魔法少女の物語   作:転寝

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私の別作品である「ある少女の物語」のキャラクターが登場します。

オリキャラの設定
森岡誠司
小説家志望の青年。とある出来事を切っ掛けに、魔女や使い魔を視認する能力を得た。


ふたりのハロウィン

 その日、琴音咲はいつものように安普請のアパート…「無題荘」の2階の端にある知り合いの部屋を尋ねた。

 呼び鈴は壊れているので押しても鳴らない。早く直して欲しいとは思っているし実際大家にも催促されているのだが、部屋の主は直す必要性を感じていないようで放置している。仕方が無いのでノックを3回すると、中から「どうぞー」という声が聞こえた。普通の人は外に出て応対するのだろうが、この部屋の主は少しばかり他の人と思考が違うようだった。要するに変人なのだ。

 咲はドアを開け、中に入った。玄関で脱いだ靴を揃えてから奥に進む。奥…といっても短い廊下の先にある四畳半程の部屋の事だが、とにかくそこに辿り着くとこの部屋の主である青年― 森岡誠司(もりおかせいじ)が暇そうにスマホを弄っていた。

 

「こんにちはー」

 

 咲が挨拶すると、森岡はスマホから顔を上げて、

 

「ああ、君か…」

 

 眠そうに言ってからまたスマホに視線を戻した。いつもと何ら変わらない対応である。

 

「何見てるんですか?」

 

 咲がきくと、「ネット小説」という答えが返ってきた。

 

「また、小説に行き詰まってるんですね…」

 

 森岡はバイトで生活費を稼ぎつつ小説を書き、投稿しながら暮らしていた。残念ながら彼の書いた小説は何れも微妙な出来であったためデビューなど夢のまた夢だったが、それでも小説投稿だけは辞めていない。継続は力なり…とは言うが、力が付いているのかは微妙なところだ。咲も幾つか読んだことはあるが…なんというか、拙い小説だった。

 で、彼は小説執筆に行き詰まると他人の小説を読んで参考にしている。そもそも力量が違うので参考になっているのかは怪しいがそれでいいアイデアが思い付く事もあるらしい。それが盗作でない事を願うばかりである。

 今もまさにそんな状態だったらしい。ここの所スランプが続いていたとは聞いていたが…スマホを弄る彼の姿からはそんな様子は微塵も感じられない。寧ろ執筆に飽きてスマホを弄ってサボっていると言われた方が説得力がありそうである。

 

「何か思い付きました?」

「いや、全然」

 

 森岡はため息をついてスマホを脇に置いた。どうやら本当に何も思い付かないらしい。

 

「というか…何しに来たの」

「特に理由はないですけど…」

 

 森岡は再びため息をついて、咲を見る。

 

「あのね…いい歳した男の部屋に君みたいな女子中学生が上がり込んでるなんて…周りからどう誤解されるか…」

「…それはわかってます。でもわたしの事情を知ってるのは森岡さんだけですし…」

 

 森岡は、咲の事情―魔法少女として魔女と戦っているという事を知っている数少ない人間である。彼自身も「魔女を視認出来る」という特異な存在であり、今までに沢山の魔女を見てきたとの事だった。

 森岡は咲の言葉を聞くと半ば諦めた様に言った。

 

「…まあいいけどさ。僕は周りからどう思われようが気にしないし。寧ろ困るのは君の方だろうし」

「そうでしょうか?」

「うん、普通の人なら困るね」

「……わたしは別に何とも思わないですけど」

「そう…ならいいんじゃない?」

 

 

 いつも通りに世間話をしている途中、咲はふと思い付いて彼に尋ねた。

 

「そういえば、今日って何の日か分かりますか?」

「そもそも今日って何日?」

「…10月31日ですよ」

「ああ、ハロウィンか…日付の感覚が無いもんで分からなかった」

 

 咲はため息をつく。半ば予測していた反応だった。彼は咲を助けてくれた恩人で、根は真面目なのだろうが…わざとこんな態度を取っている節がある。

 

「もうちょっとそういったイベントに関心持ちましょうよ…」

「ええ…だってハロウィンなんて一部の阿呆共が騒いでるだけじゃん…」

「そういう事言うから変人扱いされるんですよ?」

「僕は事実を言ったまでだ。というか君ってそんなに辛口だったっけ」

「…多分、皆こういう反応をすると思いますよ」

 

 咲がそう言うと、思い当たる節があったらしく「確かにそうだね」と顔を顰めた。自覚しているなら直して欲しい。

 

「それで、あの………」

「お菓子なら無いよ」

 

 まだ言ってないのに即答された。

 

「…なんでわかったんですか」

「君がこんな話をする時は大体何かあるからね」

 

 行動が読まれている…咲は何を言っても無駄だと悟り、黙り込んだ。

 

「そもそも、そういう事は友達とやるものだよ」

「わたし、友達いませんし…」

 

 今度は森岡が黙り込んだ。

 咲は好んで友達を作りたがらない。自分の周りに居ると、傷付けてしまうと「思い込んでいる」からだ。最も森岡は別らしい。彼は咲と共に行動する事が多いが、出会った時を除いて傷付いた様子は無い。

 ただ、咲の思い込みはかなり強い。ちょっとやそっとでは解けないだろう。

 そんな訳で、咲に友達ネタは実質タブーなのだ。

 

「…悪かった」

「何がですか?」

 

 最も、本人は気にしていないようだが。

 森岡は頭を掻き、それから言った。

 

「…お菓子はないけど柿の種ならある。それで良ければあげよう」

「いいんですか?」

「いいとも。食べながら音楽でも聴くかい?」

「珍しい…」

「いいじゃないか、たまには」

 

 森岡はそっぽを向きながら続けた。

 

「…だって、ハロウィンなんだろ?僕達だってこれくらいの娯楽を味わってもいい筈だ」

「…そうですね」

 

 咲はにっこりと笑った。

 それから暫く、適当に音楽を聞きながら談笑していた。

 静かだけど、楽しい時間だった。

 

 

 談笑の途中、咲がぽつりと呟いた。

 

「お菓子があるって事は…ハロウィンの悪戯、出来ないなぁ」

「…どんな悪戯なんだい?」

 

 森岡に訊かれた咲はちょっと赤くなって、それから微笑んだ。

 

「それは…ナイショです」





【挿絵表示】

挿絵はカスタムキャストで製作したハロウィン仕様の咲ちゃんです。大体こんな感じの見た目をしていると思って頂ければ…(髪型が少し再現出来ていない気もしますが)

この話は一年前のハロウィンに投稿し損ねたものをちゃんと仕上げて投稿したものだったりします。
まあ「ある少女の物語」の読者以外には(というか読者にも)需要はないと思いますが…。
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