異世界転移してきた姫騎士を助けたら俺がTSして騎士になった件   作:バソルト

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~SET-3~(3/5)

  

  

忘れては居ないだろうか。

俺とシルバさんは瓜二つ。

見分け方は胸の大きさと、目の鋭さである。

 

後者の特徴は、ここ二三時間の間に気がついたもので。

それ以前に俺は主に恐怖が邪魔をして、シルバさんの顔をまともに見れてはいなかった。

 

そんな二人が町を歩くと色々と人目を引くわけで、何分俺はゴズロリのため余計である。

 

それに、銀髪なんてこの町に早々居るものではない。

でも以前に……たしか……。

 

 

「銀、バイクは今すぐの方が良いか」

 

 

シルバさんに声をかけられ、ふと我に帰る。

 

駄目だな。

考える方向性が定まらないで、余計な事まで考えてしまうのは俺の悪い癖だ。

 

 

「うん、速いことに越したことはないかな」

 

 

などと言っているが、残りの休みは家で引きこもる算段を立てているのは内緒である。

えっ?男に戻るためにモンスターを倒さないのかって?いやいや、二三日すれば慣れるでしょ。

確かにモンスターは脅威だけど、自分からホイホイ危険な目に会うのは避けたい訳である。

 

 

「ふむ、そうか……そうであろうな」

 

 

シルバさんはそう呟きながら、考える素振りを見せる。

俺の考えている事と若干リンクしていたことに、多少驚いたがまぁ偶然だろう。

 

さっきから、シルバさんはチラチラケーキ屋の看板を見ている。

 

まぁ、似た者同士。

否、さすが同一人物だ。

シルバさんも俺と一緒で、考えたら深みに填まっていくタイプなのだろうか。

      

十中八九。

いや、確実に。

 

シルバさんはケーキかバイクか迷ってるに違いない。

どうやら俺はシルバさんに、禁断の味を教えてしまったようで。

これは大きな脅威にも味方にもなりうる、諸刃の剣になりいるだろう。

 

 

「銀よ、私はこれから家に戻って馬を連れて来れるようにする。それまでさっきほどと同じものをだな……」

 

「おぅ、しっかり用意しておくよ」

 

 

そう言うと、顔を強ばらせる。

バレバレであるが必死で表情を隠そうと顔を強ばらせるようだ。

うん、嬉しそうで何よりである。

 

 

「そうかそうかそうか、うむ、では行ってくるぞ」

 

 

シルバさんはそう言うと、喫茶店の方へ歩いていってしまった。

 

家って……俺ん家なのだろうか。

などと、歩いていく方向から考察するがまぁ、良いだろう。

 

それよりもケーキだ。

 

男の時だと妙なこそばゆさが邪魔をして、一人でこの店に入る事は今まで躊躇らってきた。

でも今回は女体化しているわけで、そんな妙なこそばゆさはない。

 

どうしよう。

変にドキドキしてきたぞ。

女体化というプロセスを踏む事により、幾ばくかの度胸が備わったのだろうか。

 

 

一般人だと、決して体験することの無い女体化。

その経験は俺をケーキ屋に入らせるという行為。

それを、なんとも簡単な物にさせてしまった。

 

 

「いらっしゃいませませ」

 

 

やけにかわいい声がした。

 

ケースに入っている色とりどりのケーキから、声の主に視線を向けた。

 

そこには、目も眩むような可愛い女の子が顔を上げて俺を見た。

 

ウェイターの格好をしたその子は、俺を一瞬驚いた様子で凝視した。

 

 

あれ?一目惚れされた?

 

 

そう期待をしてみたが、いかんせん俺は今女体化をしている。

ピンクのゴズロリ服というおまけ付きなので、それはないであろう。

 

むしろ気にするのは俺のこの服な訳で。この町でこういった服を着ている人は、見たことがない。

さて、どうしたものだろうか。

ショートカットの髪型をした、可愛い女の子。

 

名札には“天子”と書かれていた。

 

俺の記憶が間違っていなければ“天子”という名前に一人だけ心当たりがある知り合いが居る。

 

俺はケーキを品定めするフリをして、思考を加速させる。

 

まずは読み方だ。

 

“天子”という漢字。

 

なにも考えずに読めば“てんこ”だろう。

 

それがダメだとすれば“てんし”である

 

