエル滅殺RTA ブーステッドマンチャート   作:ちゅーに菌

15 / 17

早速一週間をオーバーし、FF7リメイクなんて全然していませんが初投稿です。

原作でクソ雑魚ナメクジのガードスコーピオンとエアバスターですら強いとか、原作最強マシンのキャリーアーマーと、最弱マシンの土下座マシンがどんだけ強くなるんですかねぇ……(正体あらわしたね)

また、ジェノバさん書きてえなぁ……(リユニオン)








砂漠の虎 最終戦(前)

 

 

 

 

 時間はアークエンジェルが降下し、レジスタンスの基地で8日間のインターバルを過ごしていた頃に遡る。

 

 現在、プラント本国では通り過ぎるあらゆるモノを破壊し尽くした上に、ジュール議員の身内であるイザーク・ジュールすらデュエルごと鹵獲し、地球へと降下していった"世界樹の悪魔"への対策について連日議論が続いていた。

 

「"核エンジン搭載機"の開発状況はどうだ?」

 

「ドレッドノートは既に試運転を終えている。搭載者の被曝もなく、性能も申し分ない。こちらにエネルギー切れがない以上勝算は大きいだろう」

 

「なら"世界樹の悪魔"に対抗出来るだけの武装は既に見繕っているのか?」

 

 しかし、プラントの総意を決めるハズの議会は、今や兵器開発の最前線とそう変わらない有り様になっていた。それどころか、ここで語られている技術は、戦争がひっくり返るような極秘の技術の粋である。

 

「"G"のフェイズシフト装甲、ブリッツに積まれていたミラージュコロイド技術、イージスの変形機構。そして、予備パーツを機体に直接組み込み、動力に核エンジンを搭載することで、いつまでも"世界樹の悪魔"と戦っていられるハズだ」

 

「フッ……地球連合軍サマサマね」

 

「やっかみが今さらなんだ! 使えるものは何だって使うだろう!」

 

 未知の悪魔に対する恐怖と焦りが、返ってザフトの技術レベルを急激に引き上げる結果となっているのだから皮肉なものであろう。

 

「それよりも小型化はどうした? これではハイドラよりも巨大だぞ?」

 

「出来たらとっくにしている。ニュートロンジャマーキャンセラーだけでも現状ではかなりの容量を占めると言うのに、そこへ更にこれだけの技術を詰め込んだのだ。むしろ、戦艦サイズにならなかった技術者達を労うべきだろう」

 

「ドラグーンシステムはまだ実用化していないのか? 構想上なら"プロヴィデンス"の方がより勝算が無いか?」

 

「まだまだ試験段階だ。有線でいいなら可能かも知れんが、それで"世界樹の悪魔"のモノに勝るとも思えん」

 

「向こうにはメビウス・ゼロのノウハウがあるものね」

 

 元々、プラント最高評議会は軍事関連の事をここまで熱を入れて決める為のものではなかったが、最早軍事一色と言っても過言ではない。

 

 また、最高評議会の戦争への前向きな決定と、次々と開発される兵器技術により、結果的に量産機の開発も進んでおり、今やザフトのモビルスーツ技術は月毎に驚くべき速度で躍進していた。

 

 ディン等の大幅に早まった実用化や、地上戦で最も戦果を上げているバクゥを発展させ――"フェイズシフト装甲とビーム兵器を持つバクゥ"の試作機はその最たるものと言える。また、既に核エンジンを搭載した量産機――"ザク"すら構想に上がっている程で、実際に"ザク量産試作型"を急ピッチで開発中である。

 

 人間は明確な敵が居なければ、真の意味で団結しようとしていなかったとも言えてしまうだろう。

 

「して……パイロットは?」

 

 議員の一人が呟いた言葉に、新兵器の開発現場の報告会と化したような内容の議論を、どことなく嬉しげな様子で聞いていたパトリック・ザラが口を開いた。

 

 

 

「現状、唯一正面から"世界樹の悪魔"と渡り合えている"ラウ・ル・クルーゼ"を除いて他にはいるまい」

 

 

 

