魔法少女の物語   作:転寝

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この物語に意味は有りません。
構想当時は有ったのですが、執筆していたら消えました。
それだけの物語です。


聖者の見た夢

 鹿目まどかは暗い森のなかに居た。

 鬱蒼と生い茂る木と自然をそのまま体現したような地面…それがこの世界の全てだ。動くものはまどかしか居ない。絶対的な孤独が辺りを支配している…そんな感覚を覚えた。

 何故自分がここに居るのかは判らない。いつものように魔女と戦い、追い詰めたと思った瞬間この場所に居た。幻覚にしてはリアル過ぎる、何らかの手法てここに飛ばされたと解釈した方が妥当だった。

 じっとしていようとも思ったが、いくら待っても何も変わらない。だから仕方なく歩き始める。当然視界に映るものは木のみである。単調な風景が嫌という程続き、もしかしたら自分は進んでいないのかもしれないと思った。自分は歩いている筈がただ足踏みをしているだけなのかもしれない。そんな錯覚にとらわれ、気が狂いそうになる。

 すると今まで溜まっていた不安が一気にせり上がってきた。

(わたし…どうなっちゃうんだろう)

 このまま脱出出来なかったら…そう思うと、もう動けなかった。厭な想像ばかりが頭を駆け巡り、足を止める。動かなければと思っても動けない。最悪のループだ。

 まどかは俯く。その時、声が聞こえた。

「まどか」

 自分の名前を呼ぶ何処か懐かしい声に顔を上げると、そこにはまどかがよく知っている魔法少女の姿があった。

「ほむら、ちゃん…?」

 魔法少女―暁美ほむらはゆっくりと此方に歩み寄って来る。自分の仲間と逢えたという喜びは、然しほむらの顔を見た瞬間萎んでいった。

「ほむらちゃん…だよね?」

 「彼女」は、まどかの知っている暁美ほむらでは無かった。確かに姿はほむらそのものだ。メガネを外し、髪型も三つ編みを解いてロングヘアにしているが、姿形はまどかがよく知るほむらである。

 では何が違うのかというと…眼だ。ほむらのオドオドしたような眼では無い。彼女は何か数々の悲劇を潜り抜けてきた様な…そんな戦士の眼をしていた。見るもの全てを威圧する、強さの中に悲しみが内包された眼を見て、まどかは少し怯えながらも何故か「助けたい」と強く思った。

 ほむらはまどかに近付くと、何も言わずにまどかの手を取った。壊れ物を扱うみたいに優しく…それでまどかは少し安心した。彼女はわたしが知っているほむらちゃんじゃない。だけど彼女は確かに「暁美ほむら」という一人の人間なのだ。

 ほむらは森の奥へと歩き始める。その足取りに迷いは無かった。一歩ずつ進んでいるという確信を持って歩いている。実際、どんどん進んでいっているような感覚を覚えた。

 軈て視界が開ける。森の先にはどんな景色が広がっているのか―そう思ったまどかだったが、

「え…」

 目の前の景色に、思わず言葉を失った。

 そこには―何も無かった。ただ白一色の空間が広がっているだけ。地面も無く、何故自分達が立っているのか不思議だった。

 慌てて振り返るが先程までの森も消えている。見渡す限り「何も無い」が広がっていた。

「どういうこと…?」

 ただただ困惑する。理解が追いつかない。頭の中はクエスチョンマークで一杯だ。

 そこで前を歩いていたほむらが振り返った。そしてぽつりと呟く。

「…ここから出たい?」

「えっ…う、うん」

「じゃあ…目を閉じて」

 言われるがままに目を閉じる。

 瞬間、頭の中で声が響いた。

 

 ―ここはとうの昔に終わった世界。だけど貴女が望めば、全ては覆る。

 

 これは、紛れもない自分の声だ。

 その声に導かれる様に―目を開けた。

 

 

 世界の終わり。

 そう形容するに相応しい景色が、一面に広がっていた。

 

 

 そこは、廃墟だった。

 灰色の雲に覆われた空の下に広がるのは瓦礫の山。まるで戦争の後の様な光景にまどかは絶句した。

「酷い…」

 やっとの事でそれだけを絞り出す。目の前の光景を現実と認識したくなかった。

 ふと、打ち捨てられたように転がる看板が目に入る。そこに書かれていたのはまどかがよく知る地名だった。

「見滝原…」

 自分の住む街が、こんな事になっているなんて。

「…ここは」

 不意に、ほむらが口を開いた。彼女は目の前の惨状を目にしても何ら動じずにいる。それがまどかには信じられなかった。

「ここは、貴女がいる時間軸とは別の時間軸。何もかもが終わってしまった時間軸よ」

「別の…時間軸」

 ほむらは頷き、まどかを見る。冷静な眼差しの裏に激情が迸るのがわかった。

「いつか、貴女のいる時間軸もこうなるかもしれない。その時…貴女ならどうする?」

 ほむらの問い掛けにまどかは少し考えて、それから答えた。

「わたしは…みんなを守る」

 だって、その為に魔法少女になったんだから―まどかは決意を込めた眼差しでほむらを見つめた。

「…その結果、貴女が死んでしまうとしても?」

「死ぬのは怖いよ。だけど、大切な人が死ぬのは…もっと怖い」

 自分の前で皆が死んでいく…そんな事、考えたくもない。

 それに、自分のいのちで誰かを救えるのなら、まどかは迷わずに自分の身を投げ出すだろう。鹿目まどかとは、そういう人間なのだ。

 先程頭の中で聴こえた声を思い出す。この光景はわたしが望めば覆る。

 なら、わたしは―。

 

 自分のすべてを犠牲にしてでも、この世界を救いたい。

 

 そう強く思った瞬間、視界が白く染まる。

 そして

 

 

 何処かの宇宙で魔法少女の女神様はゆっくりと目を開きました。

 何か、遠い昔の夢を見ていたようです。最も、実際に起きた事とは似ても似つかない奇妙な夢でしたが。

 女神様は夢の中の事を思い出します。

 夢の中の自分も、「全てを救う」ことを決断したということに、何故か安心感を覚えました。

 ふと、一枚のレコードが目に留まります。それは女神様が干渉できない特殊なレコードでした。

 このレコードにも、違う時間軸の自分のことが記されています。もし、夢の中で起きたことがこのレコードでも起きたとしたら…「彼女」はどんな選択をするのでしょう。

 女神様は暫くそれについて考え、それからぽつりと言葉を零しました。

 どんな選択をするのか、それは―。

 

 

わたし(彼女)が決めるんだ」

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