抗え、人の為に   作:myo-n

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初恋の子救う為に死に戻りしてくるので最終投稿です(大嘘)



交わりし怪盗と灰 4話

「出席を取るわよー」

担任が気怠そうな様子で出席を確認していく。

その間、僕の頭は隣にいる雨宮の事で一杯だった。

もちろん変な意味じゃない。

 

イゴールは近いうちに巡り合うと言っていたけど、既に合っていたとは思わなかった。

 

それにしてもまさか雨宮が囚人か…一見するとそうは思えないんだよなぁ。

うーん、囚人に破滅に更生……考えれば考える程現実味がない話だ。

 

不意に、横からつつかれる。

横を見ると雨宮が前を指差していた。

前を向くと担任が僕の名前を何回か呼んでいた。

 

「宮瀬君?いるなら返事をして欲しいんだけど?」

 

「あ、すいません…ちょっと考え事を」

 

そう言えば出席確認をしている最中だった。

 

「気をつけなさいよね…こっちもスムーズに終わらせたいんだから」

 

担任のさっさと終わらせたい感がひしひしと感じ取れる。

そこまでオープンにしたらダメでしょ…

 

「分かりました」

 

担任が出席を取るのを再開する。

そして終わったら今日の時間割を言って、足早に教室から出て行ってしまった。

 

まだ授業開始まで時間があるのか、他の生徒は会話したり朝ごはんを食べたりしていた。

 

僕も最初の授業の教科書を出して、雨宮の席に寄る。

 

「さっきはありがとう」

 

「どういたしまして、ちなみに何を考えていたんだ?」

 

雨宮の事を考えていた…なんて言ったら変な誤解が生まれそうだし嫌だなぁ………

取り敢えずここは誤魔化しておこう

 

「この前行った喫茶店のコーヒーが美味しくてさ。今日も行こうかって考えてたんだ」

 

「へぇ、そうなんだ。今度教えてもらえる?」

 

「いいよ、連絡先教えてもらえる?」

 

「分かった」

 

お互いにスマホを取り出して、連絡先を交換する。

とにもかくにも、連絡手段を手に入れておかないと協力も何もない。

でも、あんまり乗り気じゃないんだけどね…

 

「ありがとう、そろそろ授業が始まりそうだから席に戻るよ」

 

雨宮から視線を外そうとする。

しかしその時、雨宮の机からニャーンと小さく何かが鳴くのが聞こえた。

 

「ん?」

 

「どうしたんだ?」

 

「んー…」

 

雨宮の机の引き出しに目を向ける。

一見すると何も無いようだけど…

 

「…あっ」

 

引き出しから少しだけ尻尾らしき物が一瞬出て、消えた。

 

「?」

 

「雨宮、もしかして…」

 

よく見ると雨宮の額に少し汗が滲んでいる。

まさかとは思うけど…引き出しに猫を入れているんだろうか

 

尻尾みたいなのが見えた時点で怪しすぎる。

 

いや、でも普通学校に猫を連れてくるか…?

授業中にポロっと出てきたりすると思うんだけど………

猫は気分屋って聞くし。

 

「……もう授業始まるし、後で話すよ」

 

「……分かった」

 

---

 

放課後になるまで、特にこれといった事は起こらなかった。

強いて言うなら、雨宮が牛丸の授業中によそ見してチョークをぶつけられてたりしていたぐらいだ。

 

本当は雨宮には何も起こっていないんじゃないか、あの夢はただの幻か何かじゃなかったのか。

そんな疑念が湧き始める。

 

「考えてもしょうがないか…おいおい聞こう」

 

それよりも今は猫だ。

僕は今日一日、雨宮の机を見ていた。

その結果、鳴き声はたまに聞こえるし机の下に少し毛が落ちてるのがわかった。

これはもう完全に黒だろう。

 

学校に猫を持ってきたら駄目なんて校則はないけど、流石にこれは注意しておかないと後々面倒ごとになりそうだし。

 

「さて…雨宮、改めて話がある。時間は大丈夫だよね?」

 