 この場でパトリック・ザラの言葉に異議を唱える者は誰一人として居なかった。

 

 ただ一人――シーゲル・クラインだけは終始煮え切らない様子だが、それを気にするほどプラントは形振り構える状況では無くなりつつあったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はー……。なんだこれは……バクゥなのか?」

 

 現在、バルトフェルド隊の旗艦レセップス級、レセップスの中では、黒いバクゥのような三つ首の機体が佇んでおり、その両隣に置かれたバクゥやラゴゥよりも物々しい様子が伝わって来る。

 

 その機体の足元にバルトフェルドと副官のダコスタはおり、神話のケルベロスのようにさえ見え、性能確認のためにメカニックが起動させているために黒いバクゥを感心した様子で眺めていた。

 

「TMF/A-802W2――"ケルベロスバクゥハウンド"。例の"G"のビームサーベル技術と、フェイズシフト装甲を用いたプラント本国の試作機だそうです」

 

「はーん、他の隊にも何かあるのかね?」

 

「本国からはシグーの発展型の先行生産機や、ビーム運用用の試作機を。ラゴゥとバクゥを出すようにジブラルタル基地への指令。他にはラゴゥとバクゥに新たに装備されたビームサーベルもその一部です」

 

「ジブラルタル基地の奴ら、妙に大盤振る舞いかと思えばそんなことだろうと思ったよ。本国はやる気が違うねぇ、我々の故郷はさ」

 

 そう言ってバルトフェルドは目を細めつつ、自身がアフリカ戦線に携わってからのジブラルタル基地のケチなモビルスーツの配給を思い出す。

 

 図らずも"世界樹の悪魔"とアークエンジェルが偶々この砂漠に降下してきたお陰で、バルトフェルドは十全以上の条件で戦争が出来るのだから因果なものであろう。

 

「さて、とりあえずカラーリングを変えないとな」

 

「オレンジにするんですか……?」

 

「もちろん! やる気が違うからな! 俺の!」

 

(しかし……どうしたものかね)

 

 ダコスタに対して、そうは言って見せたが、実際のところ現状はあまり喜ばしい状況ではなかった。

 

 この砂漠には、アークエンジェルに加え、最優先破壊対象に指定された1機のモビルスーツとパイロットを攻略する為だけに、アフリカ周辺の選りすぐりの地上部隊が集結している。

 

 バルトフェルド隊もそのひとつであるが、地上部隊は既に各々の居城を構えており、縄張り意識とでも言うべきものと守るべき領地と個々のプライドがある。今回は偶々、ひとつの攻略目標のために集結しただけで、基本的に隊同士の折り合いは余り良くはない。無論、有事の際には連携は取るが、それは戦略レベルの話であり、戦術レベルでは各々の隊が独自に動くであろう。

 

 ましてや、今まで弱いもの虐めのような温い戦争をしていたと認識していた者がバルトフェルドだけということもない。虐殺ではなく、戦争をしに来た彼らは一様に飢えているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イザーク!」

 

 ジブラルタル基地からバルトフェルド隊に来たバスターのパイロット――ディアッカ・エルスマンは、同じクルーゼ隊のパイロットであるイザーク・ジュールがいるという部屋の扉を開ける。

 

 イザークはあの"世界樹の悪魔"にデュエルごと鹵獲され、つい先日に引き渡されたため、その安否確認と友人としての想いからの純粋な心配であった。

 

「……イザーク?」

 

 すると部屋の電気は何故か消されており、ベッドがある方に座っている人影が見える。それにディアッカは声を掛けながら部屋の電気を付ける。

 

「な――!?」

 

 そして、ディアッカが目にしたイザークの顔は生気があまり感じられず、目には隈が目立ち、以前よりも少し頬が痩けていた。

 

 そして、視線は近くに寄せられた机の上にある一枚の写真と折り紙に注がれ続けており、こちらに気付いたのか、イザークは湿った視線をディアッカに向ける。

 

「……ああ、ディアッカか」

 

「ど、どうしたんだイザーク!? いったい足付きの奴らに何をされて……?」

 

