ぼたっ、ぼたっ、ぼたっ……パタタタッッッ!!
「ふがっ、なんだなんだ!」
午前の配達を終え、お昼ご飯を食べた後。ついつい睡魔に誘われるがままカウンターに突っ伏してた僕は盛大な物音でビクッと跳ね上がる。僕はそのまま薄らと涙でボヤける視界で傍の窓に目を向けた。どうやら雨が盛大に降りだしたらしい。往来を歩いてたマダムや裏路地で絨毯を敷いて商品を売ってたモグラの兄ちゃんなど、街の人たちがてんやわんやしている。
幸い僕は特にすることもないので、その様子を眺めながら大きく一欠伸。体を伸ばすとボキボキッといい音が。変な体勢で寝てしまってたもんなぁ。
もう一眠り、という気分は完全に無くなっちゃったもんだからさて何をしようという感じ。そもそもお客さんが来ないことにはやることはそんなにない。店の掃除は昨日こっきりとしたところだし、グラスの修理依頼も一昨日全部こなしちゃった。まだ頭が覚醒仕切ってないから脳内のやることリストが出てこない……。
ガチャ!カランカラン!!
「すまんヒムロ!邪魔するぞ!!」
「お願い、ちょっと雨宿りさせて!!!」
「わっ!ちょっと、もう少し丁寧に入ってきてよ!」
忙しない二人が飛び込んできた!
ハクメイとミコチ 二次小説「日々是好日」
「雨音の中」
「むむむ……こいつだぁ!」
「はい残念賞。そっちはハズレ。……で、こっちは当たりかな?」
「うがぁ!なんで的確に当てて来るんだよぉ!」
「ハクメイ、あんた顔に出過ぎなのよ……。」
ちょっと荒々しく飛び込んできたハクメイさんとミコチさん。どうやらこの店のそばの通りをぶらぶらしてたところ振られちゃったもんだから、逃げるようにしてやってきたらしい。まぁ僕も暇してた所だったから大歓迎なんだけどね。何かやることあった気がしないこともないけども。
そんなこんなで二人にタオルを渡して、二人がある程度身だしなみを整えたあとは特にやることもなかったのでインテリアに成り下がっていたボードゲームを引っ張り出してきたってわけ。5個ずつある二種類の駒を使った駒取りゲームだ。Aのコマをどれか一つ特定のマスに置くか、Bの駒を全部相手に取らせるかすれば勝ちっていう簡単なもの。勝率は僕とミコチさんでトントン、ハクメイさんが圧倒的に負け越しって感じ。
「ほんとにハクメイさん博打好きなの?流石に心理戦弱すぎない?」
「それがねぇ、賭け事になるとくそ度胸で乗りきっちゃうのよ。一緒にやってる身からすると真横で大きな金額を張られるものだから怖いのなんの。」
「うるさいぞ!私はこう、チマチマしたことがやってられないだけだ!」
しばらく僕とミコチさんでからかってると「あー、やめだやめだ!」ってハクメイさんが拗ねちゃった。ぷんすこしているハクメイさんを見て勝ち組二人で顔を見合わせ苦笑したところで、ミコチさんがカウンター横の小窓に顔を向ける。
「にしても雨、全然止まないね。」
「だねぇ。結構遊んでたけど弱まりもしないね。こうも降り続けられるとお客さんも来てくれないよ。」
「……ここに客がいないのはいつものことだろ。」
「なんて失礼なことを言うんだ!……ごめんて、コーヒーとお菓子出してあげるから許して、ね?」
「別にそんなに怒ってはいないさ、まぁくれるなら貰うぞ。」
「しまった、もうちょい粘るべきだったか。」
不貞腐れた様子からケロッと表情が元に戻ったハクメイさんを見てしてやられたなという気持ち。まぁ、ちょうどおやつ時だったからいいんだけどね。
てなわけで、用意したものを二人に出して世間話。
「こないだ結構長いこと店閉めてたよな。大体2週間くらいか?。何してたんだ?」
「そうそう、二人で前を通りがかった時気になってたのよね〜。」
「あ〜、ハルハンの方に商品を仕入れに行ってたんだ。」
「それはまた。大変だったんじゃないの?」
「まぁね〜。汽車と船を乗り継いで、偶に走り屋にぼられたりしながら何とか。」
時折コーヒーを啜りながら長旅の道中を二人に話していく。