「あぁ、大丈夫」

 

「うーん…話が話だからどこで話そうか……」

 

放課後になったばかりの教室にはまだ人が多い。

それに部活に行く人もいるから、迂闊に鞄の中にいる猫の話なんてできない。

学校の外は…あんまり候補がない。

喫茶店とかは猫がいるし駄目だろう。

 

「屋上はどう?」

 

「屋上かぁ…」

 

ここの学校には屋上がある。

だけどあそこは普段立ち入り禁止だ。

ただ、正当に入る手段はある。

 

「ちょっと待ってね」

 

携帯の電源を入れて、ある人に電話をかける。

 

「すみません、2年の宮瀬です」

 

『宮瀬君?どうしたの?』

 

「屋上って今使えますか?」

 

『別に大丈夫だけど…急にどうしたの?』

 

「ちょっとクラスメイトと話がしたいんですけど、話が話なだけに屋上の方が都合が良くて……」

 

『えっ?そそそっ、それってまさか告白!?』

 

「全然違います。男友達なので」

 

『そうなんだ。あっ、屋上に行くんだったら野菜の様子も見ておいてくれる?』

 

「はい、やっておきます」

 

『ありがと〜!じゃあ切るね』

 

「はい、分かりましたー」

 

電話が切れる。

携帯をズボンにしまい、雨宮に屋上に行ける事を伝える。

 

「今のは?」

 

「美化委員長、あの人屋上を自由に使えるからさ」

 

「そうなのか」

 

「うん、じゃあ許可が出たし行こうか」

 

「ああ」

 

教室を出て階段を上り屋上へ向かう。

 

 

 

「……あ?蓮と一緒にいる奴はたしかこの前の…」

 

 

---

 

屋上の扉を閉める。

幸い、天気も晴れていて会話するには持ってこいの場所だ。

 

「とりあえずこれに座って」

 

出入り口付近にいくつかある椅子を1つ移動させる。

そして雨宮は椅子座り膝に鞄を置いた。

僕は立ったまま雨宮に詰め寄る…何かドラマとかで見る刑事みたいだ。

 

「じゃあ鞄の中身を見せてくれる?」

 

「…分かった」

 

恐る恐ると言った様子で、雨宮は鞄を開いた。

 

「………」

 

そして中には…やっぱり猫がいた。

 

「…ニャーン」

 

「黒猫か…飼い猫?」

 

「あぁ……モルガナだ」

 

猫もといモルガナが何か抗議するように鳴く。

まぁ引き出しや鞄に長時間閉じ込められてたらモルガナのストレスもたまるだろう。

 

「雨宮、あのね…いくら飼い猫でも学校に連れてきたら駄目でしょ」

 

授業中横から小さくニャンニャン聴こえてくるから気になって仕方ない。

僕も猫は好きだけど流石に学校に連れてくるのはやり過ぎだ。

 

「………」

 

雨宮は長い間沈黙する。

その間モルガナと必死に目を合わせているように見えたけど…気のせいかな?

 

「……………」

 

「お前も大変だったよな」

 

モルガナの頭に手を置いてゆっくりと撫でる。

主に頭頂部や耳の付け根辺りなどを重点に撫でる。

 

「ゴロゴロゴロ……」

 

可愛いな…うちでもペット飼いたい。

とはいえ、あまり触り続けてたら時間が飛びそうな気がするから程々にしておく。

 

「ニャーン……」

 

そんな悲しそうな表情で泣かないで欲しい。

少しだけ心を鬼して、雨宮へも視線を切り替える。

 

「…モルガナは大事なペットなんだ。だから目を瞑って欲しい」

 

「大事ならストレスかけるような事したらダメでしょ」

 

大事ならもっと大切に扱おうよ…

 

「べったり懐いているから中々離れてくれないんだ。それにかなり賢いから家においてもいつの間にか鞄に入っている」

 

そうだろ?と雨宮がモルガナに目を合わせると、モルガナは鞄から飛び出して雨宮の肩に飛び移って頬擦りをした。

 