「………………なんでもない」

 

 どう見ても何でもないと言える人間の状態ではない。そのためディアッカは、同じ隊員以上に友人として詰め寄ると、イザークが虚ろな様子で見つめている机の上にある写真と折り紙を見る。

 

 そこには紛れもない"世界樹の悪魔"が小さな少女を膝に乗せている不気味な光景が写っていた。更に見れば、写真の中に同じ折られ方と色をした折り紙が写っているのも確認出来た。

 

「なんだこりゃ……? なんでこんなものを――」

 

 何気なくディアッカがそれらに手を伸ばしたその瞬間、イザークは目を見開く。

 

「――!? それに触るなぁ!」

 

 そして、ディアッカの手を振り払うと庇うように写真と折り紙を自身の方に寄せた。そのままイザークは肩を震わせ、泣いてこそいないがそれ以上に悲壮な感情がありありと浮かんでいる。

 

「お、おい……。イザーク? "世界樹の悪魔"に何かされたのか?」

 

 余りに様変わりしたイザークの様子にディアッカは驚きつつ、見た写真に写っていた人物からその単語を呟く。するとそれに彼は反応して顔を上げ、明らかに脅えた様子で震えるように言葉を漏らした。

 

「触らないでくれ……。アイツは間違っているが……間違ってないんだ……」

 

 イザークはそう言って、驚き戸惑う様子のディアッカに、彼は顔を伏せながらまたポツリと呟く。

 

「何も間違ってなかったんだ……!」

 

 その言葉の真意を読み取れる者はイザークしかいないだろう。しかし、余りにも深い慟哭と、触れれば壊れてしまうと思うほど、随分小さくなってしまった彼に、ディアッカは掛ける言葉が見付からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう始まってる!(挨拶)

 

 いきなりですが、本来なら戦艦はレセップス級1隻。モビルスーツはバクゥ4~5機、ザウート2~3機、ラゴゥ1機。そして、航空機はアジャイルとインフェストゥスが合わせて約10機程の部隊となります。ちなみにこの戦闘でのバクゥは、後期型バクゥになりますので、ビームサーベルを標準装備にしていますね。

 

・レセップス級×5(バルトフェルド隊旗艦レセップス含む)

・ピートリー級×12

・バクゥ(後期型)×18

・ラゴゥ×6

・ケルベロスバクゥハウンド×5

・ケルベロスバクゥハウンド(バルトフェルド専用機)

・ジンアサルト×10

・シグーアサルト×6

・シグーディープアームズ×2

・ディン×12(指揮官機×2含む)

・バスターガンダム×1

・ザウート×12

・アジャイル×18

・インフェストゥス×12

 

 

 ふざけんな!(声だけ迫真)

 

 戦艦17隻、モビルスーツ73機、航空機30機――合計120体とかお兄さん許して あしつき壊れちゃぁぅ↑ 仮に皆殺しにされたらアフリカ戦線の維持が困難になるレベルですよクレワァ……。というかなんですか、あのスッゲー目立つオレンジのケルベロスバクゥハウンド……。

 

 どこから説明しましょうかね……。とりあえずですけれど、この時点でディンは先行生産機になりますね。そして、シグーディープアームズと言うのは、地球連合軍より奪取したGAT-Xシリーズから入手した小型ビーム兵器の技術検証のため、試作型熱エネルギー兵器を搭載した実験機ですね。ホウセンカが描かれていませんので、どうやらシホ・ハーネンフースちゃんが乗っている訳ではないようです。

 トドメにケルベロスバクゥハウンドですけど……コイツはSEEDとDestinyの中間のお話のスターゲイザーで、ブルデュエルに乗っていたミューディー・ホルクロフトさんを視聴者にトラウマを植え付けるようなやり方で殺したアレです。また、そもそも機体設定としては、ユニウス条約の影響を受け、新規開発ではなく改修によって作られたバクゥの派生機種――の筈なので、Gジェネ特有の特に説明もない完全なオーパーツですね。ちなみに当たり前のようにフェイズシフト装甲が付いています(殺意↑)

 ザフト軍が本気どころか、死力を尽くしてアークエンジェルとローンちゃんを潰しに来たというのがよくわかりますねぇ……。ああん、ひどぅい。

 

 作戦としては上に1機ずつザウートを乗せて火力を増したピートリー級12隻でアークエンジェルを包囲攻撃しつつ、レセップス級5隻と、モビルスーツ73機と、航空機30機で襲撃して来るようです。これが人間のやることかよぉぉぉぉぉ!!!?

