ガンダムビルドダイバーズ・オラトリオ   作:龍宮院奏

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日常の感じと、僕っ子は難しいです……。
誤字報告、本当に有難う御座います。


第5話 先輩と作るガンプラは楽しい。

「今日は一段と機嫌が良いな、後輩」

 

 昼休み、人があまり来ない静かな図書室。古い本の匂いと、窓辺に置かれた花の香りが仄かに香る。

 その部屋で、本を片手に少女は語りかける。雪のように白い肌と、淡い茶色の髪の毛を頭のてっぺんより少し下の所で結った少女が。

 

「久しぶりに、面白い相手が見つかったので」

 

 語りかけられた少年の手には削れて無くなりそうな芯を出したシャープペンと、細部まで描き込まれた絵。

 

「そうか…、それにしても君が此処に来てから始めてみたよ。君、そんな風に笑うんだね」

 

「此処に来た時はまだ、現実に納得してませんでしたから……」

 

「それじゃあ、今は納得しているのかい?君の今の口調だと、僕にはそう聞こえるよ」

 

「してはいませんよ。だって’’アノ人’’の未来を奪ったことは、僕達の可能性を奪ったことは、消して変わらないんですから」

 

 

「だから『自分が殺して、もう一度未来を取り返す』と?」

 

 

 先輩と呼ばれた少女の目は手に持った本から、窓の向こうの空を羽ばたいている鳥に移り変る。

 

「はい……。その為に、今の相棒と戦ってます……。来たる、決戦の日にむけて……」

 

 少年は少女を見ることなく、ただ絵を見て強くシャープペンを握る手をより強く握った。

 

「それはそうと、その君が戦った相手ってどんな人だったんだい?」

 

「先輩はGBNやってないでしょ?それにガンダムだってロクに話せないんだから」

 

 暗い空気は一変して、穏やかな会話に変わる。

 

「し、失礼な!君が散々話すから、少しは勉強してきたさ」

 

「へぇ〜、じゃあ何勉強したんですか?」

 

「『新機動戦記ガンダムW』の小説と、『機動戦士ガンダムUC』の小説を読んできたんだ」

 あるようで無いような胸を張って、『私頑張ったよ』アピールをしてくる。

 

「それでご感想は?」

 そんな先輩を流して、少しはガンダムの魅力を知ってもらえたのかが気に成る。

 

「僕はあまりこの手の小説を読まないのだが、とても面白いと思うよ。本当に奥が深いよ」

 

「そうですよね……。人の思いが溢れて、でも解り合うには難しくて……」

 

「もしだ、もし本当に『ニュータイプ』が現れて人と人がより一層解りあえるなら、きっと世界はもっと温かいんだろうな……」

 

「だと思います……」

 

 人の中に有る可能性を信じる……、この小さな事で本当に世界は変わるんだから……。

 

「それと、僕の好きな機体だが。W・ウイングなら『トールギスⅢ』、UC・ユニコーンなら『シナンジュ・スタイン』かな?」

 

「先輩の好きな機体、両方共外伝の機体ですよね!しかも劇場版の!」

どんだけ好きになってくれたんですか!こっちとしては有り難いですけど!

 

「先輩、もしかしてスピード重視ですか?」

二機の共通特徴を考えてパッと思い浮かんだのが、背中に装着されている大きなブースターパック。障害物をものともせずに飛んでいく姿。

 

「確かに、僕は重装甲の『ヘビーアームズ』や『ナラティブ・A装備』を見てると、どうにも使いにくそうで……」

 

「あ〜でも、そうですね……。装備が多すぎると、機動力確保も難しくなってきますからね」

 

「だろう、なら機動力を確保し確実に落とす!」

 

「でも、僕は『サンドロックEW』や『ドライセン』みたいな重装系も好きですね」

 

 

「ごめん、雄雅君……。『サンドロック』は解るけど……、『ドライセン』ってどの機体だい?」

 

 

「え?」

 

 

「え、あいや……。主力のガンダムや大佐が使うような機体に注目してたからさ……」

 

「先輩、今日の放課後空いてますか?」

 

「空いては居るけど……、これはもしやデートお誘いか?そんな、君が僕をそんな風に思って…」

頬を赤めらせて、読んでいた本を閉じる。

 

 

「『THE GUNDAM BASE』で、しっかりとガンダムについて勉強しましょう!」

 

 

「あれ?」

 

 

「あれって何がですか?」

 

 まるで僕が間違ったことを言ったかのように、唖然とする先輩。

 

「そうだよね……、君が僕をそんな風に思ってくれているはずは無いよね……。どうせ、僕なんか……」

 

 急に一人で何やらぶつぶつ言い始めたけれど、やっぱり行きたくないのかな?

