ダンジョンに黎明卿が居るのは度し難い   作:超高校級の切望

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おやおやおや、ダンジョンに白兎が。張り切ってモンスターと戦っています。やる気に満ち溢れた若者は、将来が楽しみですね


白兎

 白髪赤目の少年、兎を思わせるヒューマンの少年は叫びながらモンスターと戦う。

 少年の名はベル・クラネル。

 つい先程一目惚れした少女の前で笑い話の種にされ、逃げるように店から飛び出しダンジョンに来た。

 一目惚れした少女………アイズ・ヴァレンシュタイン。彼女に雑魚は釣り合わない、そう言われて、逃げてきた。

 怒りに震えていた。己を罵倒した狼人の青年への怒り…………ではなく、己自身に。

 期待していた。何時かお礼を言いに行って、そのままなし崩しで仲良くなって、甘酸っぱい一時を止めに過ごすなんて確信もない期待を。

 そうじゃないだろ!

 雑魚は釣り合わない? 当たり前だ。なんで、何もしないまま、あの強く美しい少女の隣に立てるなんて思った!

 仮に立てたとして、どうする? また助けられるのか? それを良しとする気か?

 そんなんで、いい訳が無い! 英雄になりたいんだ。誰かを救える英雄に。心の何処かで思っていた。烏滸がましくも、あのアイズ・ヴァレンシュタイン相手に、今度は自分も彼女を守るのだと、そんなかっこいい姿を夢想していた。何もせずに、なれる訳もないのに!

 

「はあぁぁぁぁ!!」

 

 やるんだ!

 やるんだ!

 やるんだ!!

 出来る事をやれ! 出来ないこともやってみせろ!

 強くなれ! 憧れてるなら、隣に立ちたいと思うなら、見上げるだけじゃなくて走り続けろ!

 

「───!!」

 

 だが、無情かな。彼の精神に、体が付いて行けなかった。脚がもつれる。一度地面に寝そべれば、身体がなかなか起き上がろうとしない。

 ダンジョンは、そんな獲物に容赦はしない。ピキリと壁に亀裂が走り、新たなモンスターが生まれようとする。その瞬間──

 

「おやおや、こんな所で寝てはいけませんよ?」

 

 穏やかな男の声が響く。途端に、亀裂が広がるのが収まる。変な話だが、まるでモンスター達が、怯えて隠れたような、或いは母親が外に出ようとする我が子を隠したような印象を受ける。

 コッコッと響く靴音。ベルが何とか首だけそちらに向けると、奇妙な人影があった。

 身長は、成人男性の平均のそれ。黒いコートを着込み、手足には一応防具のような物を付けている。顔はフルフェイスの仮面のせいで確認出来ない。縦に入った筋から紫の光が溢れる。

 

「危ないところでしたね。立てますか? キツそうですね………ポーションです。飲めますか?」

 

 口元に押し当てられた瓶から液が流れてくる。首をもたげ、何とか飲み干すと傷が癒えていく。なんとか立ち上がるベル。

 

「あ、あの………すいません」

「気にしないでください。方向は違えど同じダンジョンに潜る者。時には助け合うことも大切でしょう」

 

 紳士的な声だ。不思議と安心感を覚える。まだふらつくベルにおっと、と肩を貸してくれた。

 

「何か辛いことでもあったのですか? どうです、私に吐き出してみませんか?」

「え、でも……」

「確かに私達は赤の他人同士。ですが、だからこそ親しい者にも言えぬ事を吐露できるとは思いませんか? 安心してください。私は、それを吹聴したりはしません」

「あ、いえ、助けてくれたんです。あなたが良い人だと言うのは分かりますよ………けど、ここダンジョンですし」

 

 何時モンスターが現れるか分からない場所で呑気に話をするのはどうかと思う。と………

 

「ああ、安心してください。私がダンジョンに潜ると、なぜか上層では私の近くではモンスターが生まれないし近づかないのです」

 

 普通なら何を馬鹿な、と思うが事実今まさに生まれようとしていた絶望が引っ込んだのを見たベルはそういうスキルかな? と結論づける。じゃ、じゃあと遠慮がちに話を切り出す事にした。

 

 

 

 

 

「なる程。それで、君は強くなろうと………思った事をすぐに行動に移せる。それは一つの力です。君は素直な子ですね」

「そ、そうですかね? でも、こんなの自暴自棄になってるだけじゃ……」

 

 冷静になれば、自分はなんて馬鹿なことをしているのだろう。酒場から飛び出してきたのだから、防具も着ていない。

 

「自暴自棄、良いじゃないですか。時には自分の身の危険を顧みずに挑まなくてはならない事もあります。それを超えてこそ、冒険者は次の位階に到れるのです。あなたは駆け出しですが、その心意気があるならすぐに3級冒険者に至れますよ」

「そ、そうでしょうか…………」

「ええ。慌てる必要はありません。貴方は、怠けることなどしないでしょう。明日の貴方を信じて、今日は帰りなさい。主神も心配していますよ」

「あ、はい! あ………」

「………?」

「良ければ一緒に行きませんか? あなた程強いのに、上層に居るなら帰るところだったのでは?」

「ああ、いえ、違いますよ」

 

 あっさり否定され赤くなるベルに、君は可愛いですねと頭を撫でてくる男。父というのがいたらこんな感じだろうか?

 

「今日は、子供達がダンジョンへと旅立った日なのですよ。いずれ帰ってくると信じていますが、やはり暫く会えないのは寂しい」

 

 彼のファミリアで、彼の子供がいて遠征にでも向かったのだろうか? だとすると一級冒険者もいる大手のファミリアなのかもしれない。

 

「早く、帰ってくると良いですね」

「ええ………貴方の主神も同じ事を思っていますよ………神々は何時でも、どんな形であれ我々子供たちを思ってくれているのですから」

「そうですね………僕も、帰ります。貴方も、神様と仲がいいんですね」

「ええ、アンリマユ様は今も私のそばに居て、私を守ってくれています」

「素敵ですね」

「ええ、貴方もそう思いますか」

「はい! あ、そうだ。名前を教えてくれませんか? あ、僕はベル……ベル・クラネルと言います!」

 

 と、ベルが名乗る。男も仮面で顔が見えぬが、きっと笑顔で応えてくれた。

 

「そう言えば、まだ名乗っていませんでしたね。私はボンドルド、ダンジョンの研究家。『黎明卿』と人は呼びます」

「二つ名持ちなんですね! 凄いなぁ………何時か、お礼を言いに行きますね!」

 

 そう言って走り出すベルに、ボンドルドは手を振り見送った。

 

「………さて、私も帰りますか。レーナ、ミアナ、コペロ、アルク………皆は、何時ごろダンジョンの祝福を受けますかね?」




『黎明卿』ボンドルド
その存在はオラリオに置いてもトップシークレット。その異常な行為に精神を病む者が多く現れたのと、彼自身魔道具やダンジョンでの安全確保の方法、モンスターをテイムする方法の効率化など発展に繋がることもしたため下手に名を残すと彼の味方になる者も現れるから。
そのに名を出すと地獄から蘇ってくるとも言われている。ギルド上層部、古参ファミリアの幹部や主神ぐらいしか彼の名を知らない。


話は変わりますがナナチは可愛いですね。ウィーネとも仲良くなれるでしょう

ボンドルド以外に出すべきでしょうか?

  • 出さないで。どうせひどい目に合うんだろ?
  • 出そう酷い目も、まあボンドルドの魅力
  • 異端児は興味深いですね
  • おいばかやめろ
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