 

>皆さーん。私たちは4機なのでぇ……ひとりモビルスーツと航空機と戦艦を30ほど落とせばいいだけですよぉ! えへへ……! 幸せぇぇ……!

 

>ああ、そりゃいい! 俺たちここを切り抜ければ"世界樹の悪魔"の功績にみーんな並ぶじゃないの。

 

>チッ……ザフトのクソ野郎共め……! いつまでも調子に乗ってんじゃねぇぞ!?……でございます。

 

 そして、現在。レジスタンスの基地から飛び立ったアークエンジェルは、最大20km程の距離から繰り出されるピートリー級とレセップス級の砲撃を地面スレスレを飛んで気合い避けしつつ、徐々に包囲されつつあり、既に多数のモビルスーツが展開され、こちらに向かってきます。少しでも止まれば蜂の巣にされるので四面楚歌とはこの事ですね。馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!(天下無双)

 

>き、来ますよ皆さん! クローセル……"隊長"!

 

>はい、"ヤマト少尉"。ではフラガ少佐とヤマト少尉はアークエンジェルの艦橋前に立ち、強襲偵察型ジンはスナイパーライフルと特火重粒子砲で、ストライクはバルカンとガトリングと予め持たせた特火重粒子砲を用いて、航空機とシグーに似た飛行タイプのモビルスーツを墜とす事に集中してください。飛行タイプは見たところ遠距離武装を積んでいないようなので、撃墜よりもウィングに被弾させて飛べなくさせるだけで十分です。

 

>ストライクのアグニは、接近してきたアサルトシュラウド装備の機体か、射程に入ったレセップス級のみに放って下さい。あなたの腕なら当たる筈です。ストライクは10分……いえ、8分後にエールストライカーパックに換装と、76mm重突撃機銃を装備して再出撃してください。

 

 4人はそれぞれの機体に既に乗り込み、ハイドラガンダムを先頭に発進準備に入りつつ、ローンちゃんが指示を出していますね。

 モビルスーツ小隊が組める人数になったので、階級が最も高く、撃墜数が飛び抜けているローンちゃんが4人の小隊を指揮する隊長となっていますね。生体CPUでは抜群に高めの指揮値なので戦術レベルの規模ならば指揮が可能です。まあ、戦略レベルになるとローンちゃんが艦長になっちゃうので多少はね?

 ちなみにローンちゃんを艦長にすると、ぶっ飛んだ一部の戦闘ステータスとIDコマンドは引き継がれるので、アークエンジェルが真の意味で不沈艦になりますが、決定打に欠けるようになるので、RTA的にはハイドラガンダムに乗せた方がずっといいです。

 

>キリシマ一尉はアークエンジェル上を移動し、ストライクのビームライフルと、76mm重突撃機銃で真下まで来たバクゥを散らして時間を稼いでください。手足に当てて機動を削ぐだけで結構です。余計なパワーは極力使わないように、ですがパワーが60%を下回ったのなら補給に戻ってください。その間に私がハイドラでピートリー級12隻を全て撃墜してきます。地上戦の準備をしていてください。それでは――8分後にまたお会いしましょう。

 

 味方を後衛に下げて、自身が突貫して戦場を掻き回すGジェネスタイルいいゾ~これ。え? この状況はローンちゃんでもひっくり返せないんじゃないかですって?