確かに…人と猫だけど通じ合ってるように見える。

 

「うーん…仲は凄い良さそうだけど。でも学校中は流石に……」

 

するすると雨宮の肩から僕目掛けて飛び移った。

 

「うわっ!!」

 

咄嗟の事でびっくりしたけど、何とかモルガナを受け止める。

毛がサラサラしていて撫で心地がよさそうだ。

 

「モルガナも宮瀬の事が好きみたいらしい」

 

「ニャーン」

 

「それは嬉しいけど…」

 

と言いつつモルガナを撫でる。

そしてモルガナは気持ちよさそうに声を鳴らす。

うん、可愛い。

 

「……仮に見逃したとして、引き出しの中に入れっぱなしは無理だと思うよ?」

 

「大丈夫、モルガナは普通の猫とは違う」

 

「確かにそんな感じはするけど…先生にバレたらどうするのさ」

 

「バレないようにするつもりだ」

 

「うーん…」

 

バレなければ良いという問題じゃないと思うんだけどな。

でもモルガナはかなり賢そうだ。

それに今日一日引き出しの中にいたけど特に問題なさそうだったし…

 

「………」

 

「ニャーン…」

 

「頼む」

 

「まぁ…僕に何か害があるわけじゃないし。どうしてもって言うなら黙っておくよ」

 

「ありがとう」

 

「そのかわりと言うのもなんだけど…定期的にモルガナと触れ合わせて貰えない?」

 

「それくらいなら大丈夫だ」

 

「おっけー、じゃあ取引成立だね」

 

ここにモルガナ大好きクラ…じゃなかったお互いとやかく言わない約束が結ばれた。

何か言いくるめられたような気もするけどまぁいいか。

 

そうと決まればモルガナを触ろう。

 

「動物が好きなのか?」

 

「うん、うちはペットいないからさ。憧れるんだよね」

 

「ニャー!」

 

モルガナが強く鳴いた。

すぐに触るのをやめるけど腕には抱えておく。

うーん、可愛い。

圧倒的可愛いさ。

 

「ニャ〜ン……」

 

そして数分間モルガナを撫でた。

このままだと一時間経っても分からない気がしたからモルガナを離す。

モルガナは名残惜しそうに鳴いたけど、大人しく雨宮の鞄へと戻った。

 

「よし、それじゃあ野菜の方を見てくるよ。帰りたいなら帰っていいからね」

 

「じゃあもう少しここに居るよ」

 

「そっか」

 

屋上の奥にある、栽培スペースまで動く。

そこでは月の形をした人参ややたらと明るい色をしているトマトなど市販の野菜とはだいぶ違う物が育てられている。

 

「相変わらずだけどこれはもう家庭菜園のレベルだな…」

 

美化委員会は汚れる仕事が多いためか委員会に参加していても参加しない人が多い。

だけど美化委員長は毎週頑張って清掃やゴミ捨てなどを頑張っている。

そして何故かは分からないけど、その延長線上で屋上に許可を取って野菜も作っている。

 

ちなみに僕自身は委員会に入っていない。

昔ガーデニングとかの土いじりをしていた事を美化委員長がどこからともなく聞きつけて質問攻めにあった事から彼女の野菜栽培を手伝うようになった。

 

そのお礼でここの野菜を少し分けてもらえるからちょっと嬉しい。

見た目はアレだけど、味は良い、

ただ結構独特な苦味や酸味がするから好き嫌いがハッキリ分かれる。

 

何故そんな野菜が生まれるのかと言うと、美化委員長が自分で品種改良しているとからしい。

 

「よし、特に異常はないな」

 

携帯のメッセージアプリで『問題ありません』と美化委員長に向けて送る。

すると秒で既読がついて即座に『ありがとう!今日は急用が入って見に行けなかったから助かったよ〜!』という返信が来た。

 

何故かは分からないけど、この人の既読と返信の速度はかなり速い。

速すぎて若干怖いレベルにまである。

 