 

「先輩、やっぱり行くのやめますか?」

 

「行く!」

 

 目元が若干赤い気もしたけれど、返事がすぐに帰ってきたので今日の放課後は二人でナナミさんの所に行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、もしかして学校帰りに毎日通ってたりするの?」

 

「何でそんな事を?」

 

「いや、あの店員さんと仲良いなって……」

 

「そうですか?」

 

 放課後に学校終わりに『THE GUNDAM BASE』に直行し、先輩が知っている範囲でまずはガンプラを通してガンダムを知って貰うことにした。ナナミさんと会ったけれど、『何、ユウガ君彼女?まさか、お姉さんが知らない所でねぇ〜』と笑みを浮かべて挨拶をする間もなく行ってしまった。でも、レジで会うんだけど。

 

「先輩、折角だからガンプラ作りませんか?」

一通りの説明が終わったので、ちょっとした提案をしてみる。

 

「え、今から?そんな急に出来るものなのかい?」

 

「出来ますよ?道具は貸してくれますし、ビルダーズゾーンって所で買ったガンプラは作れますから」

 

「いやでも僕初めてで……」

 

「僕が教えますから、安心してください」

 

「じゃ、じゃあ作ってみようかな……」

 

「はい!」

最初は渋っていたけれど、作ってくれると言ってくれた。これは今度先輩にガンプラの魅力を伝えるチャンス!

 

「それじゃあ、先輩の最初のガンプラを選びましょう!」

 

「僕の初めて……」

 この時先輩の顔が赤ったけれど、特には触れなかった。

 

「何か希望はありますか?此処、何気に品数は多いんで」

 

「そうだね……。君は何か作るのかい?」

 

「僕もですか?相棒がありますし、昨日ガンプラ買ったばっかなんで」

 

「一緒に作ってはくれないのかい?」

制服の裾を引っ張って、目をうるうるさせて聞いてくる先輩。

 

「ま、まぁ、今日は先輩のガンプラデビューなので、僕も買いますよ」

 

「有難う、後輩!」

人が買うと行った途端に、手を離してはしゃぐ先輩。

 

「僕は相棒とは別に依頼用の機体でも作ろうかな……。でも、既に二機居るんだけど……」

 

「あの後輩よ、買わせておいてなんだけど。私のガンプラ選びも手伝ってくれるかな?」

 

「ジオン系で揃えてきたから、またジオンにするか……」

 

「お〜い、後輩君〜」

 

「は、はい!聞いてますよ……」

 

「嘘だね」

 

「一応は聞いてましたよ……。先輩が好きだと言っていた機体から作りますか?」

 

「あ、あるのかい?」

 

「ありますよ、シリーズ的には……あっちですね」

自分達が見ていた棚から少し歩き、探していると。

 

「有りましたよ、HG144/1スケール『シナンジュ・スタイン』。こっちには、『シナンジュ・スタイン(UC版)』まで」

流石『THE GUNDAM BASE』、ネット販売の商品まで置いてくれるとは。

 

「同じモデルなのに、何が違うんだい?」

 

「先輩が言っていた『シナンジュ・スタイン』はNT・ナラティブ版で袖付き仕様になってますよね」

 

「そうだね、NT・ナラティブに出てきたからね」

 

「でも、NT・ナラティブの方の『シナンジュ・スタイン』は後継機みたいなもので、本当はUC・ユニコーンの方の『シナンジュ・スタイン』が正式な方ですよ。ほら、胸のマークとか袖無しになっているでしょ」

 

「本当だ…、綺麗に無くなっている」

 

「元は『ユニコーンガンダム』を作る上での実験機だったので、それが奪還されてジオン仕様になったんですよ」

 

「フル・フロンタルのも奪還されたこれが……」

 