といっても、こんな同行人が居ただとか途中の波止場で食べた海鮮丼が旨かったとかを話すだけだからそこまで多いわけでもない。こういう時にカメラを持ってりゃ店だとか景色を見せられるから話がもっと臨場感あるんだろうけど……。無かった物を言っても仕方ない。
「で、結局どんなものを仕入れてきたの?」
ちょうど二杯目のコーヒーを飲み干した頃。ミコチさんがそう零した。
「今回は若手の職人さんのギャラリーとかを巡ったからね。中々個性派揃いって感じだよ。」
「もう店に並べてるのか?さっき見た時はあんまり見当たらなかったが。」
ハクメイさんのその言葉にハッとする。そうだ、寝ぼけてた時に何か引っかかってたのはそれだ。
何だか気まずくなり、頬をポリポリと掻いて言い訳を零す。
「いや〜、それが中々の量でねぇ。良いものを買えたは良いものの今度は値段設定とかに手間取ってるのさ。」
「仕入れたものくらいちゃっちゃと並べときなさいよ……。」
「耳が痛いよ。ちょーっと待っててね。」
呆れたと言わんばかりに飛んでくるミコチさんのジト目光線から逃げるように奥に行き、保管箱を二人の元に引っ張り出す。蓋を開けて一つのグラスを取り出すと二人の注目はそちらに移った。片側に異常に出っ張っている、まるでしゃくれた顎のような形状を持つビールグラスだ。
「妙にアンバランスなグラスだな〜。失敗作か?」
「ずいぶん飲みにくい、というか持ちにくそうね……。」
「これ作った人は旅好きらしくてね、色々見かけたものを作品に落とし込んでいるんだ。この箱に入ってるのは鳥をテーマしたシリーズらしいよ。」
ちなみにこれは南国の方で郵便をしてる、ペリカンって鳥をモチーフに……って続けようとしたらミコチさんに食い気味に「もっと見たい!」と詰め寄られた。こんなフンスフンスしている彼女を見たことがなかったので困惑しているとハクメイさんに「ミコチはさ、鳥が大好きなのさ。」と苦笑しながら告げられた。
なるほど、と納得して、次々にモノを取り出す。お次はステムが長い、薄緑のリキュールグラス。
「これはハチドリ。小さい個体は僕たちよりも小さいらしいよ。」
「へぇ〜、そんなのもいるんだ……。」
「その名の通り花のミツを集める鳥なんだとか。これであっっま〜い蜂蜜酒とか飲めば同じ気分味わえるかもね。」
そんな風に説明しつつ箱から出してると、底の方に封筒が。
「あ、そういえばモチーフになった鳥の写真もつけてくれたんだけど、見る?」
「見る!」
「了解。」
封筒から作者に渡された鳥の写真取り出し、それぞれグラスを対応させてカウンターに並べていくと、ミコチさんは食い入るようにそれらを手に取り実際の鳥の姿と見比べながら鑑賞し始める。
「これは長くなりそうだなぁ。」とぼやくハクメイさんは少し呆れ顔だ。このままだと少し退屈かもしれない。そう思って、ハルハン地方の各所の特徴が出てる民芸品のグラスが詰まった箱を出してあげると、こちらも興味津々といった様子で物色開始。
しめしめ、これはチャンスだ、と商売人魂に火がつくのを感じた僕は意識を営業モードに切り替えて二人の質問に答えだした。
結局、二人が帰ったのはすっかり雨も止んでしばらく経った閉店後。戦果はいくつかのグラスと取り置きの約束。元々売り上げが0を予想していたので大戦果だ。
ハクメイさんの弁舌にやられて少しマケさせられたけども。まぁよしとしようか。
前回、秋も完全に終わったなとか思って書いた記憶があるんですが、もうすぐ秋が来ますね?
これは妙だな。ボブは訝しんだ。
こんな亀もビックリな更新頻度かつボリュームの少ない小説でも、お気に入りや高評価を残してくださる人がいらっしゃることに感謝ばかりです。本当にありがとうございます。
何か原作キャラの絡みとか、こういう題目の話が見たいとかあれば気軽に感想欄へどうぞ。
参考になりますので、こちらとしても非常にありがたく思います。
とりあえず、せっかく蜂蜜館に住んでるんだからそろそろ慌ただしいお話を考えようと思いマス。
ではまたいずれ。