しかし、俺の知り合いは前者も後者も読み方は当てはまらない。

奇抜とも、最近流行りのキラキラネームともとれるその名前。

 

その名前は……

“天子”と書いて“あまね”と読むのである。

 

もう一度いう。

“天子”と書いて“あまね”と読む。

 

大事なことだから二回言った。

 

しかしまだ驚くことなかれ。

この子はお寺の娘である。

 

だから、基準が判断しづらいが後者のキラキラネーム。

親の一時の感情が生み出した悲劇……ではないと信じたい。

 

だが俺はそれ以上にもましてある危惧がある。

それは、知り合いとバッタリ鉢合わせしてしまった。

 

そんな些細なことではない。あの子は、俺の悪友の妹であり。

今現在の状態であの子の兄に会うという行為は、大変危険であるからだ。

 

唐突に言えば、俺の悪友は異常である。顔はさすが兄妹と言えるほどに美形。

野郎犇めく学校でもイケメンと、噂されていたぐらいだ。

ただ残念なことに、こいつは異常なほどに女好きで尚且つ変態だ。

 

まぁ、そんなのだが。

寺を引き継ぐために、高校卒業と共に京都へ修行へ旅立っていった。

 

だからこの町に、奴は居ない筈なのだが、なぜかこの出会い。

悪い予感しかしない。

 

迸る電流。

とてつもなく嫌な気配がした。

それは男の時に感じることは無かった、異質な感覚だった。

だがこの感覚は、モンスターのそれとは違う。振り返りたくない気持ちを、一心に抑え込み振り返ると。

 

奴は……俺の悪友【柊 達哉(ひいらぎ たつや)】が、俺に熱い視線を送っていた。

      

よしと。

本来ならば、ここでひとまず状況整理を普段するところなのだが。

 

今はその必要は無いだろう。

チラリと天子ちゃんの方を見れば、顔がひきつっているのがわかる。

 

「ちょっと、まってて……お兄ちゃん」

 

天子ちゃんはそう言うと、店を出ていく。

 

あぁ、なつかし光景だ。

 

固く拳を握る天子ちゃん。

 

それに気づかず、俺を見る達哉。

 

迫る拳。

 

変形する顔面。

 

吹き飛ぶ人間。

 

そして、遅れてきた音。

 

これは、わずが三秒の内に起きた出来事である。

天子ちゃんの腕は確実に上がっていることから、ここ数年の苦労がうかがえる。

 

その間に俺は、シルバさんの為のケーキを選んで早く逃げることにする。下手に関わってボロが出たら事だ。

 

俺が内藤銀。

男だと知れれば達哉の気は紛れるだろう。

 

だが、天子ちゃんからの痛々しい目線は精神に多大なる傷を被うこと請け合いだ。

達哉とはどうでも良いが、天子ちゃんとの付き合いを断ち切るのはゴメン被る。

 

店に戻ってきている天子ちゃん。

一瞬猫耳を生やしているように見えたが、それは普段からの訓練の賜物だろう。

 

皆するだろ?

 

勝手に女の子に猫耳を生やしたり、色んなコスプレさせたり裸にしたり。

 

 

買うのはショートケーキつにチョコレートケーキ2つずつ。

 

季節限定の蜂蜜のフルーツタルトは……まだ時期じゃないか。

よし、ミルフィーユなんてコジャレたものも買ってみるか。

 

一応、ショートケーキは甘さ控えめのにしてと。

注文を終えると、俺はケーキを箱詰めしている天子ちゃんを見る。

 

猫耳は未だ健在だ。

ヤバイな飢えているのだろう。

 

帰ったら、パソコンの猫耳フォルダーを久しぶりに覗くか。

自分の財布からお金を払い、天子ちゃんからケーキを受け取る。

 

うん、柔らかな手だ。

 

久しぶりだと言うのに、話し掛ける事が出来ないのは惜しかった。

 

だがまぁ、仕方がないか。

それにしても、可愛い子とふれ合うのは良い。未だにドキドキする。

 

 

「ありがとうございました」

 

 

可愛い天子ちゃんの声。

軽く会釈をして、俺は店を出る。

 

達哉がまだ道で伸びている。

目を覚ます前に早く逃げることにするか。

 

少し遠回りをして、家路につこうとしたその時。

 

一匹の黒猫とすれ違った。

あれ、あぁ朝だっけ。

朝、黒猫とすれ違うと1日がラッキーデー。

 