『どういたしまして、何かあったら言ってください』とだけ送って携帯の電源を切る。

 

「雨宮ー、そろそろ帰ろう」

 

屈伸して後ろに振り返る。

そこにはなんと見覚えのある金髪君と同じクラスの高巻がいた。

 

「あっ、お前は昨日の!」

 

どうやら金髪君と僕は知り合いらしい。

おぉ、怖い怖い

 

「えっと…何でいるの?」

 

「何でって…作戦会議だよ」

 

「作戦会議…?」

 

「お前俺たちの事について何も知らねーのかよ?」

 

「うん、知らない。ここ使用禁止だから見つからないうちに帰った方がいいよ」

 

あの後って言うと…鴨志田に捕まったから三島を犠牲にして帰った時の事だろう。

 

「そうか、なら早く帰らないとなっておいおいおい!そこは普通、何があったんだ?とかあってもいんじゃね…?」

 

見事なまでのノリツッコミを入れてくる金髪君。

その横で高巻は若干呆れ気味でため息をついてる。

 

「はぁ…宮瀬君だったっけ?うちの竜司がごめん」

 

「全然大丈夫。でもここは普段立ち入り禁止だから溜まり場に使うのは向いてないよ」

 

「別にバレねーだろ」

 

「あんたはちょっと黙ってて」

 

高巻は金髪君を睨みつけ無言の圧力で黙らせた。

女の子って怖いね…

 

「結局何があったの?」

 

「実は竜司達がね……」

 

高巻曰く、鈴木が屋上から飛び降りた直後にキレた金髪君が鴨志田の所に突撃したらしい。

そして金髪君を止めるべく動いた雨宮と三島も鴨志田の怒りを買ってしまい来月の理事会で退学処分にさせる事を言われたらしい。

 

「それで作戦会議ってこと?」

 

「そうそう、そゆこと」

 

鴨志田が退学させると言った以上あいつは絶対に実行する。

彼らは概ね鴨志田の体罰やハラスメントの証拠を集めようとしているところかな。

 

「うーん…まぁ事情は分かったよ。けど、それにしては随分と切迫感がないよね…?」

 

前に鴨志田が退学通告した生徒が本当に退学したという話を聞くぐらいだから、普通ならもっと慌てるはず。

実は金髪君が凄い頭が切れ物……それはないか。

 

「そりゃ、俺達にはいせ───」

 

金髪君が何か言おうとした時、モルガナが勢いよく彼の顔に飛びかかる。

 

「もがっ!?」

 

金髪君は後ろに倒れ込んでもモルガナに口を押さえつけられている。

 

「大丈夫…?」

 

「あ、うん大丈夫大丈夫!!竜司ってばモルガナと仲が悪いんだよねー」

 

高巻さんが早口で捲し立ててくる。

 

「今、いせなんとかって言わなかった?」

 

「え…えっと…伊勢海老!そう伊勢海老!高級なのが手に入ったから先生にあげて許してもらおうかなって!そうでしょ竜司!?」

 

「あん?伊勢海老なんて持ってねーだろ」

 

「………」

 

金髪君…折角のフォローを打ち壊す事を言ったら駄目だよ……

その後、金髪君は高巻さんに文字通り引きずられていった。

女の人ってこわい。

 

「じゃあ…僕も帰るね……」

 

ちょっと疲れた感じで言う雨宮。

彼も大変だな…

 

「今のは聞かなかった事にしとくね…?」

 

「そうしてくれると助かる…」

 

そして雨宮はモルガナをカバンに戻して、2人の後を追った。

 

「何か大事な事を聞き忘れたような……まぁいいか」

 

僕も帰り支度をしていつもの道を歩いて帰った。

なお、家に帰ってから言いたい事を思い出したのは言うまでもない。

 




はい、先日メールをいただきました。
協犯者という単語についてですが、これは造語です。
本来は共犯者ですが、協の方が好きなんでこっちでやってます。
誤字ではないです。

それではまた次話で会いましょう
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