──こんな所に居ては危険ですよ。
旅の神を名乗る神からランクアップの方法を聞いて、その為に無茶をしてリヴェリアと喧嘩したアイズに声をかけてくる影があった。
──ここは十二階層、子供が来るには危険が多い。見たところ、神の恩恵も得ている様子。それでは、この階層でダンジョンの祝福を得られるかわかりません
祝福と言うのはよくわからないが、心配されているのは分かる。だから、その時のアイズは反発した。
ウルサイと、強くならなきゃいけないんだ。他人が止めるなと。
それ以外にも、色々あった。その全てを名前も知らない相手に吐き出してしまった。普通なら、そこで嫌気が差して立ち去るか、何なら殴られてもおかしくなかった。だが、男は優しい声でアイズに視線を合わせるように屈んだ。
──全部吐き出して、スッキリしましたか? 冷静になったのなら、あなたの悩みを私にも聞かせてください
何故そんな事をと聞けば悩める子供の相談に乗るのは大人の務めですからと返された。
悪意は、感じない。子供はそういうのに敏感なのだ。少し迷ったものの、話す事にした。強くなりたいのに、リヴェリアは何時も止めてくる。ランクアップの方法まで隠された。旅の神が教えてくれた方法を実践しようと何度も潜り、今回も見咎められた。
言い合いになり、家族と言われ、貴方は私の母親じゃないと叫び出てきた。気がつけば、ここに居た。
──リヴェリアという方も、貴方を心配しているだけですよ。私にも、その方の気持ちは分かります。家族を、それも子供を心配しない者など居ませんよ
あの人は私の家族じゃない!そう叫ぶと、男は頭を撫でてきた。君は可愛いですねと言われ、何に対して言われたのかわからず混乱する。
──その人達も、本当の両親も、大好きなんですね。だけど、今の家族が好きである事を認めるのが怖いのでしょう? 本当の両親を、裏切ってしまったみたいで。今の幸せに、満足してしまいそうで。大丈夫、たとえどれだけ愛しい存在が増えようと、だからといって、古い者から忘れて行くなんてことはありません
何故そう言い切れるのか、聞けば男は穏やかな声で答えてくれた。
──私も、これまで沢山の子供達に恵まれました。優秀な助手達と、研究を共にしました。それはもう、両手の指では数えられぬ程多く、長い時を………ですが、私は彼等、彼女等を忘れた日などありません。皆、一人一人、私にとって掛け替えのない、世界に一人しかいない存在なのですから
君にとっての両親と、そのリヴェリアという方は、似たような思いを抱いたとしても、同じではない。だから安心して好きになって良いのだと言われる。
でも、酷いことを言ってしまった。心配してくれたのに。
──家族なんです。時には喧嘩することもありますよ
家族と、言っていいのだろうか? だって、自分は彼の言うとおり、恐れている。彼等の下で幸せになるのを、許せていない。
──つまり、彼等の下なら幸せになれると確信しているのですね。素晴らしい。良いのですよ。そう思えるなら、貴方達は家族だ
血がつながっていないのに?
