○月☓日
日記をつけることにしました。日々の何気ない一時を時折思い出し、日常に浸れると聞きました。良いものですね。
さて、しかしこのような事を他の皆に知られてしまえばそれより先に仕事をしろと怒られてしまいます。我等が始祖の悲願、人造迷宮の完成。私が生きている間に完成を見ることはないでしょう。
長い寿命を持たず、僅かな傷から入った病魔でしんでしまう弱い種族ですからね、我々は。ああ、しかし、残念です。長い時を生きることが可能ならば、役目を終えた時私も私のしたいことが出来るはずなのに。
ダンジョン………ええ、始祖が憧れるのも無理はありません。岩の壁から、無機質なはずのそこから産まれいづる異形の生物。人工的に見える場所すらあれば、広大な大自然としか思えぬ森林に、巨大な根の森、霧が立ち込めた平原と地下とは思えぬ様々な環境。
素晴らしいですね。その秘密を、いつか解明したいものです。
●月◢日
とうとう新たな階層に通じる扉が掘れました。ここまでよく頑張れたものです。始祖の祝福により、我々が一心となり共に苦労を分かち合った結果です。始祖からの愛ですよ、愛。素晴らしい。
祖先から脈々と受け継がれていく使命。その使命を果たすことを成せた喜び。ええ、喜ばしいことです。私達が心を一つにした、何よりの証なのですから。
☓月◑日
神と契約をした。
ここ最近神の恩恵を得た冒険者が増え始め、家族を増やすために母体を探すのが難しくなって来ましたからね。我々も冒険者に対抗できる力をつける必要があるのでしょう。レベルを上げれば寿命も伸びる。拒否する理由はありませんね。
それに、力も上がれば作業の効率も上がりますし、神の恩恵も非常に興味深い。身体能力が、断面積と釣り合わない。人間の骨格筋ではこの力は出せぬはず。神を天界に送還してみたら一時的に封印状態となったのを見るに、恐らく神の恩恵は肉体を進化させるのではなく目に見えぬ力を纏わせているのでしょう。
しかしそうなると、身体能力に関係ない魔力はどうなるのでしょうか?魔力の多い種族、エルフを解剖してみましたが人と大差はありませんでしたね。不思議です。次からは魔法を使っている状態で切り開いて観察してみましょう。長命の仕組みもわかると助かるのですが………。
■月■日
エルフよりも魔力の研究にもってこいの存在がいました。モンスターです。
魔道具……魔力で動く道具の動力部となる魔石を体内に持ち、魔石を失えば灰へと変える存在。ダンジョン内で生まれた時から成体で、ダンジョンの外では繁殖する。ダンジョンが自身の版図を広げんとする存在。
魔石を失うと朽ちる体は、きっと魔力を以て繋ぎ止められているのでしょう。ドロップアイテムはその魔力の繋がりが強かった証。強い武器、防具になる訳です。素晴らしいですね。
✜月❒日
研究も終わりました。流石に、人造迷宮でもモンスターが生まれるようにするというより本物に近付ける研究は失敗しましたが何時か時間をかけて成功させたいものですね。
魔力はどうやら物質的に存在しない器官で生成、貯蔵されているようです。恩恵無しで魔法が使える者はその器官から魔力を通せる管のような器官を天然で備えている。つまりそれさえ再現できるなら神の恩恵無しで恩恵持ちと同等の魔法が使えるという事になります。早速子供達と調べてみましょう。最近助手ができたのです。いいものですね、飲み込みも早く、やる気に満ち溢れている。可愛いですね。
◀月✯日
理知を備えたモンスターと出会いました。彼等は自分達が地上に進出した際のことを覚えているそうです。モンスターも転生するのですね。それも、記憶を一部保持したまま。このシステムを解析できれば魔力による寿命の先延ばしだけではなく、永遠に動ける身体に移り続ける不死を実現できるかもしれません。珍しく同胞たちも手伝ってくれましたよ。しかしやはり迷宮の完成をこそ急ぎたいのか注意力が散漫です。『急がば回れ』とは神々の言葉でしたか?