 馬鹿な……こんなことは……とでも言うと思ったかい? アハッアハハッ! この程度、想定の範囲内だよ!(天下無双) まあ、実際のところ、これぐらいなら全然問題ありませんね。ローンちゃんのぶっ飛んだステータスとハイドラガンダムの各種武装が合わされば鬼に金棒ですよ。

 

 もちろん、省エネモードでイクゾー! デッデッデデデデ (カーン)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザフト軍の地上部隊にとってこれは過剰戦力極まりない作戦であった。

 

 戦力比はどう軽く見積もっても十数倍であり、自身らは初期から戦争に携わる生え抜きの精鋭。その上で、プラント本国は余すことなく最新鋭の試作機や先行生産機までもを投入し、いっそ臆病過ぎて軍備の無駄としか思えない程である。

 

 そして、現在。ザフト軍はアークエンジェルをレジスタンスの基地から炙り出し、十数km程の距離で捕捉して、攻撃を続けている。誰が見ても勝ち戦どころか、ほとんど虐殺であり、モビルスーツ隊を発艦させてはいるが、一機でも接近出来てしまえば、蟻が群がるように確実に終了するとほとんどの兵は疑わなかっただろう。

 

 作戦としては、アークエンジェルを陸上戦艦とモビルスーツで包囲するように追い立てつつ、防戦一方の状況を作り、"世界樹の悪魔"をアークエンジェルの防衛に張り付けたまま、性能を殺して倒すという単純なものだ。個々の隊が優秀故の最善の判断と言える。

 

 

 

「――! 目標からモビルスーツが4機発進しました! 内1機がッ!」

 

「なに……?」

 

 

 

 ただ、この作戦に誤算があるとすれば――。

 

 

 

「"世界樹の悪魔"!! 単騎で真っ正面から本隊に突っ込んできます!?」

 

「馬鹿な!? どれだけの戦力差だと……!」

 

 

 

 ――"世界樹の悪魔"の正気を信じた事であろう。彼女は恐怖という感情を切り取られた怪物故に、最も困難な選択をなんの躊躇もなく取り続ける。ただ、自身が最も快楽を得れると思った為だけに。

 

 この時点で作戦は破綻していると言えよう。下半身が丸々スラスターと化した変形形態で音速を遥かに超え、閃光のように空を駆けるそれは、最新鋭の戦闘機とでも言われた方がまだ理解できるだろう。しかし、ザフト側の豪雨のような砲撃を回避するために、全く速度を落とさずに直角にさえ移動する様を見れば、確かにモビルスーツであることを納得する他無いだろう。

 

「ええい、迎え撃て! "世界樹の悪魔"に残るモビルスーツ隊を当てろ!」

 

「アークエンジェル攻略に回っている機体は如何致しますか?」

 

「構わん! アレを墜としても我々の勝ちだ! 引き続き続行させろ!」

 

 そして、結果的な失敗は、既にアークエンジェルに送った先発のモビルスーツ隊をほとんどの隊が呼び戻さなかった事であろう。これにより、残存する約六割の戦力で"世界樹の悪魔"を正面から迎撃する事となり、部隊を反転させて背後から叩こうとした部隊は、バルトフェルド隊等の一部の部隊だけであった。尤も仮に攻撃隊全てを戻せていても最早手遅れに違いが。

 

「は……? "世界樹の悪魔"の反応ロストしました!?」

 

「馬鹿な!? 視認出来ているのだぞ!? まさか、ステルス機能を積んでいるのか!?」

 

 そして、既に最も近いピートリー級と数百m程にまで接近した直後、そのピートリー級や周囲のモビルスーツの観測機器から忽然とハイドラの姿が消える。無論、実際に消えた訳ではなく、肉眼では観測出来ているため、直ぐに計器が異常をきたしているだけということはわかるだろう。

 

 単純にクローセルは必要性を感じなかったため、これまで一度も使用して居なかったが、ハイドラガンダムには"ステルスジャマー"というジャマー兵器がサイドスカートに装備されている。

 

 これは周囲に特殊粒子を散布することで強力な電波妨害を発生させ、時間制限はあるものの電子機器をほぼ完璧に無効化し、MSや戦艦など外部カメラやレーダーなどから情報を得る兵器にとっては、姿が消えているように感じさせる事をコンセプトに開発されている"ハイパージャマー"と言う兵器の試作品だ。ミラージュコロイドに無い利点があるとすれば、"ステルスジャマー"は名前からもわかる通り、ミラージュコロイドの発生そのものに影響を及ぼし、一方的に無効化出来る点であろう。自らが開発した技術に対する対抗策でもあるのだ。