──家族とは血の繋がりのみを言うのでしょうか。私はそうは思いません。慈しみ合う心が、人を家族たらしめるのです。血はその助けに過ぎません
アイズに死んで欲しくないと、彼女に隠し事をしていたリヴェリアも、そのリヴェリアに暴言を吐いたことを後悔しているアイズ。どちらにも慈しみ合う心があるのだという。
──愛です。愛ですよアイズ………それに家族とは他人同士が出会い築き上げるものなのですよ
事実、そもそも他人同士の男と女が出会い、子供が生まれる。家族となった男女は、自身が愛した相手をこれまで育んでくれた者達をもう一人の親として慈しみ、両親は自らが愛した相手を選んでくれた相手を子供として愛する。
そうやって、愛し合い、家族は増えていくのだと、両手を開き天を仰ぐ男。そうなれば、素敵だとアイズも思った。
──ですから、今日はもう帰りなさい。まだ謝る勇気が出なくても、せめて心配しているリヴェリアさんに顔を見せてあげなさい。命を粗末に扱うような事はしない、そう言ってあげれば、その人も安心するでしょう
うん、と返すと君は良い子ですね、とまた頭を撫でられた。こそばゆい。ホームへ向かう為に駆け出した足は、軽い。今度は、自分が何処にいるのかしっかりわかる。
その後なんか神の気配がして黒いワイヴァーンに襲われたりしたが丁度よく現れたリヴェリアと仲直りできた。リヴェリアに、出会った人物について伝えるとそれは『黎明卿』ボンドルドと言うらしい。
種族は不明だが数百年前からいることからエルフと噂されている。ダンジョン攻略を進めた偉人で、リヴィラの街と言うダンジョン内の街の原型を作ったりもしたらしい。
ダンジョンに潜っていれば、いずれ会えるだろうと言ってくれた。
何ならオラリオで普通に出会った。母の血の力を一時的に増幅する薬とか貰った。
──素晴らしい。迷いなく、見殺しを選べるとは。それもまた、英雄に必要な条件でしょう
パチパチと拍手をする黒衣の男に、嫌味かい?と返すフィンにボンドルドは心底不思議そうに首を傾げた。
──貴方の行動の、どこに嫌味を言われる理由が? いけませんよ、貴方のこの選択は、オラリオの平和の大きな一歩となる。後悔してはいけません。後悔する理由などありません。時代を担う英雄の一人として、貴方は完成しようとしている。ああ、実に素晴らしい
見捨てたという罪悪感があったフィンはボンドルドの言葉に噛み付くも、ボンドルドはただただ素直にフィンを賞賛していた。それが、ひどく気持ち悪い。
事前に手にした情報によるなら、彼は
そして、なんとか打ち倒すことに成功した。
アイズは倒れ伏す彼に、なぜ
──私の夢は、正規派閥では叶えられない。どれだけ犠牲を出す事になろうとも、進まなくては果たされないのですよ。
目的は迷宮、その最奥。頼りになる仲間を集めるには神の恩恵は必須で、安全マージンを取る正規派閥では足りない。だから邪神と手を組んだ。
──なら、残念だったね。君の夢は、ここで終わる。どれだけ時間を掛けようと、光の道を歩けば何時かは辿り着けたかもしれないのに。
──ええ、ありがとうございます。私は、きっと辿り着く。それでは、暫しのお別れを。再び巡り合う日を心待ちにしております。
最後まで、何を言おうと絶望も悲観も後悔もしないボンドルド。フィンはその首を切り落とした。
人とモンスターの死体が散らばる27階層。其処に人影があった。
「…………ああ、皆さん、神の恩恵を封印されてしまったのですね。それは運がいい。きっと、ダンジョンが祝福を与えてくれるでしょう。おや?」
冒険者の死体から背中の皮を剥がし背骨と心臓をくり抜いていく男は不意に足を止める。声が聞こえた。生き残りだろうか?それは素晴らしい。このような状況で生き残れた者は、果たしてどんな存在なのか、顔を見るために歩き出す。
「あぁ………う、あ………なんで、なんで治………いやだ、いやだ………」
魔石を埋め込めれ蠢く肉体には見覚えがある。男はかつて魔石を使った実験でこの様な失敗作を生み出した。では、目の前で人の形をしている者は………。
「
「───っ!!」
自分の喉を爪でかきむしり、血錆のついた剣で腹や腕を刺していた少女はその声に顔を上げ、己の体を隠すように縮こまる。
「何だ、誰だ、お前は………来るな、見るな!」
血だらけの姿で威嚇するさまは、なんとも痛ましい。男が近寄り手を伸ばすとビクリと震え逃げ出しそうになるも、踏みとどまる。
「…………殺してくれ」
「?」
「この体は、こんな体は………嫌だ。モンスターに成り下がり、生きるなど………お願いだ。自分では、死ねないんだ。どうか、頼む………」
「死にたいなどと、そんなことを言ってはいけません。貴方は生き残った。多くの者が、ただ蠢く肉塊になり果てても、あなたは生きれたのです。その命。無駄にしてはいけない……どうぞ、私の手を……貴方は強くなれる。共にダンジョンの深奥を、世界の夜明けを目指しましょう」
ボンドルド特性の魔法役
精霊の血脈《スピリット・ドロップ》。
効能∶精霊の力の活性化。汚れた精霊やその職種にも効果を発揮する。材料、仲良くなった幼女(匿名)の血
ボンドルド以外に出すべきでしょうか?
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出さないで。どうせひどい目に合うんだろ?
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出そう酷い目も、まあボンドルドの魅力
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異端児は興味深いですね
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おいばかやめろ