異世界転移してきた姫騎士を助けたら俺がTSして騎士になった件   作:バソルト

11 / 27
03話 駆ける異界の相棒 ~SET-1~(1/5)

 

 

 

冬は嫌いだ。

だって厚着をすると、ブラ線が見えないから……。

 

どうも、冬と夏だったら夏をこよなく愛する男。

 

内藤銀です。

 

日に日に寒くなっていく今日この頃、皆さんはどうお過ごしでしょうか。

 

俺か?俺は、絶賛お買い物中でございます。

前回の戦いの影響で、ボロボロに破壊されたショッピングモール。

 

それを直すため、エネルギーを殆ど持っていかれた。

何故ショッピングモールを直すためエネルギーを使ったか、察しのいい人には分かっているかもしれない。

 

シルバさんが戦いの初めの方に叫んだ“結界”というキーワード。どうやらそれは、戦いの事後処理を速やかに行うものらしい。時間軸と空間軸を……なんとかかんとか。

 

まぁ、難しい話はまた今度。

 

いまはシルバさんと二人きり、買い物をしなくてはならない。誰か忘れているような気がするが気のせいだろう。

後頭部に掴みかかられるような感覚。

万力のようにキリキリと力が強まっていっている。

 

後ろを振り返ろうにも、頭を掴まれているせいでそれは出来ない。

 

 

「おぉ、千束殿安心しろ事は成した」

 

 

その瞬間身体中から冷や汗が流れだし、口の中がカラッカラに乾燥しだす。

 

 

「……に」

 

 

あぁ、神様。俺は今だけ貴女にすがります。

命だけは。命だけは何とか繋ぎ止めてください。

 

 

「何やってたんじゃぁっ、お前らぁっ」

 

 

人々が振り替えるなか、俺はそのまま人気の無い場所に引き摺られていった。

 

その最中は、何も考えない。

 

結果が見えている。考えるだけ無駄というものだ。

案の定、杵でつかれた餅のようになった俺。

と、言いたいところだが恐れていた事態は起こらなかった。

 

 

「どうしたんだよ」

 

 

何時もならアイアンクローのまま、ブン回される筈。こう……乾いたタオルを振り回すみたいにバッサ、バッサって。でも今回は勝手が違う。

 

人影の無い路地裏。

と、言う表現で大丈夫なのだろうか。

 

店と店との僅かな吹き溜まり。ショッピングモールのメインストリートから一本外れたそんなところ。

 

 

「ねえ、銀」

 

「どうしたんだ」

 

「服……どうしたの?」

 

 

は?

 

はて、なんで千束はそんな頓珍漢な事を申されているのだ。

 

 

「何だって服ならちゃんと」

 

 

服ならちゃんと。

 

服ならちゃんと……。

 

着ていなかった。当たり前っちゃ当たり前か

あれだけ暴れまわったのだから、服が無事な筈は無い。

体なんかもっと無事では無いんだから。

 

あっ、さっきまで肋骨折れてました。などと言っても信じてはくれないだろう。

 

 

「ご、ごめん」

 

 

ようやく口から出たのは詫びの言葉。それを聞いた千束は、溜め息をつくと

 

 

「まったく謝ったら許されると思っているの」

 

 

悪魔のような台詞を口にした。

 

この鬼……

いや、悪魔か?

いいや、鬼だった。

 

 

「冗談、だよ?たがらそんな顔をしないで」

 

 

慌てた様子で弁解するが、いったい俺はどんな顔をしてたんだろう。

 

 

「これが使命……とはいかないけど、今俺がやるべき事だからなぁ」

 

 

そういい終えると、なんだか今になってドッと疲れが出てきた。

普段なら壁にもたれ掛かることは、決してしないのだが今日は別だ。

 

そんな俺のようすを見かねたのか

 

 

「銀達の服、買ってくるよ」

 

 

と、言ってくれたのは流石長い付き合いだけあるか。

 

 

「ん、サンキュー」

 

 