「そうですよ!まさかこの純白の機体が、あんな真紅の機体に染め上がってしまうだなんて」

 

「そう言って、本当は大好きなんだろ?」

 

「はい、マジ格好いいです!」

 

「本当に君ってやつは……」

 

大きく溜め息をつく先輩。

 

「しかし、このUC版の『シナンジュ・スタイン』の方が私は好きだな。決めた、この子を買うよ」

 

「ほ、他は見なくて良いんですか?」

 

「多分、これ以外を見ていたら日が暮れてしまいそうだからね。それに、これは君が選んでくれたんだからね」

 

「あははは…、そんな単純に…」

 

「良いんだ、私はこれが欲しいんだ」

箱を抱えて離そうとしないので、これは先輩の気持ちを優先させよう。

 

「次は君のガンプラを見つけに行くぞ!」

 僕の腕を取り、歩き出す先輩。突然手を握られてビックリしたのだが、先輩があまりにも楽しそうなので連れて行かれることにした。

 

 

「先輩、僕これ買います」

先輩に連れこられた通路で、最初に目に止まり、運命を感じた機体を手に取る。

 

「『ザクIII改(Twilight AXIS Ver)』?」

手に取り箱を見せると首を傾げながら読み上げる。

 

「『機動戦士ガンダムサンダーボルト』の二作目の劇場版で、同時上映された『機動戦士ガンダムTwilight AXIS』に登場した機体でしてね」

 

「君の相棒も赤だった気がするけど……」

 

「相棒の『イフリート・エヒト』も深紅の装甲ですよ。これよりもずっと赤いですよ」

 

「確かにこのままだと赤というよりは……そのピンクに近い気がするからね……」

 

「それは言わないで下さい…」

常日頃を思っていることをボソッと言うので、そこは配慮してくださいね。

 

 

「あれ?ユウガ君、今日も買うの?」

レジに付くと『待ってました〜!』と言わんばかりの笑みを浮かべて、接客をするナナミさんが待機していた。

 

「先輩にガンダムを教えるついでに、ガンプラの布教していたんで。それで、折角来たんだからガンプラを作ってみようって話になったので」

 

「だから教えるついでに買うと?」

 

「一緒に作ったほうが、教えるのも簡単ですから」

 

「へぇ〜、以外に考えてるじゃん」

 

「肘で突かないで下さい、割と痛いです」

 

「ごめん、ごめん。はいじゃあ、ユウガ君の分ね」

会計を終えて商品を受け取り、先輩とレジを交代する。交代する際に、足を思い切り踏まれたので、

 

「痛った!何するんですか!」

 

「すまない、僕としたことだ足が滑ってしまってね」

わざとらしく咳払いをして、先輩は俺を無視してレジに向かっていった。

 

 

 

「ねぇねぇ、ユウガ君のお友達?それとも彼女さん?」

 

 この店員さんはやけに後輩に絡もうとするな、それと私は……。

 

「友人ではなく’’先輩’’だ。それと彼女ではない……」

 

「彼女さんじゃ無いんだ〜…」

目の前で落ち込むな!私だって、このガンダム馬鹿に……。いや、この店員に怒っても仕方ないか。この場で怒るとするならば……。

 

「ちょ、何ですか先輩?顔怖いですよ……」

 

「何でも無い……」

何時か、何時かはギャフンと言わせてやりたいものだ。

 

「ねぇユウガ君、本当に’’先輩’’さん?」

 

 おい、それは聞き捨てならないな?

 

「ナナミさん、身長は小さくても僕より一個上の先輩ですよ。どんなに中学生に見えてもっ!」

 

「おい後輩……、それ以上言ったら・・・・・・殺すぞ」

 

「は、はい・・・・・・」

 

 全く、人が気にしていることをズケズケ言ってくる君が悪い。だから、君のお腹にストレートのパンチを入れたんだぞ。久しぶりに良い拳だった……。

 

「ユ、ユウガ君……」

 

「だ、大丈夫です……。先輩のコレは普通なので……」

 

「それじゃあ僕が暴力的な少女だと思われるが?」

ギロリと倒れ込む後輩に睨みをきかす。

 

「すみませんした……」

 

