美の女神が白兎の成長を見守る中、時を同じく、場所を違え英雄へと至ろうと駆け出した少年に賞賛を送る者がいた。
「ああ、素晴らしい光景だ。流石は彼の大神が残した人類の希望。勇気があり、運に見守られ、力を得ていく」
というか以前見かけた時から強くなるのが早すぎる。おそらく早熟系のスキルを保有しているのだろう。前例はないが前例が無いことが存在しない理由にはならない。
地下にいながら
自分の目的の為には少しでも多く力が、一人でも多くの強者が必要だからだ。そのために彼は一応の契約関係であるとある存在の一部をパクる気である。
風を纏う少女やオリジナルの魔法を超える魔剣を生み出せる青年の協力という名の採血、部下の献身の下準備は出来ている。
まあ今はエニュオの元眷属だった者達の死体を解剖しているが。使える部分は使って、必要ない部分は街に戻しておく。エニュオも眷属を殺された被害者であると言いたいらしい。
「大丈夫です。貴方達の死は無駄にしませんとも………彼の計画も、英雄達が止めてくれますよ」
キレイに剥がしたあとは特殊な機材に入れる。心臓が動き出す。
このペンは特別性。何と
心臓が動き、神の力が復活する。悪神の血が刻まれた恩恵を上書きしていく。そして箱詰め。細胞が腐らぬように栄養剤と酸素を注入するカプセルもセット。後は同じく悪神の血により恩恵を得た眷属か、親しかった者に渡すだけ。
とはいえ27階層の死体を合わせても背中が無事の死体はそこまで多いわけではない。またダンジョンで探すか。新鮮な死体とか、死んでもいいと言ってくれる冒険者とか。
まあ、そういうのはたまにしか見かけないのだ。目はいくらでもある。ゆっくり探すさ。
ひとまず、目を付けた街角の英雄に新しい力でも与えてやろう。確か以前魔法に関する研究で作った物が本棚にまだ眠っていたはず。
少女は息を切らしながら走る。後を追うのは冒険者の男。
男の方はステータスもそこそこの頻度で更新して、体格と戦闘センスに恵まれている。それに対し戦闘センスに恵まれなかったゆえに基本的に後方で魔石拾い──所謂サポーターとしての仕事ばかりしており、【ファミリア】の都合上更新などしようものなら【同ファミリア】の連中に襲われる少女。ステータスの差は絶望的。しかし小さな身体と散々下調べした記憶を頼りに鼠のようにスルスル逃げて行く。
と………
「おっと………」
「あう!」
誰かにぶつかる。顔を上げると黒衣の男が立っていた。
「……………」
「っ……」
見たところその服はただの服ではない。おそらく冒険者。少女が思わず息を呑む。
「追い付いたぞ、この糞パルゥムが!」
追いつかれた! 顔を青くする少女は振り返り、男も顔を上げ叫びながら走ってきた男に視線を向けた。
「もう逃さねぇからな!」
と、そんな彼等の間に割って入る影。白い髪を見た。白い金属鎧を見た。横顔を見た。黒衣の男は「お…」と声を漏らす。
「……あぁ? ガキ、邪魔だ、そこをどきやがれ」
男の視線は少女のみに向けられており、漸く白兎を彷彿させる少年に向けれは少年はたじろぐも何とか堪える。
「あ、あの……今からこの子に、何をするんですか?」
「うっせえぞガキッ!! 今すぐ消え失せねえと、後ろのそいつごと叩っ斬るぞ!」
その言葉に決してどけないという顔になり、涙目になりながらもバックパックを下ろした少年に走ってきた男と少女は驚き黒衣の男は何処か嬉しそう。
「ははっ! やっぱりあんた面白いな! 旦那が気に入るわけだ!」
突然黒衣の男が笑い出す。3人の視線が向き、腹を抱えていた男はそのまま少年の前に歩み出た。男は反射的に剣を抜き、白兎の少年も慌ててナイフを抜く。少女が白兎のナイフを見つめる中、男が飛びかかる。が………
「まま。落ち着きなって……」
「んな!?」
黒衣の男はそれをあっさり、指二本で受け止めてみせる。
「見たところあんた、レベル1だろ? 俺ぁ戦闘用じゃないけど、流石にレベル1に負けるほど弱くはないぜ。なんせ将来の旦那だからな」
ふふん、と何処か誇らしげな男に苛立つ冒険者。しかし引こうが押そうが剣はピクリとも動かない。ステータスの差は歴然だ。
「ステータス、いいよな。俺みたいな研究肌でもそこそこ強くなれる。んで、悪いんだけどここで引き下がっちゃくれないかね?」
「───っ!!」
ステータスの差は冒険者としての実力の差。それが解ってしまい、それが怒りを絞らせる理由になる程度には冒険者としての経験を積み、先を目指せない部類に入った男は指が開くと同時に逃げ出して行った。
「…………さて、お怪我はありませんか?」
と、先程までの軽薄な様子から打って変わって紳士的な話し方になる男。白兎はどこか既視感を覚える。
「あ、はい………あの、君もだい………あれ?」
少女を心配する白兎だったが、何処にも居ない。逃げたのだろうか?