 

 しかし、後に条約で禁止にまでされるミラージュコロイドに比べると、本体の電子機器に専用品を採用し、妨害の影響を受けないようにしなければならない点。そもそも肉眼で機体を視認出来る点。敵味方問わず範囲内の対象全てに影響を及ぼす点等々、コストや性能面から二回りは劣っていると言えるだろう。

 

 その上、性能自体も試作段階のためある程度近づいた状態のレーダーから自機を消失させ、カメラ映像を拾う速度を僅かに遅らせる程度に留まる。それも精々、長くとも1秒程度の時間が関の山だ。

 

『ロ、ロックオンが……』

 

『捉えられな――』

 

『アッハハハハ!!! 青き清浄なる世界のためにィ!!!!』

 

 しかし、ハイドラとクローセル・レヴィアタンを相手取る者にとって、その機能は呆れるほどに効果的であることは、ハイドラの動き終えた影を撃ち、何も出来ないまま、すれ違い様に2本のビームサーベルで斬り裂かれた2機のアサルトジンを見れば明白であろう。

 

 只でさえ、異常なまでに速過ぎる機体を捕捉するのに、計器が頼れないとなれば、対するには卓越したパイロットセンスが要求され、最低限それを満たしていなければ、動く的でしか無いのだ。

 

 また、ザフト軍は地上にて全力で駆動するハイドラの機動性を確認しておらず、モビルスーツなのだから宇宙よりは幾分か機動性か落ちると、誰しもが考えていた事も致命的な誤算であろう。最初から人間を乗せる事を一切、考えられ設計されていないハイドラにとって、地球の重力など枷にもならない。

 

 そもそもの間違いとして、"世界樹の悪魔"に少数精鋭の戦闘なら未だしも、物量の戦争を仕掛けてはならなかったのである。

 

『まずひとつ!!』

 

 そして、"世界樹の悪魔"をザフトが視認してから約2分20秒後。ピートリー級の上に乗っているザウートには一切構わず、最初のピートリー級の艦橋がビームサーベルで撫でられるように斬られる。更に被弾することで容易に誘爆を引き起こす区画に、2~3発口部のビームを放ってから即座に離脱した。

 

 ピートリー級が爆炎を上げて破壊される光景を見ることすらせず、次のピートリー級目掛けて、"世界樹の悪魔"は稲妻のように空を駆ける。

 

『弱いクセに来るからァ!!』

 

『あ、あぁぁぁあぁ――!?』

 

 そして、"世界樹の悪魔"はその進路上にいたバクゥを、それぞれの腕に持つビームサーベルで、通り過ぎるついでに斬り伏せながら地面を縫うように飛ぶ。さながら戦闘機についたブレードのようで、あくまでも地上に足を付けたザフトのモビルスーツではまるで歯が立たなかった。

 

 かといって、航空機や飛行に特化したディンならなんとかなるかと言えば、それは全く無い。

 

『アッハハハ! 弱いから……弱いからァ!!』

 

『ぎゃぁあぁぁ――!?』

 

『助け――』

 

 何せ、およそ人間が乗っているとは思えないレベルの飛行速度に加え、トップスピードのままで弾け飛ぶように行われる異様かつ精密な回避。そして、その状態で回るように繰り出されるビームサーベルと、ステルスジャマーによる映像遅延が余りにも凶悪過ぎるのだ。

 

 近付けば、それこそシュレッダーに紙が巻き込まれるような気軽さで破壊されてしまい、接近することさえ満足に出来ない状態である。

 

『ふたつ! みっつ!』

 

 2隻が並んでいたピートリー級に取り付き、ビームサーベルと口部のビーム砲で艦橋と誘爆箇所を狙われ、瞬く間に陸上戦艦は熱を帯びた砂地の瓦礫へと変わった。

 

