「気持ち悪………」
鴨志田のパレスを探索して思ったことが口から溢れる。
鴨志田のほぼ全裸の巨大銅像、地下の牢屋で拷問みたいな事をさせられているバレー部員、鴨志田視点から見た生徒達な学校の事が纏められている書庫、所々に置いてある女体の像、見ていて吐き気しかない。
「性格歪みすぎでしょ……」
ここまでフルオープンだと清々しさまで感じてくる。
「写真に撮って帰れたらよかったんだけどな…」
生憎と現実の僕はベッドの上。
つまりこれもある種の夢みたいなものだ。
服も制服に変わっているけど手ぶらの状態だから何もできない。
「そう言えば、帰る方法聞いてない……」
呼んだら迎えに来てくれるとかかな?
それともまだ目的が達成できてない?
行ける所は大体行ったと思うんだけど……
鴨志田の巨大な肖像画が飾られているエントランスホールまで戻ってくる。
不思議な事に、今まで警備らしい警備に会ったりしなかったり、罠や仕掛けも全部解いてある状態だったから楽に探索できた。
「多分…雨宮がやったんだろうなぁ」
雨宮は鴨志田の良心による叱責…平たくいうと改心を狙っている。
きっと僕がいる一帯より、もっと奥の方の警戒レベルが強い所にいるんだろう。
「それにしても……いくらなんでもナルシストすぎないか…?」
目の前にある白馬の王子様のような白銀の鎧を着たイケメン(笑)の鴨志田の肖像画。
どこから入っても必ず目につく鴨志田の自己顕示欲像は見ていてかなり気持ちが悪い。
しかもこれだけではなくもう少し奥には鴨志田の巨大銅像が建っている教会風な部屋があった。
自分が神様だと言わんばかりの装飾に気分が悪くなる。
「はぁ…ちょっと休憩──」
鴨志田の肖像画にもたれかかって座ろうとしたらそのまま後ろに倒れた。
「いったたた……」
頭と背中を打ってしまって地味に痛い。
おのれ鴨志田…
しばらくして体を起こす。
周りを見るとどうやらここは隠し階段のようだ。
下へ続く道と上へ続く道、両方がある。
「うーん……どっちに行こうかな」
ここまで来て退く選択肢はない。
それに、帰る方法も分からないし……
「よし、下に行こうかな」
ゲームだとこういうお城は上に行けばボスに近づいて下に行けば隠し財宝というのが定番だ。
ゲームの世界じゃないけど、鴨志田は自己顕示欲の塊だからわざわざ下の方で待ち構えてるなんて事はないだろう。
暫く階段を降りると、エレベーターのような物に当たった。
乗るところは普通だけど、レバーがどことなくいやらしい。
とことん気持ちが悪いな、ここは。
「気持ち悪いけど我慢我慢…」
気持ち悪いレバーを降ろして下へと降りる。
「暗いな……」
一本道みたいだけど、結構暗い。
懐中電灯とか無いと困るレベルだな……
こういう場所って即死トラップとかがあったりするんだよね。
残念だけど引き返すしかないか。
「……ん?上がらない」
精一杯力をこめるけど、レバーはびくともしない。
もしかしてこれって一方通行のエレベーター……?
「嘘だろ……」
下げる、押す、引く、左右にスライド。
何をどうやっても、レバーは動かない。
うそだどんどこどーん。
……戻れないものは仕方ない。
「進むしかない……か」
意を決して足を踏み出す。
不気味な程に静かで薄暗い。
しばらく周りを警戒しながら歩いていると、警備員のようなガタイのいいナニカがいた。
「ナニモノダ!」
目の前のナニカは、敵意剥き出しでこちらを警戒している。
「えーっと……迷子?」
「フザケルナ!」
どうやら話は通じなさそうだ。
ゆっくりと後ずさる。
だけど途中で障壁のような物にぶつかって逃げられない。
「何だよこれ……!」
蹴っても叩いてもびくともしない。
そうしている間に、ナニカは距離を詰めてくる。
「ノガシハシナイ!」
その時、ナニカが別の物に変身した。
その姿は大きく、そしてこの中で見た物より一番見た目が気持ちが悪い。
「我が名は、マーラ。賊は排除する!」
その巨体が、猛スピードで突っ込んでくる。
「うわっ!」
ギリギリで横に跳んでよける。
あんな速度で当たられたら骨折どころじゃすまない。
何とかして逃げないと……。
「小賢しい!」
マーラは180度ターンしてまたこっちに突撃してくる。
さっきよりも速い……!
「でも!」
タイミングを合わせてまた、横に跳ぶ。
「甘い!」
しかしマーラが触手を伸ばして叩きつけた。
猛烈な痛みと衝撃が体を襲い吹っ飛ばされる。
そして透明な壁に叩きつけられ、胃の中の物を吐き出してしまう。
「う゛っ……」
意識がふわっと浮く。
何とかこらえて立ち上がるとマーラが何かを構えていた。
「アギダイン!」
マーラがそう唱えた瞬間、体が炎に包まれた。
「ああ゛あっぁぁぁあ!!!」
熱い、体が焼けていく。
痛い熱い痛い熱い痛い痛い痛い。
死が、目の前まで来ている。
逃れたくてもがいても炎は消えない。
「だれ、か……」
こんな所だと誰の助けも来ない。
わかっているのに、助けを求めてしまう。
そして誰の目にも触れずに独りで死ぬ。
【そんなものなのか?】
心臓が高鳴る。
どこからか知っている声が、聞こえる。
「な、何が起こっている」
「……そう、だ。人間は孤独なん、だ」
【分かってるじゃないか。人は誰にも干渉せず、されず、ただ一人の世界を作ればいい。それが人のあるべき姿】
声の言っている事は正しい。
所詮、他人はどこまでいっても他人。
だから、初めから関わる必要なんてない。
だけど、僕は……絶望に苦しむ人を助けたい。
救えなかった、あの子の分まで。
「ちが、う……!孤独、だからこそ。誰かが……救わないといけないんだ。」
【それはただの自己満足に過ぎない。孤独で、誰からも認められない道を、お前は歩む覚悟があるのか?】
賞賛も栄誉もいらない。
自己満足だろうが関係ない。
救いたいから救う、たとえ自分がどうなろうとも。
「あぁ……あるさ」
【……いいだろう】
顔を覆う程の仮面が出てくる。
それに手をかけて力を込める。
【我は汝、汝は我】
「ぐっ……あぁぁあ!!」
【お前の末路……見届けよう】
仮面はミシミシと音を立てながらヒビが入っていく。
顔の皮膚が剥がされるような激痛が走るが、燃えている痛みの方が大きいのかあまり気にならない。
「従え……ノア!!」
全ての力を込めると、
「ぐあっ!!」
マーラが衝撃を受けて後ろに下がる。
「ふぅ……」
体から痛みが消えていく。
それに羽が生えたように体が軽い。
今なら何だってできる気がする。
「さぁ、第二ラウンドだ」
ゆるゆる続けます。
アデュー