なんてジンクスが頭を過るが、残念なことに今は夕刻だ。

夕日に照らされて、町が赤く染まる。今日1日は沢山色んな事が起きた。

 

帰ったらグッスリ眠れそうだ。      

     

      

 

~Tezuka said~」

 

      

 

特殊犯罪捜査一課。

それが私、向千束の所属する警察組織だ。

 

過去、ここ一帯で奇妙な事件が多発した時に出来た。

そうは言っても、私が配属されたのはごく最近。

それが良いことなんだけど、配属されて暫くは事件らしい事件は全くなかった。

 

聞けば、私が配属される以前からそうだと言う話だ。

 

だけど今は違う。一晩で何者かに破壊された、廃業した道の駅の駐車場から始まり。多発する行方不明者。上半身裸で町中を徘徊する謎の銀髪美女。

 

そして。

 

 

「燃える……タイヤ痕?」

 

「そうだ」

 

 

東条警察が資料を渡しながら、事件の簡単な説明をした。

 

燃えるタイヤ痕。

 

ことの始まりは昨日の夜に遡る。

国道をバイクで走っていた少年が、路上で殺害された状態で発見されたのが事の始まりは事件現場には2つのタイヤ痕が残っており、一方は時間が経過したにも関わらずその後が燃えていたと言うことだ。

 

更に死体は、頭部と胴体が鋭利な刃物で切断されていた。

 

それと同様の事件がここ数日の間に二件。

犯行時間はどちらも真夜中で目撃者は無し。

 

 

「向、今から現場にいくぞ」

 

 

何時もの東条刑事とはうって変わり、真剣な眼差しをした刑事が指輪をハメ直し部屋を出る。私はそれを追う形で部屋をあとにした。

 

現場は不気味な程、静寂に包まれていた。

いつの世にも野次馬というものは存在するものであり、それを抑えるのも仕事の内。新人の内はそう教えられたものだ。

 

などと、昔に酔いしれている場合ではない。

私達が犯行現場に近づくたびに血生臭い臭いが鼻をつく。

 

 

犯行現場を目の当たりにしたその時。私は何故、野次馬が居なかったのかをようやく悟った。

 

 

「これは……」

 

 

次の言葉が出なかった。“酷い”なんて形容しがたい程、無惨に破壊された体組織。

血が肉が毛が散乱している。

その傍らには明らかに違法改造されたバイクだったものが。

それはもう鉄と油の塊でしかなかった。

 

 

「こいつは」

 

 

東条刑事も言葉を失っている。

ダメだもう限界。

 

 

「すいま……」

 

 

私はそう言うと、街路樹の根に胃の中身を吐き出してしまっていた。

 

あれから私は車の中で少し休んでいる。目を瞑るとフラッシュバックされる、さっき光景。または私は吐きそうになったが、踏みとどまる。

 

 

「大丈夫か」

 

 

運転席に座りながら、東条刑事はペットボトルの水を差し出す。

 

 

「はい……すいません」

 

 

謝ることしか出来なかった。

あれほどの光景を目の当たりにしたのは初めてだ。

      

      

 

「東条さんは平気なんですか」

 

 

思わず敬語口調で話してしまう。

 

その話し方をするのはすごく久し振りな気がした。

 

だけど、今は違う。

 

 

単なる好奇心か、それとも極意を知りたいのか。

 

人があれほどまでに肉の塊と言う言葉が相応しいほどの光景。

それを冷静に対処していたのだから。

 

 

「いや……実は俺もやばかったんだよね」

 

 

そう言いながらは薬指で顔をポリポリとかく東条さんから、意外な言葉が帰ってきた。

 

 

「慣れた……って言ったら語弊があるかもしれんが、そんなもんだよ。まったく」

 

 

最後の言葉は自分に対してなのだろうか。

私はペットボトルの水を半分ぐらいまで飲むと、ドリンクホルダーにそれを入れる。

 

 

「いけそうか?」

 

「はい」

 

 

間髪入れずに返事をした。少し時間を置いたお陰か、気持ちも大分落ち着いた。

 

現場は未だに、血と煙の臭いが充満している。

これが本当に人の仕業なのだろうか。

私は改めて、状況を受け止める。

 

 

バイクはまるで、何かで切られた跡がある。

それを発端にして、転倒したときに壊れたのであろう。

 