『う、嘘だろ……。な、なんなんだお前――』

 

『あはァァ……!』

 

 撃沈したピートリー級の近くにいた隊長機とおぼしき、シグーアサルトを発見したために"世界樹の悪魔"は、直角に曲がりつつ直進し続ける異様な機動を描きながら、シグーアサルトの背後に迫る。

 

『動くと当たらないでしょう……!?』

 

 そして、そのがら空きの背中をコックピット目掛けてハイドラのビームサーベルが通り過ぎ、真っ二つに別れながら砂地に堕ちて行く。

 

 "世界樹の悪魔"はそれに見向きもせず、次のピートリー級を見据えて突撃しながら、獰猛で蕩けたような笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おー、やってるねぇ! うちのクローセルはさ』

 

 アークエンジェルのモビルスーツ隊が発艦してから約6分後。既に丁度10隻目のピートリー級が弾け飛ぶ爆炎と黒々とした煙が、アークエンジェルの艦橋の前に立つ、ムウの強襲偵察型ジンからも視認出来た。

 

 ムウはキラのストライクと共にそこで並び立ち、ひたすら逃走するアークエンジェルを狙って尚も接近して来る航空機とモビルスーツを撃退していた。航空機以外の撃破は余りしていないが、モビルスーツの機動を確実に奪うための攻撃をし、千日手の状況を作っている。

 

 仮に30分程守り切れと言われれば、非常に困難だったが、戦闘面に置いては絶大な信頼のあるクローセルが8分という時間を定めた上、自身の帰る場所を現在進行形で破壊され続けており、相手側の焦りがこちらよりも遥かに強いであろう。

 

 ちなみにムウの乗る強襲偵察型ジンは、レーダーを外してアサルトシュラウド換装しているため、肩部のガトリングや各種ミサイルが使えることにより、ストライクの倍以上航空機を撃墜していた。まあ、ストライクはアグニでモビルスーツを寄せ付けない仕事もあるため、適材適所と言える。

 

『坊主はそろそろ言い付け通り、一旦戻ってストライカーパックに切り換えとけ。それぐらいの時間は俺とフローレンス一尉で何とかする!』

 

『わかりました!』

 

 アークエンジェルの底部に近く、下方が狙いやすい位置に陣取り、追い来るバクゥなどを牽制するキリシマのデュエルを一瞥してから、ストライクは一旦ドックに帰投した。

 

 そして、その状態で暫く持ちこたえていると、遠くでピートリー級の爆炎が上がると共に、黒煙の中から稲妻のような機動を描き、一筋の光のようにすら見えた黒い機体がアークエンジェルへと舞い戻る。

 

 

『うふ……うふふふふ……!! 皆さん時間通り、只今帰りましたよぉ!』

 

 

 "世界樹の悪魔"――クローセルとハイドラは、到着するなり、ショルダークローを変形させて、クロー部分を空へ飛ばすと、それらから放たれたビームにより、アークエンジェルに接近していたモビルスーツと航空機が凄まじい速度で撃墜されていく。

 

 十数秒でショルダークローの射程範囲内に居たザフト軍はほぼ壊滅し、偶々射程範囲に居なかった者は形勢が不利と見て、一時的に撤退して行った。

 

『ピートリー級12隻と、ついでに時間が余ったのでレセップス級も1隻墜としましたよぉ……!』

 

『相変わらずやるじゃないの――ってことは相手さん、もうレセップス4隻しか残ってないのか』

 

 "しか"というのは本来可笑しいが、現状まだ相当数のモビルスーツが残っている状況で考えれば妥当なところだろう。1隻で十全にモビルスーツを動かせるのは、宇宙戦艦ほど密閉機構や大型のブースターで場所を取られない地上戦艦と言えども、多くて数機が限度と言ったところ。

 

 要するにこの時点でザフト軍のモビルスーツの一部が帰投不能に陥っているのである。

 

『さぁて……。相手方はこの時点で撤退するか、追撃するかですけれど――』

 