「あの、助けて下さりありがとうございます」
「構いません。同じダンジョンに挑む者達、協力しあってこそですよ………そういう意味では昨今のサポーター軽視、あれ、なんとかしたいですよね」
ふぅむ、と顎に手を当てる男はあ、と何かに気づいた様に顔を上げる。
「用事を忘れるところでした。ベル・クラネル、君に贈り物をしたい」
「へ? ぼ、僕にですか?」
白兎、ベル・クラネルは戸惑うように尋ねる。目の前の男とは初対面だ。贈り物をされるような覚えはない。
「ダイダロスでシルバーバックを倒した、裏道の小さな英雄。私は君のファンですよ」
「え? そ、そんな、シルバーバックなんて貴方からすれば簡単に倒せるんじゃ…………」
シルバーバックは11階層のモンスター。目の前の男は、間違いなくレベルは上。中層にだって行ける冒険者だと思う。そんな彼が感謝する理由が思い当たらない。
「ええ、倒せる者は、このオラリオには多くいるでしょう。ですが、倒したのは君だ……あそこは孤児院も近くにある。暴れていたら未来ある子供たちまで被害にあったかもしれない……君はその事を誇っていい」
そう褒められるとなんだかくすぐったい。悪い気はしないけど………。
「これを………」
「本?」
「私が作成した
「グリモア?」
「魔法を発現させてくれる道具ですよ。昔、部下や私の強化に使えないかと苦心して作った
「まだ発現してませんけど、一つ空きが」
「それは良かった。魔法スロット最大値より増やすと、確率で自我が崩壊してしまったんですよ。後々のことを考えると楽だったですがねぇ」
ははは、と笑いながら差し出された本を受け取り、聞き逃せない、聞き逃したかった言葉に顔を青くするベル。
「大丈夫です。さっき言ったように最大値……3つを超えなければ自我は崩壊しません」
「し、信じますよ」
「それは嬉しい。会ったばかりの私を、素直に信じてくれるとは」
言ってることは怖いが、嘘は言ってないと思う。勘だけど、確信に近い。
「ちなみにこれって、普通ならどの程度で売られてるんですか?」
「そうですね。初歩的な仕組みを正しく理解すれば作るのは割と簡単なはずですが、何故か数千万ヴァリスで売られています。不思議ですよね」
値段を聞きピシリと固まるベル。本を落としそうになり慌てて受け止める。
「う、うう、受け取れませんよ!」
「気にすることはありません」
「無理です無理です! そんな高価なもの!」
「私からすれば大した価値のない古い本です。どうか……」
結局押し負けて受け取ったベル。神様に相談する。いっそ売った方が金にもなるしいいんじゃないかと。しかしヘスティアは君を思って渡されたプレゼントなんだから君が使えとの事。覚悟を決めて、読む。
数日かかった。具体的には読む前に【ファイアボルト】という魔法に目覚めるまでかかった。
そして魔法に目覚めた。
ちなみにこの後読まなければ弁償できたのにと後悔したのは言うまでもない。
・速攻魔法
・発動後、2時間の
・約10分間の猶予時間。
・魔力消費後、自動代替。
はい、と言う訳でベル君にも付きました火葬砲。無いとボンドルドの枢機へ返す光に対抗できませんからね
感想お待ちしております
ボンドルド以外に出すべきでしょうか?
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出さないで。どうせひどい目に合うんだろ?
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出そう酷い目も、まあボンドルドの魅力
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異端児は興味深いですね
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おいばかやめろ