俺はそう言い終え、フとシルバさんに視線を向ける。同じく壁に寄りかかり、視線に気が付いたのか俺の方を見た。

ナチュラルダメージの服と言えば、ファッションに疎い人には誤魔化せるかな。

幸いにも目立った外傷は見当たらない。

 

 

「なんだ銀、そんなにジロジロ見て。気持ち悪い」

 

 

うん、毒舌も健在だ。

 

 

「いや、なんだ無事で良かったなって」

 

 

俺がそう言うと、シルバさんはクスッと笑い。

 

 

「鍛え方が違うのだよ、曲がりなりにも私は王家の執行人だぞ」

 

 

耳に髪をかきあげ笑うシルバさんに、不覚にも俺はドキッとしてしまった。

 

 

「どうしたんだ銀顔を赤くして」

 

 

悪戯気味に笑うシルバさん。なんだかそれが、たまらなく恥ずかしい。

早く話題を変えなきゃ。このままだと恥ずかしすぎて変な事を口走るその前に。

 

 

「そういえばシルバさんって、たしか3姉妹っていってたよな」

 

「あぁ、私の他に姉と妹がいる」

 

「俺には、兄妹が居ないんだが」

 

「あぁ、その事か。別に別世界と自分の世界が同じ家族構成とは限らない」

 

「なんだ、そうなのか」

 

「すまない変な期待をさせていたか」

 

「謝る必要なんか無いさ」

 

「まぁ、更に言うと時間の流れも微妙に違ってくる」

 

「マジで」

 

「あぁ、最大で約50年と言った所か多分」

 

「おいおい、そんなズレたら寿命とか、なんかゴチャゴチャしたことにならないか」

 

「それなら心配要らない、別に同軸上の相方が死んだとしても片方には何ら問題は起こらないさ。まぁ多少、運の上昇はあるがな」

 

「じゃぁ、俺が死んでもシルバさんには関係ないな」

 

「私たちは別さ」

 

「なに」

 

「干渉しなければ何ら問題はないのだが如何せん、こうしておるとな」

 

「成る程、死ねないな」

 

「あぁ、私のために死ぬなよ銀」

 

 

戦いのあとの談笑も良い。

さっきまでの気の張り詰めた空気がまるで嘘のようだ。

そしてフと、俺はある疑問が浮かんだ。

 

 

「シルバさんは俺の情報を殆ど知ってるんだよな?」

 

「あぁそうだ、クローゼットの奥にある薄い本の数までキッチリ把握しているぞ」

 

「ま、マジデスカ」

 

「あぁ、そうだ」

 

 

思わず吹き出してしまった。

勘弁してくれよまったく。

流石に個人購入した保健体育の教科書の場所まで把握されちゃ堪ったもんじゃない。

 

帰ったら早急に場所を変えなければ。早急に……だ。

 

 

「そ、それで聞きたいんだが」

 

 

そして早く話題を変えなければ……話題変更作戦パート2だな。

 

 

「シルバさんの兄妹って今何やってるの?」

 

「銀、お前は人の家庭事情をそんなに知りたいのか。気持ち悪い」

      

 

シルバさんのその目は何処か悲しげで、冷たかった。

 

 

「変なこと聞いちゃった?」

 

 

人には誰しも聞かれたくない事の1つや二つある。

それが今回、たまたま重なってしまっただけなのだろうか。

 

 

「姉は現在行方知れず、妹は王の座に服している」

 

 

シルバさんは天を仰ぎそう、ポツリと言った。

 

 

「どうだ銀、満足したか」

 

 

首をかしげながら俺の方をみるシルバさん。

かきあげた髪はまるで砂銀のように、サラサラと地面に落ちて行く。

 

 

「いや、その……そうなんだ」

 

 

“ごめん”とは言えなかった。

言ったら最後、それはシルバさんに同情したことになる。

 

それに、俺が聞いた事なんだ。

自分の言葉には責任を持たなければ。

 

あぁ、俺ってこんなキャラだったかな……。

 

それ以上なにも言えず、俺は下へうつ向いた。下にうつむくと、二つのピンクのさくらんぼが見えた。そして鼻から液体が流れる感覚が。

 

男ではあり得ない程巨大に膨れ上がった胸。

首から下げた青い石のペンダントへ、それは鼻から溢れる落ちた。

 

 

「え?」

 

 

モンスター?