 クローセルがハイドラの変形を解除し、2本のビームサーベルを仕舞いながらザフト軍の方を見ると、一時撤退した先発攻撃隊の残りと、本体のモビルスーツが合流し、40機以上のモビルスーツがこちらに向けて一斉に進行して来た。

 

『ふぅん……。まあ、ここまでひとつもいいとこ無しなんですから尻尾を巻いておめおめと逃げ帰れませんよねぇ。このまま帰ればモビルスーツを無駄にするハメにもなり兼ねませんし』

 

『クローセル。一旦帰投して補給しなくていいのか?』

 

『まだ、65%はエネルギーはあるので十分です。後は隊長機だけでも撃墜すれば相手は勝手に瓦解しますよ。ちなみに隊長機っぽいものは3~4機ついでに墜としましたので、流石に後半分ぐらいじゃないですかね?』

 

『あの……クローセル隊長……』

 

 すると歯切れの悪そうな様子で、時間が過ぎても何故かまだドックにいるキラのストライクから通信が入る。それにクローセルが首を傾げていると、キラは目を泳がせながら呟く。

 

『止めたんですけれど……カガリが――バクゥで出撃しました』

 

『へ?』

 

 そして、それと共に鹵獲したバクゥがアークエンジェルから飛び出し、砂地にしっかりと四肢を着陸させていた。

 

 その言葉に通信を聞いていたクローセルは呆けた様子になり、ムウは着地させた事を感心しているのか口笛を吹き、キリシマはわなわなと怒りに震えた様子でコックピットの内壁を殴り付ける。

 

『あんの馬鹿がァァ!?』

 

『ふーん、バクゥを動かせるんですか。ならキリシマ一尉はカガリちゃんのフォローに回ってください。それで一機でも殺せるモビルスーツが増えるなら御の字です。フラガ少佐は引き続きアークエンジェルの防衛を、ヤマト少尉は遊撃を』

 

『嬢ちゃんはどうするんだ?』

 

『それはもちろん――』

 

 そう言うとクローセルは笑みを浮かべながらハイドラを砂地に降ろして着地する。そして、素足でビーチの浜辺を踏むような気軽さで少しだけ足を動かす。

 

 更にビームナギナタを取り出して連結させて右手に持つと、左手にEMFシールドを装備する。そして、ショルダークローの飛んでいたクロー部分が戻り、2本のアームと化した。

 

 

『折角ですから、今度はあの方々の土俵で楽しませて貰いますよ。あんなにたくさん無駄に死にに来て……ホント――許せないよねっ!!』

 

 

 それだけ言い終えるとハイドラのスラスターが点火され、既に目前まで来ていたザフト軍へと単騎で突撃すると共に、ビームナギナタで一機のバクゥを斬り裂き、砂地に足を付けながら今だかつてない戦場に嬉々として身を落とす。

 

 クローセルは特にハイドラへ砂地に適したOSを組み込むような事をしていない。キラがOSの改良を願い出た時も彼女はやんわりと断った。

 

 その理由は――"その方が楽しいから"である。

 

 つまり、クローセル・レヴィアタンの最大の強みは、ナチュラルの中で鬼才と呼ばれるほど、卓越した生まれついての操縦技術とバトルセンスにあるのだ。

 

 

 

 

 








プラント最高評議会「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」

クルーゼ隊長「ええぞ!ええぞ!」

シーゲル・クライン「ええ……(困惑)。こわいなーマルキオ導師にドレッドノートおくっとこ」





~今回の戦闘マップ~

イベント進行条件
ピートリー級12隻の撃破

敗北条件(前半)
アークエンジェルの撃墜
クローセルの撃墜

敗北条件(後半)
アークエンジェルの撃墜
クローセルの撃墜
カガリの撃墜 New!





~QAコーナー~

Q:ローンちゃんどんな機動で動いてんの?

A:全盛期に実在したACFAのブレオンランカー。


Q:ハイドラガンダムの地球での性能おかしくない?

A:たった5機で地球に立ち向かったガンダムを殲滅するためのガンダムなので、むしろ量産機に毛が生えた程度の機体と一般パイロットを幾ら集めてもWガンダム的にはねぇ……。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。