しかしこの体も、やはり百年を超えてからガタが来始めましたね。
✤月▽日
清々しい気分です。
魔石を己の胸に植え付け、モンスター同様魔力による体の構築。衰えを知らぬ肉体の、何たる心地。実験過程で死んでしまった子供達に感謝ですね。作業に支障が出る異形化もせずに済みました。
しかし、今更ながらふとした疑問なのですが何故理知を備えたモンスター達は言葉を発せるのでしょう?
声帯に関してはこの際無視するとして、その知識は?人間は彼等に罵詈雑言しか吐かぬと思うのですがね?
◀月◐日常
レーティが帰ってきてくれました。
魔石実験の際、3日ほどで死んでしまいましたが身体を変えて戻ってきてくれました。ダンジョンは我々も家族と認識してくれているのでしょうか?嬉しいですね。
レーティはモフモフになっていました。可愛いですね。新しく発現した魔法の検証を手伝ってもらいました。
◐月◀日
人は幸福よりも、案外苦痛を強く覚えるのです。指を一本一本丁寧に切り落とし、皮膚を慎重に剥がし筋肉を掻き分け剥き出しとなった神経を焼きました。
カーチェは良く泣きますね。夜泣きでもここまで泣いた事はありませんでした。
さて、ダンジョンは可愛そうなカーチェを救ってくれるのでしょうか?もし、救われたなら貴方が好きな本を買ってきましょう。
◀月☓日
カーチェが帰ってきました。とても大きい。
なるほど理知を備えたモンスター達は、我々の言語をそもそも知っていたわけですね。疑問が解消されました。
生まれ変わるモンスターは何を基準として決まるのでしょうか?性格?望み?捨てられた子供達、親のいない子供達はまだまだいます。一緒に調べましょう。
◆月♀日
私は何故かダンジョンに嫌われてしまったようです。感覚的にわかる。私は死した後ダンジョンの流れに組み込まれる事はない。何故でしょうか?私は、こんなにも貴女が大好きなのに。
まあ仕方ありません。幸いにもメカニズムはある程度再現できるようになりましたからね。始祖の秘技を真似て、私を増やして、その都度変えればいい。
パタンと本を閉じる音が暗闇に光る。
黒龍の鱗から作られた外骨格を纏った男はフルフェイスの下を持ち上げ飲み物を嚥下する。
「過去を振り返ると言うのはいいものですね。先に進まなくてはならない、それでも時には、自分が通った道の足跡を見てみたくなるものです」
本棚に大量に収まった日記の一つを戻す男。
彼の名はボンドルド。ダイダロスの子孫の一人にして始祖の妄執を超える探求欲を持つ者。
嘗て
オラリオは闇を払った、つもりだ。しかしより深く、暗い闇は未だ地の底に潜んでいる。自身に向けられた憎悪など気にせずに、より深い穴の底に焦がれながら。
ボンドルド
所属アンリマユファミリア(最終所属)
種族ヒューマン(?)職業探求家
Lv6(最終ステータス)
力∶C689 耐久∶B752
器用∶S999 敏捷∶B777
魔力∶A899
神秘A
魔導A
鍛冶B
精癒C
治力D
魔法
なし(空きストックは存在する)
スキル
【
・精神分割
・精神譲渡
・ステータスの引き継ぎ
なお、上記のステータスはあくまでも神の恩恵上での話。
装備
【
ボンドルド作製の最強の攻撃力を誇る。
【
対象に当たるまで乱反射しながら迫る光を放つ。仮面に備え付けてある。
【
呪いを植え付ける針を放つ。刺した分だけ呪いが強くなる
【
伸縮性の優れた触腕を放つ。ボンドルドはこれを用いて縦穴を登ったりする
【暁に至る天蓋】
黒竜の鱗から作られている。必要数を集める為に幾つの村がモンスターの驚異にさらされたが彼はそれすら気にしない
【カートリッジ】
即死級のダメージを肩代わりしてくれる。材料は言わずもがな
精霊の力を介さず自ら怪人へと変質した存在。
数百年は生きておりダンジョンの確信に迫りかけている。オラリオに敵意はないがダンジョンが地上に焦がれる理由は興味がある。彼の研究の結果多くの異端児が生まれた。ダンジョンすら彼の魂は取り込まない
ボンドルド以外に出すべきでしょうか?
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出さないで。どうせひどい目に合うんだろ?
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出そう酷い目も、まあボンドルドの魅力
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異端児は興味深いですね
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おいばかやめろ