「素直で宜しい」

本当に、余計な一言さえなけれ僕の良い後輩なのに。

                      

「えっと……、そのごめんね何か……。わ、私はナナセ・ナナミ、ナナミさんって呼んでね」

 

    ヒノ・ハルカ

「僕は、陽野晴華。このガンダム馬鹿の先輩です」

 

「ハルカちゃんね、よろしく」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

「さっきはその…ごめんね…」

 

「その件についてはお気になさらず、この不出来な後輩が余計な事を言うのが悪いので」

 

「先輩、それ以上言うなら僕GBNの方に行きますよ」

 

「そ、それは……。き、君が僕のことを中学生とか言うのが悪いんだろうが!」

 

 晴華先輩に殴られたから、ようやく立ち上がる雄雅。

 

「事実なので……」

 

「あ’’ん’’?」

がしかし、キツイ睨みで威圧されたので大人しくするのだった。

 

「そ、それにしても、随分と仲良いよね。部活か何か一緒なの?」

 

 ナナミさんの質問に、僕と後輩は顔を見合わせてこれまた息ピタリに、

 

「「図書室で知り合って、意気投合した先輩後輩ですが?」」

 

「一言も違えずに、本当に付き合ってないの?」

自分達もビックリしていた。

 

「だから、付き合ってませんから」

肯定するの要素は微塵もなく、はっきりと答える後輩。

 

「ユウガ君…、そこまでハッキリ言わなくても…」

 

「いやだって、先輩も俺何かじゃっ!」

 

「君はもう暫く黙っててくれ……」

本当に無神経にも程がある、この馬鹿な後輩には泣けてくるよ……。

 

「えっと……、今会計済ませちゃうから」

 

「有難う御座います。あと、此処でガンプラを作れると聞いたのですが?」

 

「あ、うん。此処のビルダーズゾーンで作れるよ、道具もあるから」

 

「本当に凄いな此処は……」

 

「ふっふっ……。だって、この辺りのお店では一番の設備と品揃えが自慢だからね」

 

「はぁ、確かにこのお店いっぱいの棚に積まれたガンプラの箱を見ているとそう思います」

 

「お客さんの要望も様々だから、だから色々置いてあるんだ。はい、これね」

袋に入った僕の初めてのガンプラを受け取ったので、

 

「ほら、後輩。君が僕にガンプラの作り方を教えてくれるんだろう?」

二度目にしては弱く殴ったはずなのだが、蹲って動かない後輩を揺すってみる。

 

「い、今動きますから……」

 

「全く、早くしたまえ」

 

「先輩の拳がみぞおちにキマって…痛いんですよ……」

ようやくのことで起き上がり、

 

「それじゃあ、ガンプラ作りを始めましょうか」

 

「あぁ、よろしく頼む」

 

 

 

 

 

「で、出来た……」

 

「先輩、手先が器用だから随分と綺麗に出来たじゃないですか」

 

「いや、君なんか塗装までしているし……」

 

「だって、先輩教える必要が無いくらいに作るの上手なんですから。教えるのも、スミ入れ位だったし」

 

「最初は見様見真似でやってみたんだけどな……」

 

「でも、先輩専用の『シナンジュ・スタイン』カッコいいですよ」

 

「君の『ザクⅢ』も、綺麗な赤で素敵だよ」

 

 机の上には、初めてながらに綺麗にヤスリがけをし、スミ入れとつや消しスプレーを施した『シナンジュ・スタイン』と、改造は特に加えず基本に忠実に作り込まれた『ザクⅢ』のカラーリング変更機が乗っていた。

 

「じゃあ、今度は出来たガンプラで遊びましょう!」

出来たガンプラを手に持って、椅子から立ち上がる。

 

「もしかして?」

突然立上ったことに驚くものの、先輩も予想はしていたのか反応は早かった。

 

「そうですよ、先輩もGBN始めませんか?」




今回の新キャラ・陽野晴華先輩。先輩のキャラも設定集の方に追加します。
私もガンプラ作りたいな……。アンジェロ大尉のギラー・ズールでも作ろうか……。
次回は、先輩と後輩、ビルドダイバーズの交流と行きましょう。
GBNが実現したら、私も参戦したいです。

今回もご閲覧していただきありがとうございました。
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