 

敵襲?こんな頻繁に?

 

さっきのモンスターの生き残り?

 

 

「ちょっとえ?シルバさんこれって……?」

 

『案ずるな、青年』

 

 

だれ?

 

誰だ?

 

 

「アーマイゼ……」

      

 

ため息混じりにシルバさんは名前を呼んだ。

 

 

 

【アーマイゼ】

昔はシルバさんが、今は俺が契約している蟻のモンスター。

 

だった筈。

胸から聞こえる声に俺は、自分の胸を見ようとしたが止めた。

だって嫌じゃないか、自分の胸に欲情みたいな真似をするのは。

 

 

『とりあえず言っておくぞ、今の我が主よ』

 

「ん?」

 

『お主の考えていることは、私にも分かるゆえ、あまり下手な事は考えない方がよいぞ』

 

 

まじで

 

 

『あぁ、マジだ』

 

「本当だ……嘘じゃない」

 

『フフッ、相変わらず面白い』

 

 

そう言って、アーマイゼはクスリと笑う。

 

 

「おい、アーマイゼ私の邪魔をするでない」

 

 

横からシルバさんが割って入る。

 

何だろうか……焼きもち?

 

      

『いやいや。邪魔も何も、こう、辛気くさい話をされておると、体からカビが生えてしまう』

 

 

アーマイゼがそう言ったあと。

シルバさんは一息のため息をつき、俺の方へ再び視線を向けた。

 

 

「やはり、エネルギーは思ったよりも少なかったか」

 

 

俺の女体化した体を、マジマジと見ながら言う。

 

主に感じる胸への視線。

それが何を意味しているのか、どういう考えなのかは考えないでおこう。

 

改めて説明しておくと、俺の胸にはポッカリと穴が空いている。

いや、比喩じゃなくて本当に。

深々と空いた穴は、間違いなく命に関わるもので、シルバさんの力で何とか生き長らえている状態だ。

 

その副作用……と言った言い方が正しいのかは解らない。シルバさんから借りた力は、女にしか扱えないらしい。

 

その因果の螺れ。

それこそが、俺が女体化するに当たった要因らしい。

 

 

などと、今更ながらの説明していたら千束が戻ってきたと同時にアーマイゼは姿を消した。

手に持っている紙の袋はやたらと大きいように思えるが嫌な予感しかしない。

 

 

「あぁ、やっぱりこっちにしといて正解だったわ」

 

 

そう言って袋から取り出されたのは、ピンクの生地に純白のフリルが着いたゴズロリという名の服であった。

 

 

「サヨウナラ」

 

 

逃げますよ勿論。

 

 

「待ちなさい、銀」

 

 

と、言いたいところだが千束と対峙してしまった。

体制を低くし、ジリジリと距離を詰める。

 

 

「逃げないの」

 

「いやだ」

 

「黙ってこれを着なさい」

 

「じゃぁ、千束が着ろゃ」

 

「私はギャルソンを着るから無理」

 

「むしろそっちが俺じゃないか?」

 

「むりよ、だって私胸小さいし」

 

「嘘つけ、俺と同じぐらいあるだろ」

 

「銀のエッチ」

 

「胸を隠すな胸を」

 

「この中で一番言う資格の無い奴が言わないでよ」

 

「うっせぇ、好きでこんな服になった訳じゃねえ」

 

「そうだ、銀の力不足だ」

 

「くそっ、シルバさんも加勢しただと」

 

「シルヴァーナちゃんわかっているわね」

 

「もちろんだ、ちゃんと記録に残す」

 

「くそ、卑怯だぞ」

 

「「勝てば正義」」

 

「くそっ、絶対に逃げる」

 

「させない」

 

 

「「「うぉぉぉっ」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果。

 

捕まりました。

 

 

      

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。