 

ミラーやパーツの残骸が、あちらこちらに散乱している。

 

 

「うっ」

 

 

また、吐きそうになる。

だけどもう負けない。

 

 

死体を隠すために設置されようとしていたブルーシートをくぐり、意を決して私は遺体と対面する。

風が遮られ、血の臭いが充満している。手を合わせ黙祷の後、改めて私は遺体と対面する。

 

 

誰なのか、それ以前に何人だったのか。

それさえも解らない程に、細胞が破壊された遺体。

 

 

「若いのに」

 

 

東条さんがそうぼやく。

 

 

被害者は皆20代前半~10代後半。

近隣住民から騒音の苦情も多数来ていた典型的な暴走族紛い。

 

たしかに。

事件に巻き込まれていなければ形はどうであれ、まだまだ青春を謳歌していたであろう。

 

だけど、そう思ったところで亡くなった命は帰っては来ない。

 

死んだら最後、もう後戻りはできないから。

 

 

「よし、現場検証は鑑識に任せて俺たちは帰るぞ」

 

「えっ、そしたら何のために私達は。理由を教えてください」

 

 

突如そんな事を言われた。私は何もしていない、したことと言えば胃の中のものを吐き出しただけだ。乙女として、刑事としてそれだけしかしてないという状況。それは絶対に避けたいと、個人の感情では思う。

 

 

「理由?向をこういう現場に慣れさせる、帰ったら早速対策会議だ。それと……」

 

 

柔道着で気合いを入れるように、スーツの上着の襟をパンと引っ張り。

 

 

「……現場の空気を知ったんだ意気込みが違うだろ」

 

 

そう言って東条さんはブルーシートを潜り抜け、出て行った。

それを追う私の瞳にはその背中は大きく見えた。

 

 

 

~Gin Said~

 

      

 

喫茶店へ帰ると、シルバさんがスヤスヤと寝息を立ててテーブルに突っ伏していた。

 

寝たフリか?

 

なんて思ったけど、寝息が聞こえるから違うであろう。

 

伏せているため寝顔は見えないのは残念だがまぁ、良いかな。

 

春先とはいえ、まだまだ冬将軍の抵抗続く寒い季節。

買ってきたケーキを冷蔵庫に入れ、暖房をつける。

 

古い機械のためか、動くときにゴゥンと音がしたが幸い眠り姫はそのまま寝ていてくれた。念のため、毛布をシルバさんにかける。

 

ふと窓辺を見れば午後の日差しが射し込んで来ている。

 

店は思ったよりも早く暖まるだろう。

 

 

「あぁ」

 

 

思わず声が出てしまった。

 

ガラスに写った俺の姿。

そう言えば今、ピンクのゴズロリ服だった。

 

着替えるかな。

俺は、静かに二階へ上がっていった。

西日の陽射しが照らす午後の陽気。

 

部屋はとても暖かかった。

服を脱げばまた、新品の服特有の匂いが鼻を抜ける。

女体化するにあたっては只今、男としての欲求は無いに等しい。

 

たわわに実った果実。

引き締まったウエスト。

そしてシルバさん程ではないが、長くしなやかな足。

 

もう一度言う。

男としての欲求は無いに等しい。

 

クローゼットを開ければ、ウエイトレスの服と数少ない私服のみ。

元々、私服と言うのはあんまり持っていない。そのため、これといったものは持っていないのが現状だ。

 

普段はウエイトレスの服が私服であり、仕事着な訳で。その上に防寒用の革ジャン等を着るのが俺のいつものスタイルである。

 

だから今日、服を買おうと考えた訳なのだが……。

 

結果は無惨なもので、床に脱ぎ捨ててあるゴズロリ服一着のみ。

 

クローゼットを漁っても……

 

革ジャン。

変色した柔道着。

色落ちした剣道着。

ボロボロの手拭い。

ウエイトレスの服多数。

メイド服。

毛玉だらけのスエット。

ヨレヨレの半袖。

年季を感じる半ズボン(水着兼用)

半袖のパーカー。

ヒートテック(白・黒)

靴下。

ハイソックス。

トランクス。

ボクサーブリーフ。

青い縞柄のパンツ。

青い縞柄のブラジャー。

言葉では表せない18歳以上を対象としたマンガ本数十冊。

 

 

……最後の方は見なかった事にしてはくれないだろうか。

 

 

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